2024年1月2日火曜日

1912 歌う白骨 オースティン・フリーマン

  最初に犯人が犯行を犯すところから始まって、探偵が後から捜査を始める。という最後に犯人が明らかになる、というのを裏切った「倒錯型」の推理小説の元祖と言われる短編集です。

 

 まだまだ推理小説が創成期で短編が主流の時代です。倒錯型、なので鮮やかなトリックというよりは、捜査の進め方、みたいなのが主軸になっていて、その捜査の方法が、当時の「科学的手法」によっています。

 

 証拠品を顕微鏡で調べてみたり、薬品で検査したり。いや、顕微鏡で見たってそんなことわかるわけねーだろ、なんてのは野暮です。当時はそれで良かったのです。


「刑事コロンボ」などが人気なことでも、このスタイルはそれからずっと廃れずに残っていて、ワタシはこれは、推理小説、とはまったく別物の「捜査小説」っていうジャンルだと思いますね。最初に犯人がわかるので「ミステリー」ではないし。


 ちなみにオースティン・フリーマンは文章が上手だと思いますね、ミステリ作家はアイデア勝負なんで、文章ヘッタクソってことはよくあるのですけどフリーマンは文章が明確でスッキリしていて上手な珍しいタイプ。名文家です、名文家って作家今では本当にいなくなりましたね。まず小説家と呼べるようなのがいないので、名文家は消えたのですな。

 

 短編推理傑作選、みたいなやつにも必ず選ばれる作品です。