2016年4月10日日曜日

1977  シルマリルリオン  シルマリルの物語   トールキン (親子)

親のトールキンが死んだ後に、息子トールキンがその遺稿などから、ずっと暖められていた、設定、的な物語をまとめて本にしたものです。

 
死後出版ってやつは、ワタシはやっぱりどうかな~~・・・って思うところがあるんですけど、ここは息子トールキンを信用して読んでみることにしました。

 ロード・オブ・ザ・リングを読んでる途中だったのですが、2つの塔の中盤くらい、いきなりガンダルフがシルマリルについて触れるところがあります、しかしLORの中ではシルマリルについてはあんまし説明してくれません。そのシルマリルとは何か?ってのを説明するためのシルマリルリオンなんですが、まさか!って感じの壮大っていうか爆発的なスケールの物語でして。なんと世界の創造、から物語が始まり、そこからLORの時代までの歴史を物語るっていう作品なのです。


 作品の前の時代のことを設定として、それ自体は作品にしなくても書き出しておくってのは結構ファンタジーとか架空の世界を物語る系のやつではあるあるです。後でコード0、だの、ビギニング、だのなんだの、って手直しされて作品にされることもありますし、作品にレイヤーをくわえるためにも結構やるべきことなんですが、まさかそれを神々による世界の創造、から全部描くってことをやるのはちょっとやりすぎっていうか馬鹿げてますね。まぁトールキン氏は大学の先生であって、生活に不自由してない副業作家ってのもあるからそういうことが出来るのでしょう。エルフ語なるものも勝手に自分で作るくらいの暇人というか凝り性なヒトですからね。


 いやはや。読むのははっきり言ってかなりしんどいです。登場人物が100を超えるし、地名やらなんやらも書いてる本人には絵が描けてるのかもしれませんが、読んでる方とすればちんぷんかんぷん、まぁ設定として書き出しているだけなので、読むように推敲されていないんだからしょうがないと思いますけど、相当意味わかんね・・・・、ってところがかなりあります。



 よく小説とか文章で絶世の美女だった、とか見るも美しい都市であった、とか燦然と素晴らしい光を放っていた。とかそういう褒める文章を描くヒトっていますけど、それってどういうつもりなんだろうって思いますね、なんか自分で作った作品世界のことを自分で褒めるって、しかも文字だけで、自己愛が強すぎるんちゃうって思う。ワタシだったら絶対そんなこと描かないです・・この街は神々の街で人間には想像も出来ないくらい美しいんだよ。ってそんな発注をアシスタントにかけてる作家はアホですもん。知らねぇわ、何いってんのこの人?って感じ。どうせ描けないじゃんそれ、って思う。これはでも絵描きだけが思うことなのかなぁ・・・?


 それにしたって神話を自分でつくってやろうってのはなんでしょう、傲岸不遜って言う感じもワタシはちょっとしますね。神話って1人で作っちゃいけないんじゃないの?って思う。いろんなひとが少しづつ物語を追加していって、しだいに民族全体で形にしていくってものですから、1人の大学言語学教授が作ると、やっぱペラペラになるというか、逆に統一性がありすぎて神話っぽくないのですよね。神話ってのはもっと曖昧で、矛盾しまくっていて、初めと終わりっていう一貫性もなく、バラバラなもんですから。


 ただやっぱシルマリルを知ることによってLORっていうのはそういうことだったんですなー、ってのがはっきりくっきりわかるってのは事実。ただしこの本自体は出来は良くないし、面白くもないと思います。しかしLORのファンにすれば必読の書。映画のLORを見て、なんか意味わかんねーな、って思ったワタシみたいなヒトにはおすすめします。


 エルフの元に残された3つの指輪はどうなったのか?ってのも教えてくれます、ネタバレですが、エルフの指輪を持っていたのは、裂け谷のエルロンド、ロスロリアンのガラドリエル、そして紅の指輪はガンダルフが持っていたのでした。紅の指輪の力が仲間を集めて戦う力、なのですね。そしてガンダルフとか魔法使いってのの正体は、ヴァラアルっていうカミサマたちの使いだったのでした。っていうオチになってます。ふ~ん・・・。


 まぁ神話らしいと言えばそうなんですが、物語としてはかなりめちゃくちゃです。全能の神エルが完璧な世界を作った、といいつつ、メルコオルっていう堕天使的な悪の王が現れたり、サルマンってのもまぁ悪い妖精みたいな存在です。神々は全部魔法で一気に解決したり、戦争で戦ったり、かと思えばいきなり何も出来ないと言い出したり、なんじゃいそれは。って感じ。
 やっぱり思うのですが全部魔法でまるっと解決出来るんなら最初からやれやって思いますね。まぁそれじゃあ物語にならんのですが。


 こぉいう民族歴史、とか創世神話みたいな話を叙事詩=EPICっていうのですが、叙事詩っていうコトバは一体全体何がいいたいのかわからないコトバですね。叙事詩ってのがなんのことかってわかってるひとは殆どいないと思う、そんなコトバは元々無いしそういう概念も日本には無かったのですわね。じゃからエピックはエピックって呼べばいいのに。こぉいうわけわかんないコトバをでも使いたがるヤツっていますよね、叙事詩だの抒情詩、だの、エスキスだのカタルシス、ミメーシス、タナトスだのそういう無意味な学者コトバ。そういう学者が学者ぶるだけのコトバってほんとイヤです、まだ女子高生のコトバのほうがましです、NHK ネクラ・変態・キモい、みたいなヤツ。まだそっちのほうがわかる。伝えようという気持ちがある、叙事詩って言うコトバには伝えようっていう気持ちが感じられません、かっこつけてるだけ。