2017年10月16日月曜日

2015 Yakushimaru Experiment - Flying Tentacles

 やくしまるえつこ、相対性理論というバンドのボーカルなんですが、これはソロプロジェクトでして、やくしまるえくすぺりえんす、なる実験音楽のアルバムです。


 普通の音楽ファンみたいなヒトにはまったくオススメ出来ないアルバムで、ノイズ、ポエム、朗読、などで構成されております。スマホに入れて歩きながら聞こう~~♪みたいなタイプの音楽ではまったくありません。

 ただ実験音楽、っていうジャンルでいうとかなり聞きやすいほうになると思います。シュトックハウゼンとかのメチャな作品に触れてる人間には、ふむふむ・・なるほどね。っていう感じです。


 相対性理論、というバンドはすごく聞きやすいポップなバンドなので、そのヴォーカルがこんな前衛的なのに手を出すなんて、暇なんだな(生活に不自由してないくらいカネがあるんだなぁ)、ってのが素直なワタシの感想です。
 この手のコンセプトアルバムとしては相当良く出来てると思います。ソニック・ユースとかを聞けるヒトには是非オススメいたすものなり。



 こういう実験、が出来るのって、そしてそれが普通の流通ラインにのってワタシみたいな一般の人間の手にも届くってのはある程度の知名度とかメディア露出力が必要なわけです。非常に斬新でいい作品だったとしても、実験音楽を売ってる場所なんてどこにもないわけで、それを扱うメディアもない。有名なアーティスト、が片手間に発表する、っていうのしか入手手段がない。実験音楽をやりたいなら、まずポップアーティストとして売れなきゃいけない。
 ポップアーティストとして売れるにはまず見た目がかっこよかったり可愛かったり、そして何より若くないと音楽業界は相手にしてくれない。
 様々な障害があるので、実験音楽、はつまるところ、どうしようもない作品ばっかりです。オーディエンスもめちゃくちゃ少ないですし。


 よく「売れてしまったら後はもうどうでもいい」、一発当てればおけ、みたいなアーティストが大勢います。実際、ある程度大儲けしたら「続けること」の意味が無いわけで、なんの為に音楽やってるの??みたいなことを考えてしまうと、迷宮入り。バンド解散、ってことになります。
 
 「夢をみよう」とか「恋をしよう」、みたいな普通の若者の共感、を集めること以外に、何か伝えたいことがある?ってことなんですよね、若者の支持を集めてる、みたいな言い方されますけど、それはつまり若者が考えそうなことを「こういうことあるよね」って歌ってるだけで、いわばあるあるネタと同じこってす。

 曲がヒットしてブルジョアになったら、そのこんなことあるよね、というメッセージは嘘なわけで「金持ちってこんなに楽しいぜ」、「曲が当たって大金持ちになるとみんなの見る目が変わるぜ」、「彼女や彼氏のルックスのランクが上がっぜやっほい」っていうのが正直なメッセージになるわけですけど、そういうことを歌うヒトはほぼいないし、やっぱりそんなこと誰も聞きたくもないわけです。


 そこで何か、歌でなくても、本当に何か伝えたいこととかがあるの??ってことになりますが、たいていの若者にはそんなもの無いです。若者というかほとんどの人間には、誰かに伝えたいことなんて何もないです。


 やくえつさんは、そういうのが、ある、ほうの人間。しかも女性で、若い。実験音楽に女性ってだけでめちゃくちゃなレアケースなので、ほんとこのヒトはすごいと思いますね、才能人です。異能者です。素晴らしいですw 文才のある女性ってのはほんと限られていて、さらに音楽的才能もあるなんて他に例を見ないですよね。歌が上手いとかそういうのならいくらでもいますし、作曲的な才能があるヒトも稀にいます、けれど女性アーティストっていうで、リリックが深いなんてのはまぁいないです、というよりも、ワタシ的には初めての、未知との遭遇です。こんなタイプがいるのか!?っていう驚愕ですよね。


 ワタシ的にはビョークとかそのランクよりもさらにすごい才能人だなと思うのですけど、やっぱり日本語なんで、そうじゃなかったらもっと世界に激震が走るくらいの才能を持ってる逸材ですよ、これにくいつかないなんて海外メディアもアホばっかりやなという感じですw
 ワタシの今、というか何年も前からずっと一番注目のアーティストです。