2015年7月6日月曜日

1972 犬神家の一族

聞いたことはあるけど実際には読んでないシリーズでも大きなものですねこれ。犬神家の一族、ことあるごとにパロディにされたり、湖から足が突き出てる死体、のシーン、あれは映画なんですかね?を見たりしましたけど、一体どういうお話なのかというのはまったく知りませんでした。それが金田一耕助シリーズだってのも知りませんでしたわ。
 スケキヨもあるいみ日本のガイ・フォークスみたいな有名なマスクになっているのにね。

 
 




さてこっからはネタバレなので注意。











探偵物のオチを書くのは本来はタブーですけどこんだけ有名な話だし、かなり昔の作品だから別にいいでしょう、それに犯人が誰かってのが問題になってるような類いの作品でもないし。というより犯人はほぼ最初から割れてますわね、超美人の珠代、最初に怪しいとされる人物、最初から怪しい人物が真犯人なんて、まぁ何周もして裏を書いたものじゃない限りそれもありえない、何より美人が犯人ってのはまずない。あまりにも当たり前すぎるからです。そしてその召使の猿蔵、知恵の足りない怪力の持ち主ですが、これが犯人ってこともない、カジモドじゃないけど、白痴が犯人ってのはまずないです、ゴリラが犯人でも無い限り。三兄弟は殺されてしまうし、松竹梅の誰か、になりますけど、最初っから描写がやたら多い松、性格描写や見た目の設定がはっきりしてる松が犯人に決まってます、姉妹の夫が犯人でした、では、誰!?っていう20世紀少年みたいな残ないことになっちまいますから。
 そういうことではなく雰囲気ものなんですねこの作品、猟奇的で、信州長野の澄んだ空気と秋から冬、っていううら寂しくて、おどろおどろしい感じ、ホラー要素もかなりあるのです。

 トリックはよく出来てるとは到底おもえませんなぁ・・、だって偶然偶然、偶然が重なった、ってそんなのわかりっこねぇじゃんって感じだし、Iが勝手に思ってるだけかもしれないけど探偵小説ってちゃんと考えれば最後の謎解きのシーンまでには読者が賢ければすべての謎が解けるっていうふうになってないといけないものだと思うのです、そりゃ消去法で犯人はわかるのですけど、はっきりすべての謎が見えてくるわけじゃない、ってのは本来はダメだと思うのですけどね・・・、Iの勝手な考えなのかもだけど・・。

 それに文体もそれほど優れてるってわけでもないです、特に気になるのが話法は三人称、いわゆる神様目線なのに、言い忘れていたが・・・、とか おそろしいではないか・・・、みたいな完全な神様視点ではなく、ある事情通の後日談みたいなスタイルになってるのですね。ドストエフスキー話法っていうのか、あんましそりゃ成功しませんよね・・・。それとなんで昔のヒトってのはやたら四文字熟語とか漢語をぶっこみたがるのですかね?それでなんか文章が優れてるわけでもない気がする・・・、そういうことが出来るのは夏目漱石だけで、無闇に漢語をぶっこむのはやめて欲しいです。


 なんて文句たらたらですけど、これが流行ったってのはわかる気がします。それは探偵小説ってだけじゃなくてホラー、怪奇!みたいなのと絶妙に組み合わされてるのがハマるのでしょうね、スケキヨの仮面、残虐な殺人方法・・ってのもそのこわーーーっ!!きゃー!っていう一般受けに一役買ってるんでしょうね。Iホラーが大のニガテでぜっっっってぇにリングとか見ない。なんでカネ払って怖い思いしなきゃいけねぇんだよってタイプなのであぁいうのが好きなヒトの気持ちはまったくわからんのですけど根強い人気があるんですよねーそういう、ホラーテイスト。ホラー大嫌いなIでも、結構楽しめます。エンタメとしてやっぱりそこはよくまとまってるからだと思います。

 探偵物ってのは、ミステリーっていうのですか、エンタメ要素としてはほんと大事ですよね、Iも次回作は面白いものを作りたいってのがあるので、勉強中です、謎、っていうのはオーディエンスに続き、を見たくさせるのに必要なんですわね。ものすごい美しい映像とかはすぐに飽きる、でも謎。謎ってやつは気になってしまうのです、人間の心理で怖いもの見たさ、好奇心、そこをもうこちょこちょやるわけで、しょうもな・・・とか思っていても、ちくしょう、犯人気になる。って最後まで読ませてしまうわけですな。

 あとやっぱ時代設定でしょうね、戦後まもなく、ってことで、戦争経験者の作家にはそういう技が使えます、戦後の混乱、とか、兵隊で取られていたから・・とか。兵隊帰りの佐清も静馬もだから死体の使い方とかに慣れてるのが納得出来る、松は4人もヒトを殺すわけですけど、兵隊として佐清とかはもっと多くのヒトを殺してるわけですからね。平和で四人も殺せば殺人鬼ですけど戦場では殺せば殺すほど英雄なわけ。だから松が悪いっていう感じはしないで、むしろその意思の強さにあこがれてしまいます。

 犯人の動機、モチベーションってのは探偵物の肝なわけで、ただの快楽殺人者とかキチガイにしてしまうと、とたんに探偵っていうよりはヤバイやつとの戦争、になってしまう。けど普通の人間がそんな面白おかしい殺人をするのはおかしい、ってわけでどういうモチベーションがあったのか?ってのがコアになるわけですけど、この小説では母が溺愛する子を思う為の犯行ってことになるのですけど・・・・それはでもベタ中のベタですよね、人間の証明でもそうだったけど。ん~~~~、母は強しっていうのか・・・、それってでも納得出来るようで納得出来ない、っていうか愛情から来た殺意だったんだ、みたいな納得はIは出来ませんなぁ~、でもほんとむっかしぃですね、モチベーションを考えるってのは。所詮嘘ですから、リアリティを持たせるのは骨が折れる・・・・。


 酒鬼薔薇聖斗の獄中小説?か何かが話題になってるみたいですね、まぁ出版社にしたら話題になること自体が目的みたいなこともあって、まんまとそれにのっけられてるだけなんでしょうけど、別にIはそれを悪いとおも思いませんわね。だって戦争に行った作家全員が、実際に戦場に行かなくてもそれを支持した全員共犯なわけで、みんなヒトを殺したことくらいあるだろうに、そりゃ現代でも同じですわ。シリアやあのへんの内戦、自分たちがオイル欲しさに独裁政権を担ぎあげたくせに、何もしらんぷり、ってのは殺人を黙認なわけですし、やっぱり全員共犯です。少年Aはその残虐さ、がやっぱ問題なわけですけど、Iは別にアミニズムにかぶれてるわけでもないので別に死体に何されたってどうでもいいですけどね。蘇りにも期待してませんし。まぁしかしわざわざ首を切る必要は無いですよね。武将に見せたら褒美くれるわけじゃないし。
 でもやっぱし話題にのっけられるのがイヤなので読みませんけどね、わざわざカネ払って読むようなもんじゃねぇです。


 この小説を読んでる間、梅雨でずーーーーと雨でした、まさに小説にぴったりの暗鬱ッて感じの空気にどっぷり浸かってしまったけど、それはまぁそれで良かったのかもです。入って行けましたね。そいでこの作家、横溝正史の70才くらいの作品なんですね、それもびっくり、そんな老人の書いたって感じは全然しない。ほえぇ、やるねw 他の金田一シリーズも読もうかな・・・・。