2015年7月25日土曜日

1968 大菩薩峠 岡本喜八

 岡本喜八というと技巧派の監督でして、いわゆるアーティストアーティストですね、一般人よりもアーティスト仲間で評判が高い。
 構図やライティング、そしてとくにカッティングのタイミングが絶妙だと思います、テンポ。EVAの庵野監督も岡本映画でカット割りを勉強したようなので、タイミング
を比べてみると面白いかもしれませんよ。レイアウトでは宮﨑駿、カッティングでは岡本喜八、カラーの出し方はバーグマン、ライティングは・・レンブラントw
かなぁ、そのあたりから学びたいものです。
 ただもうそんな時代じゃないですけどね、そんな映画の基礎技術なんかよりまずCGソフトの使い方を覚えるのが今の映画ですわね。


 
 ただ岡本喜八の映画自体の内容やストーリーテリングの技術、テーマってのは?って感じです。まぁエンタメ映画だから・・・と割り切るにはそれほど
エンタメでもないし。
 ん?って思うものが多い。散々演出しておいて何が言いたいのかわからんって気がIはする。ともかく技術の監督ですね。ほんとに映画の技術は相当高いです
セカイでも指折りじゃないですか?基本通りだし、そして上手い。タルコフスキーみたいな超スーパーカット、みたいなのは無しできちんと絵コンテ描いて
きちんとコマを合わせるって感じ。是非テレビドラマを撮ってるような何の技術もないくせにプライドだけは高いクソ業界人どもは見習ってほしいですね。
 ただちょっとあざとい気がするのも事実、岡本映画には正面からのカットがやたら多いのと、ズームアップ、そしてドリーアップっていうのですか。カメラ自体を
動かすアップがかなり多用されてます、ん~・・、むぅ。まぁ好き好きなんでしょうけど、ちょっとやり過ぎって気もする。


 キャストがすげー豪華。若大将って若いころと今の顔がまっっっったく違いますよね、仲代もそうですけど人間ここまで顔が変わるものですか?それに引き換え
田中邦衛はずっと同じ顔w イケさんは顔が崩れるのでしょうなぁ・・・。演技派といえば仲代、っていうくらい仲代は演技派ですが、声がいいですよね。
 声ってほんと大事、いくら顔がイケさんでも声が二枚目ってことはひじょーにある。仲代の一番の売りは声だと思う。三船はオーラで何もしなくてもすごい。
三船は演技しませんよねwそのまま。いっつも三船。
 若大将の若いころからのファンって人は一体どれだけいるんでしょうか、黒澤映画にも出てるし、かなりいい映画にも出てる・・・それにこの人公爵の家系
なんですってね。本当に貴族じゃねぇか。ほんとに大将になる家系の人なんですよね。その超金持ちのボンボンの、イノセントな感じが加山雄三の味なんですけど
それはそれでいいです。
 この映画1968年ですけどまだまだ日本映画はそれでもちゃんとしてますよね、一体どのへんでむちゃくちゃになってしまったでしょうか?70年台のどこか
なのは間違いないけど急激にレベルが下がりましたよね。テレビに客を取られたというけど、だからっていきなりカメラの使い方を忘れるわきゃあねぇと思うのですけど・・



 昔の映画会社ってのは映画を舞台とする劇団で、だいたい同じ俳優とスタッフですごいペースで映画を作りまくってたのですね。それが解体(倒産)されて、映画を作るのは
制作会社、制作会社がスタッフや俳優を事務所からかき集めて映画をつくる、あるいはテレビ局がドラマの延長で映画を作る。テレビドラマを作ってるのも制作会社
配給、のメジャーっていうのか、マスコミっていうのは、リスクを取らないでただ横流しするだけで手数料を取る会社なんですね。いつだってギャンブルは胴元だけが
得をするように出来てる。映画ってのはギャンブルですから、自分で映画なんて作らないで、誰かに作らせたものを、放送するだけで金をせしめるほうがいい。
 だから映画をつくるチーム、劇団みたいな映画を作るチームってのがいなくなった。お抱えの俳優、銀幕スターってやつも。俳優は事務所が抱えて、企画ごとに貸出。
けどチームプレーがそれで出来るのでしょうか、結果はNOってことですね。この映画は東宝チーム、が作ってるわけです、劇団東宝が、だから技術がしっかりしとる。
 これはIが勝手に考えたお話で事実とは異なってるかもしんないけどだいたいそういうことですわね。

 
 だから舞台じゃなくて、映画を作る劇団、ってのを作ればいいのかもしんないですね。配給はメジャーを通さないで小さな小屋を使う。まぁ儲からないこと山のごとしw
まぁそこまでして、映画、ってものが存在する必要があるのかどうかですわね。映画っていうメディアはもう死んだんだし、死んだままにしておけ、歌舞伎みたいなもので
廃れるままに伝統芸能として見ればいいのかもしんないです。


 三船はスター・ウォーズのオファーがあったときにこんなくだらねぇ映画に出れるか、と突っぱねたっていう伝説があります。それを三船は映画の新しい時代についていけなかったと考えるのか、三船は映画っていうものが何かをちゃんとわかってたと思うのか。Iはもちろん後者ですけどね、映画の時代は終わったのですよね、スター・ウォーズってのは映画を絶滅に追い込んだ犯人です。



 ちなみにこの映画予算が無くなったのか最後まで筋を語らずに途中でぶった切られてます。顛末を語るっていうのがめんどくさくなったのか。まぁ筋はベタベタの時代劇ですので丁寧に筋なんて語らなくてもいいだろうってことなんでしょうね。
 ///////
遊びというのはくだらないほど面白い・・・