2013年1月17日木曜日

OP9 manuscript 9,10

ニュースいじり
・http://www.independent.co.uk/news/world/africa/algerian-troops-surround-islamist-militant-kidnappers-amid-reports-of-hostages-escaping-8455045.html
 アルジェリアのガスプラントでイスラム系のグループが人質作戦を展開中ということで、日本人でも日揮の社員がつかまってるらしいです。
 日揮!まぁきなくさい会社が出てきたもんですね、表に出ない黒い会社です、くろすぎるだろwこれぞ資本主義のフィクサーってな系の会社ですね。向こうの言い分が納得出来るでしょ、だってなんで日本人にかぎらず外人がアフリカのガスを吸ってやがんだって、すごい普通の怒りだもの。日本のガス田を他の国が同じように吸ってたら許さないものね、まさにそれがいまの15年戦争リターンズの愁眉の点ってもので、中国とは会話に応じないんですって、どこかの国の首相が言ってました。交戦権もないのに交渉を投げたら何をするんでしょうね。教えてほしいもんです。


MNSは今回から第二章。 内容はほぼ覚えてないw

  
                                chapter2
                            旅の支度

                        9 rien
 海里「30%ほどは実はもう完成してるんだ、まずエンジンの設計、これは私の専門だから完全にOK、宇宙船については構造的な設計は終わってるけど、内部はまだ終わってないところがある。ホーマン軌道計算、待機軌道計算、着陸、データ理論的なシミュレーションは99%大丈夫。だってそれはもうNASAで何回も成功してるからね、そのデータをかっぱらって微調整するだけで大丈夫だった。ここまでは理論編ね、実践編、つまり工学的な実際のロケットや宇宙船はほぼ何一つ完成してません・・何か質問など?」
俊「核ロケットって・・・大丈夫なの?」
海里「何一つ大丈夫ではない、けど勘違いしてない?核分裂じゃなくて、核融合だよ、重水素による」
俊「核融合?」
海里「Nuclear fusion」
俊「いつそんな技術が完成してたの?」
海里「水爆は核融合だよ、私(たち)がもっとそれを・・実用化させることに成功した、クリーンな、ね?・・・ちなみに日本は火薬を製造することすら禁じられてる、花火の火薬を集めて手榴弾をつくったら犯罪です、民間の核融合なんて許可が出るわけない。というか・・・日本人ごときが宇宙開発することに世界中が反発するでしょうね、ちぇっ敗戦国のくせにいきがりやがってってさ。国際機関なんて未だにそんな感じだよ、水爆持っていいのは中国、アメリカ、フランス、イギリス、ソ連だけなんだってさ、もちろん核融合技術も」
アキ(海里の目の色の変化が私は立っている彼女の隣に座っていて直接その目を見れないのに何かオーラのようなもので感じられた・・そうか・・海里は人類の滅亡に有効な技術を作っちゃったんだな、海里の内部ってのは私が考えるよりももっともっと深刻なものなのかもしれない。アインシュタインがいなけりゃ原爆も作られなかったって信じてるバカもいることだし・・・とくにこの国に)
とも「うえぇ、宇宙船って自分のおしっこ飲むんだ・・私パスだな」
俊「おれもパス」
海里「どうせ一人乗りで私だけが行くのだから大丈夫、私だってさすがに他の人のも混ざってたらさすがにひるむけど・・うにゃ!どうせ水なんて原子のあつまりなんだから・・」
俊「じゃあうんこもどうせ原子の集まりだからって食べれるの?」
海里「ばか・・・私は宇宙にスカトロプレイに行くんじゃないよ、食べ物は最小限だから大丈夫、水は重いからやっかいなんだよ、火星までは約280日、一日4リットルで1トンだからさ・・・食べ物は凝縮食料でなんとか・・そりゃ燃料率は理想値よりもやや乖離するけど、ホーマン軌道にそって一番省エネで行く、それはこれからの行く貧乏宇宙探検者の参考にもなるだろうしさ。結局時代を動かすのは専門家じゃなくて、部外者なんだよ、ロケット理論の発明者であるツィオルフスキーは貧しくて耳の悪い中学教師だったというし、ライト兄弟はしがない自転車屋、アインシュタインは特許局の事務員、ひきこもり・・・」
アキ「そしてユーラーは盲目である・・でも将来的にはやっぱりうんちをリサイクルするハメになるんじゃない?やりなよ、名前が残るかもよ、poo recycle machine Kairi s-1とか・・」
海里「やだよっ!ただでさえろくな形で名前が残りそうにないのに」
とも「私もアキに賛成」
海里「もぉな~にかんがえてんだよ!真面目にやってよ、第一誰がそんな技術研究するのさ、この飽食の時代に」
とも(海里はほんとに尊敬すべき天才ちゃんなのになんでこんなにいじめたくなるんだろぉ・・・開発されたらものすごい淫乱になるんじゃないかな)
俊「でもロケットはいいとして発射台は?」
海里「頭が痛いね・・・まぁなんとかむこうの友達とかも協力してくれるはずだから・・・だから、タテマエ上、自作の火星プローブとかにして、直前で切り替えて、有人飛行として飛ばすみたいな事しないと・・、もしどこも許可が取れなかったら、どっかヤクザな国家に核融合技術を提供するのと引換に・・」
アキ「重水素などどこに売ってるの?」
海里「ロケットのことは任せてくださってOK、なんとかなる、これはクリーンな核融合だからさ、イランや北朝鮮と裏で契約しなくても材料は運び込めるわけ。あっそれと核融合エンジンはブラックボックスにします、私以外は知らないようにする、もう漏れてしまってるけどね」
とも「プロジェクト名は?」
アキ「・・こういうのはぱっと思いつくのを待ったほうがいいんだよ、それまでは・・・終わりなき夜の旅でどうですか?」
俊「セリーヌ?」
とも「いろんな~し」
俊「予算は海里の1000万・・・場所は?」
海里「うちの別荘、といっても千葉だけど、そこに別荘というか、廃工場がある。うちの・・・B級戦犯が戦闘機を作ってた工場」
アキ「空襲されなかったの?」
海里「表面上は自転車工場だもん、地下ではジェットエンジンの研究やってたらしいけど、でも期待しちゃだめだよ。今ではほぼ酸化鉄の塊みたいなものだから」
とも「じゃあおじいちゃんの意思を継いでってことですか?」
海里「鬼畜米兵を殺すのが目的ではないからなぁ・・それに私自身アメリカに住んでた人生のほうが長いし・・言うほど悪い国じゃないよ、というか・・あれを一つの国っていうのは難しいね、ほんとうにアメリカ連邦なんだよ。あれが一つにまとまってるのがまったく不思議、南北戦争でバーラバラになるのが自然だったのに・・・ヤンキー(北軍)に全部染められたのかな?まぁ良い国では絶対無いけどね、良い国なんて無いもん、人間自体が・・まぁいいや」
とも「私もオカネ出すよ」
俊「遺産って・・・どれほどなの?」
とも「たぶん・・色んなものに化けてるから計算しづらいけど、現生にしたら一億五千くらい」
アキ「ミリオネーア i'm tired of being millionaire(→EMINEM)」
海里「せっかくだけどお断りします・・・、何か民間のバカな冒険野郎が宇宙を目指すっていう・・なんだろう、イメージが欲しいんだよね。NASAのバカみたいな試験なんか受けなくても宇宙を目指せるんだって。誰でも出来るんだって・・・、もぉ誰かに雇われて、予算を削られるのだけにビクビクしながら何かするのなんて絶対にいやだ、もううんざりしたでしょ?国民の血税をわけのわからん実験に使うなっていう・・民衆にもうんざり、そんなの生きてるって言えないもん・・いつから何でもかんでも許可や権利がいるようになってしまったんだ」
アキ「そうだね、戦争が無いと文句を言うことしか出来ないからね、民衆ってやつはさ」
俊「からいね」
アキ「だって戦争になるとどこから出てきたのか、恐ろしい速度で技術進歩が進むじゃん、出せるんじゃねぇかよ予算!って気がしない?こんな国滅びてもいいから人類の為に何かしなよって思う・・」
とも「なんか今日機嫌悪いですか?」
アキ「いや・・、女の子の日じゃないよ」
アキ(本当だ、なんで私はこんなイライラしてるんだろう、海里をここまで追い込んだこの社会に腹が立ってるのかもしんない・・私が腹を立てるなんて、まだまだ作家として修行が足んないな、自分ってのが意識できないほど何かに入りこみたい・・デカルト的存在論を真っ向から否定するくらいに・・)
とも「素朴な疑問なんですけど、海里さん、誰かに狙われてるんじゃないですかそんな、すごい技術を脳みそに納めてたら、よく日本に帰ってこれましたね」
海里「あぁ・・そうだって事を直接は発表してないからね、私が言った事を、本当に理解して、つまりそれって・・あれ?そういう事になるんじゃないか?って考えが及ぶほどの人間は、そぉいないし、暴力で何かを解決しようって思う人間は、大抵ニュートン力学すらわかってないからね。真空でロケットが進む意味がわかってないでしょ?というか真空の意味さえわかってない、政治家はnatureの論文読まないからね、アイテル(ITER)所属だったりしたら、もしかしたら追われているかもしれないけど、私はまったくそれとは異なるところでやっていたから・・・私は一応分子生物学者で専門は脳みそだよ、核融合技術はたまたま副産物として出てきたというだけで」
とも「なるほど・・実は私もその真空の意味すらわかってない人の一味かもしれません・・事実さっきから海里さんの言ってる事は20%くらいしかわかんないし・・他の人はわかってるんですか?」
俊「70%」
アキ「85%、NFについてはほぼわかんない」
海里「全然大丈夫だって、慣性の法則がわかんなくても自転車には乗れるし、航空力学がわかんなくても飛行機には乗れるもの、量子力学がわかんなくたって核融合ロケットを作ることはできる、厳密に言えば誰一人、相対性理論や量子力学についてわかってはないんだもん・・・・あっそか!発射台問題は解決したかも、待って」
アキ(海里は何か思いついたらしく、バチバチ電脳を打ち始めた、もはや何も聞こえてない感じ、噂では聞いてたけど天才さんってやっぱこういう感じなのか、他の二人も同じ事を考えただろう、変な笑い顔で私たちは見つめ合った、この人アレなんですよね・・)
海里「・・そうだ、よしよし。古い慣習に縛られててはいけないよね、ごめん、これ全部書きなおす、水平発射ロケットにする。NFE(核融合エンジン)は質量が少ないから、大きなロケットにする必要が無いんだ、クラスターでもレイヤーでもなくていいんだね、そしたら普通の滑走路から飛べるじゃん♪」
アキ「あっ、私にもわかったよ、だから普通の音速戦闘機みたいなフォルムにするってわけでしょ」
海里「戦闘機というよりは爆撃機だけどね、そうそう、その通り。飛行機の形が変わったところで、物理シミュレーションのパラメータが変わるだけだから、設計だけやり直すね」
とも「なるべくかっこいいのがいいね」
アキ「ちょっと話は変わるけど俊もともちゃんも、夏休みはいいとして、学生生活もあるだろうし・・・人生ってやつもあるだろうから、あまり無理はしないでいいよ。私と海里は行く所まで行ってしまうからさ・・」
俊「受験もしないんだ?」
アキ「たぶん、別に高校卒業してすぐに大学はいらなきゃいけないなんてルールは無いわけだしさ、高校はほぼ後はテストだけ出れば単位とれてるし卒業出来る。海里はまぁ成功しようが失敗しようがあの世行きですし」
海里「ははは、でもどうせ遅かれ早かれみんな同じじゃないですか。死が永遠の別れであるなら、観測者が永久に存在する必要があるんだよ、実際にはそうではない、観測者も死に向かって違う速度で進んでるだけ」
アキ(これが相対性理論的世界観なのか!)
とも「乗りかかった船ですから私も最後までやります、高校はなるべく卒業しときたいけど・・親族関係が無いからなんとでもなります、そう経済的にもなんとでもなります」
とも(人生持て余してるからなぁ)
俊「おれもアキと同じ、テストだけ出れば卒業可能だから・・・大学はど~すっかなぁ・・」
とも「っていうか何単位で高校卒業できるかなんてちゃんと計算してるんですね、私オリエンテーションの時なんか完全にスイッチオフだったから・・」
アキ「実は三年の一学期までの単位で卒業出来るんだなこれが、特にうちの学校は進学校だから最終学年は選択単位ばっかりになるし」
とも「えぇいいなぁ・・うちはどうだかなぁ・・」
アキ「俊の家ってどんな感じなの?財政的に」
俊「中の上くらい・・BMW(ヴェーエムヴェー)だし、それほど厳しくはない、ただ親父がな・・」
アキ「頑固なの?」
俊「いや・・なんていうか・・殺し屋みたいな顔してるから、それにイタいヤツだから・・知らせないほうがいい」
とも「お仕事は?」
俊「船乗りみたいなもの」
海里「殺し屋みたいな顔した船乗りか、確かに私達とは肌が合いそうにないね、マッチョ嫌いだもん、核爆弾の時代にマッチョなんてマシンガンにboxer rebellionじゃん」
とも「ボクサーレベリオンって何?映画?」
アキ「義和団事件のことでしょ」
とも「ボクサーレベリオンって言うんだ!ダサッ!そりゃ勝てんわ・・」
アキ(時に私たちのファーストミーティングは海里の家で開かれた。また学習せずにあのレッドブックは私にアールグレイを出したのだけど俊だけにはかなり濃い目のコーヒーを出した。そういうルールなのか・・、結局また海里がインスタントコーヒーを作ってくれた。ともはアールグレイでもなんでも飲めるらしい、たぶん味音痴なんだ。こういう、顔立ちでくちびるがぽってりしてるタイプはたいがいそうだ、そしてやたら辛いものが好きだったりするの・・そして私みたいなのはたいがい偏食なんだ。そう、身長が高い人ってだいたい偏食なんだ。バランスよく食べればよく育つってのは100%嘘だと思う。俊は苦いコーヒーは胃が痛くなるから薄くしてもらっていた。ジュゴンはやたら若い男の子には優しい、なるほど私は嫌われていたのか、このトキに。確かに私は服装も雰囲気も内面も、淑女好みでは無かった。それでも私はこの家がすっかり気に入ってしまった、この古材を使った独特の安心感、黒っぽい材木、たぶん・・マツ?が放つ香り、そして海里の家独特の匂い、死の世界のボードレール的腐臭。海里がかけた全然マッチしないGorrilazの音楽。いい。)
海里「あぁ・・あと向こうから私の友達が一人来るかもしれない、でも・・たぶん・・・うん、ちょっと・・まぁ気にしないで」
俊「幽霊でも呼び寄せるのか?」
海里「ちゃうよ、でもとびっきり優秀だから」
アキ「海里とはどういう関係なの?」
海里「black box」
俊(昔からこいつは秘密主義者だったな、なんでもないことでもやたらと隠したがる・・ソ連技術者みたいな、特に失敗を)
とも「またつまんない質問していいですか、なんでそんな天才さんなのにメガネなんですか・・?目の手術って向こうではすごく進んでるっていうけど?」
海里「メガネが好きなんだよね、ほら・・これってサイボーグっぽくない?人間を拡張させる道具、だからサイボーグの歴史でメガネは重要な気がするんだよね。もちろん服ってのが一番はしりだけど」
とも「ほぉ~そうなんですか」
とも(やっぱり天才ちゃんは・・・)
アキ「ともかく説明はこれでおしまい、明日からはその戦犯の秘密工場にお泊まり会です」
海里「まず掃除だろうね、あと電気とか配線とか、ネットとか・・」
アキ「露骨に嫌な顔するな、そこの男手、明日はぜひとも必要なんだから」
俊「急に頭が痛くなるような予感が・・」
とも「どうやっていくんですか?電車?」
海里「私の車」
とも「あぁ免許持ってるんですか、さすがモータリゼーションの国」
アキ「っちゅうわけです、着替えなどもね、夜の12時ここ集合」
俊「遅っ・・はやっ?」
海里「深夜は道が空いてるからね」
とも(私は海里さんの目にちらっと赤い閃光を見た、あれは・・・スピードキチガイの目だ!どうせ地球の公転速度は秒速約30キロだとかなんとかごたくを並べるに違いないわ、いやだわ!)

 





                         10    marousi
 巨大な影、巨大な構築、巨大な政府
 巨大な門、巨大な壁・・・
 
 アキ「帰ってこ~い」
とも「あぁ・・マロウシがジブラルタル海峡を横切るほどの影を我らの海へと投げかけん・・」
俊「ユイスマンスからの引用で、その代表作さかしまのように、めまいがするっていう凝った文学的非難か、さすがに解説が必要」
俊(海里が夜の大都会を限界ドリフトで攻めまくったのでともは正気を失って予言を始めるはめになった)
アキ「違うよ、ヘンリー・ミラーでしょ?」
海里「えっ?ごめん聞いてなかった、考え事で・・」
アキ「なかなか立派な我らの生産現場ですこと」
アキ(工場は巨大な酸化鉄のジャンクマスとして存在していて、午前三時のアスファルトに長い影を指していた、周りは新しい道路の開発か何かで土地の買い占めが行われており、しかも財政悪化によってその計画がおじゃんになったらしく、茫漠とした荒野が広がっていた。いつ再開されるかもわからない工事の予告の看板でさえ風に揺られてキップル(→電気羊)と化していた。一キロ先の自動販売機の灯りがみえるほどだ。その自動販売機も五種類しか飲み物が売っていない、その閉める空間と、効果がまったく見合ってない代物だ。日本は狭いと誰が言ったのだろう?日本は無駄に広い、ただアリのようにケーキの周りにしかアリがいないだけだ、日本は美しいと誰がいったのだろう?この雑草とコンクリートとキップルの集まりは、せいぜいポンコツ解体屋の目にやさしいといった程度だ、どうせならサハラ砂漠のほうが潔いじゃんか)
とも「入ろう、鍵は必要ないみたいだし」
アキ(俊が昔南京錠であったらしい酸化鉄を蹴り飛ばしてドアを空けた、私は工場が支えを失って崩壊するんじゃないかと思ってちょっと後ずさりしたけど、意外にエントロピーの増大はまだまだ抑えられておった)
俊「おや!中は意外に」
アキ「綺麗?」
俊「おんぼろだ」
海里「文句はそのへんにしてそろそろ入ろうよ、やることはたくさんあるんだし、それに深夜に大きな音出しても叱られる恐れはなさそうだしさ」
アキ(海里が建築用のカンテラを出して中へと入っていった、お決まりの幽霊コントには付き合ってくれないらしい、サイエンティストめ・・・だが私たちは見たのだ、ともが亡くなる間際にうわ言のようにつぶやいていたコトバが、実はこの工場のある秘密を予告しているものだとは・・巨大な影は工場の事を指しているのではなく、マロウシは・・、マローシは!)
俊「ひどい匂い、ゾシマ氏でも死んでるんじゃないか・・」
海里「確かにひどい臭い、でも案外作りはしっかりしてるね(手を叩く)残響もよさそうだよ」
アキ「何の匂い?薬品とかそういう・・無機物の匂いじゃない気がするけど」
海里「たぬきでも死んでるんじゃない?ネズミか・・、窓開ければよくなるでしょ」
アキ(海里は手袋をはめて窓をガンガンあけて行った、雑だ。あぁこの子はゴキブリだって素手で触れるタイプだ、三畳紀からの生きる化石とかなんとかいって、三畳紀かどうかは適当だけど)
海里「ウラー、基本的な工具は揃ってるよ、これならバイクだって自動車だって作れるね」
アキ「ほんとだ!フライ版も万力もある♪、電鋸やドリルまであるじゃないか」
俊「女の子が喜ぶようなものには思えんが、そうか、カメラの改造が趣味だもんね」
アキ「そうだ、忘れてた。記念にとっとこう、幽霊さんも初めましての挨拶くれるかもしれないし」、
海里「それカメラだったんだ、弁当かと思ってた」
アキ「sx-70の改造だよ、ストーカー1、もしくはストーカー P(ola)、ビデオも取れるように記憶装置と回路をくっつけただけだけど、私が生まれた初めて持ったカメラなんだ、だから新しい事をはじめるときはこの子で撮ることにしてる」
海里「なにその、なんかオシャレ雑誌みたいなセリフ、きしょくわるい」
アキ(悪態をついてる海里の顔を撮った、笑顔が間に合ってないから変な顔になるだろう、表札のところに張っておこう)
海里「電気は今日の昼頃来るって言ってたから、それまでに掃除しないとね。さて・・・問題の地下室へは・・このコンプレッサーの下か・・俊ちゃん手伝って」
アキ(海里と俊はがっちがちに錆びついた大型コンプレッサーを動かすと地下への扉がうっすら現れた、カモフラージュが剥げている、潜水艦の蓋みたいな丸い扉だ。ハンドルはついてないけど)
アキ「ピラミッドの下って王の船が置いてあるんだよ、世界の終わりにその船で脱出するんだって」
アキ(海里が首とカンテラを突っ込んで地下を覗いている、私達のところには灯りがなくなり月光が射すのみ、闇に目が慣れてきて建物の概要が見えてきた、工場というよりは倉庫だ、たぶん創業してる頃はもっとたくさんものがあったんだろうけど、今は工具と下取りがきかなかったんだろう設備が残っているだけでガランとしている、たぶん戦後に何回かは改装されてるんだろう、外側から見るよりは中は補強してある、地震対策にトラス構造の鉄筋が張り巡らされているもの)
俊「何かめぼしいものあるの?集団自決した死体がゴロゴロしてるわけじゃないんだろ・・あぁ悲しき沖縄戦」
アキ「恥ずかしながら誰か生き残ってないのかい?」
海里「もっと良さそう、でも足元に気をつけないと、これ持ってて、照らしておいて、はしごが老朽化してる・・」
アキ(カンカンカンと海里が地下へと降りていった、バキンっ!)
俊「大丈夫?」
海里「はしごが一本折れた!なんとか大丈夫」
アキ(私たちは何をしてるんだっけ?地底旅行でもやってるんだったっけか?信頼出来るアイルランド人?(→ヴェルヌ 地底旅行)が必要だわ)
海里「カンテラ降ろして」
アキ(スルスルっと俊がカンテラを下ろす、うん、そうするとこっちは真っ暗になるってのを気にしてほしいな、ちょっと怖いぜ)
海里「WHOA! Incredible! 面白いものがあるよ!」
アキ(俊もすぐに降りて行ってしまった、レディファーストってものを知らんのかこの野蛮人め)
俊「わぁ」
アキ「何なの?」
(ゆっくりハシゴを降りると(高所嫌い)地下は上よりも古いにしろかなり出来が良かった。たぶん当時としては貴重な鉄を使ってある。暗闇にぼぉっと何か巨大な影が浮かんでいた)
アキ「わぁ・・すごい戦闘機の胴体だ、なんだろう?アウトバッフェの機体みたい」
海里「橘花だよ、あのヘッドの形からして、ロケットエンジンは間に合わなかったんだね・・」
俊「売ったら高く売れるんじゃない?」
アキ「売れないでしょ、博物館行きだよ」
海里「花がつくのは、特攻機の証なんだよ・・、桜花みたいにね。橘花は違うっていう人もいるけど真実は太平洋の海の底ですな・・・私は民族主義者でないし、こんな言い方があれば人間主義者でもないんだけど・・なんでか、特攻に行った人たちの事を思うと、センチメンタルな気持ちにさせられるよね・・どうにかしてもっと、良い世界を作ってあげたかったな、彼らが死んだ意味があるようなさ・・実際には彼らだって賞賛に値する様な人間ばかりじゃなかったんだろうけどね、戦争キチガイ、軍国主義者、ただ断れなかっただけの臆病者、無思想な人・・・そう、死んでしまった人間を愛するのは簡単な事だね」
アキ(海里は最初に会った時のあの眼をして機体をパンパンと優しく叩いていた、明らかに露光が足りてないけど私は写真を撮った。ほぼ真っ黒な写真になるのはわかりきってるけど、ほぼ真っ黒でも大切な写真っていうものがあるはずだ)
とも「ちょっと~みんな~どこいっちゃたんですか~!」
アキ「すっかり忘れてた」
ドタドタドシーン
とも「ギャアアアアア!!」

 アキ(ともの断末魔の原因は、ともが闇の中を手探りで歩いていると、冷蔵庫にぶつかり、冷蔵庫の中からXXXXとかXXXがXXXして、XXXXだったからでした。悪臭の原因はその冷蔵庫に何十年か放置されていたXXXXXがXXXでXXXXXXになっていたからだったそうな。ともかくともは闇の中でXXXXの大群に襲われて、人間失格状態に陥り、しばらく車の中で生死の境をさまよった。都合よく記憶喪失してその事は忘れたみたいだった。
 海里はどうにかあの橘花の機体を再利用できないかと言ってまた電脳でモデリングと設計をやり始めた、そうなるともう何も聞こえないらしいので、結局俊と私だけで掃除をやるハメになって、電気屋さんと水道屋さんとの事務的な話もすべて私が一人でやるはめになり(俊はこういう時はストーカーらしくさっぱり役に立たない)ネットもプロバイダ契約も奔走して、一日完全に潰れてしまった。ようやくともが復活して、川底に捨ててあるような自転車で近くのコンビニにご飯を買いに行ってくれた。クッタクタにつかれてカフェイン切れで意識朦朧として寝袋に丸まっているとともがインスタント食品を買いだめしたのにカセットコンロが無いということを大声で叫んで結局スニッカーズをみんなで割って食べた。深夜頃に地下からニュートンが現れて、ガチャガチャと工具の調子とか、機械が動くかなどを探り始めた。それで工程表でも考えているんだろう。
アキ「あのニュートンさん、深夜二時に徘徊するのはやめてくださらないかしら、子供たちが寝られませんの、パーティーをやるならちゃんとした会場を借りるといいわ」
海里「あっ起こしちゃった?」
俊「起こしちゃってないと思ってたら聴覚を疑うよ」
とも「私ずっと寝てたから逆に眠れない」
海里「工程表を作っておかないと落ち着かないんだもん・・・火星に行けるタイミングってのは二年に一回しか来ないんだよ、いや別にすげぇエンジンと予算があれば別だけど。時間がないんだ・・」
とも「ドクター海里は今日寝たんですか?」
海里「寝た、っていうか半分寝るってのを発明したから、イルカとかがやるみたいに脳の半分寝させるの。2つのことを同時に考えるってのも修行次第で出来るようになるよ。だから発想力が必要な時は左脳を重点的に使って、計算とか単純作業には右脳をあてて・・・」
アキ「ニュートンさん基準で人間を評価したら、人類はもう太陽系を征服してるよ」
アキ(ともは寝袋におさまるとべらべらしゃべりまくって朝までしゃべるタイプだと気づいた。もうすぐ初恋の人の話を明治の噺家もうんざりするような長尺ではじめるに違いない、私は眠たくてたまらないわりに奇妙なレトリックでしゃべっていた)
海里「・・時に・・事故が起こったらこの一帯が消し飛んでしまうんだけど、みなさん覚悟はできてる?その段階に来たら避難する?」
アキ「大丈夫、今も眠すぎて消し飛んでしまいたいもの」
俊「おれも」
とも「私も、痛くないですよね?」
海里「痛みを感じる瞬間は、まず0に近いと思う、サンクス、これで・・うん、間に合いいそう、じゃあゆっくり眠って下さい、地下は橘花をばらして上に運んだらこれから私以外は入らないでね、ブラックボックスだから、それに危ない」
とも「そんな秘密にしなくてもどうせわかりっこないと思いますけど」
海里「私が死んだ後に、追われるような事になってほしくないからさ、あれは一体なんだったのか?って騒がれるに決まってるもん」
俊「にゃーるほぞ、大失敗して東京を火の海にしてるかもしれんしな」
アキ「なぞの水爆が墜落、東京は燃えているか・・、面白そうだけどね、日本人でも東京が消し飛んで欲しいってのを望んでいる人はかなりいると思うけどな」
海里「そっちには落ちないよ、自転の方向が逆にならない限り。ハワイを地図から消してるかもしれないけど、じゃあおやすみなさい」

アキ(静かになった闇の中でボンヤリとした私の意識はうっすらと何かを感じていた、海里は一人になりたがってる、それは最初から彼女が言っていた事だ、本当の孤独を探しに行く。私はそれも海里のタテマエの嘘だと思ってたけどどうやらそれは真実を含んでたみたいだ・・海里は本当に私達とは違う世界観を持ってる、もちろんそれがすべてではないけど。この星にいるのは耐えがたい、此処じゃない何処かへ・・・人は楽園から追われた、悪魔は堕落した天使だという、本当は・・・楽園や天国は耐え難い場所だったから逃げ出したんじゃないだろうか・・・)