2013年1月13日日曜日

OP9 manuscript 7,8


  ・Bloggerのほうは広告がけっこう順調なのにyoutubeはちっともダメなのはなんででしょう、カウントはされてんのに・・?動画でアフィリエイトちゃんとつけられるのはどこなのでしょう。ニコニコは嫌いだし、fc2はなんかあやうい・・・youtube日本対応悪すぎ・・・困ったねどうも。                    


・MNSは本編にはうっすらとしか絡んできませんけど、セリフは残ってたりします。だいたい登場人物のキャラを固めるために小説を書いてみるのはいいと思います。それと乙はだいたい同じキャラクターをずっと使いまわすようにしてます、三船をどの黒澤映画でも見るみたいに、そっちのほうがキャラに深みが出る気がする。シェイクスも道化のキャラはいっつも同じですしね。たぶんお気に入りの俳優がいたんでしょう。それかシェイクス自身が道化をやってたか。シェイクスのカキ筋を見ると乙はそういう感じがするんですけどね、シェイクスは俳優上がりっぽい書き方をする、演技してて気持ちいいような・・

 
・シリア内戦のドキュメンタリーがBSでやってました。出来は悪い。けど、ないよりはマシか。しかしなんで戦争モノのドキュメンタリーって子供を映したがるんですかね、子供が犠牲になってる!なんてショックを受けるバカがいるんでしょうか?内戦状態なのにセックスしてる親のほうを誰か非難しないわけ?難民キャンプとかでもそう、子供ばっかり写す、いつからそういうの始まったんですかね、洗脳されやすいババアが選挙で多数を占めるようになってからか・・・


 



     7 encounter

 とも「あっ!」
アキ「?・・同じ学校のヒト?」
俊「・・・さぁ?」
とも「違いますほら、あの・・電車で見たことあったから、ほら、ビデオカメラみたいなのをいじってたでしょ?」
とも(待ち合わせのマックについたら、あの私の理想のお姉ちゃんが、これも私の理想の精子ホルダーと一緒にビッグマックを食べていた、こんな事ってあるだろうか・・でも雰囲気からして、二人はいい感じみたいだ・・残念、2つ一気に願いがかなうなんてないんだな。それとホルダーはなんか手を骨折してるらしい、首から吊ってる。えっ、まさかビルから飛び降りてみてロケハンでもやったの?)
アキ「持ってたかもだけど、そんな目に付くかっこしてるかな?」
俊「山手線でしょ、山手線だったらあらゆる人間に会えるよ、よくお笑い芸人見るもん、ネタ合わせしてる、若手だけど」
アキ「劇場回ってるんでしょ、それにしても若いなぁ、小学生じゃないよね?」
とも「・・15です」
俊「こんな・・・vulptuousな小学生いないだろ」
とも「デカパイって言っていいですよ、なれてますから」
俊「いや、別に言おうと思ってない・・・」
アキ「カメラ回してるけど大丈夫?」
とも「あっはい・・」
アキ「緊張しないでくださいな、好きなもの頼んでよ、おごってあげるから」
俊「おれのカネ」
とも「いいですよ、私お金持ちですから」
アキ「ですって」
俊「確かに、時計も高いもんね」
アキ「・・・ほんとか?見たことないけど」
俊「ごめん知ったかした、でも高そうだもん」
とも「手作りです、手芸部なんで・・だったんで、でも一万円くらいしかかかってないですよ、まぁ人件費は入れてないけど」
アキ「もしかしてその服も?」
とも「そうです」
俊「なんでわかったの?」
アキ「裁ち切り線と縫い目がメイドインチャイナじゃないもん」
とも「すごい、よくわかりましたね」
アキ「私のお母さんはそれ関係だったから」
俊「今時分でも女は縫い物ができないといけない風潮があるの?」
アキ「無い・・いや、でも流行ってきてるかもね、微妙に。だって既製品とかブランド物とか、ハッキリ言ってださいんだもん、良い物は高すぎるし。それにもういい加減うんざりしてるんだよねカジュアルファッションってやつに。もっと・・・ロマンティックなものが着たい、少なくともマスプロじゃなくてアイデンティカルなものをさ」
とも「あぁわかる!もぉグランジファッションはいやですよね、いつまでもカートコバーンじゃいられないもん」
俊「90年代って基本的には60年代リバイバルだった気がするんだけどなぁ、だから脱60年代じゃない、アンチ反体制」
アキ「なんじゃそれ、保守主義ってこと?」
俊「違うよ、ウル、もしくはジンテーゼ的な何かだよね」
とも(なんか話が高度でついていけない・・私はこれでも相当私の世代としては相当学があるはずなのに)
アキ「そうだよ、自己紹介すらしてないよね、私が作家のアキでこっちが・・工藤俊作です、俊ってよんであげてね」
とも「鏑木ともこです、映画監督じゃなかったんですか?」
アキ「映画はもう死にました、まぁなんていうかな、新しいフォーマットを作りたいんだよね、もぉ映画館で上映して二時間くらいで・・みたいな映画はいやじゃん。だから・・もっと・・まとまってないけど、もっと手軽で、持ち運びできて、自分のペースで読める、ようなフォーマットを作りたいな。パフォーマンスアートとかハプニング系のようなのも嫌だけど。映画って時間が相手に支配されてるのがたまらなくやだよね、もっと早く動いてくれって思う、本を読むスピードってみんな違うのに映画のスピードはみんな同じじゃん・・主体的にページをくっていく小気味よさが欲しいんだよなぁ・・あとビジュアルがあるもの、漫画にしたって、こういう長いダイアローグは不自然だよね。カットが持たないんだよね・・だからアクション主体になる、切って殴って、スポーツして。漫画はいいフォーマットだけどドストエフスキーとかシェイクスピアとか、ベートーヴェンとか、その段階まで完成したものはまだ残せてない・・・気がする。もっと簡単にいえば絵がくっついてくると心理描写が弱いんだ、具体的すぎて低俗なものになる、ベイルマンとかタルコフスキーだってあまり成功してるとはいえないもん・・コトバにならない、感触や感覚を伝えるには映像が一番だけど・・もっとそれぞれの長所が生かせるものが出来るはずなんだよ・・小説が語りうる物語と、映像が語りうる物語は絶対に違うんだ、カンフー映画を小説にはできないし、大審問官を映像にはできないんだよ、それはもう完全に出来ない。あんなにインクィジトールが一方的にしゃべりまくってたら不自然だもん・・・私が今こうやってしゃべりまくってるみたいに」
俊「教科書を全部漫画には出来ないってことでしょ、山川の教科書ってDTP的にすごい優れてると思うんだけどな、一冊の本にあれだけの情報量だもん」
とも「言われてみれば・・」
俊「高校生だよね、中卒って感じのあれじゃないもん」
とも「高校一年です、実は頭いいんですよ、おっぱいが大きい奴はバカという定説を犯して、麻布高校です」
俊「あそこって男子校じゃ?」
とも「去年から共学です」
アキ「ガリ勉?」
とも「そんなことないですけど・・」
アキ「友達いないでしょ?」
とも「ズバッと言われると・・」
アキ「だって可愛いもん、女って自分よりもあらゆる点で上回ってるヒトには冷たいもんね、頭よくて、アイドル顔で巨乳では、なかなか友達は出来ないよね。それでちょっと孤立してるのが男どもにとってはまた魅力的なんだけどさ。大沼先輩みたいに」
俊「誰?」
アキ「大沼キャプテンだよ、アタックno1の」
俊「激烈古いな・・」
とも「ちょっと不安な事があるんですけど、スタッフ募集って・・私がその・・」
アキ「私たちは自殺をsogerとか呼んでるよ、自殺自殺、マックで口走るわけにはいかないもんね、sogerなのは彼です、まだ決行するかどうかはわかんないけど」
とも「えっ!もったいない、私の・・」
アキ「私の?」
とも「・・ははは、なんでもないです。私・・でもなんの特技もないですよ、音楽も絵も描けないし、映像もよくわかんない、裁縫は少しはできるけど」
アキ「ぜ~んぜん大丈夫だよそんなの。みんな初めてはあったんだし」
とも「・・でもわかんない、わたしもsogerな可能性はありますよ。聞きますか?私の話?」
アキ「聞く聞く」
とも(私は私の15年のダイジェスト版を5分で話した。両親の離婚、祖父の死、その遺言による成金、母親と仲違い、一人暮らし)
とも「・・・・以上」
俊「へぇ・・・顔に似合わずけっこう奥深い」
とも「でしょ?自分でもそう思います」
アキ「でも実際やろうって思ったことはないんでしょう?」
とも「無いです、そういうのもあるんだなって気がついた感じです。そういう物事の解決の仕方もあるんだなぁって・・・私お姉ちゃんが欲しいんです」
アキ「・・・?お兄さんでもいるの?」
とも「いないです、だから無理なんですけど・・、だからお姉ちゃんじゃなくて子供にしようと思って、私って一人じゃダメなんです、誰かが必要なんです、そうじゃないと存在理由を失ってしまう・・」
俊「レゾンデートルか・・」
アキ「退屈って事でしょ、退屈と幸せと絶望ってひょっとしたらイコールなのかと思うよね、同じものの違う側面」
俊「退屈?」
アキ「私?私は退屈とは無縁だな・・やりたいことがありすぎてなんでこんな一日が早く終わっちまうんだって感じだもん。最近歳食ってますます一日はやくなってやばいよね」
とも「だから私のお姉ちゃんになって下さい」
俊「なんかエロゲーみたいな響き」
アキ「え~、お姉ちゃんって・・何をすればいいの?願わくば同年同日に死なん、お酒持って来いって事?」
俊「あはは、関羽ってガラじゃないね」
とも「普通でOKです!ねっ?私のとこに今日泊まりに来ます?ずっと泊まっててもいいですよ?」
アキ「う~ん、私は家にいるってことは殆ど無いんだよね、ずっと外に出てる、家は寝るだけって感じだから」
とも「おふたりとも学生さん?」
俊「受験生だよ、同じ学校なの」
とも「ほぉ・・付き合ってるんですか?」
アキ「そうとも言えるね、一回5000円でやらせてあげる契約だし」
とも「それは・・付き合ってるんですか?」
俊「こっちが聞きたい、付き合ってるって何なの?フリーセックスが付き合ってるってことなんか?」
とも「・・いやぁ・・本人たちが付き合ってるっていったらそうなんじゃないですか?自称です・・まさか私は愛とは何かって事を演説しないといけませんか?」
アキ「じゃあ付き合ってないにしとくよ、そろそろ行こうか」
とも「どこですか?」
とも(三人は荷物をひっつかみずつ立ち上がった、ともはアキがあざやかにみんなのゴミをかたして捨てにいってくれたのを感心すると同時に、なんで自分がそれをやらなかったのだろうと、思った)
アキ「俊の故郷めぐり、といってもすぐ近くだけど」
とも「本当にするつもりなんですか?その怪我もなんか飛び降り失敗みたいな事・・?」
俊「違う、これはただのチャリでクラッシュしただけ。ソルは・・さぁどうでもいいんだよね、どっちでもよい」
アキ「私も強制はしてないよ、強制したらまったく違うものになっちゃうからさ。でも私自身ソルが悪いとはぜ~んぜん思ってない、それに価値観を与えたくないんだ、プラスにしろマイナスにしろ。エポケーだね・・あっつ~、さすがにもうすぐ8月ともなると暑いなぁ・・」
俊(マクドナルドも客の回転率を上げるためにクーラーを強めにしてるんだろうか?結局それだと電気代がかさむだけのような気がするけど)
とも「自分の命にあんまり関心がないヒトは、社会にすさまじいインパクトを与える事が多いらしいですよ」
俊「キリストみたいに?」
アキ「そっちか・・・確かにそうかも、真ん中ってことはないだろうね。社会はその構成員は死にたくないって公理で存在しているんだもん、人間は死にたくないという公理。それを否定してるんだから、すんなり社会に収まったりはしないだろうな」
とも「・・全然ちゃう話ですけどあのグラフィティはすごい良かったですね」
アキ「あぁ、でもすぐはがされちゃった、メールですごい注意されたしね。でもあれステンシルじゃなくてポスター貼っただけなんだよ、そんなに怒らなくてもいいじゃんね、それに印刷に2000円もかかったし、そもそもスタッフ募集ってことだったのにグラフィティ自体が楽しくなっちゃったワルノリだったんだよね」
とも「もうやらないんですか?」
アキ「んにゃ、やる、なんか深夜に街を見下ろしながら作業するのって楽しい、えらい寝不足になったけど・・ともちゃんも何か描いてみたら、まず練習あるのみだよ、絵を描くなんて、結局はただの技術なんだからさ」
とも「はい、私もやってみたいです!そっか、でもスプレーじゃないんですね、マナーがありますね」
アキ「印刷代が高すぎるのがネック、ステンシルだったら何枚でもスプレー缶の値段でできるのに、一応私学校で優等生キャラだから補導されるのはまずいんだよね・・・それに輸入文化だからさ」
俊「また見張りをやらせる気か・・」
アキ「いいじゃん、ストーカーの得意技でしょ」
とも「ストーカー?」
アキ「俊は私のストーカーを一年半やってたんだよ」
とも「・・・・えっ?」
俊「アキの言うとおり、孤高の凄腕ストーカー現る」
とも「・・・なんか私を二人でハメようとしてますか?」
アキ「全然ちゃうって、私が募集を始めたらすぐに来たんだよ、ストーカーだから情報が早かったというわけ」
とも「・・・わかります、私も電車で会った時に、すぐになんか心奪われましたもん・・その・・透明感っていうか、目の輝きに、やっぱり死ぬのが怖くないヒトの目なんですよね、澄んでて、まるでこの世界に属してないみたい」
アキ「属してないよ、作家なんてのはそういうものだよ、自分ってのが、作品を作る道具になっちゃうんだから、ウルなんだよ。作家ってさ、卑怯なの・・主体的に生きることが出来ないから、自分でキャラクターを作って実験してみたりするんだ、結局のところどうやって生きればいいのだろう、ってね。それでグズグズ長生きするのもどうかだよね、まぁ私も27くらいまでには何か決着をつけたいと思ってる」
とも「・・・」
俊「でもおれの母校なんて回った所で何も面白くないと思うよ、学校なんて結局どこも同じだもん、しかも実家ぐらしだから懐かしいとかもないし」
アキ「その点にかけては大丈夫、演出がされてあるから」
俊「・・・?初恋の人登場とか?」
とも「いるんですか?」
俊「そりゃ15年もすごしてれば、気が合うヒトの一人くらいは見つかりそうなものだ、でもそんな・・ガキの恋愛だし」
アキ「小学校の頃は、私達一生小学校のままなんだって思わなかった?六年生の終わりごろになってやっと、えっ?世界は小学校以外にもあったのか!って気付かされたよね」
俊「すご~いわかる、本当、ドッチボールに精を出して、家に帰ったらすぐにぐっすりでもう永久にそのままだと思ってた」
アキ「私は記憶喪失で幼稚園あたりの記憶は0だから、格別そうなんだと思う」
とも「記憶喪失?」
アキ「そう、幼稚園とか・・もっと子供の時の記憶ってある?」
とも(あっさりと記憶喪失の話は流れていったけど・・それってさらっと言っていいような事なんだろうか)
俊「・・・幼稚園以前は・・ぼんやりとした色彩とか、肌触りがあるかぎりで殆ど無い。幼稚園は結構覚えてる、保母さんのおっぱいを揉んで、弱虫をいじめ倒して、子供向け商品にまんまとのせられて、あとは・・でっかい積み木で遊んだな・・それでなんかのはずみで誰かの脳天を打ち砕いて、かなり怒られた・・・が、まぁうちの親ってのは、一言で言えば善良なオバカさんだから、一人っ子のやることはなんでも大目に見てくれるってわけだな、でも幼稚園のやつの顔は誰一人もう思い出せないな、私立に入ったのはおれくらいだったから、もう二度と会わなかったというわけ。おかんの話ね、親父はいつも家にいないし、話せば長い」
アキ「子供の頃の夢は?」
俊「・・・・なんだっけ・・・、風」
とも「風邪?」
俊「windのほう」
アキ「詩的ですねぇ」
俊「ぜんぜんそんなんじゃないよ、なんかの漫画のキャラだと思う、どうせ特殊な技が使えるんだろうよ」
とも「ははっ、子供らしくていいじゃないですか」
俊「黒歴史・・」
とも「私は・・・先生だったかな?」
アキ「私は・・・スポーツ選手だったかな」
とも「真似しないでくださいよ」
アキ「ハハハ、妹をからかうのが姉さんの役目じゃなくて?」
とも(私は胸の中からただでさえ暑いのに内側からも温かい気持ちが広がるのを感じた。やばい、シアワセにやられてしまう)
俊「アバウトだな、何のスポーツなの?」
アキ「特にこれっていうのが見つかんなかったんだよね、というか女っていう制限で一番になってもつまんないなと思って、どうせワールドカップは男じゃないと出れないんだよ。ビョーキみたいな負けず嫌いだったから、一番じゃないとまったく意味がないんだよね、スポーツは所詮男の世界だ。だからこっちに来た、芸術ってのも頭のスポーツだからさ、すぐに一位じゃないと意味がないっていう夢自体がさっぱり無意味なものだと知る・・着いた」
俊「変わらんなぁ」
アキ「入ろう」
とも「いいんですか?」
アキ「良くわない」
俊「いき過ぎた管理社会だね・・・どんどん治安がわるくなって、どんどん自由がなくなる、原因は、自由を得ようとしてカネをもっと欲しがるから」
海里「well i'm tired of that bullshit 」
とも(校門の近くに立っていたメガネの人が私達を待ってた、これが俊の初恋の人なんだろうか。1つだけ言えるのは外見を飾るのに全く興味が無いらしいということだ。メガネも恐ろしいくらいメガネだし、服も何のこだわりもない感じ、髪もなでつけただけ、そしてすっぴんぴんだ、それなのに私達の中で一番少女っぽくてカワイイのは確実に彼女だった。なんか自分が随分すれた人間になってしまったかと久しぶりに実感する)
俊「あっ!メガネかけてるからわかんなかった」
海里「お久しぶりです」
アキ「始めまして」
海里「俊君変わったねぇ、目付きの悪さは変わんないけどさぁ・・」
とも「この人が初恋の人なんですか?」
俊「ぜんぜん違う・・・おさなじみ、ある意味初恋の人登場の何倍も意外・・、いつかえったの?」
アキ「アメリカに飛び級留学だってさ、天才ちゃんなの」
とも(アキが私に耳打ちして言った、そう・・科学者のタイプだ、なんのタイプなのか思い出せずにいたけど)
海里「自殺について映画を撮りたいんでしょ、ウルって呼んでるんだっけ?それって何かあの古代都市と関係あるの?」
アキ「無い、音感だけでなんとなくそう呼んでるだけ、変えたいですか?」
海里「・・・コンプレックスとか?」
とも「葛藤?」
海里「日本語ではなんていうんだっけ・・複素数、やっぱウルのほうがいいや。でも私いっつもcomplex planeって死の世界なんだと思うんだよね、だからこぉ・・multipleで生き返るのかなって思う、そうやって死の世界と生の世界も、数学的には扱えるのかもね・・頭おかしくなったって思ってる?でも私純粋数学者じゃないからさ、考えちゃうよね、gaussian planeが結局何を意味してるのかってさ・・」
俊「いや、前からそんな感じだったよ。もしかしてもうドクター海里なの?」
海里「もうすぐ、論文で賞をもらったのだ、10万ドルももらったし、でももう研究生活はやだよ、マルクスがいうように、私も机上の空論だけで、本当に社会を良くするのには何の貢献もしないのはイヤダもん i'm just fed up, that's my wordってわけ。どこでもそうだけど、まぁすぐオカネになる研究以外やらせてくれないよね、ほんともう学問業界にはほとほとうんざり」
俊「へぇ、それでこれからは?就職でもするの?」
アキ「その話はちょっとそこらへんに座ってやろ、実は私たちは打ち合わせはすんでるんだ、やらせってわけ」
四人はタイヤが半分うまったアトラクションみたいなものに座った。そこは大きなクスノキで日陰になっていて、この世とは思えないほど平和そうに見えた。



アキ「OK、演劇パートスタート」
海里「・・・ねぇ人類で最初に宇宙に行ったのは誰かしっておる?」
俊「えっと、ユーリ・・ノルシュテインじゃなくて・・うわっど忘れした」
とも「マーガリンみたいなのじゃなかったでした?」
俊「ガガーリン!」
海里「じゃあ最初に月に降り立ったのは?」
俊「えっと・・なんとか船長、アポロ13ってのは覚えてるんだけどな」
海里「ぜんぜんちゃうよ~もぉ、私の話の腰折られすぎ、アポロ11、アームストロング船長でしょ!それを知ってるっていう前提でオチがあるのに」
とも「(携帯で調べる)アポロ11号、アームストロング船長、そしてエドウィン・オルドリンだよね、もちろん知ってます」
アキ「thaks to wikipedia はい、編集したから続きどうぞ」
海里「・・・映像好きってそういう感じ?」
アキ「映像ってのは一番現実に近いから一番嘘をつかないといけないメディアです
っていうか私の乗り物の歴史は第二次大戦のメッサーシュミットMeで終わってるんだよね音速機はださいっつーか・・・デザインが・・原爆あるのに戦闘機必要無いからね、必要が無いと美しさを失うんだよね。日本刀だってやっぱ日本刀が一番の武器だった鎌倉時代には嘘みたいなすごいのがザクザク出てくるものだから。初めて大西洋横断とかだったらすぐに出てくるんだけど・・」
とも「リンドバーグ、ライト兄弟」
アキ「厳密にはリンドバーグは単独飛行で初めてだっただけだけど・・・そういう意味では映画もまた、必要ではなくなってる死につつ有る芸術なんだと思うよ。能や歌舞伎みたいな、伝統芸能みたいなものとして残りはするだろうけど黒澤がいたころみたいな映画に対する切実さは無いもの。ゲームのほうが楽しいもん自分で参加できる映画だから。映画は廃れて、もっと直接的に感覚的なゲームが娯楽産業を席捲するでしょうよ、たとえば恐ろしくリアルなセックスゲームみたいなものにねもっというなら私達が価値観のほぼすべてを与えている現実世界そのものがゲームに取って変えられてしまうかもしれない、ようするにどっちに価値を置くかという選択の問題ですから」
海里「・・・ポスターにはこう書いてある、三万人の人々、どうせ自殺するなら、映画として残そう、死は価値である」
アキ「ja」
海里「私もそう思う、平凡な長生きな人生、シロアリの塚を築くよりも人は・・・人はどこかに行かなければいけないものだもの、ここではない。どこかに」
海里は空を指さす
アキ「アフラ・マズダが私を呼んでいるとかいわないでね、そういうオカルト映画だけは避けたい」
海里「初めて火星に降り立った人類はアジアの美少女でした、男でも白人でも、大人ですらない少女・・・」
アキ「これは象徴的な事件である、それは白人主導であった産業革命以来の文明の結節点であるし、フェミニズム運動のある到着点でもある、もちろん人類の宇宙時代の重要な一歩であるエトセトラ、そしてそれは最も重要な事であるが、経済混乱と戦争の危機と環境の悪化にあえぐ人類にとっての希望であった」
海里「少女の名はMinato which means seaside town、人類の湊を作った子供」
とも「そして少女は二度と帰って来なかった」
海里「そうだね、他の星で死んだ初めての地球人にもなるのか・・」
海里とアキは立ち上がる・・
とも「・・・えっまじの話じゃなかろうーもんさね、そんなの不可能だよ」
海里「だから意味がある」 アキ「だから面白い」


 アキ「演出過剰だね、しかも一般向けにわかりやすくしようとして変な感じ。くさい、全カットだな」
海里「えぇっあんなセリフ覚えさせておいて?」
アキ「仕方ないじゃないか」
俊「仲いいな、いつからそんなに?」
アキ「同じ名前だしね、たぶん遠い一族だし」







                            8 dissolve

 アキ(ともかく私達は、火星を目指す事になった。私は俊の過去をちょっと調べてる間に(卒業アルバムなどを貸してもらった)海里について知った。というかたまたま読んだ科学雑誌(science review)に彼女が載っていて、俊と同じ学校だったとわかったのだ。電話してみるとすごく気があった、というか・・私は自分よりも一瞬で優れているとわかるような人間にはほとんど会ったことが無かったから新鮮だった、学校でも自分より勉強が出来る人間はほぼいなかったし・・・ルックスにしたって、性格は私はかなりずれてるし、身持ちも悪いけど。ともかく海里は・・オイラーの定理を自分で見つけられるタイプの人間だった。科学者だって、あぁこのくらいなら私でも時間をかければ理解できるし、出来るようになるだろうなぁというのはわかる、というあ文体を見ればその人のキレの良さはすぐわかるくらいには本を読んできている、別にキレる人=良い人、もしくは好きな人ではないけど・・・・海里は私が逆立ちしたってかなわないヒトだ、論文を検索してチラ見してすぐわかった。しかもなんだろう、顔立ちのデザインとかではなくイノセンスがある。たぶんオナニーすらしないんだろう・・まさしくピエタみたいに・・・。恋をするってこんな感じなのかもしれない、私が男だったらこんな子を好きになるんだろうな。会って話をすると後半は全然的外れだった、かなり下世話な下ネタも話すし、ざっくりした正確で、性格的にはあまりイノセンスでもない。
 
 そして海里はゾルゲリニアだった。それも火星で・・・

 海里「・・火星に行くための技術的障害はほとんどなんにもない、ホーマン軌道計算だって、ロケット技術だって、何一つ新しい発明は必要無い。じゃあなんでやらないかっていうと予算が無いから、あと安全が保証できないから、もっと言えば行く意味が無いから。私は火星に最初に立ちたい、色んな理由があるけど・・突き詰めていけばただそれだけなの、火星に直撃してそこで死んでもいい、むしろ死にたい。安全性を無視してもいいし、帰りのペイロードも考えなくていいとすると相当の低予算で行けるはずなんだ、ほとんどの予算をロケットに詰め込むから・・・それに、まぁ・・・。ともかく10万ドルで火星に行く。コロンブスがボロ船で大西洋を横断したみたいに・・・ねっソルを主題にした映画ならこんな魅力的な主題は無いんじゃないかな?」
アキ「私もうすうすはそう思ってたんだ・・、ウル(適当にコトバを散らしてる、いつか抜群にしっくりするコトバを探す方法)をやる方法で何が一番かなって、ただビルから飛び降りるとかじゃなくて、ウルをすることによって何が出来るのかなってさ。やっぱ宇宙に行くか、革命かくらいしか思い浮かばないんだよね。・・・でもそれってただのコトバだよ、人間の・・・人間性はコトバにならないところにあってさ・・何が意味があって、何が無いか・・・」

 私たちの最初の話し合いは海里の家で実施された、海里の親も教師の学問一家で、おじいさんかなんかにはかなり名のある戦争犯罪者もいたということで・・つまるところ彼らは帝国日本の生き残りというわけだ。没落?貴族。郊外に平屋の広い庭を持ったお屋敷、まるで京都の離れにでもきたような感じ。もしくは三島由紀夫的世界観に迷い込んだ感じ。お手伝いさんなる化石でしか見たことのない生物もいらして、私の嫌いなアールグレイタイプの紅茶を出してくれた。しかし海里はまさにプラグマティックなアメリカの科学者だった。でも悪い方のじゃなくてファインマンタイプだったので安心。
海里「・・人間性?今時の若い子からそんなフレーズが出ると・・ハリウッド映画の吹き替えを見てるみたい」
アキ「そうだね、私は肉体を持った人間よりは、死んだ人間と会話してるから、死んだ人間のほうが魅力的なんだよね、ネクロフィリアなの。ともかく・・私はソルが悪いのいいのどうのこうの言いたくないし、人間の生き方についても主張したくないんだよね、私自身が感じてみたい、それが・・・どういう気分なのかってさ、わかった、行こう、火星に、片道切符で・・・、最近冒険ってコトバを聞かなくなった気がするんだよね、それは漫画だけの話でさ・・・その代わりに年金ってコトバを聞くようになった。ヒトは長く生きねばならないいって言ったのは一体誰なんだろう、古代の王も、long life to the KINGって言われたみたいだし、王が誕生する前にもそんな価値観があったのかどうか・・・最近あまりにも読むものないからサムエル記を読んだよ」
海里「王・・?王・・・王ねぇ?紅茶嫌い?」
アキ「カフェイン中毒だから」
海里「・・・私のことをマテリアリストのつめた~いココロの持ち主だと思ってない?」
アキ「彼女はマテリアリストだから、海里もまた預言者なのか・・・古代の人間の冗談なんだけど、さっぱり意味がわからないよね」
海里「私は・・・」
海里はくるくるとシルバースプーンで新しく運ばれてきた私のコーヒーを作ってくれた。普通のインスタントコーヒーだ・・よぉく見るとこの家はがらんとしていてなんにもない。鈴木清順の映画のセットみたいになんにもない。私は海里をからかうのがだんだん楽しくなってきている。なんでかわかんないけどいじわるしたくないるタイプみたいだ。とんでもないMなのかもしれん・・・彼女は。
アキ「・・・火星に立ってみたいねぇ、おぉ自由の旗を目指せ・・・火星に旗でもたてようか?科学者ってやつは」
海里「・・・ho ho ho,どうしても私に本当の事を言わせたいみたいだね。・・・なんでなの?日本の女の子ってこんな頭良かったっけ?帰国したばっかしだからわかんないけど、何かあったのこの国?それとも、しょっぱなから私はいきなり特異点にぶちあたったの?」
アキ「たぶん後者かな、わたしはブラックホールじゃないけど」
海里「はぁぁぁぁ・・・、私は人間ってのが死ぬほど嫌い、いやもう嫌いじゃないのかも、ただもう、いや、我慢出来ない。ただ単純に我慢出来ないの、別に火星になんて行きたくもなんともないよ、火星にたどり着いて人類の重要な進歩?科学的進歩?うそばっかりだよ、そんなの、ただ単にもうここにいたくないの、地球にはもはや一立法センチも人間の生きられる場所なんかない。すべて汚されて、すべて偽物でうんざりするようなものばっかし、私は新しいロケットエンジンの開発だとかなんとかぬかしてホントは人類を全滅させたかったのかもしんない・・ここだけの話、核ロケットなんて、どうせ宇宙開発になんか使われるはずないってわかってたよ、たとえ宇宙開発をしたとして、何も変わらないよ、人間は・・・」
アキ「そうかな、たぶん私達を覆っているこの無力感や閉塞感や憂鬱の原因は、たぶんおもいっきり戦争出来ないってことが大きな原因だと思うんだけど。人類は死にたがっている気がする、親がアルツハイマーで気が狂ってうんちをもらしてるのを見ながら、あぁ死ぬってこんな無様なのかって、生きるってまったく無意味なんだって私たちはいやってほどみせつけられてるもん。もぉバァーンって一気に死にたくなってるんだよ、でもそれには何か理由が欲しい、とっても大きな理由が。信念、理想、自己同一、そんなものがさ。核爆弾で自滅なんていやだよ、火星軍との宇宙戦争?ほぉほぉ興味をそそる話じゃないか、さぁ地球、我が星、我が故郷の為に・・・」
海里「趣味悪っ・・・」
アキ「戦争狂だもん、作家なんてみんな、戦争を反対してるヤツが一番戦争の必要性を感じてるもの。第一、戦争以外に楽しい事なんてなんにもないじゃん、戦争を扱わない娯楽なんてあった?生きることは冷静に考えればもぉ我慢がならないくらい退屈でいやらしいものだってすぐにわかる、そうとわかれば楽しむしかない、命を弄ぶしか無いじゃんか、どんなコトバで誤魔化したって。海里だってそうでしょ?」
海里「・・・わかんない、私はアキみたいには・・自分をわかってないよ。わかりたくもないし・・でももう理屈じゃなくて本当に、この星にいるのはたまらなく嫌なの、ここではないどこかなんだよ、この星で死にたくない。私は一人になりたい・・・ヒトは孤独を求める、でもそれは偽物の孤独、他人がいることの孤独、他の人間がいるのに繋がらない孤独、そうじゃなくて、本当にたった一人、この広い宇宙にたった一人・・そこにいったらどういう気持ちなんだろう?」
アキ「・・・私が思うのは、人が何かがやりたいっていうでしょ、夢だとか目標だとか、それが、アイドルになって売れたいとか、ミュージシャンとして金持ちになりたいとか。でもいわゆるスターっていうものが誕生するにはマスメディアが誕生しなきゃいけないでしょ、その最初は雑誌に小説を書いた小説家だった、トルストイは芸能人でスターだったの、世界的な・・・だから、そういう夢ってのはロールモデルがあって、そういうインフラが整ってから出てこないものじゃん、そういう夢って結局、嘘だと思うんだよね、本質的じゃないんだもん、それ以前の時代には存在しなかったものが、一人の人間として命をかけるようなものになりうるはずがないから。本当に人間が求めるものって・・・例えば、誰かとわかりあいたいとか・・・よそう・・、行けばわかるよ、私だって私をわかってるわけじゃない、やってみなきゃなんにもわかりはしないね・・」
アキ(私は立ち上がって縁側のほうに出た、そう・・私はお茶が飲みたかったのに・・この家が恐ろしく涼しいということに外の熱気を感じて初めて気がついた。この家は死んでる、ずっと前に。
 私が話を切ったのは実はほかにも理由があった、私のココロの奥底で何か黒いシミがじわっと広がったのがわかった。私は海里が好きになってる、そして確実に彼女を失う事になる・・・この作品を作るように私を動かした本当の理由はどうやらこの黒いシミのせいらしい、海里はソファにカラダを丸くして座り込んでしまった、いつもそうするんだろう、その姿勢が楽みたいだ、膝を抱え込むのが。あんなにやせっぽちであんなに小さい、私は個人的な感傷の為に、ただ大切な人を失うって事を経験したいだけの為に、彼女を終わりなき夜へと送り出す)
海里「この星は・・もうシロアリの塚だよ」
アキ(私が返そうとしようとしたコトバはこうだ・・・よくファンタジーとかで、それでも生きなければならない、とか、そう、人間は生きてるだけで価値があるとか、人は人を求めるとか・・・そういうコトバに感動するのは、私達がそれをまったくの幻想だとわかっているからじゃないかな、この人は幻想を語ってくれる人だ、と思って私たちはすりよっているだけなんじゃないか?私はそう思ってきた、私は天邪鬼だからそんなのいやだった、現実を見据えて、ハッキリと人生はクソ以下だって宣言してやる、・・でもこの星はシロアリの塚だと断罪した海里の声が、どういうわけか私を思春期のおばかちゃんみたいにメソメソさせた、そしてそれが私が屋上で聞いた声だと後になって思い出した)