2015年7月8日水曜日

1934 工場日記  シモーヌ・ヴェイユ

  相当の好きものでしか読みこなせない本です。
資本論並につまんないけど、恐ろしく大事なコトを語る本・・・

 Iは口先だけで語るやつが大嫌いです、それが良いことを言ってる場合でも・・。
こうやって本当に行動をする、本当に優れた人間がいる・・。本当に口先だけの人間というのは多いです
ヴェイユが行動することを選んだのはやっぱマルクスの影響なんだと思います。
マルクスは理論家だけでなく実際に行動しようとしました、失敗しましたけどね。
でもやっぱし何か行動を開始したってのは、ただ机の上だけで何もしないのとは劇的に異なるわけです。
どんなに正しいことを言ってても、何もしないなら0、0に何をかけても0ってわけで、失敗して0.1だったとしても
雲泥の違いですからね。
ヴェイユってのはなにか気になる人間ですよね、こういう英雄的な人生を歩んだ人は、たぶんこの時代にはちょこちょこ他にも
いるはずです、やっぱカミュが言ったように
「ヴェイユの選んだ道は、孤独な道だ」
 ってのが的をえてるのかもしんないです。

 ヴェイユはまぁ女としては超エリートとしてアグレガシオン、教授資格、を取得して、労働運動に参加してたのですけど・・・
ここがまず現代の感覚としては妙ですよね、社会のエリートでありながら左派的運動に参加するのって・・?ってことなんですけど
昔はそうだったのです、インテリでも左派的運動に参加するってのは普通でした、むしろそっちのほうが普通でさえあった・・・
本当に労働というものをしたことが無いってのに引け目を感じて、工場で働くことを始めるわけです。まぁこんなことをする人は皆無。
 その目的は、まず労働者の経験を持つこと、そして労働者をそのままの姿で愛するようになりたいと願ったのです。
 これがマルクスと違うとこです、マルクスは労働者の為に戦ったけれども、果たして労働者自体を本当に好きに成り得たのかってことです。
絆が大事だの、支えあいだのほざいていても、ホームレスが寝ててもガン無視して通りすぎて、休日はウィンドウショッピング、みたいな
ことが出来るのです、鈍感と不感と使い分けってわけで。
 マルクスだって、じゃあそのへんに失業者が飢えてくたばっていたら、自分の家に招いてちゃんと介抱したのかって話です、もちろんそんなこと
出来ませんわね、マルクスだってエンゲルスのヒモみたいな生活だったわけですし。
 ヴェイユはそれを真面目に考えるタイプの人だったのです、そういう人間は若死せざるを得ないし、孤独な道を歩む、これは必然です。

 英雄的な行動ってのは戦争で大活躍したり、自殺テロみたいなことをするよりも、工場でひどい肉体労働を上司から怒鳴り散らされて、仲間からも
冷たくされながらも、地道にこなしていく、生活こそが一番英雄的な行為なんですわね、だって誰もそんな生活したくないもの。内戦に参加して人民戦線として
闘う、のほうが、工場で10時間労働を1年、なんかより死ぬほど楽です。ほんとに生活ってのはサイアクの中でも最悪。戦争よりもひどい。
 そりゃ映画とかで考えりゃわかります、戦争映画なら俳優が、決死であってもどこかいきいきしてるけど、毎日工場で地味な作業を繰り返すなんて
地獄以外の何者でもないですわね。けどそこにほんとのリアリティがあるのですね、この本はそういう誰も見たくないようなリアリティが満載です。


 特に刺さったのは下の引用にも書き出しましたけれど、人はひどい抑圧の状態、奴隷状態におかれると、まず反抗するということができなくなる
何にでも隷従するようになってしまう、それが抑圧の最も恐ろしい効果なのだ、ってとこです。
 
 経験からしか出ないようなコトバです、コトバだけで何か知ったような気持ちになる人は、なんでこんなに痛めつけられてるのに誰も立ち上がって戦おうと
しないのか?って思うでしょうけど、まず抑圧はそういう反抗する、という心を打ち砕いてしまうのだ、と。
 
 そういうわけで社会を見れば、なるほどね!オトナってやつはすでに、反抗する、っていう意思を最初になくしてしまったんだな、ってわかります。
ガキの頃はわかりませんでしたものね、なんでオトナってやつはあんな退屈そうななんの面白みもないようなことを毎日繰り返せるんだろう。
死ねばいいのに、って。その答えがここにあったってわけです。


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 引用

 工場勤めの生活をしている、このような生活の最も強い誘惑に殆ど抵抗することが出来なくなった。
それは考える事をやめるということだ、それだけが苦しみから逃れる唯一の方法なのだ・・・
 じっと苦痛を耐え忍ぶ牛や馬と同じイキモノになってしまう・・



 バスに乗ってる時に不思議な感じがした。なんでIなんかがバスに乗っていられるのだろう。
隷属状態に長くいるおかげで自分に権利があるということを忘れていた、それがすべて恩恵のように思えた。
・・・他の仲間は自分たちが奴隷状態にあるということに気づいてもいないので、正しいことなどわからない、すべて正しくない
状況において・・


 精神的に自主独立の心を保つ力・・、いつまで続くかもしれない潜在的屈辱的立場におかれながらも、自分の精神をはずかしめられたと
感じずに保つ力・・


 重要な事実は苦しみではなくて、屈辱である・・・

過酷で容赦の無い抑圧に対して現れる反動は、それは反抗ではなくて、服従である
 *抑圧は人々を反抗的にするのではなくて、奴隷的にしてしまう、反抗する意思をも奪ってしまうそれが抑圧の最も恐ろしいことだ・・・

専門化は堕落を招く

注目すべきこと、これまで出会った中で自分の仕事を幸せだと思っているヒトは2人しかいなかった・・・


 工場では常に人の下にいるということです、常に屈辱を感じて・・・

 
反抗心を持つと、いらいらして、仕事を失敗し、首になって食いっぱぐれて死んでしまうので、反抗することは出来ません・・



 一日8時間労働でも、ぐったりと疲れて他になにかやる気を失ってしまう、手紙を書くことも困難である・・・

 恋愛には相互の人生をひどく制限してしまう危険がある、自分が相手の為に人生を縛られることもあるけれどより危険なのは
相手から愛されている場合に、自分の気持ち1つで相手の人生をどのようにも制限出来るようになってしまうということ
 ・・・恋愛にあまり深くのめり込まないほうがいいと思うのです、特に若い時には・・・