2015年7月15日水曜日

1590 ヘンリー六世 第二部 W・S

 ヘンリーシリーズ、は薔薇戦争四部作の3つです。なにを言ってるのだ、と思うかもしれませんけど。

 これは歴史物ですので、歴史を知らないヒトにはわからないというヤツですので、実際のこの演劇を見たことがあるヒトはイギリスに住んでいない限りは皆無に近いでしょうね。

 でも1590年に書かれたものなのでこの作品自体がすでに歴史でもあるわけです。イギリスはものすごい進んでるなぁと思いますよね1600年頃に、昔の歴史を題材にして演劇を作ろうというアイデアがフランスを除いて他の国家には無いですから。ただの歴史書、ならあるけど、これは歴史に加えてフィクションや創造も書き足したものです。ヘンリーシリーズはWSのデビュー作だと言われているのですが、その第一部はテクストが失われて、誰か他のヒトがキヲクを元に書いたものじゃないか、とかWSが見習い作家としてほかの俳優との共作だろうとか言われていて、第二部こそ、正真正銘のWSのデビュー作らしいと言われています。

 
 第二部は戦争につぐ戦争、謀略に次ぐ謀略、とまさしくWSらしい作品ですので人気が高いのもわかります。しかしその複雑に入り組んだプロット故に、知らないヒトにはまったくわからないというのも事実。でもイギリス人には当然わかるネタであるわけです、日本人が上杉と武田、って言われるだけでイメージが湧くように、他の国のどれだけのヒトが上杉謙信なんか知ってるかって話ですからね。

けどそういう歴史物特有のネタに加えて演劇の構造ってのをきちんと捉えないといけません。

 まず大きな枠として

イギリスとフランス、の100年戦争があるわけです。

 そしてイギリス内部にランカスター派
ヨーク派
 という内部分裂がある

 更に第二部ではジャック・ケイドという民衆の蜂起がある。

 ケイドの裏を引いてるのはヨークであり、ランカスター派にはフランスから嫁いできた王女マーガレットがいて、フランス寄りである。そこに海賊、やら魔女やら肉屋やら、精霊、呪術師、などが登場して演劇を盛り上げてくれるというわけ。でもこのころのW・Sは道化をまだ使ってはいないのですね。歴史物には道化がいないのか・・。


 ともかく当たり前だけどすげーよく出来てます、場面の切替も絵変わりしますよね、やれロンドン、フランス、精霊召喚の儀式、海峡、ケントの田舎、戦場、市街戦、と次々に場面が入れ替わって見てて飽きさせません。 
 そいで王侯貴族たちのセリフ回しも上手いのに加えて、ケイドや肉屋などの下賤の人々のセリフ回しも鮮やかです、WSはその最初期から完璧な天才なんですよね。これはほんとに実在の人物なの?って疑わしくなるのもわかる。うますぎるのですもん。どうもトリックがあるとしか思えない。


WSが歴史物を選んだのもわかるのです、新人の作家としてフリが効いてるものがいい、名前を知らない作家だとしても、ナポレオン戦記、みたいなマンガがあったら、Iは読もうと思いますもの。ナポレオンの戦記ってなんかわかりやすくて読めるものってのがなかったから。WSも、薔薇戦争を主題としたものなら、ちょっと見てみようよ、ってなるな、っていう頭が働いてるんだと思います。ただやっぱりそれも疑わしいですよね、まだ若い作家がそこまで考えられるか?って思う、大作家が裏で書いてるとか、劇団全員で架空の作家を作ってるって思うのが自然です。


 WSはその存在自体が芸術界最大の謎ですね。
 映画ってのは演劇に非常に近いので、まだセカイはずっとWSの影響下にあるって感じです。物語の作り方、っていうのが・・・

 それとやっぱしWSは面白い演劇になるように、って考えてると思いますね。自分の気持ちを自由に表現したろうってむちゃくちゃな作品を書いたりしない。
 そういう観客に迎合しないような作家を新進気鋭だとか若き天才、みたいにもてはやしてますけど、なんかそれにもうんざり来たって感じがIはするんです。といって数字さえとれりゃいいっていうおっぱいアニメもうんざりですけど。バランスが大事ですよね。