2012年3月30日金曜日
sunset blvd ごぶごぶ
線画を描いてる時はパソコンを使ってないので、適当に何か流してます
green dayの歌でblvd of broken dreamと歌われているのは、これが元ネタみたいです、向こうでハリウッドの夢敗れた寂寥感とかの代名詞みたいなものなんですね。 チラチラとしか見てませんが、ありがちな映画です、というかそのありがちな映画の元祖なんでしょうね、この時代の映画はまだそのオーソドックスがやりつくされてない新鮮さがあっていいなぁと思う・・・ただカットにひねりが足らない、演技がやりすぎ。セットはカネがかかってて完成度高し・・・
ごぶごぶは明らかに水曜どうでしょうの丸パクリですがキャストがゴーカで、面白いです。まっつんと比べればそれなりだけど、やっぱ浜ちょんは、まっつんを抜いたらグンバツに面白いんですね・・・それを再認識。ダウンタウンはすげぇや。
韓国のバラエティをちらみしました、なるほど韓国ブームの理由が少しわかりました、なんか・・・なんていったらいいんだろう、ロボトミーを受けた抑うつ患者みたいな明るさなんですね。社会主義のバラエティみたいな感じ。あの・・ソ連の喜劇映画・・・・なんだっけ・・・
2012年3月28日水曜日
pepita
c-5
生意気なやつだと殴られた子供の
目は年老いていく
ーーファイト
pepita 井上雄彦 ガウディを読見ました。
良くない方向に行ってるなという感じがします、ガウディも井上雄彦も、ガウディは完全に観光資材でテーマパーク扱いだし、井上雄彦はまわりがオールイエスマンか、賛美者ばかりで、イカン事になってる気がします、自然や神に敬意を払い出したら、なんとなく表現者として終わりって気がします。ドストは自分ではそういってながら、実際には最後までちっともカミサマなんて信じてないところが良かったのに・・・
お金が出来ると、世界の美しいところばかり見るようになってしまうからダメですね・・・それに周りにもいい人間が集まってくる、それもダメです、ウィトゲンシュタインはお金は哲学者にとって悪だといって、田舎の教師になり、その村の人々は全員悪人だとラッセルに訴えます、ラッセルは特別そこに悪人がいるわけでもあるまい、だいたい悪人ばっかりだよと言いますが、ここは特別悪人ばかりだとつっぱねます。そういう人間的なとこがヴィトの良いとこだし、なんとなく何か表現する人に必要なとこだと思います・・・漱石もそういう人間らしさがあるものね。
ガウディ建築に対しても僕はあまり好意を持てません、ガウディが良いんじゃなくて他が悪すぎるだけって気がします。現代建築は、現代音楽と同じくらい0点です。マイナスです、全部NBでふっ飛ばしたい気持ちを誰にも抱かせると思われる・・・誰かが戦闘機やらでっかい武器やらでっかい建物を立てたがるやつはモテない欲求不満なペニスの持ち主だと言ってましたが、まさにそうだと思う、なんとなくいらつかさせるのはそれが原因・・・・ではそれに群がる観光客は・・・・・・種付けしてもらいたがってる○○○ってとこですか?
もっと言えば自然が懐かしく思えたり、好ましく思えるのも建築がひどすぎるだけなのかもしれません、人間は建築においてまだ0点から一歩も動いてないのかもしれない。
生意気なやつだと殴られた子供の
目は年老いていく
ーーファイト
pepita 井上雄彦 ガウディを読見ました。
良くない方向に行ってるなという感じがします、ガウディも井上雄彦も、ガウディは完全に観光資材でテーマパーク扱いだし、井上雄彦はまわりがオールイエスマンか、賛美者ばかりで、イカン事になってる気がします、自然や神に敬意を払い出したら、なんとなく表現者として終わりって気がします。ドストは自分ではそういってながら、実際には最後までちっともカミサマなんて信じてないところが良かったのに・・・
お金が出来ると、世界の美しいところばかり見るようになってしまうからダメですね・・・それに周りにもいい人間が集まってくる、それもダメです、ウィトゲンシュタインはお金は哲学者にとって悪だといって、田舎の教師になり、その村の人々は全員悪人だとラッセルに訴えます、ラッセルは特別そこに悪人がいるわけでもあるまい、だいたい悪人ばっかりだよと言いますが、ここは特別悪人ばかりだとつっぱねます。そういう人間的なとこがヴィトの良いとこだし、なんとなく何か表現する人に必要なとこだと思います・・・漱石もそういう人間らしさがあるものね。
ガウディ建築に対しても僕はあまり好意を持てません、ガウディが良いんじゃなくて他が悪すぎるだけって気がします。現代建築は、現代音楽と同じくらい0点です。マイナスです、全部NBでふっ飛ばしたい気持ちを誰にも抱かせると思われる・・・誰かが戦闘機やらでっかい武器やらでっかい建物を立てたがるやつはモテない欲求不満なペニスの持ち主だと言ってましたが、まさにそうだと思う、なんとなくいらつかさせるのはそれが原因・・・・ではそれに群がる観光客は・・・・・・種付けしてもらいたがってる○○○ってとこですか?
もっと言えば自然が懐かしく思えたり、好ましく思えるのも建築がひどすぎるだけなのかもしれません、人間は建築においてまだ0点から一歩も動いてないのかもしれない。
2012年3月27日火曜日
2012年3月26日月曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep17
今日はholiday
写真は著作権気にせず使って下さい。
文字コンテはとりあえずここまでにしときます・・
17 geselschaft
とも「ゾルゲ完成を祝って乾杯です」
パチパチパチ
アキ(今回は海里の殺人ドリフトを回避して電車で工場まで来たともは元気よさそうに乾杯をあげた、ともの好きなマッチとかいうマイナーなジュースである、俊はあの殺人ドリフトの中車内でぐぅぐぅ寝てたのでてっきり三半規管から小脳にかけていかれてしまったとおもいきやきっちり仕事をこなした、ゾルゲは海里が最後の時点で粘って塗装を地味にしてしまったのでまったく退廃的な感じはせずにむしろ未来派みたいなぼやけたデザインになってしまった)
とも「じゃあいよいよ試乗しますか・・誰が乗ります」
アキ「もちろんあなたです」
とも「えっいいんですか?」
俊「もちろん」
海里「通勤に使って下さい、電車代もったいないからね」
とも「サンキューみんな、愛してる!じゃあちょっと転がしてきますね」
アキ(海里が物理構造的に寝っ転がって車輪を廻すほうが空気力学的にもいいのだと最後にねじふせようとしたが私とともが頑強に機能よりも、質なのだとバリケードを作って普通の自転車タイプにした、海里は何も文句は言わないようなフリして最後にはまったく自分の思った通りにあっさり変えてしまう危険人物だというのが身にしみてわかった、やつはがんこ村のがんこちゃんだ。ともは工場の正面から夕焼け空に向かって消えていった、速いなぁ・・、50キロくらいは出るという事だ、サツにパクられ無いことを祈る)
アキ「これで買い出しは頼めるね」
俊「やっぱそういうこと?」
海里「パシリ」
アキ「人間は奴隷無しでは生きていけないものなの、海里の家に泊まってそれを実感した、アナーキストにだって奴隷が必要なの、物理的な物ではなく精神的な理由でも」
海里「物質と精神は同じものだよ、時間と空間が同じもののように」
アキ(AGHAST、ついにこいつは正体を表し始めた。やはりあのカミングアウト以来本音をポロポロとこぼし始めている、すべてカットすべきなのか・・それとも・・海里もまた預言者なのか・・)
とも「うわぁ、すっごい乗り心地いいです、冬も風が当たらないから寒くないかも、小回り効かないですけど」
アキ(ともが得意顔に帰ってきた、窓を開けられるようにして良かった、オープンベロにしようとしてちょっと無理があったので(ダサかったのだ)、窓も考えものだと思ったけどこれは成功だったみたいだ)
アキ「ともかくこれでいよいよ本編突入ですね博士」
俊「ハハハ、怪獣もの」
とも「なんでつぼですか?」
海里「うん・・、ちょっと設計が間に合ってないんだよね、色々考えたんだけど、水平離着陸がいいと思うんだ、ロケットエンジンによる水平着陸とNFエンジンによる大気圏脱出、それだと滑走路問題は解決でそころの道路から宇宙に飛び立つ事が可能だし、噴射で工場が吹っ飛ぶってことも避けられる」
アキ「ブリティッシュハリアー(戦闘機)みたいなものって事?」
海里「そう、けっこう大規模な変更だから手間取っています、でも核になるところは・・・紛らわしい言い方だなぁ、コアユニットは変更無しだからそこからだね、といってもコアユニットは私が一人でやらないといけないから・・全然面白くないところから始める事になりそうだね、内装。イスとか?・・」
アキ「マジか?」
海里「うん、そうだ、みなさんがご注目の水リサイクルの試作品が来たよ、たくさん送ってきたからあげよう、というか使え」
とも「それってまさかおしっこドリンキングマシーンですか?」
海里「YES、ほら」
俊「あっ、予想と全然違う!もっとなんか複雑なマシーンだと思ったけど、マシーンじゃないじゃん・・」
海里「電力を無駄に消費しないタイプなの、ここから・・汚水を入れて、二時間後にこのグラフが青になったら飲める、かなりの程度何度も使うことができる、もちろん・・汚水の種類にもよる、ウリナルは・・それほど汚れた水ではないどころか・・かなり純水に近い・・・スポーツドリンクタイプ・・・、コーヒータイプもあるよ」
アキ(つまるところそれはただの化学フィルターによる水の浄水器だった、水道につけるあれの巨大なパックみたいなものだ。ただ・・汚水を濾しとってるだけだ、ふざけやがっておしっこを漉してコーヒーなんか飲めるものか、宇宙でもこぼれないようにノズルがついていて・・・女性器にはめて・・・やや吸い付くように・・つまり貞操帯のそれだ)
アキ「は・・は・・は・・」
海里「何その笑いかた?死にたいの?」
とも(なるほど後でさんざんいじられて笑いものにされるからプリエンプティブストライクなんだ、私宇宙飛行士じゃなくて良かったと人生で初めて実感した)
海里「宇宙服も着たよ、ほら、これは結構高いと思う・・型落ちだけど」
俊「へぇ・・これは欲しいかも、随分昔よりすっきりしたね、すごい寒い所でも大丈夫なんでしょ?」
海里「知らん、ムーントルーパー作戦用だから・・失敗したけどね。だからそれなり?冬にウィンドブレーカー替わりに着てみれば」
アキ「ちょっとダサすぎるなぁ・・サイズ合わないし」
アキ(なんていったらいいだろうか・・全身おむつみたいな感じのもこもこした素材だ、ヘルメットは完全に覆われていてHMDで外付けのカメラから映像を得る仕組みになってる。だからカメラ付き全身おむつ寝袋みたいな感じだ。機能はたしかにいいんだろうけど)
海里「サイズ合うよ、ここで・・ほらカラダにフィットするようになってるから」
とも「あぁ布団しまうやつですね」
アキ「こんなものまだまだ使わないのに気が早いね」
海里「倉庫を整理したいんでしょ、こういうのもどんどん倉庫を回転させてgross dumb people(純愚者)指数に貢献しないといけないからさ、軍の払い下げと同じだよ、ともかく今日は解散、明日からライフスペースづくりに着手したします、これからはいよいよ地下にいる私に用事あるときはモバイルで呼んで下さい、鍵を閉めとくから」
アキ「はい、じゃあこれ、トイレにいちいち登ってくるの面倒でしょ?それに、慣れたほうがいいだろうし」
海里「・・・死にたいの?」
アキ(ともは地下生活者の手記を書きに行った)
アキ「あんな嫌なフリしてるけど実際は好きものなのかもよ、天才ってそういうとこあるから」
とも「聞かれたら本当に殺されちゃいますよ」
俊「人殺しと拷問にかけても超一流だからな、物理学者は」
アキ「ちょっと復讐したかったの、だって精物質界的に世界を眺めるとすれば、うんちだって食べれるはずでしょ?少なくとも、食べたっていいじゃん・・うん?違うのか・・どんな感じだ、精物質世界って?」
俊「わからないね、てがかりがなさすぎ、想像すらも困難、結局時空間というものも想像すら困難だし、spacetime and minterial world・・・」
アキ「時空間と精物質界、存在と時間、存在と無に続く、歴史的名著ですね、湊海里さんが火星への旅路の中で書いてくれるじゃないですか?」
アウラ「ほとんど確立分布と数式のみで面白くなさそうな本だね」
アキ(工場の眼の前に止まった明らかに高そうなエンジン音の車(闇夜で車種がわからない、ポルシェっぽい音、ヴン、っていうなり方)から何人かわからないが、女っぽい人が登場、なるほど、海里が言ってた意味がわかる、外見はまったく似てないけど、確かに海里とまったく同じ感じがする、つまるところ・・記憶のクオンタムリープ仮説を信じるハメになりそうだ・・)
アウラ「海里がお世話になってるようで、アノドゥラックはどこ?」
アキ「下、鍵がかかってると思います、呼びますか?」
アウラ「お願いします」
アキ(相当年上だな、大人だ、そうか勝手に同い年だと思ってたけど後から記憶の入れ替えをしたんだから同い年の必要はないわけだ、海里が恐る恐る地下から出てくると海里二号機がつかつかと踏みよって思いっ切り張り手をくらわせた)
アキ「ワクワク、修羅場だわ」
俊「寄り切りだ」
アウラ「XXXXXXXXXXXXXXXXXX!!XXXXXXXXXXXXX!!XXXXXXXXXXXX!!」
海里「XXXXXXXXXXXXXXXXX」
とも「何語かわかんないですね」
アキ「ロシア語・・かな?」
俊「フランス語もあったよ」
アキ(言語がさっぱりわからないが二号が言いたいことは身振りなどでわかった、てめぇ何を勝手な事やってやがるんだこのキ○○マ野郎、勝手に抜け出したりして全部私が尻拭いしてるし、向こうはパニックだ、あげく火星に行く宇宙船を作るだって!!核融合技術で?あのトーシロ三人と?おいおいおまえいかれちまったのかよ!それに対して海里は気が狂った人間は自殺しないと言うよ、事故死はあるけどねと冷静に受け答えしてますます二号を怒らせた。普通心の中で怒るはずの葛藤っていうものを視覚化するとこうなるのか・・)
アウラ「XXXXXXXXXX(ともかく帰るよ!切り刻んでも帰ってやる)
海里「XXXXXXXXXXXX(帰らないよ、同じ人間が二人いたって意味ないじゃん、それに私とあなたの何の関係があるわけ?私は私の人生を生きるよ、余計なお世話ってやつです、パターナリズムはやめてよ。私にシンパシーっていうのがないってのを知ってるでしょ?別に自分が手を下した人間だからって特別扱いなんてしませんよ、そんなに私が必要ならもう一人増やせばいいじゃんか)」
アウラ「XXXXXXXXXXXXXXX (誰がそんな話してるんだよ!スマートアス!(これはSMARTASSとはっきり言った、海外では海里はスマートアスと呼ばれてるらしい)ともかくてめぇは勝手すぎる、気が向いたら手伝って欲しいだと?冗談も休み休み言えよこのチ○○ス野郎め!)」
海里「XXXXXXXX(協力する気がないなら何でわざわざ来たの?)」
アウラ「XXX(ぶん殴りたかったから)」
海里「XXXX(じゃあもう気がすんだでしょ、さようなら、忙しいの、わざわざご足労ありがとう御座いました)」
アキ(海里がまた地下に帰ろうとするとアウラが海里のフラッシュパーカーの首根っこを掴んで裸絞めをくらわすのかとおもいきやそっとリバースハグをした、なんだこの茶番は・・、でも外人ってのはハグが自然だ)
アウラ「XXXXX・・・XXX(やるよ・・やります、私がどういう人間なのかわかってるじゃんか・・)」
アキ(海里がアイサインで私とともを見た、俊を適当に丸め込んどいて、こいつに色々説明しておくから、という意味だろう、そして二人は地下に入っていった)
アキ「彼女は海里の向こうの同僚なんだってさ、優秀だから手伝ってもらうことになったんだって、この前言ってた」
俊「の、割にはえらい揉めてなかった?各国語で罵詈雑言が飛び出してたけど・・」
とも「海里さんは勝手に帰って来たらしいですからね、でも海里さんくらい優秀な人材が抜けちゃ困っちゃいますよね」
アキ(ともは嘘が下手くそすぎる、黙っててもらうしかない、眼圧で黙らせた)
俊「ウルトラ似てないけど海里の姉妹かと思った、雰囲気が似てるもんね、んなわけないよな、相手は眼の色がまったく日本人じゃないもん」
アキ「そ~だね、髪質も色も違うし、うん、でも人が増えて助かったよ、ともちゃんも俊も学業おろそかにしないように、穴は埋まるみたいだから」
俊「あと三ヶ月か・・・めんどう・・」
とも「アキはやっぱ受験辞めるんですか?」
アキ「合格通知だけ学校に提出してくれればいいんだってさ、そうすればあの卒業生進学先グラフに入るそうだ、って先生が言ってた。入学はしない、どうせ行かないし、全部片がついたら行くかもしれないけど」
とも「私だんだん、科学が面白くなってきたんですよね、だから・・科学者目指そうかな」
アキ「いいんじゃない、参考にさっぱりならない人がいるけど、俊シェフあのお客さんにも料理作ってあげなよ」
アキ(言われなくてもって感じで俊は今日はグリーンカレーを作り始めた)
とも「ねぇねぇ、アキって海里さんがどんだけすごいかって実はピンと来てないんじゃないんですか?経歴調べたんですけどめちゃくちゃすごいですよ、15才からもうオカネもらって研究してるんですよ、つまり私の時にはもう・・」
アキ「わかってるよ、じゃなきゃ核融合エンジンなんか作れるわけないじゃん・・でもなんだろうな?どうせ起こるべきことだし、そういう人間がいるだろうなとは察しがつくじゃん、だから驚かないよ。素粒子の周期表がどんどん追加されてるけど別に驚かないもん、すごいことなんだろうけど」
とも「驚きましょうよ!」
アキ「まぁ、すごいわね、この赤ん坊には口と鼻と目がしっかりついているわ」
アキ(ともは口の中に飛び込んできたハエを食ったような顔をした)
俊「出来ました、お客さんはまだかね」
アキ(海里と海里さんは打ち合わせを終えて食卓へ姿を現した、なるほど・・二人は似ていないというのがわかる、双子でもまったく性格が違うということもあるというし、海里は体型とか住んでいる環境とかによって人格は変わる、それに記憶は更新されていくものだとか言うんだろうけど・・・う~~ん、それではただ単に情報をコピーした事にしかならない・・記憶は人格を含むはず・・記憶が人格を作るはず・・違うのかもしれない。海里二号は海里にはまったくないものを持ってる、それは、母性ってやつだ、母性は記憶ではなくエストロゲンなのか・・というと人格はますます化学物質そのもの・・・)
アウラ「改めて、ファン・リーフ・アウラです、アウラが名前です、海里の同僚でした、今日からまた同僚です、よろしくどうぞ、みなさんの事がもう聞きました」
とも(大人だ・・)
海里「先に宣言しておくけど最後になってアウラが私の代わりに宇宙船に乗るなんて事になったら私はアウラを毒殺して自分もソバクするから、みんなが私に睡眠薬でも盛ってもそうするからね、万が一私は不慮の事故で死んだら、あとはみなさんで決めて下さい。でも・・そのときはアキに行って欲しいという私の希望だけは伝えておきます、まぁ本人の意思しだい」
アキ「その時の気分しだいかな」
俊「速く食べないと冷めちまうよ」
とも「なんでグリーンかな・・」
アウラ「美味しそう」
アキ(五人でカレーを食べているとなんか今までの青年たちの火遊びっていう雰囲気から、カルチャーセンターのキャンプ大会みたいな感じになった。とんでもない下ネタでもぶちまけたい気がする、ストーカー3のラフ設計を渡した時に俊がぼそっと言った事を思い出した これが新型爆弾のほうがいいシーンだね 何を言ってるのかと思ったけどそうかもしれない)
とも「何気持ち悪い顔してるんですか」
アキ「なんでもない、ストーカー3なんだけどさ、ジャイロじゃなくてレンズを安定させる方法がないかなって思ってたの、リニアカーみたいに磁力で浮遊させればいいんだよね、そうすればジャイロみたいにクイックリターンが必要なくなるからさ、どう?」
アウラ「それ何?」
アキ「カメラの名前です」
アウラ「球面複眼立体視(普通の人間の視野と同じように作動するカメラ)じゃダメなの?高いから?」
アキ「いや、私はサイクロプスが好きなんです、オカネも無いですけど。・・ありのままの現実は・・・最も現実から離れてしまう気がしませんか?だっていつも見てる視界なのに、自分の思ったように動かせないんだもん」
海里「いいんじゃない、でも回路がブッ壊れるから、電磁力遮断膜作らないとだめだよ、マニュアルカメラなら別にいいけど、そんなにブレは困るの?最近のブレ補正は良くなったって聞いたけど」
アキ「ブレは困らないよ、ブレ過ぎないのが困るの、人間が撮ってる感じがしなさすぎる、街の固定カメラじゃないんだからさ、電磁力制御ならブレをコントロール出来るかなと思って、レンズが空中に浮遊してる感じがいい感じだと思うんだ」
アウラ「今の日本の若い人ってこういう感じ?」
海里「ぜんぜん違う、特殊なのが集まってるだけ」
アウラ「・・・カイが集めただけのことはあるわ」
俊(カイって呼ぶのか)
海里「ともかくさ、既製品のカメラじゃ他と同じになっちゃうじゃん、作家としての武器なんだから、もうちょっと自分で何とかしないとだめだよね、与えられた物使ってるだけじゃ発見も進歩もないでしょ、私はあのゾルゲを作ってマルクスがとかラスキンとかが言っていた意味がよ~やくわかったよ、分業は仕事をつまんなくさせる、確かにそうだね
アウラ「今の日本の教育ってこの水準?」
とも「全然違います、この一体だけやたらと教養が高いだけです」
アウラ「だよね、これが普通だとしたら世界中が日本を見習わないといけないもんね」
アキ「それと、何か楽器できる人?」
俊「ギターなら、ベースも含め、相当忘れたけど」
とも「鍵盤なら」
海里「ヴィオロン、つっても10年は触ってないけど」
アウラ「打ち込みなら、少しだけ」
アキ「私ドラム?やったことないけど・・まぁ練習するか・・・型にはまったのはやりたくないんだよね、ループも拍節構造も、テンポフィックスも、POP MUSICの文法を取り入れたくない、かといって現代音楽も、もちろんクラシックもいやだ。タルコフスキーが音楽を作るときに、これはベートヴェンのようなノイズが欲しいと言ったらしいんだけど、それってイカスよね・・・サクリファイスだっけか?のベートーヴェンはめちゃ良かった・・・つまるとこ何も決まってないんですが・・音は大事だからなぁ・・まっ時間はあるしゆっくり考えよう・・」
海里「うん、じゃあアウラ、仕事は山ほどあるからさっくりいこう」
アウラ「はぁい、みなさんおやすみなさい」
アキ(二人はまた地下生活者だ)
とも「海里さんのほうが上司だったからあぁいう感じなんですね」
俊「年より実力の社会なんだね」
アキ「現代社会で唯一の、じゃない?アート市場も、もちろん資本市場も、結局コネと運だからさ。数学の証明にコネはいらんものね、一般ウケ狙う必要も無いし、これが真理だ、ドォン」
とも「原爆でも数学の定理は吹き飛ばせないですもんね・・あぁ肉が食べたい」
アキ「まだいちんちしか経ってないじゃん」
とも「渇くんですよ・・血が」
アキ「でね、ほらあの部品・・・」
俊「あぁ、たぶん出来る・・」
アキ「デザインはね・・」
とも(無視・・?お・・・辞めた、寝よう、明日も速い)
アキ(寝袋で横になってたともは深夜の二時くらい(私達はカメラづくりの為に起きてた)に我慢できなくなって買い物に出かけた。あいつはダメ人間になる素質がかなりある)
2012年3月25日日曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep16
16 par se que
俊(ともかく親を丸め込むのに3時間もかかった、おれもアキみたいに海里の家に住み込みにさせてもらおうかな・・なんとなくもう二度と会いたくない、戦争に行ったらもう二度と家になって帰ってきたくない、確か夏目漱石にそんな話があった、戦争から帰ってくるなんて無様な事はしてくれるなって頼むんだ・・
けどもう夜になってしまったし、女の家に泊りに行くのもいかがなものか。けど家にいるのはなんとなく気が進まない、荷物ももうまとめてしまったし・・、明日の朝9時にまた海里の殺人レースに付き合うまでは暇だ・・ネカフェでも行って時間潰そうか・・・。
音もなく家を出た、家出だ、家出なんて初めてだ・・・母親は家族の中から共産主義者が出たみたいにおろおろしていた、親父は遠海、だけど少し嬉しそうだった、たぶん自分の子供がつまんない人生を歩むんじゃなかろうかと心配だったみたいだ。バカ親父め。家族は牢獄だ、家族さえいなければ人間はもっと自分のするべき事をやるはずなのに・・これは鉄球よりも強い力で人間の精神を引きずり下ろす・・
・・・もう夜風が冷たい・・なんで夜風だと梶原一騎を思い出すんだろう・・ゴーゴーバーなんて無いぞ・・、誰もいない公園、とりあえず腰を降ろす、久しぶりに夜空を見上げた気がする、何も見えやしないから見上げる事はないから・・月だけがやけにキラキラと輝いている・・・月を見上げて歌を読もうとした初めの人間は天才だ・・どういう方法でそんな事思いついたんだろう・・、コトバを作った人間は・・どこに行った?コトバを最初にしゃべった人間は明らかにキチガイだと思われて沈黙の論理に撲殺されたに違いない、しかし撲殺者は眠りに落ちるときに気づくのだ、あれは・・なんだったんだ?そしてこの頭に残っている、これはなんなんだ?今している・・これは一体どういうものなんだ?えっ?おれはあいつのしたことをしているのじゃないか?こいつはおれに力を与えるに違いない、しかし・・永久の苦悩をすべてのモノにたいして与えるだろう、呪われたのだ、我々はあいつのせいで・・これは世界を切り離す力だ、その力で自分をまず世界から切り離してしまう・・
最近路上生活者を収容するための牢獄(正式にはシェルター)が立ち始めたという話を誰かから聞いた、それは建物というよりは貸し倉庫だ、あのコンテナが積み上がっている、単調な3d世界だ。そして牢獄は予想通り、一瞬で若者達の吹き溜まりとスラムと化した、肉体派のバックパッカー、浮浪者、サルトル主義者、スパイ、地に満ちた人間達は、奇跡の広場に集まってくる。さて・・しかし・・どうしよう?覗いてみたい気持ちはあるけど、トラブルは御免だ・・、うっとりとした寝不足の疲労がふともものあたりから這い上がって来た、一時期旅人になりたいと思っていた時があった、飢えて死ぬまでずんずんと歩き続くだけの旅人になりたいと思った・・しかしまだ早いと思った、それはもっと後でいい。いつか人は望まなくてもその旅に出るのだから・・この公園は大きな鉄道の真下にある、意図不明の空間にベンチを2つだけ置いて公園だと宣言してるほどのみじめな公園だ、三方をコンクリートの壁に阻まれて、上を見あげれば覆いかぶさるような鉄塔が川向かいの街へ高圧電流を流している。さすがにこんな殺風景なところには新中国シンパの人たちも一夜の宿を借りにはこないらしい、奇跡の広場に肌が合わないやつもいるはずなんだ、タダでやればいくらでも人間が集まるというわけじゃない。
最終電車から何本か前の列車が通り過ぎていった、ここから川をくぐるために一時的に地下に潜り込む、電車の中にいる人には無感動だが客観的に見ている人にはワクワクさせる場面だ、しかしその場面を見れる場所はあの鉄塔の上によじ登ったストリーカーしか知らない。
ストーカーをやっていた経験も手伝っておれはそういう人たちの事を知っている、ストリートアーティスト、乞食、流浪の人、つまり街によって動いている人たちだ、都市とともに呼吸している人間だ、彼らは都市の装飾品だ、生き物ではない、飾りなのだ、だからガウディの建築みたいに時折やたらと美しく見える、普段はえげつなく汚らしく醜い、そして困った事に臭い、臭いってのは嫌悪を引き起こさせる最大の要素だ、醜い人間は我慢出来る、サルトルは我慢できる、けどひどい匂いの革命家ってのは聞いたことがない、革命家は清潔だ。人を操る人間は清潔だ、あとはどんなバカでも、キチガイでも、ホモでもいい、デブだってガンジーのようなガリガリでも包茎でもインポでも淫売でもいい、ただ腋臭だけは勘弁してくれ。この世界はロリコンとスカさん達には殺人者に対するよりもはるかに厳しいのだ。
街に慣れた人は街の音楽を聞くことができるようになる、なにも考えずぼんやり佇んでいると街の音楽が聞こえる、それは街の環境音やらサウンドスケープというものとは無縁のもので鼓膜よりも脳の近くから聞こえてくる、振動そのものなのだ。音楽は空気の振動である、地震は巨大なバスドラムみたいなものだ、数式のようにもったいぶって意味のないものだ、もしくは意味がありすぎるものだ。鳥は空気を泳ぐ魚に過ぎない、けれど夜の空には魚がいない・・・魚も夜は眠るがエラ呼吸のために動き続けるのだという、海里みたいに脳の半分を寝させることが出来るやつもいる・・、夜にうごめく人間は実は夜の夢を見ている、寝ても覚めない夢なんだそれは・・・
サルトルは家も荷物も何も持たずにカフェでずっとねばってノートに書き物をして生きていたという都市伝説がある、友達がおごってくれるらしい。サルトルは晩年テロリズムこそが自由の道だと宣言したらしい、これは本当らしい、警察だって暴力で攻撃してくるのになぜ人民だけが、暴力で何かを言うことを禁じられるのか?暴力以外のコトバを持たないゴリラが90%の社会で、コトバで何が解決出来るのか?ベンヤミン式の暴力論ってわけだ・・・
吐き気をもよおしていたのは若いサルトルであったということだ、おれも立ち読みで漫画をよんで絵がかなり手が込んでいるのに、内容が地域自治体のパンフレット以下の代物(ほとんどすべての漫画)を読んだ時に吐き気を催す、なんでこんなつまらないことに才能を使ってしまったんだ?彼らの無駄に使われてしまった時間がおれにとっては吐き気を催させる、背筋が凍る。恐ろしく高価な電脳、ソフトウェアそして綿密に組織されたクリエイターと制作管理、そして出来たものは恐ろしく上手く出来たガラクタでは・・・
火星への宇宙船づくりはガラクタづくりだろうか?これはわかりにくい・・非常にわかりにくい、パッと見は勇気のある冒険のように思える、深層においてはそれは単なる自殺と生への軽蔑、そしてある種の達成感を持っている・・・アキは昔言っていた、最近の作品は・・別に最近でもないけど、恋愛に比重を置きすぎてた、神が死んだ後に、攻撃を受けるのはまさにそのもう一つの嘘っぱちの恋愛原理に違いない、シェイクスピアは若い時にロミオとジュリエットを書いた、ウィリアムがそこにとどまっていれば彼はシェリーくらいの重要さしかない恋愛詩人で終わった、けれどウィリアムはそこを超えた、恋愛は本質的には死への賛美歌で、結局のところ・・・小市民的死、恐ろしく低劣でくだらないものにシルクのカバーをかけたものだと看破した、キングリアはウィリアム自身で、たぶん彼はあらゆる悲劇を舐め尽くして・・狂気を演じている・・・そしてリアは何故か・・私にとっては恐ろしく感動的だ。ドストに裏切られた若者はウィリアムに頼る他ない、ウィリアムは裏切ったりしない・・・反動主義芸術家(彼らは巨匠と呼ばれる)に裏切られた私たちは・・・
ノーベル賞を拒絶した時サルトルは語った、私を過去の過ちということで済ましてはならない。サルトルが死んだ時世間はこういった、羅針盤を失ったと。何かが起こった時、サルトルはどう動いたか?まずそれを人々は知りたがった、それは大江健三郎がどう動いたかとはまったく規模が違う、大江健三郎は・・裏切り者だ。いや裏切り者ですら無い、あいつは・・・チ○○ス野郎だ。もしくは卑怯者だ。アキは同じサルトルよりもラッセルが死んだ時のほうがショックだったと言った、もちろんもしその時代に生きていればの話。アキはラッセル主義だ、そんな主義があればの話・・・ともかくそういう羅針盤的な働きをする人間というのはいなくなった、すべては金の論理で動いている、おれは世界の動きを知っていると構えているエコノミスト?は公債関係で世界の動きを120%の正確さで予測するだろう、彼らは間違えようがないほど世界の有様を知っている、じゃあ彼らを預言者に据えておけばいいじゃないかというとそうでもない、彼らは正確に未来を教えてくれるだけで、その未来にどうやって立ち向かうかを永遠に教えてくれはしないから。付け加えればエコノミストにカネを払って未来を教えてもらうよりももっと手早く済ます方法がある、それは淫売婦に未来を聞いてみることだ、やつらは今では女優とかアイドルとか呼ばれているけれど・・・世界の始まりから彼らは生まれ続けている、ニーチェは女を嫌った、ニーチェは軍隊があれば女を全滅させていたかもしれない、それは・・・非常に感謝されるべき事なのかもしれない。世界はまだ石器時代の前より続く淫売婦の時代にいる・・・淫売は公債より古い。
最終列車が川の底へ下って行った、これでようやく電車にのって海里の家に行けなかったので歩いていくより仕様がなかったのだという事になる、この言い訳は誰かにするんじゃない、自分にするのだ。考え事に集中していて期を逸したのだ、残念なことだ。拡張現実のHMDサバイバルゲームが始まったらしい、夜中になるとどこの都市でもこのサバイバルゲーマーが現れる、彼らは赤外線の銃コントローラー片手に異常な真剣さでこのゲームに参加している、そして一般人に迷惑をかけることは最大のタブーなので彼らはホテルマン並みの丁重さで、匍匐前進で僕らに道を譲ってくれる。彼らの異常な真剣さの理由はそれがもう現実を凌駕しているからだ、彼らは戦場にいる、戦場のほうが彼らにとって切実な問題なのだ、現実、現実とはなんだろうか?それは飢えと病と老いだ。ブッダ、サンクス。
彼らの戦場には核爆弾は無い、レーダーも機関銃も無い、ただライフルと拳銃とナイフ、そして肉体があるばかりだ。ナイフだけを使う(おもちゃのナイフだ)人間を彼らは尊敬を込めてアサルトと呼ぶ、アサルトは相手の電脳のボタンをナイフで押す、おれはその場面を見たことがある、その見ず知らずのゲーマーが青姦でもしてるのかと思ったほど、刺された方は恍惚としていた。
ゲーマー「・・・違う・・・、それはデコイだ・・動きで・・・おい!やられた?バカ・・・家で寝てな」
無線機に向かって語りかけていたゲーマー(どこかに隠れているらしくて姿はわからない)の最後の家で寝てなというのは最近の流行り言葉らしい。ゲームに参加するには兵士を買う必要がある、1000円で兵士が買える、自分をそこにインストールして街で戦う、一人倒すと500ポイントもらえる、現金にも変換できるし、少しだけ高性能なアモも買える。ゲーマーは昼の世界での労働を強制労働と呼び、それもこの重大な戦争の一部と考えている・・終わりはあるのか?よくは知らないが相手を全滅させたら終わりらしい、つまるところ終わりは無いということだ。このゲームは一発でも撃たれて死ねばすべてを失う、何もかもだ。ポイントも武器も、アイテムも、アモも。また初期装備で兵士から始めないといけない(撃墜数で階級が上がる)、shogunも兵士のライフル一発で死ぬのだ、街に繰り出せば死なないのはほぼ不可能だと言っていい。よくフィールドに入った瞬間を狙撃されるらしいので彼らはフィールドに入るときに奇妙な反復横跳びか匍匐前進で進む、拡張現実を見てない人にはキチガイだ。しかし彼らは文明が一度滅びた黄昏のセカイとやらを見ているらしい・・・ともかく新時代のゲーマーはともかく足腰がやたらと鍛えられている・・おれもアキに会うことがなかったらたぶんこいつらと一緒に深夜三時の休戦時間にコンビニに集まってミリタリーご飯をかっこんでいたに違いない。アキはおれの人生を変えてしまった、あらゆる出会いは少なからず人の人生を変えてしまうものだけど・・・それは最初は恋愛だった、恋愛の炎はオナニーをした後にはさっぱり消えてしまうのを発見してもアキからは離れられなかった、それは存在論的孤独やら、高尚な観念ではなかった・・・ひょっとしたら友達になりたかったのかもしれない、そうだとしたらおれは今シアワセすぎるって事になる、夏の初め頃からじっとりをおれを包んでいる焦燥感と不安は・・・これはシアワセってやつだ。シアワセに殺されてしまう・・
アキの魅力ってものの秘密は二年近くもストーキングしたのにさっぱりわからなかった、外見的なものだとしたら、それは良いものに違いないけれど、それならばアイドルだろうが彫刻だろうがアキよりも優れたものは・・いくつかは見つかるだろう、性格だって一言で言えば傲慢、これに尽きる。コケティッシュな傲慢といったらいいのだろうか、それは横柄とか命令口調とかそういうのとは違うのである、ただアキは自分が世界で一番人間的だという動かない信念を持っていて、まるで信念が歩いてるようなのだ。女神のように傲慢、これだ。
最近になってようやくそれがわかってきた、特にアキがストーカー3のアイデアノートをおれに渡してくれた時にわかった、こいつはテロリストの眼をしてやがる・・死を美化しない、死後の世界にも興味がない、思想も過去も未来も無い純粋無垢なテロリストだ。
あのゲームにもアサシンよりも有る種の畏敬を込めて呼ばれるプレイヤーがある、それはテロリストと呼ばれて徒党を組んでポイントを荒稼ぎしている人々の真ん中で爆発する、人間爆弾だ。爆弾は投げる事もできるのにそれをしない、誘導技術の発達していない理想的な戦場では人間がミサイルにならなければならないというわけだ・・・アキはよくヒトラーを話題にするけど、ヒトラーシンパではまったくない、ヒトラーこそアキが一番憎む敵であり・・そして一番求めてやまない敵なのだ・・・
生まれる時代や場所でアキは淫売スパイやらトロツキストやらゲバラの側近にでもなっていただろう、たまたま今生まれたこの時代、この場所では彼女は・・・ただの女子高生だった。
俊(ともかく親を丸め込むのに3時間もかかった、おれもアキみたいに海里の家に住み込みにさせてもらおうかな・・なんとなくもう二度と会いたくない、戦争に行ったらもう二度と家になって帰ってきたくない、確か夏目漱石にそんな話があった、戦争から帰ってくるなんて無様な事はしてくれるなって頼むんだ・・
けどもう夜になってしまったし、女の家に泊りに行くのもいかがなものか。けど家にいるのはなんとなく気が進まない、荷物ももうまとめてしまったし・・、明日の朝9時にまた海里の殺人レースに付き合うまでは暇だ・・ネカフェでも行って時間潰そうか・・・。
音もなく家を出た、家出だ、家出なんて初めてだ・・・母親は家族の中から共産主義者が出たみたいにおろおろしていた、親父は遠海、だけど少し嬉しそうだった、たぶん自分の子供がつまんない人生を歩むんじゃなかろうかと心配だったみたいだ。バカ親父め。家族は牢獄だ、家族さえいなければ人間はもっと自分のするべき事をやるはずなのに・・これは鉄球よりも強い力で人間の精神を引きずり下ろす・・
・・・もう夜風が冷たい・・なんで夜風だと梶原一騎を思い出すんだろう・・ゴーゴーバーなんて無いぞ・・、誰もいない公園、とりあえず腰を降ろす、久しぶりに夜空を見上げた気がする、何も見えやしないから見上げる事はないから・・月だけがやけにキラキラと輝いている・・・月を見上げて歌を読もうとした初めの人間は天才だ・・どういう方法でそんな事思いついたんだろう・・、コトバを作った人間は・・どこに行った?コトバを最初にしゃべった人間は明らかにキチガイだと思われて沈黙の論理に撲殺されたに違いない、しかし撲殺者は眠りに落ちるときに気づくのだ、あれは・・なんだったんだ?そしてこの頭に残っている、これはなんなんだ?今している・・これは一体どういうものなんだ?えっ?おれはあいつのしたことをしているのじゃないか?こいつはおれに力を与えるに違いない、しかし・・永久の苦悩をすべてのモノにたいして与えるだろう、呪われたのだ、我々はあいつのせいで・・これは世界を切り離す力だ、その力で自分をまず世界から切り離してしまう・・
最近路上生活者を収容するための牢獄(正式にはシェルター)が立ち始めたという話を誰かから聞いた、それは建物というよりは貸し倉庫だ、あのコンテナが積み上がっている、単調な3d世界だ。そして牢獄は予想通り、一瞬で若者達の吹き溜まりとスラムと化した、肉体派のバックパッカー、浮浪者、サルトル主義者、スパイ、地に満ちた人間達は、奇跡の広場に集まってくる。さて・・しかし・・どうしよう?覗いてみたい気持ちはあるけど、トラブルは御免だ・・、うっとりとした寝不足の疲労がふともものあたりから這い上がって来た、一時期旅人になりたいと思っていた時があった、飢えて死ぬまでずんずんと歩き続くだけの旅人になりたいと思った・・しかしまだ早いと思った、それはもっと後でいい。いつか人は望まなくてもその旅に出るのだから・・この公園は大きな鉄道の真下にある、意図不明の空間にベンチを2つだけ置いて公園だと宣言してるほどのみじめな公園だ、三方をコンクリートの壁に阻まれて、上を見あげれば覆いかぶさるような鉄塔が川向かいの街へ高圧電流を流している。さすがにこんな殺風景なところには新中国シンパの人たちも一夜の宿を借りにはこないらしい、奇跡の広場に肌が合わないやつもいるはずなんだ、タダでやればいくらでも人間が集まるというわけじゃない。
最終電車から何本か前の列車が通り過ぎていった、ここから川をくぐるために一時的に地下に潜り込む、電車の中にいる人には無感動だが客観的に見ている人にはワクワクさせる場面だ、しかしその場面を見れる場所はあの鉄塔の上によじ登ったストリーカーしか知らない。
ストーカーをやっていた経験も手伝っておれはそういう人たちの事を知っている、ストリートアーティスト、乞食、流浪の人、つまり街によって動いている人たちだ、都市とともに呼吸している人間だ、彼らは都市の装飾品だ、生き物ではない、飾りなのだ、だからガウディの建築みたいに時折やたらと美しく見える、普段はえげつなく汚らしく醜い、そして困った事に臭い、臭いってのは嫌悪を引き起こさせる最大の要素だ、醜い人間は我慢出来る、サルトルは我慢できる、けどひどい匂いの革命家ってのは聞いたことがない、革命家は清潔だ。人を操る人間は清潔だ、あとはどんなバカでも、キチガイでも、ホモでもいい、デブだってガンジーのようなガリガリでも包茎でもインポでも淫売でもいい、ただ腋臭だけは勘弁してくれ。この世界はロリコンとスカさん達には殺人者に対するよりもはるかに厳しいのだ。
街に慣れた人は街の音楽を聞くことができるようになる、なにも考えずぼんやり佇んでいると街の音楽が聞こえる、それは街の環境音やらサウンドスケープというものとは無縁のもので鼓膜よりも脳の近くから聞こえてくる、振動そのものなのだ。音楽は空気の振動である、地震は巨大なバスドラムみたいなものだ、数式のようにもったいぶって意味のないものだ、もしくは意味がありすぎるものだ。鳥は空気を泳ぐ魚に過ぎない、けれど夜の空には魚がいない・・・魚も夜は眠るがエラ呼吸のために動き続けるのだという、海里みたいに脳の半分を寝させることが出来るやつもいる・・、夜にうごめく人間は実は夜の夢を見ている、寝ても覚めない夢なんだそれは・・・
サルトルは家も荷物も何も持たずにカフェでずっとねばってノートに書き物をして生きていたという都市伝説がある、友達がおごってくれるらしい。サルトルは晩年テロリズムこそが自由の道だと宣言したらしい、これは本当らしい、警察だって暴力で攻撃してくるのになぜ人民だけが、暴力で何かを言うことを禁じられるのか?暴力以外のコトバを持たないゴリラが90%の社会で、コトバで何が解決出来るのか?ベンヤミン式の暴力論ってわけだ・・・
吐き気をもよおしていたのは若いサルトルであったということだ、おれも立ち読みで漫画をよんで絵がかなり手が込んでいるのに、内容が地域自治体のパンフレット以下の代物(ほとんどすべての漫画)を読んだ時に吐き気を催す、なんでこんなつまらないことに才能を使ってしまったんだ?彼らの無駄に使われてしまった時間がおれにとっては吐き気を催させる、背筋が凍る。恐ろしく高価な電脳、ソフトウェアそして綿密に組織されたクリエイターと制作管理、そして出来たものは恐ろしく上手く出来たガラクタでは・・・
火星への宇宙船づくりはガラクタづくりだろうか?これはわかりにくい・・非常にわかりにくい、パッと見は勇気のある冒険のように思える、深層においてはそれは単なる自殺と生への軽蔑、そしてある種の達成感を持っている・・・アキは昔言っていた、最近の作品は・・別に最近でもないけど、恋愛に比重を置きすぎてた、神が死んだ後に、攻撃を受けるのはまさにそのもう一つの嘘っぱちの恋愛原理に違いない、シェイクスピアは若い時にロミオとジュリエットを書いた、ウィリアムがそこにとどまっていれば彼はシェリーくらいの重要さしかない恋愛詩人で終わった、けれどウィリアムはそこを超えた、恋愛は本質的には死への賛美歌で、結局のところ・・・小市民的死、恐ろしく低劣でくだらないものにシルクのカバーをかけたものだと看破した、キングリアはウィリアム自身で、たぶん彼はあらゆる悲劇を舐め尽くして・・狂気を演じている・・・そしてリアは何故か・・私にとっては恐ろしく感動的だ。ドストに裏切られた若者はウィリアムに頼る他ない、ウィリアムは裏切ったりしない・・・反動主義芸術家(彼らは巨匠と呼ばれる)に裏切られた私たちは・・・
ノーベル賞を拒絶した時サルトルは語った、私を過去の過ちということで済ましてはならない。サルトルが死んだ時世間はこういった、羅針盤を失ったと。何かが起こった時、サルトルはどう動いたか?まずそれを人々は知りたがった、それは大江健三郎がどう動いたかとはまったく規模が違う、大江健三郎は・・裏切り者だ。いや裏切り者ですら無い、あいつは・・・チ○○ス野郎だ。もしくは卑怯者だ。アキは同じサルトルよりもラッセルが死んだ時のほうがショックだったと言った、もちろんもしその時代に生きていればの話。アキはラッセル主義だ、そんな主義があればの話・・・ともかくそういう羅針盤的な働きをする人間というのはいなくなった、すべては金の論理で動いている、おれは世界の動きを知っていると構えているエコノミスト?は公債関係で世界の動きを120%の正確さで予測するだろう、彼らは間違えようがないほど世界の有様を知っている、じゃあ彼らを預言者に据えておけばいいじゃないかというとそうでもない、彼らは正確に未来を教えてくれるだけで、その未来にどうやって立ち向かうかを永遠に教えてくれはしないから。付け加えればエコノミストにカネを払って未来を教えてもらうよりももっと手早く済ます方法がある、それは淫売婦に未来を聞いてみることだ、やつらは今では女優とかアイドルとか呼ばれているけれど・・・世界の始まりから彼らは生まれ続けている、ニーチェは女を嫌った、ニーチェは軍隊があれば女を全滅させていたかもしれない、それは・・・非常に感謝されるべき事なのかもしれない。世界はまだ石器時代の前より続く淫売婦の時代にいる・・・淫売は公債より古い。
最終列車が川の底へ下って行った、これでようやく電車にのって海里の家に行けなかったので歩いていくより仕様がなかったのだという事になる、この言い訳は誰かにするんじゃない、自分にするのだ。考え事に集中していて期を逸したのだ、残念なことだ。拡張現実のHMDサバイバルゲームが始まったらしい、夜中になるとどこの都市でもこのサバイバルゲーマーが現れる、彼らは赤外線の銃コントローラー片手に異常な真剣さでこのゲームに参加している、そして一般人に迷惑をかけることは最大のタブーなので彼らはホテルマン並みの丁重さで、匍匐前進で僕らに道を譲ってくれる。彼らの異常な真剣さの理由はそれがもう現実を凌駕しているからだ、彼らは戦場にいる、戦場のほうが彼らにとって切実な問題なのだ、現実、現実とはなんだろうか?それは飢えと病と老いだ。ブッダ、サンクス。
彼らの戦場には核爆弾は無い、レーダーも機関銃も無い、ただライフルと拳銃とナイフ、そして肉体があるばかりだ。ナイフだけを使う(おもちゃのナイフだ)人間を彼らは尊敬を込めてアサルトと呼ぶ、アサルトは相手の電脳のボタンをナイフで押す、おれはその場面を見たことがある、その見ず知らずのゲーマーが青姦でもしてるのかと思ったほど、刺された方は恍惚としていた。
ゲーマー「・・・違う・・・、それはデコイだ・・動きで・・・おい!やられた?バカ・・・家で寝てな」
無線機に向かって語りかけていたゲーマー(どこかに隠れているらしくて姿はわからない)の最後の家で寝てなというのは最近の流行り言葉らしい。ゲームに参加するには兵士を買う必要がある、1000円で兵士が買える、自分をそこにインストールして街で戦う、一人倒すと500ポイントもらえる、現金にも変換できるし、少しだけ高性能なアモも買える。ゲーマーは昼の世界での労働を強制労働と呼び、それもこの重大な戦争の一部と考えている・・終わりはあるのか?よくは知らないが相手を全滅させたら終わりらしい、つまるところ終わりは無いということだ。このゲームは一発でも撃たれて死ねばすべてを失う、何もかもだ。ポイントも武器も、アイテムも、アモも。また初期装備で兵士から始めないといけない(撃墜数で階級が上がる)、shogunも兵士のライフル一発で死ぬのだ、街に繰り出せば死なないのはほぼ不可能だと言っていい。よくフィールドに入った瞬間を狙撃されるらしいので彼らはフィールドに入るときに奇妙な反復横跳びか匍匐前進で進む、拡張現実を見てない人にはキチガイだ。しかし彼らは文明が一度滅びた黄昏のセカイとやらを見ているらしい・・・ともかく新時代のゲーマーはともかく足腰がやたらと鍛えられている・・おれもアキに会うことがなかったらたぶんこいつらと一緒に深夜三時の休戦時間にコンビニに集まってミリタリーご飯をかっこんでいたに違いない。アキはおれの人生を変えてしまった、あらゆる出会いは少なからず人の人生を変えてしまうものだけど・・・それは最初は恋愛だった、恋愛の炎はオナニーをした後にはさっぱり消えてしまうのを発見してもアキからは離れられなかった、それは存在論的孤独やら、高尚な観念ではなかった・・・ひょっとしたら友達になりたかったのかもしれない、そうだとしたらおれは今シアワセすぎるって事になる、夏の初め頃からじっとりをおれを包んでいる焦燥感と不安は・・・これはシアワセってやつだ。シアワセに殺されてしまう・・
アキの魅力ってものの秘密は二年近くもストーキングしたのにさっぱりわからなかった、外見的なものだとしたら、それは良いものに違いないけれど、それならばアイドルだろうが彫刻だろうがアキよりも優れたものは・・いくつかは見つかるだろう、性格だって一言で言えば傲慢、これに尽きる。コケティッシュな傲慢といったらいいのだろうか、それは横柄とか命令口調とかそういうのとは違うのである、ただアキは自分が世界で一番人間的だという動かない信念を持っていて、まるで信念が歩いてるようなのだ。女神のように傲慢、これだ。
最近になってようやくそれがわかってきた、特にアキがストーカー3のアイデアノートをおれに渡してくれた時にわかった、こいつはテロリストの眼をしてやがる・・死を美化しない、死後の世界にも興味がない、思想も過去も未来も無い純粋無垢なテロリストだ。
あのゲームにもアサシンよりも有る種の畏敬を込めて呼ばれるプレイヤーがある、それはテロリストと呼ばれて徒党を組んでポイントを荒稼ぎしている人々の真ん中で爆発する、人間爆弾だ。爆弾は投げる事もできるのにそれをしない、誘導技術の発達していない理想的な戦場では人間がミサイルにならなければならないというわけだ・・・アキはよくヒトラーを話題にするけど、ヒトラーシンパではまったくない、ヒトラーこそアキが一番憎む敵であり・・そして一番求めてやまない敵なのだ・・・
生まれる時代や場所でアキは淫売スパイやらトロツキストやらゲバラの側近にでもなっていただろう、たまたま今生まれたこの時代、この場所では彼女は・・・ただの女子高生だった。
2012年3月24日土曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep14
14 exemplify , seeking youth
アキ(というわけでどうせ休みを取るなら3日くらい一気にとっちゃえということで私たちは三人そろって一度東京に帰る事にした。学校の色んなスケジュールをもらいに行って(受験勉強で二学期から私たちのように学校にほとんど来なくなるのが普通の学校です)、アパートを取っ払って荷物を実家に送って海里の家に食客になることにした。私はそういうのを申し訳ないと思わない人なので、もらえるものはもらうといった感じである。海里の家は食客になるにはうってつけで、誰とも会いたくないときは誰にも会えないでいれる造りになっているし、どうやらこの家にはあの私を毛嫌いするニホンオオカミと海里と、すごくたまに親戚が泊まりにくる程度しか人気がないということがわかった。だからあのエゾシマリスが増長してるんだ。しかし古い家なのに老人軍団が一人もいないというのはどういうことなのだろう、こんなゴミゴミした街よりももっと美しいスイスの山荘とかで余生を送るのだろうか、おえっ・・ともかく畳で寝るのは十何年かぶりで、肩甲骨が痛くなった。次の日にともが黒猫とともに遊びにやってきた。
とも「どういうわけか黒猫になりました」
アキ「もしかしてペットショップで売れ残ってもうすぐ保健所行きだという話を聞いていてもたってもいられずに購入したの?」
とも「違います、姉ちゃんのなんですけど引っ越すことになってペット飼えなくなったから私の家に戻ってきてたんです、さみしいからこいつを持っていったのに男ができたらぽいされたってわけです」
アキ「・・なんかそっちのエピソードのほうが悲しいね、姉がいるんだ」
とも「5人います」
アキ「5人!私だったら名前も覚えられないな」
とも「さすがに覚えますよ、それにしても全然似合わない服着てますね、ワンピースなんてちょっと清楚すぎるじゃないですか、なんか保守的な人に資金援助してもらいにでもいくんですか?」
アキ「ドクターの借り物」
海里「妹のだよ」
海里がいつものように気配を消して飲み物を持ってきた、海里は登場するときにはまったく気配を見せないのだ。ネコ科から進化したんだと思う。日本茶だ。
アキ「妹いたの?」
海里「うむ・・・妹っていうと怒るんだけどね、ほら・・・・」
アキ「はぁ・・アニムスね」
海里「私のだと丈がたらなすぎてスーパーミニになっちゃうから、妹っていうと怒るから友達って呼べって言われてるの、その人こそ、私が助手として欲しい人材なのだけれど・・性格に難有り」
アキ「どういうかんじの難なの?傲慢とか、欲深いとか?そんなキリストの大罪系?それとも天然でおばかちゃんなのか・・あるいは複雑な人格障害とか、多重人格とか?」
海里「・・う~~んと・・、なんといったらいいかなぁ?・・時に私の性格ってどう思う?」
アキ「・・?やや異常」
海里「じゃあそれと同じ、クローンなの」
とも「くーろん?」
海里「これオフレコね、クローンなの、クローン、クローン、同位体、アイソトープ」
アキ「何の?誰の?だって・・?え?」
海里「かなりこれは説明が必要なんだけど、私が向こうでやってたのは航空工学でもロケット開発でも理論物理学でも核物理学でもなくて、原子・・建築学みたいなものなの、つまりさぁ、こう、原子を1つずつ並べ換えて、物質を作る、原子構造上まったく同じもの、違いは同位体のみ、それは組み立てている途中でも原子が変化していってしまうから100%同じにはならないのだけど・・」
アキ「それで自分のコピーを作ったの?」
海里「まさか、そんな段階にはまだ全然達してないよ、細胞一個作るのだって大変なことだもん、よく考えればわかりそうなものでしょ、何をコピーするのが、一番大事なのか」
とも「DNA」
海里「8割正解、DNAだけではなんにもならない、周りの物質を変化させる司令塔、オーガナイザーを作ればいいんだ」
アキ「命を作るってこと?」
海里「ではない、命が何かってのの定義にもよるけど・・ウィルスみたいなものだね、DNAを書き換えて行ってしまうウィルス。理論上はそうなんだけれど上手くいかないものなどもたくさんあって、ウィルス自体も何か別のウィルスの借り物で、荷物だけを変えるのが限界なんだ、ウィルスの伝える情報をコピーして書き換えするくらいが今の限界、さてそういったものがあるとして一体何をしよう?何にそれは役立つでしょうか?」
アキ「ただ毒殺や暗殺するなら別にそんな複雑なもの必要ないものね、クローンは法律で禁止されておるし、こないだも死刑というか廃棄されたでしょ、クローン受精卵・・」
とも「ニュースはずっとそればっかやってましたね、もうどこかに必ずクローン人間はいるって・・」
海里「いるでしょうね、失敗続きだけど。ただ何のためにクローンが必要なのかさっぱりわからないよね、人工的に双子作ってるのと同じだもん、それで何が解決されるのかって話、DNAの劣化が止められるわけでもないし・・・、センチメンタルなやり方だけど恋人を蘇らせたって年も違えば性格も違う、時間差で双子を作ってるだけだもん、外見が似てればそれでいいんだってなら別にアンドロイドでもマネキンでも、整形でもいいじゃん、ピグマリオン状態。最も良くないのは、記憶が残らないってことだよね。おいしい牛をクローンさせるとか言ってるけどそこまでして別に旨い肉なんて食べたくないしね。私達がやりたいのは・・・・記憶のクローンなんだ、人格のクローンだと言ってもいい」
アキ「やったの?・・・というか出来るの?」
海里「実験中、私の記憶を埋め込めた・・はずなんだ、まぁ不安定なんだけど。他人の記憶を書き換えてしまうのが殺人だと思うなら、私は彼女を殺してしまったよ、もちろん同意の上だけど。実際は・・・そこまで完全にはいかなかったみたいだけど・・・まぁその研究の途中で偶然核融合の技術も生まれたというわけなんだ・・どう?私の事嫌いになった?そんな人間の聖域をレイプするみたいな事をやってるサイコ野郎だとは思ってなかったでしょ?それは美人のクローンを作って性奴隷として販売するよりもグロテスクで許せない事だって思う人もいるようだし・・・全部作り話って事にしよっか?記憶のクローンが存在してるとするなら、一度きりの人生を生きる人間を映すっていう映画の目的にも反してしまうしね」
アキ「・・・その決断は保留しておくけどなんでそんなこと話したの?」
海里「別に話したところで嘘ですってことにもできるし、普通は信じないからね、脳にウィルスを感染させて記憶の書き換えが出来るなんて、そんなはずないじゃんか、原子の配列からいじったところで、記憶っていうのは、精神っていうのは、ほら永遠だとかなんとか、信じているでしょう、ガチガチのマテリアリストだって魂、霊魂の不滅・・・人間の尊厳みたいな事をぬかすじゃん。あとアキはもう私に経済的に依存してるし、取り込めるかなと思ってハハハ、それにずっと最後まで嘘つき続けるのは悪いなと思った・・・ともちゃんはちょっと奇妙な怪談を聞いたくらいに思ってください」
とも「でも・・・本当に信じらんない話ですね、というか信じられないです」
アキ「私も、そんなやり方でそれが出来るのかなぁ?霊魂の不滅だのを信じてるわけじゃないけど・・ドーキンスみたいなサイエンスオカルトにしか聞こえないね」
海里「じゃあそれが一番いいじゃん、私の気持ちの問題だからさ、確かめようもないし。私の精神異常による誇大妄想かもしれないものね、彼女っていうのも本当には存在してないのかもしれないし・・・まだファインマンの途中でしょ?物質には量子的飛躍があるなんて説明はしないほうがいいよね、記憶もまた・・連続的ではない・・だめだ!職業病だよね、説明癖がついてる、おちゃのおかわりどうぞ」
とも(海里さんは生まれが良いだけあって、しっとりと湯のみにお茶を入れてくれた、あの急須にお湯をかけられる感じのお盆すら私は初めて実物を見た、ただ味は普通のお茶だった)
とも「ところで俊君は?」
アキ「親ともめてるって、連絡あった」
海里「彼にはこの話はしないほうがいいと思う、意外と・・フラジャイルなところがあるからさ、なんにも無関心に見えてね、まぁどこでもたいがい、男ってのは分子生物学的なことはヒステリックだよね」
とも「ゾルゲはどうですか?」
アキ「あとすこし、私がちょっと遅れちゃってる、あの造形ってめっちゃくちゃ集中力消耗するんだけど、覚悟すべしだよ」
とも「そうですか・・私内職で物理結構進みましたよ、記憶は連続的ではないっていうそういう発想をするんですね、勉強になりますね」
海里「もっと真逆に考える人もいるけどね、そこに・・もっといわゆるマテリアリズムを超える超現実的な現象を説明する人もいるし、パウリとかそれだった気がする、私みたいにさらに・・・さらに夢のない世界を見る人もいる。ともかく私は応用物理学で理論物理学者じゃないからあんまり信用しないほうがいいよ、邪道ですからね応用なんとか・・は、やってることも・・特別私が邪道なのか、アハハハ」
アキ(アハハハじゃないですよ・・ブレーキいかれてやがるこの女・・もし今の話が本当なら・・それって洗脳兵器ってことじゃん・・・湊海里は私には大きすぎる相手なのかも・・ごろんと大の字の転がって天井を見る・・ふぅ・・い草の匂い、上下反転した日本庭園を見る・・・誰が手入れしてるんだろう・・、あのワシワシなってる密度が高いちっちゃな木は一体何て言うんだろう・・、嘘みたいな秋晴れ、雲ひとつ無い・・・私は私の世界についてほとんど知らない、別に植物の名前を覚えろとは言わないけど・・少しは知っておいたほうがいいのかもしれない、ファインマンさんが名前をつけることは、カオスな世界からその構造を抜き出す事だと言っている、植物の名前も化学式のほうに名と構造が一致したものであればいいのに、HT-hat-R3(双子葉、根毛、花は赤、3月頃に咲く)みたいに・・アルファベットは適当。それに、私は私の時代について全く知らない、過去についてはたくさんのことを知っているし、未来の事もほとんど察しはついているのに、特に遠い未来については・・この時代、この現代について何も知る術が無い、後世人が、この時代を象徴する事件やら、大芸術家だとか重要人物だとかは、同時代の私達にとっては、時代に埋もれてしまってまったく知る術がない、あらゆる発行物、新聞やら雑誌を見ても彼らはまだ存在してない、彼らは発見されるのはいつでも未来なんだ・・・特に私たちの時代は、本物はどこかに埋もれてしまう、シェイクスピアが発見されるのはすぐだし、ドストエフスキーでもそれほどかからない、けどカフカが発見されるには・・・、今火星を目指してNASA以外で宇宙船が作られてるなんて誰が知ってるだろう、核兵器後の精神戦争時代の最終兵器の原型がすでに完成したと誰が知ってるだろうそれとおんなじように、何か面白いことや、未来を確定させるようなものがたった今どこかで産まれているのに・・・あのマスターピースはたった今作られてるかもしれないのに・・・)
とも「そっかなるほど!ありがとうございます」
アキ(さっきからともちゃんは物理の問題を説明してもらってた、海里は頭がいいやつに特有の、まわりくどいが示唆に富む説明を繰り広げてたみたいだけど私はまったく聞いてなかった)
とも「アキが今何考えてたか当てるゲームしましょう」
アキ「なんだそのゲーム・・」
海里「今日の晩御飯」
アキ「ブー」
とも「コーヒー」
アキ「それは本当に今考えてる事だね」
海里「映画の構成」
アキ「違う、それは昨日寝る前に考えてた事だね、映画にはならないよね、映画には・・アクションが必要なんだ、アクションが。こういう静かな物語は、文字でやらないと飽きてしまうから・・・映画や漫画はもう死んだ芸術なのかもね、そのアクションを必要とすると、結局戦争かスポーツくらいしかないもん、それはもう散々やられてきたし・・・不自然なんだよね、アクションばっかりの物語って・・・これからどんどん芸術は視覚に依存するって誰もが言ってるでしょ?事実売れてるし、だから本当は真逆な気がする、もう視覚には飽きたのかもしれない・・・ただ・・あの文学的な描写ってのを使いたくはないんだよね・・夜は彼にとって切れ切れのナイフだった、彼の心を支配しているのは憎悪が歪んだ、情欲の鎖と喉に詰まる咽頭がんのような彼女に対する憐憫だった、空気は密度が濃く圧縮されてスチレンボードのように彼の鼓膜を叩いた。彼の手はもはや彼のものではなく千の海でさえ洗い落とせない血に汚れている・・・みたいな、くだらないですよね、なんでそれがくだらないということになったのかは・・かなり大事な事なんだろうけど・・・ともかく一体どうすればいいのか暗中模索だって事・・・・はぁ、私も火星にグッバイしたいぜ・・・・そして正解はあの庭に生えてる木の名前はなんていうんだろうなって考えてたの」
とも「マロニエじゃないですよね?」
海里「全然違うよ・・といっても私も知らないけど」
アキ「どうした天才ちゃん」
海里「別に天才だから何でも知ってるわけじゃないじゃん、天才画家だって象を見たことなければ象は描けないもん、まぁ自分ちの庭木くらい知っててもよさそうなものだけど」
とも「検索かけるにも手がかりがないですね・・そしてやたら天気いいなぁ」
アキ「・・海里は何か新しい事をやってる時にさぁ突然なんかこんなの全然意味ないやってこぉ・・神経衰弱になったりするの?」
海里「なるよ、常になる、もぉ慣れてるからそういう時は他のことが考えられないくらい仕事に集中する、そしたらいつの間にか消えてるものだよね、あの・・ものすごくトイレに行きたい時に波があるみたいに」
アキ「ハハ、確かにそうだ、でもそれじゃどんどんエスカレートしてって最後に爆発するんじゃないの?」
海里「それをひらめきっていうんですよ、下手したら廃人だけどね」
とも「今神経衰弱なんですか?」
アキ「まだ、これから・・・、ともちゃんは?」
とも「私?私はそういうのとは無縁ですよ、深く考えるっていう才能が無いですから、特にそういう哲学的な事は」
海里(羨ましいやつ、ってたぶんアキも同じ感想、まぁまだ若いってのもあるのか、っていうかそっちが普通だ、アキはさっきからずっと天井に向かってしゃべっている、胸が無い上に白いワンピースを着ているからこうやってみると遊びに来たいとこか何かだ、誰かに似てる・・・誰だっけ?私も仰向けに倒れてアキと同じポーズをとった、もちろんともちゃんもそれに習う・・意図的な沈黙がさぁっと風と共に流れていった。
アキ「ともやん(ほっぺたに力が入ってない)、普通の女の子だったらこんな時何するの?友達の家に集まって、お茶を飲んだ後・・」
とも「私恐ろしく友達いないからわからないです・・そういうのはアキのほうが詳しいんじゃないですか?昔は愛想を振りまいてたんでしょ?」
アキ「・・そうだ・・遠い昔の話みたい、まるで一つの人生を隔てたみたいに・・・好きな人の話と、お菓子だな、あと炭酸」
とも「買ってきます?」
アキ「いいよ・・海里って誰か人を好きになったことってあるの?」
海里「私?・・・・んぅ?・・・俊君は割りと好きだったよ、といっても7歳の時だし・・そういう淡い恋心がないおさなじみってのもありえないからね・・・私は・・・結構私自身が好きかな、気に入ってる」
アキ「一番好きなものは何ですか、不思議な人よ教えてください、父親、母親、妹、それとも弟ですか?
私には父も母も、妹も弟もおらぬ
では友達ですか?
そんな言葉は、今に至るまで私の知らない言葉です
祖国ですか?
そんなものがどこにあるかも知りません
美ですか?
それが不死身の美しさなら、好きになることもできます
金は?
あなたが神を嫌うように、私はお金が大嫌いです
では何が好きなんですか、 extraordinaire étranger ?
J'aime les nuages... les nuages qui passent... là-bas... là-bas... les merveilleux nuages !」
とも「どうしたんですか?霊でも降臨したんですか?」
海里「フランス語だからランボーとか?」
アキ「ボードレール、巴里の憂鬱、L'Etranger、最後の部分和訳できないけど和訳すると・・では一体何が好きなのですか?異常なレトランジャー?
私は雲が好きなのです、ほら雲が通り過ぎていく、ほら・・ほら・・美しい雲が・・」
海里「まるで私たちの事を言ってるみたいだね・・・ってこんな恥ずかしいセリフを私に言わせるつもり?」
アキ「まさしくそのとおり、ほらこういうのは突然思い浮かぶものだっていったじゃん、L'Etrangerこれがこの作品のタイトル、そしてロケットの名前、いいでしょ?」
海里「いいんじゃない、短くて」
とも「L'Etrangerってカミュの小説の原題ですか、なんか聞いた事あると思った、異邦人・・」
アキ「異邦人っていうよりは・・属していない人って意味かな、foreigner でもoutsiderでもAlianでもなく・・・belong to nowhere、この島国みたいに属していないってことがありえない国ではそんなコトバが生まれようが無いよね・・」
海里「それが不死身ならば愛することが出来る、それが示唆的だよね、たぶん・・あと30年もすればナノテクか何かで不老は完成するだろうし・・だから私たちは第二次大戦の前の30年とだいたい同じ状態にいるんだと思う、あと何十年かすれば戦争がまったく無意味になるのに、革命やら戦争やら、命をほうり投げてた、でも・・・」
アキ「それが無意味ってことにはならないんだよ、そう、私はそう信じてる・・・不老になったら価値観が変わるだろうな・・不老になったとしても、本質的な問題は変わらないって私は思っていたけど・・やっぱりそれも違うのかな・・・全然違う価値観になっちゃうのかも・・結局人間は孤独なままだし、神様なしじゃ生きてく意味もみつかんない、なんて言ってたら何時代遅れな事言ってるんだって言われるのかもね・・・って普通の女の子はこんな話せぇへんって・・・」
とも「自分が始めたんじゃないですか」
アキ「・・・やっぱ買ってきて、コーラ、ポテチ、マック近くにあった?」
海里「買ってきてもらえるよ、その為に雇ってるんだもん」
アキ「ツービッグマック」
とも「私チキンタツタと・・、あればビタミンマッチ、無ければサイダー」
海里「私は・・チキンナゲットとカフェモカかな・・すいませ~ん」
アキ「便利だ・・なんか何故ブルジョアはブルジョアにしがみつきたがるのかわかった気がする」
海里「中国ではマックよりケンタのほうがたくさんあったなぁ・・カレーとか点心とか売ってるんだよ、上海では」
アキ「まじか?・・・ローカライズって何でもありなの・・っていうか中国にも行ってたんだ」
海里「マッドサイエンティストとして足がつかないようにね、新中国政府は、そういう人間を望んでるみたいだったけど、ただみんながみんなを憎んでるようなところでは悪者だって生きづらいんだよね、悪者だって誰かを信用しないと悪いことは出来ませんからね」」
アキ(というわけでどうせ休みを取るなら3日くらい一気にとっちゃえということで私たちは三人そろって一度東京に帰る事にした。学校の色んなスケジュールをもらいに行って(受験勉強で二学期から私たちのように学校にほとんど来なくなるのが普通の学校です)、アパートを取っ払って荷物を実家に送って海里の家に食客になることにした。私はそういうのを申し訳ないと思わない人なので、もらえるものはもらうといった感じである。海里の家は食客になるにはうってつけで、誰とも会いたくないときは誰にも会えないでいれる造りになっているし、どうやらこの家にはあの私を毛嫌いするニホンオオカミと海里と、すごくたまに親戚が泊まりにくる程度しか人気がないということがわかった。だからあのエゾシマリスが増長してるんだ。しかし古い家なのに老人軍団が一人もいないというのはどういうことなのだろう、こんなゴミゴミした街よりももっと美しいスイスの山荘とかで余生を送るのだろうか、おえっ・・ともかく畳で寝るのは十何年かぶりで、肩甲骨が痛くなった。次の日にともが黒猫とともに遊びにやってきた。
とも「どういうわけか黒猫になりました」
アキ「もしかしてペットショップで売れ残ってもうすぐ保健所行きだという話を聞いていてもたってもいられずに購入したの?」
とも「違います、姉ちゃんのなんですけど引っ越すことになってペット飼えなくなったから私の家に戻ってきてたんです、さみしいからこいつを持っていったのに男ができたらぽいされたってわけです」
アキ「・・なんかそっちのエピソードのほうが悲しいね、姉がいるんだ」
とも「5人います」
アキ「5人!私だったら名前も覚えられないな」
とも「さすがに覚えますよ、それにしても全然似合わない服着てますね、ワンピースなんてちょっと清楚すぎるじゃないですか、なんか保守的な人に資金援助してもらいにでもいくんですか?」
アキ「ドクターの借り物」
海里「妹のだよ」
海里がいつものように気配を消して飲み物を持ってきた、海里は登場するときにはまったく気配を見せないのだ。ネコ科から進化したんだと思う。日本茶だ。
アキ「妹いたの?」
海里「うむ・・・妹っていうと怒るんだけどね、ほら・・・・」
アキ「はぁ・・アニムスね」
海里「私のだと丈がたらなすぎてスーパーミニになっちゃうから、妹っていうと怒るから友達って呼べって言われてるの、その人こそ、私が助手として欲しい人材なのだけれど・・性格に難有り」
アキ「どういうかんじの難なの?傲慢とか、欲深いとか?そんなキリストの大罪系?それとも天然でおばかちゃんなのか・・あるいは複雑な人格障害とか、多重人格とか?」
海里「・・う~~んと・・、なんといったらいいかなぁ?・・時に私の性格ってどう思う?」
アキ「・・?やや異常」
海里「じゃあそれと同じ、クローンなの」
とも「くーろん?」
海里「これオフレコね、クローンなの、クローン、クローン、同位体、アイソトープ」
アキ「何の?誰の?だって・・?え?」
海里「かなりこれは説明が必要なんだけど、私が向こうでやってたのは航空工学でもロケット開発でも理論物理学でも核物理学でもなくて、原子・・建築学みたいなものなの、つまりさぁ、こう、原子を1つずつ並べ換えて、物質を作る、原子構造上まったく同じもの、違いは同位体のみ、それは組み立てている途中でも原子が変化していってしまうから100%同じにはならないのだけど・・」
アキ「それで自分のコピーを作ったの?」
海里「まさか、そんな段階にはまだ全然達してないよ、細胞一個作るのだって大変なことだもん、よく考えればわかりそうなものでしょ、何をコピーするのが、一番大事なのか」
とも「DNA」
海里「8割正解、DNAだけではなんにもならない、周りの物質を変化させる司令塔、オーガナイザーを作ればいいんだ」
アキ「命を作るってこと?」
海里「ではない、命が何かってのの定義にもよるけど・・ウィルスみたいなものだね、DNAを書き換えて行ってしまうウィルス。理論上はそうなんだけれど上手くいかないものなどもたくさんあって、ウィルス自体も何か別のウィルスの借り物で、荷物だけを変えるのが限界なんだ、ウィルスの伝える情報をコピーして書き換えするくらいが今の限界、さてそういったものがあるとして一体何をしよう?何にそれは役立つでしょうか?」
アキ「ただ毒殺や暗殺するなら別にそんな複雑なもの必要ないものね、クローンは法律で禁止されておるし、こないだも死刑というか廃棄されたでしょ、クローン受精卵・・」
とも「ニュースはずっとそればっかやってましたね、もうどこかに必ずクローン人間はいるって・・」
海里「いるでしょうね、失敗続きだけど。ただ何のためにクローンが必要なのかさっぱりわからないよね、人工的に双子作ってるのと同じだもん、それで何が解決されるのかって話、DNAの劣化が止められるわけでもないし・・・、センチメンタルなやり方だけど恋人を蘇らせたって年も違えば性格も違う、時間差で双子を作ってるだけだもん、外見が似てればそれでいいんだってなら別にアンドロイドでもマネキンでも、整形でもいいじゃん、ピグマリオン状態。最も良くないのは、記憶が残らないってことだよね。おいしい牛をクローンさせるとか言ってるけどそこまでして別に旨い肉なんて食べたくないしね。私達がやりたいのは・・・・記憶のクローンなんだ、人格のクローンだと言ってもいい」
アキ「やったの?・・・というか出来るの?」
海里「実験中、私の記憶を埋め込めた・・はずなんだ、まぁ不安定なんだけど。他人の記憶を書き換えてしまうのが殺人だと思うなら、私は彼女を殺してしまったよ、もちろん同意の上だけど。実際は・・・そこまで完全にはいかなかったみたいだけど・・・まぁその研究の途中で偶然核融合の技術も生まれたというわけなんだ・・どう?私の事嫌いになった?そんな人間の聖域をレイプするみたいな事をやってるサイコ野郎だとは思ってなかったでしょ?それは美人のクローンを作って性奴隷として販売するよりもグロテスクで許せない事だって思う人もいるようだし・・・全部作り話って事にしよっか?記憶のクローンが存在してるとするなら、一度きりの人生を生きる人間を映すっていう映画の目的にも反してしまうしね」
アキ「・・・その決断は保留しておくけどなんでそんなこと話したの?」
海里「別に話したところで嘘ですってことにもできるし、普通は信じないからね、脳にウィルスを感染させて記憶の書き換えが出来るなんて、そんなはずないじゃんか、原子の配列からいじったところで、記憶っていうのは、精神っていうのは、ほら永遠だとかなんとか、信じているでしょう、ガチガチのマテリアリストだって魂、霊魂の不滅・・・人間の尊厳みたいな事をぬかすじゃん。あとアキはもう私に経済的に依存してるし、取り込めるかなと思ってハハハ、それにずっと最後まで嘘つき続けるのは悪いなと思った・・・ともちゃんはちょっと奇妙な怪談を聞いたくらいに思ってください」
とも「でも・・・本当に信じらんない話ですね、というか信じられないです」
アキ「私も、そんなやり方でそれが出来るのかなぁ?霊魂の不滅だのを信じてるわけじゃないけど・・ドーキンスみたいなサイエンスオカルトにしか聞こえないね」
海里「じゃあそれが一番いいじゃん、私の気持ちの問題だからさ、確かめようもないし。私の精神異常による誇大妄想かもしれないものね、彼女っていうのも本当には存在してないのかもしれないし・・・まだファインマンの途中でしょ?物質には量子的飛躍があるなんて説明はしないほうがいいよね、記憶もまた・・連続的ではない・・だめだ!職業病だよね、説明癖がついてる、おちゃのおかわりどうぞ」
とも(海里さんは生まれが良いだけあって、しっとりと湯のみにお茶を入れてくれた、あの急須にお湯をかけられる感じのお盆すら私は初めて実物を見た、ただ味は普通のお茶だった)
とも「ところで俊君は?」
アキ「親ともめてるって、連絡あった」
海里「彼にはこの話はしないほうがいいと思う、意外と・・フラジャイルなところがあるからさ、なんにも無関心に見えてね、まぁどこでもたいがい、男ってのは分子生物学的なことはヒステリックだよね」
とも「ゾルゲはどうですか?」
アキ「あとすこし、私がちょっと遅れちゃってる、あの造形ってめっちゃくちゃ集中力消耗するんだけど、覚悟すべしだよ」
とも「そうですか・・私内職で物理結構進みましたよ、記憶は連続的ではないっていうそういう発想をするんですね、勉強になりますね」
海里「もっと真逆に考える人もいるけどね、そこに・・もっといわゆるマテリアリズムを超える超現実的な現象を説明する人もいるし、パウリとかそれだった気がする、私みたいにさらに・・・さらに夢のない世界を見る人もいる。ともかく私は応用物理学で理論物理学者じゃないからあんまり信用しないほうがいいよ、邪道ですからね応用なんとか・・は、やってることも・・特別私が邪道なのか、アハハハ」
アキ(アハハハじゃないですよ・・ブレーキいかれてやがるこの女・・もし今の話が本当なら・・それって洗脳兵器ってことじゃん・・・湊海里は私には大きすぎる相手なのかも・・ごろんと大の字の転がって天井を見る・・ふぅ・・い草の匂い、上下反転した日本庭園を見る・・・誰が手入れしてるんだろう・・、あのワシワシなってる密度が高いちっちゃな木は一体何て言うんだろう・・、嘘みたいな秋晴れ、雲ひとつ無い・・・私は私の世界についてほとんど知らない、別に植物の名前を覚えろとは言わないけど・・少しは知っておいたほうがいいのかもしれない、ファインマンさんが名前をつけることは、カオスな世界からその構造を抜き出す事だと言っている、植物の名前も化学式のほうに名と構造が一致したものであればいいのに、HT-hat-R3(双子葉、根毛、花は赤、3月頃に咲く)みたいに・・アルファベットは適当。それに、私は私の時代について全く知らない、過去についてはたくさんのことを知っているし、未来の事もほとんど察しはついているのに、特に遠い未来については・・この時代、この現代について何も知る術が無い、後世人が、この時代を象徴する事件やら、大芸術家だとか重要人物だとかは、同時代の私達にとっては、時代に埋もれてしまってまったく知る術がない、あらゆる発行物、新聞やら雑誌を見ても彼らはまだ存在してない、彼らは発見されるのはいつでも未来なんだ・・・特に私たちの時代は、本物はどこかに埋もれてしまう、シェイクスピアが発見されるのはすぐだし、ドストエフスキーでもそれほどかからない、けどカフカが発見されるには・・・、今火星を目指してNASA以外で宇宙船が作られてるなんて誰が知ってるだろう、核兵器後の精神戦争時代の最終兵器の原型がすでに完成したと誰が知ってるだろうそれとおんなじように、何か面白いことや、未来を確定させるようなものがたった今どこかで産まれているのに・・・あのマスターピースはたった今作られてるかもしれないのに・・・)
とも「そっかなるほど!ありがとうございます」
アキ(さっきからともちゃんは物理の問題を説明してもらってた、海里は頭がいいやつに特有の、まわりくどいが示唆に富む説明を繰り広げてたみたいだけど私はまったく聞いてなかった)
とも「アキが今何考えてたか当てるゲームしましょう」
アキ「なんだそのゲーム・・」
海里「今日の晩御飯」
アキ「ブー」
とも「コーヒー」
アキ「それは本当に今考えてる事だね」
海里「映画の構成」
アキ「違う、それは昨日寝る前に考えてた事だね、映画にはならないよね、映画には・・アクションが必要なんだ、アクションが。こういう静かな物語は、文字でやらないと飽きてしまうから・・・映画や漫画はもう死んだ芸術なのかもね、そのアクションを必要とすると、結局戦争かスポーツくらいしかないもん、それはもう散々やられてきたし・・・不自然なんだよね、アクションばっかりの物語って・・・これからどんどん芸術は視覚に依存するって誰もが言ってるでしょ?事実売れてるし、だから本当は真逆な気がする、もう視覚には飽きたのかもしれない・・・ただ・・あの文学的な描写ってのを使いたくはないんだよね・・夜は彼にとって切れ切れのナイフだった、彼の心を支配しているのは憎悪が歪んだ、情欲の鎖と喉に詰まる咽頭がんのような彼女に対する憐憫だった、空気は密度が濃く圧縮されてスチレンボードのように彼の鼓膜を叩いた。彼の手はもはや彼のものではなく千の海でさえ洗い落とせない血に汚れている・・・みたいな、くだらないですよね、なんでそれがくだらないということになったのかは・・かなり大事な事なんだろうけど・・・ともかく一体どうすればいいのか暗中模索だって事・・・・はぁ、私も火星にグッバイしたいぜ・・・・そして正解はあの庭に生えてる木の名前はなんていうんだろうなって考えてたの」
とも「マロニエじゃないですよね?」
海里「全然違うよ・・といっても私も知らないけど」
アキ「どうした天才ちゃん」
海里「別に天才だから何でも知ってるわけじゃないじゃん、天才画家だって象を見たことなければ象は描けないもん、まぁ自分ちの庭木くらい知っててもよさそうなものだけど」
とも「検索かけるにも手がかりがないですね・・そしてやたら天気いいなぁ」
アキ「・・海里は何か新しい事をやってる時にさぁ突然なんかこんなの全然意味ないやってこぉ・・神経衰弱になったりするの?」
海里「なるよ、常になる、もぉ慣れてるからそういう時は他のことが考えられないくらい仕事に集中する、そしたらいつの間にか消えてるものだよね、あの・・ものすごくトイレに行きたい時に波があるみたいに」
アキ「ハハ、確かにそうだ、でもそれじゃどんどんエスカレートしてって最後に爆発するんじゃないの?」
海里「それをひらめきっていうんですよ、下手したら廃人だけどね」
とも「今神経衰弱なんですか?」
アキ「まだ、これから・・・、ともちゃんは?」
とも「私?私はそういうのとは無縁ですよ、深く考えるっていう才能が無いですから、特にそういう哲学的な事は」
海里(羨ましいやつ、ってたぶんアキも同じ感想、まぁまだ若いってのもあるのか、っていうかそっちが普通だ、アキはさっきからずっと天井に向かってしゃべっている、胸が無い上に白いワンピースを着ているからこうやってみると遊びに来たいとこか何かだ、誰かに似てる・・・誰だっけ?私も仰向けに倒れてアキと同じポーズをとった、もちろんともちゃんもそれに習う・・意図的な沈黙がさぁっと風と共に流れていった。
アキ「ともやん(ほっぺたに力が入ってない)、普通の女の子だったらこんな時何するの?友達の家に集まって、お茶を飲んだ後・・」
とも「私恐ろしく友達いないからわからないです・・そういうのはアキのほうが詳しいんじゃないですか?昔は愛想を振りまいてたんでしょ?」
アキ「・・そうだ・・遠い昔の話みたい、まるで一つの人生を隔てたみたいに・・・好きな人の話と、お菓子だな、あと炭酸」
とも「買ってきます?」
アキ「いいよ・・海里って誰か人を好きになったことってあるの?」
海里「私?・・・・んぅ?・・・俊君は割りと好きだったよ、といっても7歳の時だし・・そういう淡い恋心がないおさなじみってのもありえないからね・・・私は・・・結構私自身が好きかな、気に入ってる」
アキ「一番好きなものは何ですか、不思議な人よ教えてください、父親、母親、妹、それとも弟ですか?
私には父も母も、妹も弟もおらぬ
では友達ですか?
そんな言葉は、今に至るまで私の知らない言葉です
祖国ですか?
そんなものがどこにあるかも知りません
美ですか?
それが不死身の美しさなら、好きになることもできます
金は?
あなたが神を嫌うように、私はお金が大嫌いです
では何が好きなんですか、 extraordinaire étranger ?
J'aime les nuages... les nuages qui passent... là-bas... là-bas... les merveilleux nuages !」
とも「どうしたんですか?霊でも降臨したんですか?」
海里「フランス語だからランボーとか?」
アキ「ボードレール、巴里の憂鬱、L'Etranger、最後の部分和訳できないけど和訳すると・・では一体何が好きなのですか?異常なレトランジャー?
私は雲が好きなのです、ほら雲が通り過ぎていく、ほら・・ほら・・美しい雲が・・」
海里「まるで私たちの事を言ってるみたいだね・・・ってこんな恥ずかしいセリフを私に言わせるつもり?」
アキ「まさしくそのとおり、ほらこういうのは突然思い浮かぶものだっていったじゃん、L'Etrangerこれがこの作品のタイトル、そしてロケットの名前、いいでしょ?」
海里「いいんじゃない、短くて」
とも「L'Etrangerってカミュの小説の原題ですか、なんか聞いた事あると思った、異邦人・・」
アキ「異邦人っていうよりは・・属していない人って意味かな、foreigner でもoutsiderでもAlianでもなく・・・belong to nowhere、この島国みたいに属していないってことがありえない国ではそんなコトバが生まれようが無いよね・・」
海里「それが不死身ならば愛することが出来る、それが示唆的だよね、たぶん・・あと30年もすればナノテクか何かで不老は完成するだろうし・・だから私たちは第二次大戦の前の30年とだいたい同じ状態にいるんだと思う、あと何十年かすれば戦争がまったく無意味になるのに、革命やら戦争やら、命をほうり投げてた、でも・・・」
アキ「それが無意味ってことにはならないんだよ、そう、私はそう信じてる・・・不老になったら価値観が変わるだろうな・・不老になったとしても、本質的な問題は変わらないって私は思っていたけど・・やっぱりそれも違うのかな・・・全然違う価値観になっちゃうのかも・・結局人間は孤独なままだし、神様なしじゃ生きてく意味もみつかんない、なんて言ってたら何時代遅れな事言ってるんだって言われるのかもね・・・って普通の女の子はこんな話せぇへんって・・・」
とも「自分が始めたんじゃないですか」
アキ「・・・やっぱ買ってきて、コーラ、ポテチ、マック近くにあった?」
海里「買ってきてもらえるよ、その為に雇ってるんだもん」
アキ「ツービッグマック」
とも「私チキンタツタと・・、あればビタミンマッチ、無ければサイダー」
海里「私は・・チキンナゲットとカフェモカかな・・すいませ~ん」
アキ「便利だ・・なんか何故ブルジョアはブルジョアにしがみつきたがるのかわかった気がする」
海里「中国ではマックよりケンタのほうがたくさんあったなぁ・・カレーとか点心とか売ってるんだよ、上海では」
アキ「まじか?・・・ローカライズって何でもありなの・・っていうか中国にも行ってたんだ」
海里「マッドサイエンティストとして足がつかないようにね、新中国政府は、そういう人間を望んでるみたいだったけど、ただみんながみんなを憎んでるようなところでは悪者だって生きづらいんだよね、悪者だって誰かを信用しないと悪いことは出来ませんからね」」
2012年3月23日金曜日
絵コンテ見本 L'Ettranger 文字コンテ ep13
絵コンテ見本。一ページに4枚くらいか?全部をイラストクオリティで塗るのは無理なので、これが基本・・・スタジオジブリ絵コンテシリーズを参考に・・・
13 condition humaine
アキ「三人になると随分静かだね・・夏の通りすぎる音が聞こえるよ」
俊「あえっ?」
実際にはそんな音は聞こえず金属の摩擦音がギンギンと鳴っているだけだった。
アキ「なんでもねぇです」
俊「はぁっ?もっと大きな声でしゃべってよ」
アキ(死ねぇっ!! (舌を出す)
海里も海里で作業中はHMHF(ヘッドマウントディスプレイヘッドフォン)をつけっぱなしなので全然話相手になってくれない。海里のHMはレイ・トレース、x-ray, thermography, ultraviolet-ray, inflaredのフル装備に、カスタムでradiation censor,空力センサーもついている、工業用の高級品。確かに彼女はサイボーグ憧れがある・・、私は目が悪いのに裸眼、私はあのHMのすべてがクリアに見えて、パンフォーカスに合ってる映像が大嫌いだ、その日の体調によって焦点距離がずれて、ぼやけまくってる(しかもガチャ目だから脳が勝手に処理した映像)が一番性に合ってる、視力回復手術を受ける気もさらさらない・・・
別に寂しいから話し相手を欲しがってるわけではないのです、この造形っていう仕事は、爆発的に集中力を使いきって長時間労働が出来る代物じゃないってのがすぐにわかった。ミケランジェロが彫刻こそが最高の芸術だと言っていたのがわかった、彫刻ほど体力的にはしんどくないけどこんなに削られる作業とは思わなかった。だから休憩を長くとるんだけど集中力を回復させるのは無駄話が一番なのに・・・ミケランジェロに勝手に作品使ったので復讐されてるのかも・・寝袋を積み上げているところにちょっと腰をおろしたら、まさか!!5時間も昼寝をしてしまった)
俊「そろそろ起きないと一日終わってしまうよ」
アキ「うわっ!!今何時?」
俊「10時半」
アキ「うそだろ・・・どうもおかしいな・・私はそんな・・ノーガードみたいな生き方をしてきた事はないのに・・」
俊「なんだそれ」
アキ「・・やっぱ食生活かな?君のベジタリアンレシピで健康になりすぎて、快眠しちゃってる気がする・・、もしか!私を太らせてなにかやらしいことをしようとしてるね」
俊「なんで太らせるのかがさっぱりわからない」
アキ「豚を太らせるのと同じ原理だよ」
俊「・・?寝ぼけてる」
アキ「うん・・、車輪が終わってんじゃん、シャフトも・・」
俊「後はあの・・なんだっけ、ど忘れした・・あれ?あれをなんて言うんだっけ、ほらチェーンが絡んでるぎざぎざしたやつ」
アキ「働き過ぎじゃない?」
俊「そうかも・・、でなんだっけ?」
アキ「・・・ギア?」
俊「違うよ、ギアはそれが束になったやつだろ、っていうかパーツじゃなくて機能名じゃないの?」
アキ「えっ?寝ぼけてるから脳みそ働かないよ、コーヒーくれ・・・それにチェーンが外れるのがいやだから、なんか違う方式にしたでしょ?戦車みたいなやつ・・・ラグ・・・カム・ラグ・・・コグ!」
俊「スプロケット!」
アキ「ところでドクターは?」
俊「散歩」
アキ「散歩?ベートーヴェンの真似?・・まぁいいや遅れを取り戻さないと」
アキ(俊は私と入れ替わりですぐに眠ってしまった、ここは製糸工場だったか?もうすぐ肺病が流行るきざしか・・夜のほうが彫刻は向いているとわかった、昼に作るものは昼の作品で、夜に作るものは夜の作品になってしまうという、昔は一番明るい光は昼間の太陽だったから、画家は昼に絵を描いた、だから昔の絵には昼が多く、夜が少ない。電灯が発明されてから芸術家は静かな夜に作品を作るようになった、昼間に作品なんか作ってたら、ただの趣味人か、カルチャースクールの似非芸術家気取りか、商業主義の奴隷だと思われるだろう。それにしても、あらゆる芸術領域の中でこれだけには手を出さないと思ってた彫刻を人生のピーク時にやるとは思わなかった。彫刻はあんまりにも・・・、ねぇ?一体どんな気持ちでミケランジェロはかわいらしい包茎のおちんちんを彫っていたのか、まったくもって全然理解出来ない。いくらゲイだからってそれは・・やる気がでない。しかし重力を無視した柔らかい空とぶ絹布を漂わせるのも、どこからともなく葉っぱが現れるのも違う。彫刻は時代遅れの芸術の中でも一番時代遅れの芸術だ。誰かが言っていた、一番早く人から忘れられる方法は、自分の銅像を街に置くことだと・・・ドクターが帰宅)
海里「遅くまでご苦労なことで」
アキ「殺人的に昼寝したからね」
海里「たまには息抜きが必要だよ、パスカルじゃないけど。私もとうとう肩こりが限界だから明日は休むね、ちょっと休むってのを忘れてたよね」
アキ「ほぉ・・・ほぉほぉ」
海里「何?」
アキ(メンスで学校休む派かね)
アキ「別に、じゃあたまにはインタヴューでもやろうか」
海里「何の」
アキ「・・人間の尊厳について。もし、水爆が小型化して、技術的にもそれが簡単につくれるようになり、あらゆる個人がそれを持つことが出来るようになれば、人類はひとりひとりの人間を尊重せざるを得なくなるでしょう。それがどんな人間であれ。一つの巨大な国家に対するように、一人の人間にたいさないといけないね・・それはあらゆる個人が尊重されるような社会を希望しているはずの民主主義者や実存主義社会主義者には好ましいことだよね、でも実際はそんな世界は最悪だよね。どんなキチガイやくだらない人間やらポンコツやら、障害者やら、老人、痴呆、極右、オカルティスト、宗教家、不能、セックスレスのババァ、そんな人間の意見など聞きたくもなければ受け入れたくもない、どんなガチガチのヒューマニストでもそうだと思うよ、本当は・・・ある程度の人間よりも自分たちが優れている、ある程度の人間は犠牲にならないといけないって、ヒューマニスト自身が、切実に思い知らされてるから。おれたちの国は水爆を持ってはいいけど、あいつらはダメだって、今でも第二次大戦の戦勝国は信じているもん、じゃああの人達は一体何を言ってるでしょう?結局人間ってのは主義なんて持っちゃいないのだろうね、ナチスにしたって共産主義にしたって、民主主義にしたって、あらゆる人間が尊重される社会なんてクソ以下だと思ってるでしょう、でなかったら誰もが水爆を持つ世界は、ここにすでにあるべきだもんね。
人間が人間らしく、精一杯生きる、実存主義的な力強い人間が本当に社会にたくさん現れたら結局社会は終わりない殺し合いをするしかないでしょう、実存主義的人間は、サルトルが見抜いた通り、永久に戦争をするだけの、永久革命マシーンであって、彼らは美しく、感動的であるけれでも、それだけに最高にくだらないものなのかもしれない、フランスのレジスタンスに参加していた知識人たちは、ヒトラーが実存主義の超人だと認めないわけにはいかなかったと思うの、それででも嬉しいと思ったでしょう、だってヒトラーを倒すのはこの上なく感動的な勝利、感動的な戦いに思えただろうから、死に場所を与えてくれるって言い方であれば、それがベストだよね。ヒトラーのやった事の功罪なんて、もしくは価値判断なんてすべてくだらないものだけど、ヒトラーがほかの大多数の人々より、濃く濃厚で、人生を生きる、という命題にかんしては満点近い点を出したのは事実だと言えると思う、毎日真面目に水道管でも掃除して社会に貢献した、驚くべき勤勉な労働者よりもヒトラーでありたいと普通の人間は願うでしょ、ヒトラーに対する憎しみの大部分は自分がヒトラーでない事・・・」
海里「そして私がその誰にでも持てる水爆の開発者で、そして人生を生きようと願う実存主義的人間だっていう事を言いたいんでしょ?まさしくそのとおりじゃない?」
アキ「あなたがやらなかったら誰かがやるだけだもん、アインシュタインが発見しなかったら別の誰かがアインシュタインの代わりをやったでしょう、個人ではないにしろ、アインシュタインほど速く、そして鮮やかにやれなかったかもしれないけれど、いずれはそうなる、小さな水爆だってそう、それに類する非常に簡単な最終兵器が、個人の尊厳を極限まで高めてしまう、世界は教科書に願ったような良い世界になってしまう、人は暴力によって他人をねじ伏せて、悪い世界にしておくことでなんとか命脈を保ってきたのに、良い世界はほとんど一瞬の間に、砂塵に帰ってしまう、人間には良すぎた世界だった、っていう墓標でも立ててさ。実存主義はもう終わったんだよ、不条理な人間も含めて、人間は現代を超えることは出来ない、ポストモダンなんてものは存在しない、それは人間のいない砂漠なんだ、現代は文字通り、人間の限界なんだよ、現代の先なんて無い、ニーチェみたいに人間失格になっておまるの中身をあさる・・ブラックホール・・」
海里「・・・?それで・・?」
アキ「・・だからあなたは私に現代の先を見せて欲しいんだ、実存主義の先を。人間のいない砂漠には、風が吹いているんでしょ?私もその風を感じてみたい・・・」
海里「ふぅ~~~、えらく文学的なプレッシャーのかけかたをするね・・私はそれほど人文学系のことは知らないんだよ、ほんとに。実存主義ってコトバも意味が多すぎてよくわかってないし」
アキ「知ってる、いいのいいの、だって海里はアクターなんだもん、アクターはアクションすればいいだけで、自分のアクションがどういう意味なのかなんてわかってる必要はないんだ、作り手が勝手に神話をこしらえるだけで。つまり私を火星に連れてってねって事」
海里「・・なるほどインタヴューってそういうことか」
アキ「そう、私のインタヴュー・・・
私は風が好きなんだ、風を感じるってのが世界を感じるのに一番なんだよ、だって風は目に見えないもの、多くの人は目が見えなくなったら生きていても仕方ないって思うでしょ、すごい音楽家でもない限り、でも闇の中で風が吹いていくのに気づくはずなんだ・・うらやましすぎるなぁ、まだ誰も感じたことのない風を独り占めにできるなんて・・・赤き風を・・」
13 condition humaine
アキ「三人になると随分静かだね・・夏の通りすぎる音が聞こえるよ」
俊「あえっ?」
実際にはそんな音は聞こえず金属の摩擦音がギンギンと鳴っているだけだった。
アキ「なんでもねぇです」
俊「はぁっ?もっと大きな声でしゃべってよ」
アキ(死ねぇっ!! (舌を出す)
海里も海里で作業中はHMHF(ヘッドマウントディスプレイヘッドフォン)をつけっぱなしなので全然話相手になってくれない。海里のHMはレイ・トレース、x-ray, thermography, ultraviolet-ray, inflaredのフル装備に、カスタムでradiation censor,空力センサーもついている、工業用の高級品。確かに彼女はサイボーグ憧れがある・・、私は目が悪いのに裸眼、私はあのHMのすべてがクリアに見えて、パンフォーカスに合ってる映像が大嫌いだ、その日の体調によって焦点距離がずれて、ぼやけまくってる(しかもガチャ目だから脳が勝手に処理した映像)が一番性に合ってる、視力回復手術を受ける気もさらさらない・・・
別に寂しいから話し相手を欲しがってるわけではないのです、この造形っていう仕事は、爆発的に集中力を使いきって長時間労働が出来る代物じゃないってのがすぐにわかった。ミケランジェロが彫刻こそが最高の芸術だと言っていたのがわかった、彫刻ほど体力的にはしんどくないけどこんなに削られる作業とは思わなかった。だから休憩を長くとるんだけど集中力を回復させるのは無駄話が一番なのに・・・ミケランジェロに勝手に作品使ったので復讐されてるのかも・・寝袋を積み上げているところにちょっと腰をおろしたら、まさか!!5時間も昼寝をしてしまった)
俊「そろそろ起きないと一日終わってしまうよ」
アキ「うわっ!!今何時?」
俊「10時半」
アキ「うそだろ・・・どうもおかしいな・・私はそんな・・ノーガードみたいな生き方をしてきた事はないのに・・」
俊「なんだそれ」
アキ「・・やっぱ食生活かな?君のベジタリアンレシピで健康になりすぎて、快眠しちゃってる気がする・・、もしか!私を太らせてなにかやらしいことをしようとしてるね」
俊「なんで太らせるのかがさっぱりわからない」
アキ「豚を太らせるのと同じ原理だよ」
俊「・・?寝ぼけてる」
アキ「うん・・、車輪が終わってんじゃん、シャフトも・・」
俊「後はあの・・なんだっけ、ど忘れした・・あれ?あれをなんて言うんだっけ、ほらチェーンが絡んでるぎざぎざしたやつ」
アキ「働き過ぎじゃない?」
俊「そうかも・・、でなんだっけ?」
アキ「・・・ギア?」
俊「違うよ、ギアはそれが束になったやつだろ、っていうかパーツじゃなくて機能名じゃないの?」
アキ「えっ?寝ぼけてるから脳みそ働かないよ、コーヒーくれ・・・それにチェーンが外れるのがいやだから、なんか違う方式にしたでしょ?戦車みたいなやつ・・・ラグ・・・カム・ラグ・・・コグ!」
俊「スプロケット!」
アキ「ところでドクターは?」
俊「散歩」
アキ「散歩?ベートーヴェンの真似?・・まぁいいや遅れを取り戻さないと」
アキ(俊は私と入れ替わりですぐに眠ってしまった、ここは製糸工場だったか?もうすぐ肺病が流行るきざしか・・夜のほうが彫刻は向いているとわかった、昼に作るものは昼の作品で、夜に作るものは夜の作品になってしまうという、昔は一番明るい光は昼間の太陽だったから、画家は昼に絵を描いた、だから昔の絵には昼が多く、夜が少ない。電灯が発明されてから芸術家は静かな夜に作品を作るようになった、昼間に作品なんか作ってたら、ただの趣味人か、カルチャースクールの似非芸術家気取りか、商業主義の奴隷だと思われるだろう。それにしても、あらゆる芸術領域の中でこれだけには手を出さないと思ってた彫刻を人生のピーク時にやるとは思わなかった。彫刻はあんまりにも・・・、ねぇ?一体どんな気持ちでミケランジェロはかわいらしい包茎のおちんちんを彫っていたのか、まったくもって全然理解出来ない。いくらゲイだからってそれは・・やる気がでない。しかし重力を無視した柔らかい空とぶ絹布を漂わせるのも、どこからともなく葉っぱが現れるのも違う。彫刻は時代遅れの芸術の中でも一番時代遅れの芸術だ。誰かが言っていた、一番早く人から忘れられる方法は、自分の銅像を街に置くことだと・・・ドクターが帰宅)
海里「遅くまでご苦労なことで」
アキ「殺人的に昼寝したからね」
海里「たまには息抜きが必要だよ、パスカルじゃないけど。私もとうとう肩こりが限界だから明日は休むね、ちょっと休むってのを忘れてたよね」
アキ「ほぉ・・・ほぉほぉ」
海里「何?」
アキ(メンスで学校休む派かね)
アキ「別に、じゃあたまにはインタヴューでもやろうか」
海里「何の」
アキ「・・人間の尊厳について。もし、水爆が小型化して、技術的にもそれが簡単につくれるようになり、あらゆる個人がそれを持つことが出来るようになれば、人類はひとりひとりの人間を尊重せざるを得なくなるでしょう。それがどんな人間であれ。一つの巨大な国家に対するように、一人の人間にたいさないといけないね・・それはあらゆる個人が尊重されるような社会を希望しているはずの民主主義者や実存主義社会主義者には好ましいことだよね、でも実際はそんな世界は最悪だよね。どんなキチガイやくだらない人間やらポンコツやら、障害者やら、老人、痴呆、極右、オカルティスト、宗教家、不能、セックスレスのババァ、そんな人間の意見など聞きたくもなければ受け入れたくもない、どんなガチガチのヒューマニストでもそうだと思うよ、本当は・・・ある程度の人間よりも自分たちが優れている、ある程度の人間は犠牲にならないといけないって、ヒューマニスト自身が、切実に思い知らされてるから。おれたちの国は水爆を持ってはいいけど、あいつらはダメだって、今でも第二次大戦の戦勝国は信じているもん、じゃああの人達は一体何を言ってるでしょう?結局人間ってのは主義なんて持っちゃいないのだろうね、ナチスにしたって共産主義にしたって、民主主義にしたって、あらゆる人間が尊重される社会なんてクソ以下だと思ってるでしょう、でなかったら誰もが水爆を持つ世界は、ここにすでにあるべきだもんね。
人間が人間らしく、精一杯生きる、実存主義的な力強い人間が本当に社会にたくさん現れたら結局社会は終わりない殺し合いをするしかないでしょう、実存主義的人間は、サルトルが見抜いた通り、永久に戦争をするだけの、永久革命マシーンであって、彼らは美しく、感動的であるけれでも、それだけに最高にくだらないものなのかもしれない、フランスのレジスタンスに参加していた知識人たちは、ヒトラーが実存主義の超人だと認めないわけにはいかなかったと思うの、それででも嬉しいと思ったでしょう、だってヒトラーを倒すのはこの上なく感動的な勝利、感動的な戦いに思えただろうから、死に場所を与えてくれるって言い方であれば、それがベストだよね。ヒトラーのやった事の功罪なんて、もしくは価値判断なんてすべてくだらないものだけど、ヒトラーがほかの大多数の人々より、濃く濃厚で、人生を生きる、という命題にかんしては満点近い点を出したのは事実だと言えると思う、毎日真面目に水道管でも掃除して社会に貢献した、驚くべき勤勉な労働者よりもヒトラーでありたいと普通の人間は願うでしょ、ヒトラーに対する憎しみの大部分は自分がヒトラーでない事・・・」
海里「そして私がその誰にでも持てる水爆の開発者で、そして人生を生きようと願う実存主義的人間だっていう事を言いたいんでしょ?まさしくそのとおりじゃない?」
アキ「あなたがやらなかったら誰かがやるだけだもん、アインシュタインが発見しなかったら別の誰かがアインシュタインの代わりをやったでしょう、個人ではないにしろ、アインシュタインほど速く、そして鮮やかにやれなかったかもしれないけれど、いずれはそうなる、小さな水爆だってそう、それに類する非常に簡単な最終兵器が、個人の尊厳を極限まで高めてしまう、世界は教科書に願ったような良い世界になってしまう、人は暴力によって他人をねじ伏せて、悪い世界にしておくことでなんとか命脈を保ってきたのに、良い世界はほとんど一瞬の間に、砂塵に帰ってしまう、人間には良すぎた世界だった、っていう墓標でも立ててさ。実存主義はもう終わったんだよ、不条理な人間も含めて、人間は現代を超えることは出来ない、ポストモダンなんてものは存在しない、それは人間のいない砂漠なんだ、現代は文字通り、人間の限界なんだよ、現代の先なんて無い、ニーチェみたいに人間失格になっておまるの中身をあさる・・ブラックホール・・」
海里「・・・?それで・・?」
アキ「・・だからあなたは私に現代の先を見せて欲しいんだ、実存主義の先を。人間のいない砂漠には、風が吹いているんでしょ?私もその風を感じてみたい・・・」
海里「ふぅ~~~、えらく文学的なプレッシャーのかけかたをするね・・私はそれほど人文学系のことは知らないんだよ、ほんとに。実存主義ってコトバも意味が多すぎてよくわかってないし」
アキ「知ってる、いいのいいの、だって海里はアクターなんだもん、アクターはアクションすればいいだけで、自分のアクションがどういう意味なのかなんてわかってる必要はないんだ、作り手が勝手に神話をこしらえるだけで。つまり私を火星に連れてってねって事」
海里「・・なるほどインタヴューってそういうことか」
アキ「そう、私のインタヴュー・・・
私は風が好きなんだ、風を感じるってのが世界を感じるのに一番なんだよ、だって風は目に見えないもの、多くの人は目が見えなくなったら生きていても仕方ないって思うでしょ、すごい音楽家でもない限り、でも闇の中で風が吹いていくのに気づくはずなんだ・・うらやましすぎるなぁ、まだ誰も感じたことのない風を独り占めにできるなんて・・・赤き風を・・」
2012年3月22日木曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep12
12 sorge
とも(それから一週間ほどは同じようなルーチンワークをやった。昼は掃除と整理とインフラ整理、夜はファインマン、私はとうとうベジタリアン生活には耐えられなくなってピザなどの出前を取ることにした、アキの影響で海里も俊もココア中毒に陥り、その栄養価と吸収性を賞賛してだんだん登山家グループみたいなストイックな機能重視派になってしまった、私は一人ファストフードを食らいつく文明人の立場を守りたいと思う、整理が大体終わったところで、色んな工作機械の出番が到来と言うことにあいなりました)
海里「複雑な部品は外注にするけど、簡単な加工は予算の都合もあってこのlathe(旋盤)とdrill machine、mill machine(フライス盤)によって行う事にします。といっても私は理論で、工作にかんしてはみんなとおんなじトーシローなので何の手助けも出来ません。当初の計画では、熟練工を雇うつもりだったんだ、こんなノーサラリーで協力してくれる人がいるとは思わないじゃん?でもタダでやってくれる人がいるならそれを使うにこしたことはない。それに・・たいして経験も知識もない人がなにかやるほうが、意味がある、前にも言ったかな?
ついでに言っておくと外形、とか基本的な構造は、この鉄とカーボンナノファイバーを組み合わせた、新素材で・・これは熱すると強度が硬くなってダイヤモンドカッターでも切れなくなるけど、熱するまでは粘土みたいに扱えるスグレモノで、工作というよりは、彫刻みたいなものです、陶器みたいに熱して体積変化が起こることもないから、これから主流になるだろう素材です、実際宇宙素材として使うにはもっと高級なものが必要だけど、私達のENT(終わりなき夜の旅 eternal night traveler)では大気圏突入による摩擦などは考えなくてもいいわけだからこれで十分、実は有人宇宙計画で一番大変なのは帰ってくる事なの、それが無いとすれば、かなり激安で行ける、日本はハラキリやカミカゼなど命をぶんなげるような伝統があるから親しみやすいと思われます。ともかく中の機械的な部分、ドアとかそういうのは工作で、外形はアート、どっちも熟練が必要だから役割を分けたほうがいいと思うんだ。機械はもちろん内部は私がやるけど・・機械やりたい人?は俊君で決定」
俊「質問から断定までがコンマ数秒しか無かったような気がするんだけど」
アキ「必然的にそうじゃん、ともちゃんは学校あるんだから」
とも「申し訳ない」
海里「つまり、フォルム作成はアキとともちゃんに任せます、もっと単純な事を言えば力仕事は全部俊君に丸投げしました」
俊「わぁ正直」
海里「でも水生成機械とか、生命維持装置とかは、向こうの友達に試作品をもらい受けるからそれほど大変ではないはずです。・・それで、ちょっと仕事に慣れる為にいきなりロケットではなくて何か小さなプロジェクトを挟むほうがいいと思って。オートバイか自転車を作ろうと思うんだけど?」
とも「わぁ、楽しそう」
アキ「じゃあモーター付き自転車がいいんじゃない?昔のホンダが作ってたみたいな」
俊「モペッドっていうらしいなそれは、ホンダ Aが有名(ネット調べ)」
海里「じゃあそれで行こう、エンジンはガソリンじゃなくて電気にしたほうがいいね」
俊「それは電動モペッドというらしいね」
とも「それって電動アシスト自転車って事?」
アキ「そういうとおばはん臭いからモペッドなんでしょ」
とも「そうか」
海里「じゃあざっくり設計書いてしまうから、それまで俊君はマニュアルよみ、二人は、デザインでも決めて」
三人「ラジャー」
とも「さて、とりあえずネットで資料探しましょう」
アキ「うん・・自転車で困る事って何?」
とも「・・・特に無いですかね・・あぁ、荷物が載らない、ギターとか。」
アキ「そうか・・じゃあトライク(三輪)にして荷台を作ろう、他は?」
とも「トライクだと置き場所に困る」
アキ「折りたたみ式にする・・他?」
とも「重い」
アキ「あの素材は軽いんじゃない?知らないけど。雨に弱いじゃない、一番は?」
とも「なるほど」
アキ「だから屋根をつけよう」
とも「斬新ですね」
アキ「モーター付きだからギアはいらないよね」
とも「あといい自転車はすぐにパクられる、駅前に置き場所がない」
アキ「パクられるのを防ぐには滅茶苦茶派手にしてすぐに足がつくようにすればいいね、後者は私じゃなくて政治家に文句言って、日本の道路はハッキリいってアスファルトの掃き溜めで道にすらなってないって」
とも「名前は?」
アキ「・・ゾルゲ」
とも「スパイ?」
アキ「違う、ハイデガー哲学用語、真っ赤にしよう、なんとなくナチス的デザインがいいな、ナチスってデザインのセンスは抜群にいいよね、SAのロゴとかめちゃかっこいいもん。ナチスの専属デザイナーは誰だったんだろう?」
とも「色んなとこから苦情があるのでノーコメントです」
アキ「でも作家ってのはヒトラーにコンプレックスがあるものだよ、だってナチスは歴史上最大級クラスの総合芸術だったもん、コンセプトアート、作家の夢は一つの世界を構築することにあるとすれば、ヒトラーというアーティストはそれに成功したんじゃない、偉大さってやつをベクトルや価値観を無視して絶対値で評価できるとすればヒトラーが成した事はジョンレノンがしたことの100倍くらいの数値があると思う、実存哲学的評価だけど・・・それと私はいつも言うんだけどヒトラーはマジでアーリア人種を愛していたと思うんだ、普通の政治家が自分の国を愛するなんてペラッペラの嘘で、窮地に陥ったらすぐに国を捨てるに決まってるし、可愛いのは自分とせいぜいその家族が限度なのにヒトラーのそれは本気だった、もっとも残酷な行為が、もっとも真剣な愛情、しかも特定の人間ではなく博愛に近いものから生まれたとしたら、ナチスを批判することはとたんに難しくなるよ。現代文明人が無害に見えるのは、誰も愛さないからだってことにもなるしね、愛が無い世界では殺人も無いはず、人間に対するゾルゲが無いのだから・・この社会は愛が無いと思わない?アフリカで誰が死のうと、どんな動物が絶滅しようと、どれだけ森がなくなろうと、おれの生活が大事、誰も殺そうとは思わない、積極的に殺そうとは思わないけど、犠牲になるなら仕方ない、けどそれはおれのせいではない・・・」
とも「そういうぎょっとするような事を言うのやめてくださいよ、夜中に思い出してひやっとするから。後ろの荷台はカゴにしましょう、カバーをフードでつけるようにして、ちょっと・・アールデコっぽい感じ、後ろのタイヤは大きいほうがいいでしょ?貴族っぽくて?」
アキ「うん、ハプスブルク帝国風ね、だったらもっと繊細なラインにしたほうがいいんじゃない?壊れやすそうだけど、頑丈で軽いって話だしどうせならホイールハンドルにしちゃうか」
とも「タイヤは白にしましょう」
アキ「そうするとこの窓の部分は角張ったほうがいいよ」
とも「・・・これどうやって乗るんですか?」
アキ「そうか・・ドアね、ドア」
俊「どんな具合?」
とも「ついにさみしくなりましたね」
俊「退屈なんだもんこのマニュアル・・・わぁ・・・色んな意味ですごいな,ベロモバイルみたいになったね」
アキ「わざと悪趣味にして盗まれないようにしようってコンセプトなの」
とも「きっちゅってやつですね」
海里「はい、出来た」
アキ「はやっ」
海里「こんなのエンジンにチェーンからませるだけだもん。どんな感じ・・うわっなにこれ、趣味悪い、マニエリスム?」
とも「ウィーン世紀末派です」
俊「わざとゴテゴテにして盗まれないようにしたんだって」
海里「確かにこれを盗むのはタマだけど・・、あんまり乗りたくない」
アキ「乗りたいよ、コスプレ感があるじゃん」
海里「まぁいいけど・・じゃあディテールと寸法決めないと・・アキって実はexibisionistなの?」
アキ「今頃気づいたの?服装からして気付きそうなものなのに・・ねぇ?」
とも「ん~海外では感覚が違うんじゃないですか?(あと胸が無いからじゃないですか)」
とも(またドクター海里にすべて丸投げして、設計図を書いてもらった。天才ってのはなんて便利なんだろう!(私たちは天才って事で何もかも済ますのに慣れてしまった)一家に一台欲しい。私たちはインスタントラーメン片手に工具の点検、マイクロメーター、ノギス、電ノコ、など使ったこともない代物から、錆びまくってるスパナとドライバーの山。もともと自転車工場だけあっただけあって、材料には不足しないみたいだ、ペダルもサドルも、欠けたり、スポンジがなくなってただの木の板になったものなど色々ある)
とも「チェーンも!どれもこれも錆びまくってますね」
アキ「そりゃ錆びるさ、触るとネチョネチョするからやめたほうがいいよ」
俊「劇的にややこしいなこの・・ミルマシーン、旋盤は要するに金属のろくろみたいなものだってわかったけど、こいつはクセもんだよ。先端のエッジだけで200種類くらいあるよ・・」
アキ「極めれば技能オリンピックに出れるよ、まぁ・・もう今は電脳処理か」
とも「・・あれですね、宇宙船作るのも結構、平凡な積み重ねですよね、映画にちゃんとなりますかね」
アキ「さぁ、でも私は好きだけどな、こういうちまい地味な活動、毎日誰かが死んだり、大事件が起こるわけにはいかないじゃん、それと俊それが出来るようになったらストーカー3を作るの手伝ってね、2はずっとあそこで撮りっぱなしだから3が必要なんだ」
俊「はぁいはい」
とも「確かに、私たちは楽しいですね。あぁもうすぐ夏休み終わっちゃうなぁ・・」
とも(全開に開いた門から夏の日差しをみやる、そう、門を完全に取っ払ってまさしく飛行機の格納庫っぽい外観になった。犬が欲しいな・・シェットランドシープドック。コンクリートの冷たい地面に夏のコントラストの強い日差しが差し込んでいる、私たちは暗がりからそれを見つめている・・・空が青い、この工場はクーラーをつけなくてもすごく涼しいから(たぶん天井が高いからだ、あとすきま風が吹きほうだいだから)夏を感じるには適してない。冬はどうするんだ・・死ぬほど寒いと思われる・・(アキがセンチになっている私の後ろ姿をポラで撮っている気配がする、抜け目がない人だ)・・でもこんなに夏休みが終わって欲しくないのは初めてだ、いつもならずっと休みなのにも飽きてしまうのに・・ん?)
とも「宿題全然やってない!」
アキ「学園コント始めるなら一人でどうぞ」
とも「え~~~二人もでしょ!?」
俊「受験生に夏の課題なんてないよ」
とも「ガッデェイム!!二人とも落ちてしまえばいいんだわ」
アキ「でもむしろ物理と数学はもっと出来るようになった気がする」
俊「確かに、理系にするかな・・」
アキ「受けるの?」
俊「一応、アキも一応受けないと学校が失望するよ」
アキ「・・まぁ受けるだけ受けてやるか、センターは・・・学費が奨学金が出て図書館が充実してるとこがいいんだけどな、どの学部に入ったところでどうせ自分で勉強するんだし」
海里「出来ました」
アキ「ご苦労様です、カレーヌードルが出来てるよ。それとともちんは急に帰らないと行けないってさ」
海里「そっか、もう夏休みも終わりだもんね、新学期って感じなんだけどなぁ私の感覚では」
アキ「想像できないんだよね、夏から新しい学年が始まるなんてさ、私達が少数派なんだけど」
とも「申し訳なし・・土日と休みは来ますから、あと犬飼いましょうねシェットランドシープドック、こんなに広い空間があるのに犬がいないと寂しいでしょ」
アキ「あぁ今なんかすごい明確に、久しぶりだねぇとかいって三時間も経ってないのに永遠の別れみたいにじゃれつく犬をあやしてる君の姿が写った・・ちゃんと自分で世話できるの?」
とも「はい!」
アキ「散歩も連れてく?」
とも「はい!」
アキ「仕方ない」
海里「すごい勝手に決めたね」
アキ「いいでしょ?」
海里「別にどっちでも」
俊「じゃあ代わりに人手を増やすの?別に少人数でやらねばならないっていうルールがあるわけでもないんだし」
アキ「私はそれは反対だな、特に意味は無いけどなんか少人数でやったほうが冒険者っぽくていいんだよね。そうしたほうが失った時のダメージが大きいでしょ、冒険者は、確実に仲間を失うものなんだ、だからこそかっこいぃ、指揮官みたいにさ」
海里「ん~~、私も人海戦術はしたくないな。けど一人増えるかもしれない、ほら前にも話したでしょ?ともかく、今日ともちゃんがいるうちにこの・・」
アキ「ゾルゲ、って名前つけた」
海里「ゾルゲを作ろうよ、基本構造だけでも」
とも「はい、そうしましょう」
アキ(ゾルゲプロジェクトは俊の工作機械がまったく上手くいかなかったのを除いではすんなりいった、この粘土細工も簡単だし、バーナーで熱すれば、熱がどんどん拡散していく化学反応なのでとても楽チンだ。俊もスクラップと金属ゴミを積み上げてようやく形になるものができるように鳴った、たこ焼き器みたいに慣れればなんであんな汚いものを作れたのか不思議になると本人は語る。あっとい間に夜は更けぬ、珍しく海里も今日は夜ふかしはしない日と言ってお菓子などを食べ飽かす、こうしていると普通の女の子というか・・見た目からいくとせいぜい中学生だ、ともちゃんよりも下に見える、もし資金が尽きたらエロビデオでも撮って売り出せるんじゃないだろうか、おしりの形もいいし変態には受けるに違いない・・・)
海里「なんなのその・・やらしい目で人を見て、まさかレズ?」
アキ「違うよ・・、うん違うと言わせてくれ、実際わかんない。アルコールなんかあったっけ?」
俊「アルコールがあるよ、原液の」
アキ「よし、アルコールコーラ割りを作ってあげよう」
とも「美味しいんですか?」
アキ「味はコーラだよ」
俊「言い切ったな」
アキ「これがもし脚本ありの映画だったらともちゃんは死ぬね、交通事故か何かで、それで犬だけが私たちのところへやってくる。♂なのにともジュニアとかなんとか名前がつけられてさ」
俊「だとその次におれが死ぬな、なにかエンジンの事故か何かで」
海里「だと私も死ぬハメになるじゃん、そして意思をついでアキが火星へと旅立つんでしょ、犬も連れてって。死因は何?」
アキ「放射線被曝」
海里「放射能は出ないとゆうに」
アキ「映画見てる人は核分裂と核融合の違いなんかわからんもの、そのくらい適当でいいんだよ」
とも「ちょっと勝手に殺したあげく、もう完全に脇役になってるじゃないですか」
アキ「ハハハ、ほら出来た、飲みな」
アキ(その後のコトはほとんど覚えてない、原液のアルコールは強烈だということを次の日の頭痛とともに実感した。カニグズバーグの小説でなにか・・研究室でLSDを作る話も思い出した。ともは無事に家についたということを何度も報告してきた、よっぽど死ぬのが怖かったんだろう、そう・・人は簡単に死ぬけど、あんまり死なない、ポラに写った彼女を見ると元気だった頃の彼女を思い出すw
ともは三日後にはまたやってくるはず、それまでにゾルゲを完成しておきたい)
とも(それから一週間ほどは同じようなルーチンワークをやった。昼は掃除と整理とインフラ整理、夜はファインマン、私はとうとうベジタリアン生活には耐えられなくなってピザなどの出前を取ることにした、アキの影響で海里も俊もココア中毒に陥り、その栄養価と吸収性を賞賛してだんだん登山家グループみたいなストイックな機能重視派になってしまった、私は一人ファストフードを食らいつく文明人の立場を守りたいと思う、整理が大体終わったところで、色んな工作機械の出番が到来と言うことにあいなりました)
海里「複雑な部品は外注にするけど、簡単な加工は予算の都合もあってこのlathe(旋盤)とdrill machine、mill machine(フライス盤)によって行う事にします。といっても私は理論で、工作にかんしてはみんなとおんなじトーシローなので何の手助けも出来ません。当初の計画では、熟練工を雇うつもりだったんだ、こんなノーサラリーで協力してくれる人がいるとは思わないじゃん?でもタダでやってくれる人がいるならそれを使うにこしたことはない。それに・・たいして経験も知識もない人がなにかやるほうが、意味がある、前にも言ったかな?
ついでに言っておくと外形、とか基本的な構造は、この鉄とカーボンナノファイバーを組み合わせた、新素材で・・これは熱すると強度が硬くなってダイヤモンドカッターでも切れなくなるけど、熱するまでは粘土みたいに扱えるスグレモノで、工作というよりは、彫刻みたいなものです、陶器みたいに熱して体積変化が起こることもないから、これから主流になるだろう素材です、実際宇宙素材として使うにはもっと高級なものが必要だけど、私達のENT(終わりなき夜の旅 eternal night traveler)では大気圏突入による摩擦などは考えなくてもいいわけだからこれで十分、実は有人宇宙計画で一番大変なのは帰ってくる事なの、それが無いとすれば、かなり激安で行ける、日本はハラキリやカミカゼなど命をぶんなげるような伝統があるから親しみやすいと思われます。ともかく中の機械的な部分、ドアとかそういうのは工作で、外形はアート、どっちも熟練が必要だから役割を分けたほうがいいと思うんだ。機械はもちろん内部は私がやるけど・・機械やりたい人?は俊君で決定」
俊「質問から断定までがコンマ数秒しか無かったような気がするんだけど」
アキ「必然的にそうじゃん、ともちゃんは学校あるんだから」
とも「申し訳ない」
海里「つまり、フォルム作成はアキとともちゃんに任せます、もっと単純な事を言えば力仕事は全部俊君に丸投げしました」
俊「わぁ正直」
海里「でも水生成機械とか、生命維持装置とかは、向こうの友達に試作品をもらい受けるからそれほど大変ではないはずです。・・それで、ちょっと仕事に慣れる為にいきなりロケットではなくて何か小さなプロジェクトを挟むほうがいいと思って。オートバイか自転車を作ろうと思うんだけど?」
とも「わぁ、楽しそう」
アキ「じゃあモーター付き自転車がいいんじゃない?昔のホンダが作ってたみたいな」
俊「モペッドっていうらしいなそれは、ホンダ Aが有名(ネット調べ)」
海里「じゃあそれで行こう、エンジンはガソリンじゃなくて電気にしたほうがいいね」
俊「それは電動モペッドというらしいね」
とも「それって電動アシスト自転車って事?」
アキ「そういうとおばはん臭いからモペッドなんでしょ」
とも「そうか」
海里「じゃあざっくり設計書いてしまうから、それまで俊君はマニュアルよみ、二人は、デザインでも決めて」
三人「ラジャー」
とも「さて、とりあえずネットで資料探しましょう」
アキ「うん・・自転車で困る事って何?」
とも「・・・特に無いですかね・・あぁ、荷物が載らない、ギターとか。」
アキ「そうか・・じゃあトライク(三輪)にして荷台を作ろう、他は?」
とも「トライクだと置き場所に困る」
アキ「折りたたみ式にする・・他?」
とも「重い」
アキ「あの素材は軽いんじゃない?知らないけど。雨に弱いじゃない、一番は?」
とも「なるほど」
アキ「だから屋根をつけよう」
とも「斬新ですね」
アキ「モーター付きだからギアはいらないよね」
とも「あといい自転車はすぐにパクられる、駅前に置き場所がない」
アキ「パクられるのを防ぐには滅茶苦茶派手にしてすぐに足がつくようにすればいいね、後者は私じゃなくて政治家に文句言って、日本の道路はハッキリいってアスファルトの掃き溜めで道にすらなってないって」
とも「名前は?」
アキ「・・ゾルゲ」
とも「スパイ?」
アキ「違う、ハイデガー哲学用語、真っ赤にしよう、なんとなくナチス的デザインがいいな、ナチスってデザインのセンスは抜群にいいよね、SAのロゴとかめちゃかっこいいもん。ナチスの専属デザイナーは誰だったんだろう?」
とも「色んなとこから苦情があるのでノーコメントです」
アキ「でも作家ってのはヒトラーにコンプレックスがあるものだよ、だってナチスは歴史上最大級クラスの総合芸術だったもん、コンセプトアート、作家の夢は一つの世界を構築することにあるとすれば、ヒトラーというアーティストはそれに成功したんじゃない、偉大さってやつをベクトルや価値観を無視して絶対値で評価できるとすればヒトラーが成した事はジョンレノンがしたことの100倍くらいの数値があると思う、実存哲学的評価だけど・・・それと私はいつも言うんだけどヒトラーはマジでアーリア人種を愛していたと思うんだ、普通の政治家が自分の国を愛するなんてペラッペラの嘘で、窮地に陥ったらすぐに国を捨てるに決まってるし、可愛いのは自分とせいぜいその家族が限度なのにヒトラーのそれは本気だった、もっとも残酷な行為が、もっとも真剣な愛情、しかも特定の人間ではなく博愛に近いものから生まれたとしたら、ナチスを批判することはとたんに難しくなるよ。現代文明人が無害に見えるのは、誰も愛さないからだってことにもなるしね、愛が無い世界では殺人も無いはず、人間に対するゾルゲが無いのだから・・この社会は愛が無いと思わない?アフリカで誰が死のうと、どんな動物が絶滅しようと、どれだけ森がなくなろうと、おれの生活が大事、誰も殺そうとは思わない、積極的に殺そうとは思わないけど、犠牲になるなら仕方ない、けどそれはおれのせいではない・・・」
とも「そういうぎょっとするような事を言うのやめてくださいよ、夜中に思い出してひやっとするから。後ろの荷台はカゴにしましょう、カバーをフードでつけるようにして、ちょっと・・アールデコっぽい感じ、後ろのタイヤは大きいほうがいいでしょ?貴族っぽくて?」
アキ「うん、ハプスブルク帝国風ね、だったらもっと繊細なラインにしたほうがいいんじゃない?壊れやすそうだけど、頑丈で軽いって話だしどうせならホイールハンドルにしちゃうか」
とも「タイヤは白にしましょう」
アキ「そうするとこの窓の部分は角張ったほうがいいよ」
とも「・・・これどうやって乗るんですか?」
アキ「そうか・・ドアね、ドア」
俊「どんな具合?」
とも「ついにさみしくなりましたね」
俊「退屈なんだもんこのマニュアル・・・わぁ・・・色んな意味ですごいな,ベロモバイルみたいになったね」
アキ「わざと悪趣味にして盗まれないようにしようってコンセプトなの」
とも「きっちゅってやつですね」
海里「はい、出来た」
アキ「はやっ」
海里「こんなのエンジンにチェーンからませるだけだもん。どんな感じ・・うわっなにこれ、趣味悪い、マニエリスム?」
とも「ウィーン世紀末派です」
俊「わざとゴテゴテにして盗まれないようにしたんだって」
海里「確かにこれを盗むのはタマだけど・・、あんまり乗りたくない」
アキ「乗りたいよ、コスプレ感があるじゃん」
海里「まぁいいけど・・じゃあディテールと寸法決めないと・・アキって実はexibisionistなの?」
アキ「今頃気づいたの?服装からして気付きそうなものなのに・・ねぇ?」
とも「ん~海外では感覚が違うんじゃないですか?(あと胸が無いからじゃないですか)」
とも(またドクター海里にすべて丸投げして、設計図を書いてもらった。天才ってのはなんて便利なんだろう!(私たちは天才って事で何もかも済ますのに慣れてしまった)一家に一台欲しい。私たちはインスタントラーメン片手に工具の点検、マイクロメーター、ノギス、電ノコ、など使ったこともない代物から、錆びまくってるスパナとドライバーの山。もともと自転車工場だけあっただけあって、材料には不足しないみたいだ、ペダルもサドルも、欠けたり、スポンジがなくなってただの木の板になったものなど色々ある)
とも「チェーンも!どれもこれも錆びまくってますね」
アキ「そりゃ錆びるさ、触るとネチョネチョするからやめたほうがいいよ」
俊「劇的にややこしいなこの・・ミルマシーン、旋盤は要するに金属のろくろみたいなものだってわかったけど、こいつはクセもんだよ。先端のエッジだけで200種類くらいあるよ・・」
アキ「極めれば技能オリンピックに出れるよ、まぁ・・もう今は電脳処理か」
とも「・・あれですね、宇宙船作るのも結構、平凡な積み重ねですよね、映画にちゃんとなりますかね」
アキ「さぁ、でも私は好きだけどな、こういうちまい地味な活動、毎日誰かが死んだり、大事件が起こるわけにはいかないじゃん、それと俊それが出来るようになったらストーカー3を作るの手伝ってね、2はずっとあそこで撮りっぱなしだから3が必要なんだ」
俊「はぁいはい」
とも「確かに、私たちは楽しいですね。あぁもうすぐ夏休み終わっちゃうなぁ・・」
とも(全開に開いた門から夏の日差しをみやる、そう、門を完全に取っ払ってまさしく飛行機の格納庫っぽい外観になった。犬が欲しいな・・シェットランドシープドック。コンクリートの冷たい地面に夏のコントラストの強い日差しが差し込んでいる、私たちは暗がりからそれを見つめている・・・空が青い、この工場はクーラーをつけなくてもすごく涼しいから(たぶん天井が高いからだ、あとすきま風が吹きほうだいだから)夏を感じるには適してない。冬はどうするんだ・・死ぬほど寒いと思われる・・(アキがセンチになっている私の後ろ姿をポラで撮っている気配がする、抜け目がない人だ)・・でもこんなに夏休みが終わって欲しくないのは初めてだ、いつもならずっと休みなのにも飽きてしまうのに・・ん?)
とも「宿題全然やってない!」
アキ「学園コント始めるなら一人でどうぞ」
とも「え~~~二人もでしょ!?」
俊「受験生に夏の課題なんてないよ」
とも「ガッデェイム!!二人とも落ちてしまえばいいんだわ」
アキ「でもむしろ物理と数学はもっと出来るようになった気がする」
俊「確かに、理系にするかな・・」
アキ「受けるの?」
俊「一応、アキも一応受けないと学校が失望するよ」
アキ「・・まぁ受けるだけ受けてやるか、センターは・・・学費が奨学金が出て図書館が充実してるとこがいいんだけどな、どの学部に入ったところでどうせ自分で勉強するんだし」
海里「出来ました」
アキ「ご苦労様です、カレーヌードルが出来てるよ。それとともちんは急に帰らないと行けないってさ」
海里「そっか、もう夏休みも終わりだもんね、新学期って感じなんだけどなぁ私の感覚では」
アキ「想像できないんだよね、夏から新しい学年が始まるなんてさ、私達が少数派なんだけど」
とも「申し訳なし・・土日と休みは来ますから、あと犬飼いましょうねシェットランドシープドック、こんなに広い空間があるのに犬がいないと寂しいでしょ」
アキ「あぁ今なんかすごい明確に、久しぶりだねぇとかいって三時間も経ってないのに永遠の別れみたいにじゃれつく犬をあやしてる君の姿が写った・・ちゃんと自分で世話できるの?」
とも「はい!」
アキ「散歩も連れてく?」
とも「はい!」
アキ「仕方ない」
海里「すごい勝手に決めたね」
アキ「いいでしょ?」
海里「別にどっちでも」
俊「じゃあ代わりに人手を増やすの?別に少人数でやらねばならないっていうルールがあるわけでもないんだし」
アキ「私はそれは反対だな、特に意味は無いけどなんか少人数でやったほうが冒険者っぽくていいんだよね。そうしたほうが失った時のダメージが大きいでしょ、冒険者は、確実に仲間を失うものなんだ、だからこそかっこいぃ、指揮官みたいにさ」
海里「ん~~、私も人海戦術はしたくないな。けど一人増えるかもしれない、ほら前にも話したでしょ?ともかく、今日ともちゃんがいるうちにこの・・」
アキ「ゾルゲ、って名前つけた」
海里「ゾルゲを作ろうよ、基本構造だけでも」
とも「はい、そうしましょう」
アキ(ゾルゲプロジェクトは俊の工作機械がまったく上手くいかなかったのを除いではすんなりいった、この粘土細工も簡単だし、バーナーで熱すれば、熱がどんどん拡散していく化学反応なのでとても楽チンだ。俊もスクラップと金属ゴミを積み上げてようやく形になるものができるように鳴った、たこ焼き器みたいに慣れればなんであんな汚いものを作れたのか不思議になると本人は語る。あっとい間に夜は更けぬ、珍しく海里も今日は夜ふかしはしない日と言ってお菓子などを食べ飽かす、こうしていると普通の女の子というか・・見た目からいくとせいぜい中学生だ、ともちゃんよりも下に見える、もし資金が尽きたらエロビデオでも撮って売り出せるんじゃないだろうか、おしりの形もいいし変態には受けるに違いない・・・)
海里「なんなのその・・やらしい目で人を見て、まさかレズ?」
アキ「違うよ・・、うん違うと言わせてくれ、実際わかんない。アルコールなんかあったっけ?」
俊「アルコールがあるよ、原液の」
アキ「よし、アルコールコーラ割りを作ってあげよう」
とも「美味しいんですか?」
アキ「味はコーラだよ」
俊「言い切ったな」
アキ「これがもし脚本ありの映画だったらともちゃんは死ぬね、交通事故か何かで、それで犬だけが私たちのところへやってくる。♂なのにともジュニアとかなんとか名前がつけられてさ」
俊「だとその次におれが死ぬな、なにかエンジンの事故か何かで」
海里「だと私も死ぬハメになるじゃん、そして意思をついでアキが火星へと旅立つんでしょ、犬も連れてって。死因は何?」
アキ「放射線被曝」
海里「放射能は出ないとゆうに」
アキ「映画見てる人は核分裂と核融合の違いなんかわからんもの、そのくらい適当でいいんだよ」
とも「ちょっと勝手に殺したあげく、もう完全に脇役になってるじゃないですか」
アキ「ハハハ、ほら出来た、飲みな」
アキ(その後のコトはほとんど覚えてない、原液のアルコールは強烈だということを次の日の頭痛とともに実感した。カニグズバーグの小説でなにか・・研究室でLSDを作る話も思い出した。ともは無事に家についたということを何度も報告してきた、よっぽど死ぬのが怖かったんだろう、そう・・人は簡単に死ぬけど、あんまり死なない、ポラに写った彼女を見ると元気だった頃の彼女を思い出すw
ともは三日後にはまたやってくるはず、それまでにゾルゲを完成しておきたい)
2012年3月21日水曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep11
11 rain
アキ(起きた瞬間の刺さるような憂鬱感、そして異常にすっきりした頭。これは寝坊だ、モバイル(腕携帯)を見ると12時少し前だった、海里に深夜に起こされたとはいえ13時間ほど寝てしまった)
とも「起きましたか?意外ですね、アキってもっとしっかりしてると思ってたのに、少女のように眠ってましたね」
アキ(ともにニヤニヤと皮肉を言われて、たまらない気持ちになる。いつからこの子はこんなにシビアに私の弱点を攻撃するようになったのだ)
俊「いい写真も撮れたしね」
アキ「あぁっ!返してっ」
俊「へいパース」
とも「へいへい」
アキ「コロシテヤルーー!!」
アキ(私達が馬鹿騒ぎしてる間も海里はいつ作ったのかはしごを直して、それにエレベーターみたいなものを取り付けて橘花のパーツをどんどん一階に運び上げていた。橘花は中身はほとんど空っぽで計器類は使えそうなものがありそうだと彼女は語っておる、ほかにも地下には使えそうな鉄くずやら何やらがたくさんあってそれも全部一階にうず高く積まれていた)
とも「はぁはぁ・・ふぅ、そろそろ無言の圧力をかけてくる人がいるんで仕事に戻ります、あっ、湯沸かし器を使ってシャワー室を作りましたから、朝シャンしてきたらどうですか?」
アキ「はぁはぁ・・そうする」
俊「水流弱いよ」
アキ「のぞいたら一万円だからね」
俊「いつか5000円でやらせてくれるって言ってたのに、値上がりしてる」
アキ「あなたは女心ってのがさっぱりわかってない」
俊「女はバカな男が好きなんだよ、男がバカな女が好きなように」
アキ「(正論だ)・・だとしたら頭がいい人間は全員イシュマエルだよ」
アキ(気づかなかったけどちょっと肌寒いと思ったら外は雨だった。着替えをまさぐってカバンをさぐる指先がかじかんだ。まだ8月の前半だっていうのに、今年は冷夏なのかもしれない。そうだ、ストーカー2をどこかに設置して置かないと・・移動はしごでそれを正面玄関の上のところにはめ込んだ、そこへトラックがごろごろと近づいてきた)
ドライバー「湊海里さんのお宅でよろしいですか?」
アキ(海里は地下から緊張した顔つき?というか、悪戯娘みたいな顔つきでトラック一台分の荷物をどんどん運び入れた、ドライバーはこんなガキどもが何か自転車屋でも始めるのか?といぶかしそうな顔つきだった。どうにも答えようがないけど、まさか火星に行くための宇宙船を作ってるなんて言っても信じるわけないし、18才の少女を自殺させる映画を撮ってるとも言えないじゃないか。世間ではそれはタブーになっているようだから・・・
シャワーは確かに水圧がヘニョヘニョだったけれど、夏だから大丈夫だ、冬だったら死ぬかもしれないけど、それに私は毎日お風呂入らないと文明人でいられないってほどの潔癖症でもない、おかげでアレルギーやアトピーとも無縁で生きてきた。・・・そうだアルバイトを無断でやめちまったな・・仕方ないよね・・私があまりお風呂に入りたがらないのはこういうふうにやり忘れた事や、未来の悪いことを整理したがるからだ、そんなものは当たって砕けろ方式でやるより他に仕方ないのに・・食費とかはたぶん海里が出してくれるんだな、ちょっと悪いな・・まぁいいか・・こんなくだらないことに考えが浮かぶのも雨のせいだ。それとともの持ってきたシャンプーがガーリーな甘い匂いのヤツでまったく私の趣味と合わないからだ。シャンプーしながらリンスもできるあの発明をなんで若い娘は理解しないんだ。
シャワー室(といっても防水カーテンでパーテーションしただけのもの、生足見放題)から出ると海里と俊が慎重にニトロ爆弾でも運ぶように黒い箱を地下へと運んでいた。ふむ・・ニトロ的なものだとしてあのトラックの運ちゃんがそうとうぶん投げてるから意味ないんじゃないの?私は運送業界で少しバイトしたことがあるから知ってるけど、他人の荷物を大切に扱う人間なんてこの世には誰一人としていない。大切な物は自分で運んでいくしかないんだぜ)
とも「アキ、手伝って」
アキ「はい」
とも「いい返事ですね」
アキ「アルバイトのクセ、何すればいいの?」
とも「とにかく、鉄のままじゃ重すぎるから、カーボンナノファイバーと鉄を結合させて、軽くて丈夫な素材をつくるのです」
アキ「鉄?大戦末期の戦闘機は木で出来てると思ってた、記憶違いかもしんない」
とも「まぁそれで鉄は鉄、ネジはネジ、とかで分けて後で溶かしたりしやすいにシて欲しいって事です、はい、海里さんの作った工程表です」
アキ「厚っ、そして紙薄っ、聖書以外では見たことない紙室じゃん、英語だし」
とも「でも初版だから改訂されるんでしょうね、こちら最低限みにつけて欲しい工学とかの教科書です、1セットしかないからみんなで読んでということです、電子テキスト版もあります」
アキ(縦積みにされた本は私の身長より高かった、gravity 6thという巨大な黒いテキストが一番上に置かれていた、オックスフォードの英英辞典と同じ大きさだ。パラパラめくってみると、確かに私の脳みそのグラビティが感じられた)
アキ「ふぅ、ともかく数学と物理では満点取れそうだわ」
とも「ともかくやりましょ、はい手袋です」
とも(私たちは原子周期表に従ってジャンクを分類して行った、Fe 26番、Al 13番、Li 3番 etc、私達の周りでも結構色んな元素が手に入るんだなと感心すると同時に、もう周期表の夢を見そうで恐ろしい、たしかにケミストリーで満点取れそう。俊と海里さんは二人で地下の回線とかをいじくっていた。二人はおさなじみだってことなんだけど、なんだかそれだけではない気がして私はちょっと焦った。でも動揺してると復讐の機械を狙っているアキに悪魔のようにからかわれそうなのでなるべく気にしないようにしていた)
アキ「ときにともちゃん彼氏いるの?」
とも「いっきなり何を言い出すんですか」
アキ「昨日の夜そういう話をしたそうだったから、ピロートークで、それと俊がいるとしずらそうだし」
とも「・・いないです、別れました最近」
アキ「もしかして一回セックスしてすぐに捨てた?」
とも「何で知ってるんですか?」
アキ「私も同じような事したから、ははは」
とも「・・・もっとなにかシアワセになれると思ってました」
アキ「んなわけねぇじゃん」
とも「だってそんなふうな事書いてあるじゃないですかぁ、女としてのシアワセを実感♪とか・・気持ちは良かったけど、それだけでした」
アキ「下世話に言ってオーガズムに達してないとかそういうことではなくて?」
とも「下品だわ!15才の子供を捕まえて」
アキ「ははは、でも私の15の時なんて、それはもぉ・・ひどいあばずれだったよ、命短し恋せよ乙女って知らないの?乙女って12~16のたった四年しかないんだよ、一度に一つじゃなくてたくさん恋したほうがいいと思うな、すぐに骨っぽいクソババァになっちまうんだから、もしくはロシア女みたいなケツの化物になっちゃうよ」
とも(私は顔を真っ赤にして何も答えられなかった、ダメだ、相手が優秀すぎる、私の心理状態なんて手に取るように読まれてるんだ。やんわり俊はやめといたほうがいいよって事を言ってくれたみたいだ。でもこんな集団生活で、男が一人では・・・どうやったってダメだ。紫禁城でずっと待ちぼうけ食わされてる女中並みにダメだ、自慰するわけにもいかないし、私はそんな変態じゃない。だから女ってヤダ、永久に悪魔に裸で追われているんだ、チクチクとあの槍で自尊心を傷つけられながら、運命の人とやらがすんなり現れてすんなり結婚してしまっても味気ないし・・・悪魔から逃げるには悪魔につかれた人間を見つけることだ・・・それにしたってお腹が空いた、なんでみんなちっともお腹が空かない感じなんだ?この美男美女って生き物どもは!何もしないでも人に劣等感を抱かせやがる)
とも「お腹空きましたね」
アキ「全然、まだ起きたばっかりだし」
とも「みなさん、お腹空きませんか?」
俊&海里「まだだいじょうぶ」
とも(ちきしょう、レジスタンス部隊じゃあるまいし・・・結局のところレジスタンス部隊はテキパキと日暮れ頃まで何一つ不平を言わずに作業を続けた。ただ一人の外人義勇軍の私は、後半はもうガス欠のタイガー戦車みたいに動きがスローになった)
海里「さて、今日はこのくらいでいいでしょう、お疲れ様。届いた荷物の中に食べ物とか、ガスバーナーとかもあるはずだから」
アキ「ありがとう、お食事用意してもらって」
海里「もともと私のわがままに付き合ってもらってるだけだから」
アキ「私のわがままでもあるんだけどね、首謀者二人、共犯二人、オカネの面ではまったく援助出来ません」
とも「うあぁ~やっと飯かぁ、もぉくたくたぁ、ぺこぺこぉ・・」
アキ「何スポーツ漫画の補欠みたいに弱音吐いてんの」
俊「誰が作るん?」
激しく火花が散る
アキ「まさかローテーション制なんて導入するわけにはいかないでしょう」
とも「真剣じゃんけんは久しぶりだなぁ・・(手をこう支えて望遠鏡を作る)
俊「それやる奴久しぶりにみた」
海里「じゃんけん自体ひさびさだな・・」
俊「それ以前に料理出来るんだよね?」
アキ「割りと・・」
とも「たぶん・・」
海里「・・ノーコメント」
俊「・・はい、おれが作ります」
アキ「ウラー、料理できる男の子かっこいぃ」
とも「イタリアンで」
海里「中華で」
俊「おれの食いたいものを作る No complain needed」
海里(俊はベジタリアンなので(私は知ってた、彼は給食を食べない弁当持参だったから)から豆と野菜を中心としたイギリスの朝ごはんみたいなものを食べさせられた、私は栄養になれば何でもいい主義だから、さっと食べたけれど、ともちゃんは全寮制の食事を初めて食べた学生みたいに超不満ヅラだった、アキはコーヒーが主食(カフェインが)だからヴァン・ゴッホみたいにコーヒーを飲みまくっていた。あと彼女はチョコレートにも中毒していて、チョコがないと卑猥になってしまうからコーヒーとチョコ、ココアも完備せよと宣言した。俊の料理は味はそれほど悪くはない、が嘘みたいに薄い)
海里「さて、夜は頭脳労働なんだけど、私はまだ設計が終わってないから・・・Feynman phisicsから手をつけてはいかかでしょう、freshman sophomore向けだから、ぴったりじゃん、それに最近改訂版になったから」
アキ「goooood damn it 1376ページもあるよ、日本語に直したらたぶん2000ページはあるよ。それに一頁の情報量がハンパねぇぜちきしょう」
俊「これが名にし負うファインマンか・・、本当にまだこれを使うんだね」
とも「私も聞いたことある」
海里「基本のキ、有名すぎて解説書まであるよ。探せば補足資料も色々出てくるんじゃないでしょうか。じゃあがんばれ、未来のphisician達」
アキ(海里はなんかSッ気に満ちた教師風のぷりぷりした歩き方でまた地底へと帰っていった、彼女はおしりの形がいい、上向きだ)
アキ「・・あの人同い年だった気がするんだけど」
俊「何か、こう知識が電撃的に海馬に刻まれるみたいな装置は無いのかなぁ、そういうものが出来ない限りどんどん教育期間が長くなって、未来人は学校に50年くらい通わないといけなくなるよ、ともかく日本語で子供を育てるのは一切辞めた方がいいと思うな、地域言語として後から学びたい奴だけ学べばいいじゃん、それだけで二年は教育を短縮出来る。・・・・というか人生で一番楽しくて、一番幸せな期間を勉強に当てるっていうシステムは、本当に正しいのかね、若い時はもっとくだらない遊びやSEXばっかりして、30くらいになって衰え始めてから学問をやればいいのに・・・」
アキ「そんな下半身だけの人間使い物にならんじゃない・・ともかく医療の進歩がそれを追い抜くか、追い抜かれるか・・・今はもう完全に諦めてるもんね、社会が必要としてる知識レベル、つまりみんながcernとかIterの仕組みを理解して、きちんとエネルギー問題とかに話し合いが出来る状態、は夢物語だもん、みんなてぇへんだてぇへんだとかいって核発電から太陽光発電に飛びついたりしてみるけど、全然何の解決にもなってないもん、ただ企業が儲かるだけ、太陽光発電をするための設備投資がすでにてぇへんな事を巻き起こすし、太陽光発電に頼るよりも、もっと直接的な核発電に頼るほうがいいに決まってるじゃん、太陽がねぇとこじゃ太陽光は使えねぇんだから、そういうくだらない予算を全部核発電のほうにあててればとっくにプロトタイプのトカマクは完成してたのに・・・だから科学者たちが勝手に人類の行方を決めて、大衆が議会と選挙と国連とCOPでいつもそれに反対する、ともかく未知のものは恐ろしいから、それの繰り返しじゃん。いつか大衆が科学者を全員縛り首にしてもう科学なんてやめっちめぇ!みたいな事になるかもよ、ポルポトとかってそういうことに近いものだったのかなぁって思うんだ、いつかノスタルジーが爆発して未来を食いつぶして未来を過去にしてしまうかもしれないよ、クレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲ね・・あれって逆シャアのオマージュなのかね?」
とも「くだを巻いて、このテクストに手をつけるのを避けてますか?」
アキ「はい。あぁ~~仕方ない、読もう読もう。手で計算するの自体が久しぶりだよ、まず英語の学術用語を覚えないと・・・ともちゃん辞書ひく係、俊はノートね・・・These are the lectures in physics that I gave last year and the year before to the
freshman and sophomore classes at Caltech・・・・
アキが序文を朗読中
・・・・1963。1963! ....私の親すら生まれてない」
俊「右に同じく」
とも「もちろん」
アキ「ともちゃん英語わかってる?」
とも「わかりますよ、私帰国子女ですもん」
アキ「そうなん?なら安心」
俊「どこ?」
とも「アングレアス、まぁspatial dependance of amplitudeが一体何の事なのかさっぱりわかんないですけど」
アキ「The power of instruction is seldom of much efficacy except in those happy dispositions
where it is almost superfluous GIBON、これってどっちにとればいいのかね?」
とも「どっちとは?」
アキ「教育の力はほとんどの場合たいして効果はない、幸運な性質たちを別としてそれはほとんど不要なものだ。・・だから幸運な性質を持った人には教育は必要無いのか、幸運な性質を持ってない人には教育は必要ないのかって事」
俊「どっちにしろ教育は必要ないって事じゃない」
アキ「だとしたらあまりにもシビアだね、ギボンってそんなヤツだったっけ?」
俊「I was never less alone than when by myself.
(私はたった一人でいる時よりも孤独を感じない時はない)
I never make the mistake of arguing with people for whose opinions I have no respect.
(私はその人の意見が尊敬出来ない人間と議論するという過ちを犯したことはない)
ギボンの名言、ネット調べ」
とも「そういう人みたいですね」
アキ「i was never less alone than when by myself・・・、下の人が好きそうなコトバ」
とも「アキなんかしゃべりかたが変わりましたね」
俊「カフェインドライブが入ったからでしょ、それと前バージョンにだんだん戻ってるような気もする、学校無いと優等生キャラをする必要もないからね。デフォルトでは・・・こういう性質の人間なんだと思うよ」
アキ「私については彼のほうが詳しいようです、ただデフォルトの私は・・どこにもいないんじゃない?水澤アキってのは作家水澤アキが作った唯一の人格で、後は借り物、タブラ・ラサの自分っていう人間は、幼年時代の作られた幻想だと思う、幼年時代が素晴らしい思い出に満たされているとしたら、それは事実ではなく幻だからだよ・・はい講義に入ろう、そろそろ・・・・Atoms in motion」
俊(ファインマンはさすが名著というだけあって、英語のテクストを読みなれてないことを別にすればすんなりわかりやすかった・・これって結局受験勉強やってるのと同じになってないか・・海里はなんだかんだいってそれも見越して工程表を作っているのかもしんない・・・無い、それは無い。あいつはそんな・・・しかし・・それが出来る人間だからなぁ・・ついでに他の効用も見込めるならやっておくにしくはない・・・)
アキ(起きた瞬間の刺さるような憂鬱感、そして異常にすっきりした頭。これは寝坊だ、モバイル(腕携帯)を見ると12時少し前だった、海里に深夜に起こされたとはいえ13時間ほど寝てしまった)
とも「起きましたか?意外ですね、アキってもっとしっかりしてると思ってたのに、少女のように眠ってましたね」
アキ(ともにニヤニヤと皮肉を言われて、たまらない気持ちになる。いつからこの子はこんなにシビアに私の弱点を攻撃するようになったのだ)
俊「いい写真も撮れたしね」
アキ「あぁっ!返してっ」
俊「へいパース」
とも「へいへい」
アキ「コロシテヤルーー!!」
アキ(私達が馬鹿騒ぎしてる間も海里はいつ作ったのかはしごを直して、それにエレベーターみたいなものを取り付けて橘花のパーツをどんどん一階に運び上げていた。橘花は中身はほとんど空っぽで計器類は使えそうなものがありそうだと彼女は語っておる、ほかにも地下には使えそうな鉄くずやら何やらがたくさんあってそれも全部一階にうず高く積まれていた)
とも「はぁはぁ・・ふぅ、そろそろ無言の圧力をかけてくる人がいるんで仕事に戻ります、あっ、湯沸かし器を使ってシャワー室を作りましたから、朝シャンしてきたらどうですか?」
アキ「はぁはぁ・・そうする」
俊「水流弱いよ」
アキ「のぞいたら一万円だからね」
俊「いつか5000円でやらせてくれるって言ってたのに、値上がりしてる」
アキ「あなたは女心ってのがさっぱりわかってない」
俊「女はバカな男が好きなんだよ、男がバカな女が好きなように」
アキ「(正論だ)・・だとしたら頭がいい人間は全員イシュマエルだよ」
アキ(気づかなかったけどちょっと肌寒いと思ったら外は雨だった。着替えをまさぐってカバンをさぐる指先がかじかんだ。まだ8月の前半だっていうのに、今年は冷夏なのかもしれない。そうだ、ストーカー2をどこかに設置して置かないと・・移動はしごでそれを正面玄関の上のところにはめ込んだ、そこへトラックがごろごろと近づいてきた)
ドライバー「湊海里さんのお宅でよろしいですか?」
アキ(海里は地下から緊張した顔つき?というか、悪戯娘みたいな顔つきでトラック一台分の荷物をどんどん運び入れた、ドライバーはこんなガキどもが何か自転車屋でも始めるのか?といぶかしそうな顔つきだった。どうにも答えようがないけど、まさか火星に行くための宇宙船を作ってるなんて言っても信じるわけないし、18才の少女を自殺させる映画を撮ってるとも言えないじゃないか。世間ではそれはタブーになっているようだから・・・
シャワーは確かに水圧がヘニョヘニョだったけれど、夏だから大丈夫だ、冬だったら死ぬかもしれないけど、それに私は毎日お風呂入らないと文明人でいられないってほどの潔癖症でもない、おかげでアレルギーやアトピーとも無縁で生きてきた。・・・そうだアルバイトを無断でやめちまったな・・仕方ないよね・・私があまりお風呂に入りたがらないのはこういうふうにやり忘れた事や、未来の悪いことを整理したがるからだ、そんなものは当たって砕けろ方式でやるより他に仕方ないのに・・食費とかはたぶん海里が出してくれるんだな、ちょっと悪いな・・まぁいいか・・こんなくだらないことに考えが浮かぶのも雨のせいだ。それとともの持ってきたシャンプーがガーリーな甘い匂いのヤツでまったく私の趣味と合わないからだ。シャンプーしながらリンスもできるあの発明をなんで若い娘は理解しないんだ。
シャワー室(といっても防水カーテンでパーテーションしただけのもの、生足見放題)から出ると海里と俊が慎重にニトロ爆弾でも運ぶように黒い箱を地下へと運んでいた。ふむ・・ニトロ的なものだとしてあのトラックの運ちゃんがそうとうぶん投げてるから意味ないんじゃないの?私は運送業界で少しバイトしたことがあるから知ってるけど、他人の荷物を大切に扱う人間なんてこの世には誰一人としていない。大切な物は自分で運んでいくしかないんだぜ)
とも「アキ、手伝って」
アキ「はい」
とも「いい返事ですね」
アキ「アルバイトのクセ、何すればいいの?」
とも「とにかく、鉄のままじゃ重すぎるから、カーボンナノファイバーと鉄を結合させて、軽くて丈夫な素材をつくるのです」
アキ「鉄?大戦末期の戦闘機は木で出来てると思ってた、記憶違いかもしんない」
とも「まぁそれで鉄は鉄、ネジはネジ、とかで分けて後で溶かしたりしやすいにシて欲しいって事です、はい、海里さんの作った工程表です」
アキ「厚っ、そして紙薄っ、聖書以外では見たことない紙室じゃん、英語だし」
とも「でも初版だから改訂されるんでしょうね、こちら最低限みにつけて欲しい工学とかの教科書です、1セットしかないからみんなで読んでということです、電子テキスト版もあります」
アキ(縦積みにされた本は私の身長より高かった、gravity 6thという巨大な黒いテキストが一番上に置かれていた、オックスフォードの英英辞典と同じ大きさだ。パラパラめくってみると、確かに私の脳みそのグラビティが感じられた)
アキ「ふぅ、ともかく数学と物理では満点取れそうだわ」
とも「ともかくやりましょ、はい手袋です」
とも(私たちは原子周期表に従ってジャンクを分類して行った、Fe 26番、Al 13番、Li 3番 etc、私達の周りでも結構色んな元素が手に入るんだなと感心すると同時に、もう周期表の夢を見そうで恐ろしい、たしかにケミストリーで満点取れそう。俊と海里さんは二人で地下の回線とかをいじくっていた。二人はおさなじみだってことなんだけど、なんだかそれだけではない気がして私はちょっと焦った。でも動揺してると復讐の機械を狙っているアキに悪魔のようにからかわれそうなのでなるべく気にしないようにしていた)
アキ「ときにともちゃん彼氏いるの?」
とも「いっきなり何を言い出すんですか」
アキ「昨日の夜そういう話をしたそうだったから、ピロートークで、それと俊がいるとしずらそうだし」
とも「・・いないです、別れました最近」
アキ「もしかして一回セックスしてすぐに捨てた?」
とも「何で知ってるんですか?」
アキ「私も同じような事したから、ははは」
とも「・・・もっとなにかシアワセになれると思ってました」
アキ「んなわけねぇじゃん」
とも「だってそんなふうな事書いてあるじゃないですかぁ、女としてのシアワセを実感♪とか・・気持ちは良かったけど、それだけでした」
アキ「下世話に言ってオーガズムに達してないとかそういうことではなくて?」
とも「下品だわ!15才の子供を捕まえて」
アキ「ははは、でも私の15の時なんて、それはもぉ・・ひどいあばずれだったよ、命短し恋せよ乙女って知らないの?乙女って12~16のたった四年しかないんだよ、一度に一つじゃなくてたくさん恋したほうがいいと思うな、すぐに骨っぽいクソババァになっちまうんだから、もしくはロシア女みたいなケツの化物になっちゃうよ」
とも(私は顔を真っ赤にして何も答えられなかった、ダメだ、相手が優秀すぎる、私の心理状態なんて手に取るように読まれてるんだ。やんわり俊はやめといたほうがいいよって事を言ってくれたみたいだ。でもこんな集団生活で、男が一人では・・・どうやったってダメだ。紫禁城でずっと待ちぼうけ食わされてる女中並みにダメだ、自慰するわけにもいかないし、私はそんな変態じゃない。だから女ってヤダ、永久に悪魔に裸で追われているんだ、チクチクとあの槍で自尊心を傷つけられながら、運命の人とやらがすんなり現れてすんなり結婚してしまっても味気ないし・・・悪魔から逃げるには悪魔につかれた人間を見つけることだ・・・それにしたってお腹が空いた、なんでみんなちっともお腹が空かない感じなんだ?この美男美女って生き物どもは!何もしないでも人に劣等感を抱かせやがる)
とも「お腹空きましたね」
アキ「全然、まだ起きたばっかりだし」
とも「みなさん、お腹空きませんか?」
俊&海里「まだだいじょうぶ」
とも(ちきしょう、レジスタンス部隊じゃあるまいし・・・結局のところレジスタンス部隊はテキパキと日暮れ頃まで何一つ不平を言わずに作業を続けた。ただ一人の外人義勇軍の私は、後半はもうガス欠のタイガー戦車みたいに動きがスローになった)
海里「さて、今日はこのくらいでいいでしょう、お疲れ様。届いた荷物の中に食べ物とか、ガスバーナーとかもあるはずだから」
アキ「ありがとう、お食事用意してもらって」
海里「もともと私のわがままに付き合ってもらってるだけだから」
アキ「私のわがままでもあるんだけどね、首謀者二人、共犯二人、オカネの面ではまったく援助出来ません」
とも「うあぁ~やっと飯かぁ、もぉくたくたぁ、ぺこぺこぉ・・」
アキ「何スポーツ漫画の補欠みたいに弱音吐いてんの」
俊「誰が作るん?」
激しく火花が散る
アキ「まさかローテーション制なんて導入するわけにはいかないでしょう」
とも「真剣じゃんけんは久しぶりだなぁ・・(手をこう支えて望遠鏡を作る)
俊「それやる奴久しぶりにみた」
海里「じゃんけん自体ひさびさだな・・」
俊「それ以前に料理出来るんだよね?」
アキ「割りと・・」
とも「たぶん・・」
海里「・・ノーコメント」
俊「・・はい、おれが作ります」
アキ「ウラー、料理できる男の子かっこいぃ」
とも「イタリアンで」
海里「中華で」
俊「おれの食いたいものを作る No complain needed」
海里(俊はベジタリアンなので(私は知ってた、彼は給食を食べない弁当持参だったから)から豆と野菜を中心としたイギリスの朝ごはんみたいなものを食べさせられた、私は栄養になれば何でもいい主義だから、さっと食べたけれど、ともちゃんは全寮制の食事を初めて食べた学生みたいに超不満ヅラだった、アキはコーヒーが主食(カフェインが)だからヴァン・ゴッホみたいにコーヒーを飲みまくっていた。あと彼女はチョコレートにも中毒していて、チョコがないと卑猥になってしまうからコーヒーとチョコ、ココアも完備せよと宣言した。俊の料理は味はそれほど悪くはない、が嘘みたいに薄い)
海里「さて、夜は頭脳労働なんだけど、私はまだ設計が終わってないから・・・Feynman phisicsから手をつけてはいかかでしょう、freshman sophomore向けだから、ぴったりじゃん、それに最近改訂版になったから」
アキ「goooood damn it 1376ページもあるよ、日本語に直したらたぶん2000ページはあるよ。それに一頁の情報量がハンパねぇぜちきしょう」
俊「これが名にし負うファインマンか・・、本当にまだこれを使うんだね」
とも「私も聞いたことある」
海里「基本のキ、有名すぎて解説書まであるよ。探せば補足資料も色々出てくるんじゃないでしょうか。じゃあがんばれ、未来のphisician達」
アキ(海里はなんかSッ気に満ちた教師風のぷりぷりした歩き方でまた地底へと帰っていった、彼女はおしりの形がいい、上向きだ)
アキ「・・あの人同い年だった気がするんだけど」
俊「何か、こう知識が電撃的に海馬に刻まれるみたいな装置は無いのかなぁ、そういうものが出来ない限りどんどん教育期間が長くなって、未来人は学校に50年くらい通わないといけなくなるよ、ともかく日本語で子供を育てるのは一切辞めた方がいいと思うな、地域言語として後から学びたい奴だけ学べばいいじゃん、それだけで二年は教育を短縮出来る。・・・・というか人生で一番楽しくて、一番幸せな期間を勉強に当てるっていうシステムは、本当に正しいのかね、若い時はもっとくだらない遊びやSEXばっかりして、30くらいになって衰え始めてから学問をやればいいのに・・・」
アキ「そんな下半身だけの人間使い物にならんじゃない・・ともかく医療の進歩がそれを追い抜くか、追い抜かれるか・・・今はもう完全に諦めてるもんね、社会が必要としてる知識レベル、つまりみんながcernとかIterの仕組みを理解して、きちんとエネルギー問題とかに話し合いが出来る状態、は夢物語だもん、みんなてぇへんだてぇへんだとかいって核発電から太陽光発電に飛びついたりしてみるけど、全然何の解決にもなってないもん、ただ企業が儲かるだけ、太陽光発電をするための設備投資がすでにてぇへんな事を巻き起こすし、太陽光発電に頼るよりも、もっと直接的な核発電に頼るほうがいいに決まってるじゃん、太陽がねぇとこじゃ太陽光は使えねぇんだから、そういうくだらない予算を全部核発電のほうにあててればとっくにプロトタイプのトカマクは完成してたのに・・・だから科学者たちが勝手に人類の行方を決めて、大衆が議会と選挙と国連とCOPでいつもそれに反対する、ともかく未知のものは恐ろしいから、それの繰り返しじゃん。いつか大衆が科学者を全員縛り首にしてもう科学なんてやめっちめぇ!みたいな事になるかもよ、ポルポトとかってそういうことに近いものだったのかなぁって思うんだ、いつかノスタルジーが爆発して未来を食いつぶして未来を過去にしてしまうかもしれないよ、クレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲ね・・あれって逆シャアのオマージュなのかね?」
とも「くだを巻いて、このテクストに手をつけるのを避けてますか?」
アキ「はい。あぁ~~仕方ない、読もう読もう。手で計算するの自体が久しぶりだよ、まず英語の学術用語を覚えないと・・・ともちゃん辞書ひく係、俊はノートね・・・These are the lectures in physics that I gave last year and the year before to the
freshman and sophomore classes at Caltech・・・・
アキが序文を朗読中
・・・・1963。1963! ....私の親すら生まれてない」
俊「右に同じく」
とも「もちろん」
アキ「ともちゃん英語わかってる?」
とも「わかりますよ、私帰国子女ですもん」
アキ「そうなん?なら安心」
俊「どこ?」
とも「アングレアス、まぁspatial dependance of amplitudeが一体何の事なのかさっぱりわかんないですけど」
アキ「The power of instruction is seldom of much efficacy except in those happy dispositions
where it is almost superfluous GIBON、これってどっちにとればいいのかね?」
とも「どっちとは?」
アキ「教育の力はほとんどの場合たいして効果はない、幸運な性質たちを別としてそれはほとんど不要なものだ。・・だから幸運な性質を持った人には教育は必要無いのか、幸運な性質を持ってない人には教育は必要ないのかって事」
俊「どっちにしろ教育は必要ないって事じゃない」
アキ「だとしたらあまりにもシビアだね、ギボンってそんなヤツだったっけ?」
俊「I was never less alone than when by myself.
(私はたった一人でいる時よりも孤独を感じない時はない)
I never make the mistake of arguing with people for whose opinions I have no respect.
(私はその人の意見が尊敬出来ない人間と議論するという過ちを犯したことはない)
ギボンの名言、ネット調べ」
とも「そういう人みたいですね」
アキ「i was never less alone than when by myself・・・、下の人が好きそうなコトバ」
とも「アキなんかしゃべりかたが変わりましたね」
俊「カフェインドライブが入ったからでしょ、それと前バージョンにだんだん戻ってるような気もする、学校無いと優等生キャラをする必要もないからね。デフォルトでは・・・こういう性質の人間なんだと思うよ」
アキ「私については彼のほうが詳しいようです、ただデフォルトの私は・・どこにもいないんじゃない?水澤アキってのは作家水澤アキが作った唯一の人格で、後は借り物、タブラ・ラサの自分っていう人間は、幼年時代の作られた幻想だと思う、幼年時代が素晴らしい思い出に満たされているとしたら、それは事実ではなく幻だからだよ・・はい講義に入ろう、そろそろ・・・・Atoms in motion」
俊(ファインマンはさすが名著というだけあって、英語のテクストを読みなれてないことを別にすればすんなりわかりやすかった・・これって結局受験勉強やってるのと同じになってないか・・海里はなんだかんだいってそれも見越して工程表を作っているのかもしんない・・・無い、それは無い。あいつはそんな・・・しかし・・それが出来る人間だからなぁ・・ついでに他の効用も見込めるならやっておくにしくはない・・・)
2012年3月20日火曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep10
10 marousi
巨大な影、巨大な構築、巨大な政府
巨大な門、巨大な壁・・・
アキ「帰ってこ~い」
とも「あぁ・・マロウシがジブラルタル海峡を横切るほどの影を我らの海へと投げかけん・・」
俊「ユイスマンスからの引用で、その代表作さかしまのように、めまいがするっていう凝った文学的非難か、さすがに解説が必要」
俊(そう、海里が夜の大都会を限界ドリフトで攻めまくったのでともは正気を失って予言を始めるはめになった)
アキ「違うよ、ヘンリー・ミラーでしょ?」
海里「えっ?ごめん聞いてなかった、考え事で・・」
アキ「なかなか立派な我らの生産現場ですこと」
アキ(工場は巨大な酸化鉄のジャンクマスとして存在していて、午前三時のアスファルトに長い影を指していた、周りは新しい道路の開発か何かで土地の買い占めが行われており、しかも財政悪化によってその計画がおじゃんになったらしく、茫漠とした荒野が広がっていた。いつ再開されるかもわからない工事の予告の看板でさえ風に揺られてキップルと化していた。一キロ先の自動販売機の灯りがみえるほどだ。その自動販売機も五種類しか飲み物が売っていない、その閉める空間と、効果がまったく見合ってない代物だ。日本は狭いと誰が言ったのだろう?日本は無駄に広い、ただアリのようにケーキの周りにしかアリがいないだけだ、日本は美しいと誰がいったのだろう?この雑草とコンクリートとキップルの集まりは、せいぜいポンコツ解体屋の目にやさしいといった程度だ)
とも「入ろう、鍵は必要ないみたいだし」
アキ(俊が昔南京錠であったらしい酸化鉄を蹴り飛ばしてドアを空けた、私は工場が支えを失って崩壊するんじゃないかと思ってちょっと後ずさりしたけど、意外にエントロピーの増大はまだまだ抑えられておった)
俊「おや!中は意外に」
アキ「綺麗?」
俊「おんぼろだ」
海里「文句はそのへんにしてそろそろ入ろうよ、やることはたくさんあるんだし、それに大きな音出しても叱られる恐れはなさそうだしさ」
アキ(海里が建築用のカンテラを出して中へと入っていった、お決まりの幽霊コントには付き合ってくれないらしい、サイエンティストめ・・・だが私たちは見たのだ、ともが亡くなる間際にうわ言のようにつぶやいていたコトバが、実はこの工場のある秘密を予告しているものだとは・・巨大な影は工場の事を指しているのではなく、マロウシは・・、マローシは!)
俊「ひどい匂い、ゾシマ氏でも死んでるんじゃないか・・」
海里「確かにひどい臭い、でも案外作りはしっかりしてるね(手を叩く)残響もよさそうだよ」
アキ「何の匂い?薬品とかそういう・・無機物の匂いじゃない気がするけど」
海里「たぬきでも死んでるんじゃない?ネズミか・・、窓開ければよくなるでしょ」
アキ(海里は手袋をはめて窓をガンガンあけて行った、雑だ。あぁこの子はゴキブリだって素手で触れるタイプだ、三畳紀からの生きる化石とかなんとかいって、三畳紀かどうかは適当だけど)
海里「ウラー、基本的な工具は揃ってるよ、これならバイクだって自動車だって作れるね」
アキ「ほんとだ!フライ版も万力もある♪、電鋸やドリルまであるじゃないか」
俊「女の子が喜ぶようなものには思えんが、そうか、アキはカメラの改造が趣味だもんね」
アキ「そうだ、忘れてた。記念にとっとこう、幽霊さんも初めましての挨拶くれるかもしれないし」
海里「それカメラだったんだ、弁当かと思ってた」
アキ「sx-70の改造だよ、ストーカー1、もしくはストーカー P(ola)、ビデオも取れるように記憶装置と回路をくっつけただけだけど、私が生まれた初めて持ったカメラなんだ、だから新しい事をはじめるときはこの子で撮ることにしてる」
海里「なにその、なんかオシャレ雑誌みたいなセリフ」
アキ(悪態をついてる海里の顔を撮った、笑顔が間に合ってないから変な顔になるだろう、表札のところに張っておこう)
海里「電気は今日の昼頃来るって言ってたから、それまでに掃除しないとね。さて・・・問題の地下室へは・・このコンプレッサーの下か・・俊ちゃん手伝って」
アキ(海里と俊はがっちがちに錆びついた大型コンプレッサーを動かすと地下への扉がうっすら現れた、カモフラージュが剥げている、潜水艦の蓋みたいな丸い扉だ。ハンドルはついてないけど)
アキ「ピラミッドの下って王の船が置いてあるんだよ、世界の終わりにその船で脱出するんだって」
アキ(海里が首とカンテラを突っ込んで地下を覗いている、私達のところには灯りがなくなり月光が射すのみ、闇に目が慣れてきて建物の概要が見えてきた、工場というよりは倉庫だ、たぶん創業してる頃はもっとたくさんものがあったんだろうけど、今は工具と設備が残っているだけでガランとしている、たぶん戦後に何回かは改装されてるんだろう、外側から見るよりは中は補強してある、地震対策にトラス構造の鉄筋が張り巡らされているもの)
俊「何かめぼしいものあるの?集団自決した死体がゴロゴロしてるわけじゃないんだろ」
海里「もっと良さそう、でも足元に気をつけないと、これ持ってて、照らしておいて、はしごが老朽化してる・・」
アキ(カンカンカンと海里が地下へと降りていった、バキンっ!)
俊「大丈夫?」
海里「はしごが一本折れた!なんとか大丈夫」
アキ(私たちは何をしてるんだっけ?地底旅行でもやってるんだったっけか?信頼出来るアイルランド人?が必要だわ)
海里「カンテラ降ろして」
アキ(スルスルっと俊がカンテラを下ろす、うん、そうするとこっちは真っ暗になるってのを気にしてほしいな)
海里「WHOA! Incredible! 面白いものがあるよ!」
アキ(俊もすぐに降りて行ってしまった、レディファーストってものを知らんのかこの野蛮人め)
俊「わぁ」
アキ「何なの?」
(ゆっくりハシゴを降りると(高所嫌い)地下は上よりも古いにしろかなり出来が良かった。たぶん当時としては貴重な鉄を使ってある。暗闇にぼぉっと何か巨大な影が浮かんでいた)
アキ「わぁ・・すごい戦闘機の胴体だ、なんだろう?アウトバッフェの機体みたい」
海里「橘花だよ、あのヘッドの形からして、ロケットエンジンは間に合わなかったんだね・・」
俊「売ったら高く売れるんじゃない?」
アキ「売れないでしょ、博物館行きだよ」
海里「花がつくのは、特攻機の証なんだよ・・、桜花みたいにね。橘花は違うっていう人もいるけど真実は太平洋の海の底ですな・・・私は民族主義者でないし、こんな言い方があれば人間主義者でもないんだけど・・なんでか、特攻に行った人たちの事を思うと、センチメンタルな気持ちにさせられるよね・・どうにかしてもっと、良い世界を作ってあげたかったな、彼らが死んだ意味があるようなさ・・実際には彼らだって賞賛に値する様な人間ばかりじゃなかったんだろうけどね、戦争キチガイ、軍国主義者、ただ断れなかっただけの臆病者、無思想な人・・・そう、死んでしまった人間を愛するのは簡単な事だね」
アキ(海里は最初に会った時のあの眼をして機体をパンパンと優しく叩いていた、明らかに露光が足りてないけど私は写真を撮った。ほぼ真っ黒な写真になるのはわかりきってるけど、ほぼ真っ黒でも大切な写真っていうものがあるはずだ)
とも「ちょっと~みんな~どこいっちゃたんですか~!」
アキ「すっかり忘れてた!」
ドタドタドシーン
とも「ギャアアアアア!!」
アキ(ともの断末魔の原因は、ともが闇の中を手探りで歩いていると、冷蔵庫にぶつかり、冷蔵庫の中からXXXXとかXXXがXXXして、XXXXだったからでした。悪臭の原因はその冷蔵庫に何十年か放置されていたXXXXXがXXXでXXXXXXになっていたからだったそうな。ともかくともは闇の中でXXXXの大群に襲われて、人間失格状態に陥り、しばらく車の中で生死の境をさまよった。海里はどうにかあの橘花の機体を再利用できないかと言ってまた電脳でモデリングと設計をやり始めた、そうなるともう何も聞こえないらしいので、結局俊と私だけで掃除をやるハメになって、電気屋さんと水道屋さんとの事務的な話もすべて私が一人でやるはめになり(俊はこういう時はストーカーらしくさっぱり役に立たない)ネットもプロバイダ契約も奔走して、一日完全に潰れてしまった。ようやくともが復活して、川底に捨ててあるような自転車で近くのコンビニにご飯を買いに行ってくれた。クッタクタにつかれてカフェイン切れで意識朦朧として寝袋に丸まっているとともがインスタント食品を買いだめしたのにカセットコンロが無いということうを大声だ叫んで結局スニッカーズをみんなで割って食べた。深夜頃に地下からニュートンが現れて、ガチャガチャと工具の調子とか、機械が動くかなどを探り始めた。それで工程表でも考えているんだろう。
アキ「あのニュートンさん、深夜二時に徘徊するのはやめてくださらないかしら、子供たちが寝られませんの、パーティーをやるならちゃんとした会場を借りるといいわ」
海里「あっ起こしちゃった?」
俊「起こしちゃってないと思ってたら聴覚を疑うよ」
とも「私ずっと寝てたから逆に眠れない」
海里「工程表を作っておかないと落ち着かないんだもん・・・火星に行けるタイミングってのは二年に一回しか来ないんだよ、時間がないんだ」
とも「ドクター海里は今日寝たんですか?」
海里「寝た、っていうか半分寝るってのを発明したから、イルカとかがやるみたいに脳の半分寝させるの。2つのことを同時に考えるってのも修行次第で出来るようになるよ。だから発想力が必要な時は左脳を重点的に使って、計算とか単純作業には右脳をあてて・・・」
アキ「ニュートンさん基準で人間を評価したら、人類はもう太陽系を制服してるよ」
アキ(ともは寝袋におさまるとべらべらしゃべりまくって朝までしゃべるタイプだと気づいた。もうすぐ初恋の人の話を明治の噺家もうんざりするような長尺ではじめるに違いない、私は眠たくてたまらないわりに奇妙なレトリックでしゃべっていた)
海里「・・時に・・事故が起こったらこの一帯が消し飛んでしまうんだけど、みなさん覚悟はできてる?その段階に来たら避難する?」
アキ「大丈夫、今も眠すぎて消し飛んでしまいたいもの」
俊「おれも」
とも「私も、痛くないですよね?」
海里「痛みを感じる瞬間は、まず0に近いと思う、サンクス、これで・・うん、間に合いいそう、じゃあゆっくり眠って下さい、地下は橘花をばらして上に運んだらこれから私以外は入らないでね、ブラックボックスだから、それに危ない」
とも「そんな秘密にしなくてもどうせわかりっこないと思いますけど」
海里「私が死んだ後に、追われるような事になってほしくないからさ、あれは一体なんだったのか?って騒がれるに決まってるもん」
俊「にゃーるほぞ、大失敗して東京を火の海にしてるかもしれんしな」
アキ「なぞの水爆が墜落、東京は燃えているか・・、面白そうだけどね、日本人でも東京が消し飛んで欲しいってのを望んでいる人はかなりいると思うけどな」
海里「そっちには落ちないよ、ハワイを地図から消してるかもしれないけど、じゃあおやすみなさい」
アキ(静かになった闇の中でボンヤリとした私の意識はうっすらと何かを感じていた、海里は一人になりたがってる、それは最初から彼女が言っていた事だ、本当の孤独を探しに行く。私はそれも海里のタテマエの嘘だと思ってたけどどうやらそれは真実を含んでたみたいだ・・海里は本当に私達とは違う世界観を持ってる、もちろんそれがすべてではないけど。この星にいるのは耐えがたい、此処じゃない何処かへ・・・人は楽園から追われた、悪魔は堕落した天使だという、本当は・・・楽園や天国は耐え難い場所だったから逃げ出したんじゃないだろうか・・・)
巨大な影、巨大な構築、巨大な政府
巨大な門、巨大な壁・・・
アキ「帰ってこ~い」
とも「あぁ・・マロウシがジブラルタル海峡を横切るほどの影を我らの海へと投げかけん・・」
俊「ユイスマンスからの引用で、その代表作さかしまのように、めまいがするっていう凝った文学的非難か、さすがに解説が必要」
俊(そう、海里が夜の大都会を限界ドリフトで攻めまくったのでともは正気を失って予言を始めるはめになった)
アキ「違うよ、ヘンリー・ミラーでしょ?」
海里「えっ?ごめん聞いてなかった、考え事で・・」
アキ「なかなか立派な我らの生産現場ですこと」
アキ(工場は巨大な酸化鉄のジャンクマスとして存在していて、午前三時のアスファルトに長い影を指していた、周りは新しい道路の開発か何かで土地の買い占めが行われており、しかも財政悪化によってその計画がおじゃんになったらしく、茫漠とした荒野が広がっていた。いつ再開されるかもわからない工事の予告の看板でさえ風に揺られてキップルと化していた。一キロ先の自動販売機の灯りがみえるほどだ。その自動販売機も五種類しか飲み物が売っていない、その閉める空間と、効果がまったく見合ってない代物だ。日本は狭いと誰が言ったのだろう?日本は無駄に広い、ただアリのようにケーキの周りにしかアリがいないだけだ、日本は美しいと誰がいったのだろう?この雑草とコンクリートとキップルの集まりは、せいぜいポンコツ解体屋の目にやさしいといった程度だ)
とも「入ろう、鍵は必要ないみたいだし」
アキ(俊が昔南京錠であったらしい酸化鉄を蹴り飛ばしてドアを空けた、私は工場が支えを失って崩壊するんじゃないかと思ってちょっと後ずさりしたけど、意外にエントロピーの増大はまだまだ抑えられておった)
俊「おや!中は意外に」
アキ「綺麗?」
俊「おんぼろだ」
海里「文句はそのへんにしてそろそろ入ろうよ、やることはたくさんあるんだし、それに大きな音出しても叱られる恐れはなさそうだしさ」
アキ(海里が建築用のカンテラを出して中へと入っていった、お決まりの幽霊コントには付き合ってくれないらしい、サイエンティストめ・・・だが私たちは見たのだ、ともが亡くなる間際にうわ言のようにつぶやいていたコトバが、実はこの工場のある秘密を予告しているものだとは・・巨大な影は工場の事を指しているのではなく、マロウシは・・、マローシは!)
俊「ひどい匂い、ゾシマ氏でも死んでるんじゃないか・・」
海里「確かにひどい臭い、でも案外作りはしっかりしてるね(手を叩く)残響もよさそうだよ」
アキ「何の匂い?薬品とかそういう・・無機物の匂いじゃない気がするけど」
海里「たぬきでも死んでるんじゃない?ネズミか・・、窓開ければよくなるでしょ」
アキ(海里は手袋をはめて窓をガンガンあけて行った、雑だ。あぁこの子はゴキブリだって素手で触れるタイプだ、三畳紀からの生きる化石とかなんとかいって、三畳紀かどうかは適当だけど)
海里「ウラー、基本的な工具は揃ってるよ、これならバイクだって自動車だって作れるね」
アキ「ほんとだ!フライ版も万力もある♪、電鋸やドリルまであるじゃないか」
俊「女の子が喜ぶようなものには思えんが、そうか、アキはカメラの改造が趣味だもんね」
アキ「そうだ、忘れてた。記念にとっとこう、幽霊さんも初めましての挨拶くれるかもしれないし」
海里「それカメラだったんだ、弁当かと思ってた」
アキ「sx-70の改造だよ、ストーカー1、もしくはストーカー P(ola)、ビデオも取れるように記憶装置と回路をくっつけただけだけど、私が生まれた初めて持ったカメラなんだ、だから新しい事をはじめるときはこの子で撮ることにしてる」
海里「なにその、なんかオシャレ雑誌みたいなセリフ」
アキ(悪態をついてる海里の顔を撮った、笑顔が間に合ってないから変な顔になるだろう、表札のところに張っておこう)
海里「電気は今日の昼頃来るって言ってたから、それまでに掃除しないとね。さて・・・問題の地下室へは・・このコンプレッサーの下か・・俊ちゃん手伝って」
アキ(海里と俊はがっちがちに錆びついた大型コンプレッサーを動かすと地下への扉がうっすら現れた、カモフラージュが剥げている、潜水艦の蓋みたいな丸い扉だ。ハンドルはついてないけど)
アキ「ピラミッドの下って王の船が置いてあるんだよ、世界の終わりにその船で脱出するんだって」
アキ(海里が首とカンテラを突っ込んで地下を覗いている、私達のところには灯りがなくなり月光が射すのみ、闇に目が慣れてきて建物の概要が見えてきた、工場というよりは倉庫だ、たぶん創業してる頃はもっとたくさんものがあったんだろうけど、今は工具と設備が残っているだけでガランとしている、たぶん戦後に何回かは改装されてるんだろう、外側から見るよりは中は補強してある、地震対策にトラス構造の鉄筋が張り巡らされているもの)
俊「何かめぼしいものあるの?集団自決した死体がゴロゴロしてるわけじゃないんだろ」
海里「もっと良さそう、でも足元に気をつけないと、これ持ってて、照らしておいて、はしごが老朽化してる・・」
アキ(カンカンカンと海里が地下へと降りていった、バキンっ!)
俊「大丈夫?」
海里「はしごが一本折れた!なんとか大丈夫」
アキ(私たちは何をしてるんだっけ?地底旅行でもやってるんだったっけか?信頼出来るアイルランド人?が必要だわ)
海里「カンテラ降ろして」
アキ(スルスルっと俊がカンテラを下ろす、うん、そうするとこっちは真っ暗になるってのを気にしてほしいな)
海里「WHOA! Incredible! 面白いものがあるよ!」
アキ(俊もすぐに降りて行ってしまった、レディファーストってものを知らんのかこの野蛮人め)
俊「わぁ」
アキ「何なの?」
(ゆっくりハシゴを降りると(高所嫌い)地下は上よりも古いにしろかなり出来が良かった。たぶん当時としては貴重な鉄を使ってある。暗闇にぼぉっと何か巨大な影が浮かんでいた)
アキ「わぁ・・すごい戦闘機の胴体だ、なんだろう?アウトバッフェの機体みたい」
海里「橘花だよ、あのヘッドの形からして、ロケットエンジンは間に合わなかったんだね・・」
俊「売ったら高く売れるんじゃない?」
アキ「売れないでしょ、博物館行きだよ」
海里「花がつくのは、特攻機の証なんだよ・・、桜花みたいにね。橘花は違うっていう人もいるけど真実は太平洋の海の底ですな・・・私は民族主義者でないし、こんな言い方があれば人間主義者でもないんだけど・・なんでか、特攻に行った人たちの事を思うと、センチメンタルな気持ちにさせられるよね・・どうにかしてもっと、良い世界を作ってあげたかったな、彼らが死んだ意味があるようなさ・・実際には彼らだって賞賛に値する様な人間ばかりじゃなかったんだろうけどね、戦争キチガイ、軍国主義者、ただ断れなかっただけの臆病者、無思想な人・・・そう、死んでしまった人間を愛するのは簡単な事だね」
アキ(海里は最初に会った時のあの眼をして機体をパンパンと優しく叩いていた、明らかに露光が足りてないけど私は写真を撮った。ほぼ真っ黒な写真になるのはわかりきってるけど、ほぼ真っ黒でも大切な写真っていうものがあるはずだ)
とも「ちょっと~みんな~どこいっちゃたんですか~!」
アキ「すっかり忘れてた!」
ドタドタドシーン
とも「ギャアアアアア!!」
アキ(ともの断末魔の原因は、ともが闇の中を手探りで歩いていると、冷蔵庫にぶつかり、冷蔵庫の中からXXXXとかXXXがXXXして、XXXXだったからでした。悪臭の原因はその冷蔵庫に何十年か放置されていたXXXXXがXXXでXXXXXXになっていたからだったそうな。ともかくともは闇の中でXXXXの大群に襲われて、人間失格状態に陥り、しばらく車の中で生死の境をさまよった。海里はどうにかあの橘花の機体を再利用できないかと言ってまた電脳でモデリングと設計をやり始めた、そうなるともう何も聞こえないらしいので、結局俊と私だけで掃除をやるハメになって、電気屋さんと水道屋さんとの事務的な話もすべて私が一人でやるはめになり(俊はこういう時はストーカーらしくさっぱり役に立たない)ネットもプロバイダ契約も奔走して、一日完全に潰れてしまった。ようやくともが復活して、川底に捨ててあるような自転車で近くのコンビニにご飯を買いに行ってくれた。クッタクタにつかれてカフェイン切れで意識朦朧として寝袋に丸まっているとともがインスタント食品を買いだめしたのにカセットコンロが無いということうを大声だ叫んで結局スニッカーズをみんなで割って食べた。深夜頃に地下からニュートンが現れて、ガチャガチャと工具の調子とか、機械が動くかなどを探り始めた。それで工程表でも考えているんだろう。
アキ「あのニュートンさん、深夜二時に徘徊するのはやめてくださらないかしら、子供たちが寝られませんの、パーティーをやるならちゃんとした会場を借りるといいわ」
海里「あっ起こしちゃった?」
俊「起こしちゃってないと思ってたら聴覚を疑うよ」
とも「私ずっと寝てたから逆に眠れない」
海里「工程表を作っておかないと落ち着かないんだもん・・・火星に行けるタイミングってのは二年に一回しか来ないんだよ、時間がないんだ」
とも「ドクター海里は今日寝たんですか?」
海里「寝た、っていうか半分寝るってのを発明したから、イルカとかがやるみたいに脳の半分寝させるの。2つのことを同時に考えるってのも修行次第で出来るようになるよ。だから発想力が必要な時は左脳を重点的に使って、計算とか単純作業には右脳をあてて・・・」
アキ「ニュートンさん基準で人間を評価したら、人類はもう太陽系を制服してるよ」
アキ(ともは寝袋におさまるとべらべらしゃべりまくって朝までしゃべるタイプだと気づいた。もうすぐ初恋の人の話を明治の噺家もうんざりするような長尺ではじめるに違いない、私は眠たくてたまらないわりに奇妙なレトリックでしゃべっていた)
海里「・・時に・・事故が起こったらこの一帯が消し飛んでしまうんだけど、みなさん覚悟はできてる?その段階に来たら避難する?」
アキ「大丈夫、今も眠すぎて消し飛んでしまいたいもの」
俊「おれも」
とも「私も、痛くないですよね?」
海里「痛みを感じる瞬間は、まず0に近いと思う、サンクス、これで・・うん、間に合いいそう、じゃあゆっくり眠って下さい、地下は橘花をばらして上に運んだらこれから私以外は入らないでね、ブラックボックスだから、それに危ない」
とも「そんな秘密にしなくてもどうせわかりっこないと思いますけど」
海里「私が死んだ後に、追われるような事になってほしくないからさ、あれは一体なんだったのか?って騒がれるに決まってるもん」
俊「にゃーるほぞ、大失敗して東京を火の海にしてるかもしれんしな」
アキ「なぞの水爆が墜落、東京は燃えているか・・、面白そうだけどね、日本人でも東京が消し飛んで欲しいってのを望んでいる人はかなりいると思うけどな」
海里「そっちには落ちないよ、ハワイを地図から消してるかもしれないけど、じゃあおやすみなさい」
アキ(静かになった闇の中でボンヤリとした私の意識はうっすらと何かを感じていた、海里は一人になりたがってる、それは最初から彼女が言っていた事だ、本当の孤独を探しに行く。私はそれも海里のタテマエの嘘だと思ってたけどどうやらそれは真実を含んでたみたいだ・・海里は本当に私達とは違う世界観を持ってる、もちろんそれがすべてではないけど。この星にいるのは耐えがたい、此処じゃない何処かへ・・・人は楽園から追われた、悪魔は堕落した天使だという、本当は・・・楽園や天国は耐え難い場所だったから逃げ出したんじゃないだろうか・・・)
吉本隆明死去
ニュースで見て、おぉ!って声を出してしまいました。
ほとんど呼んでないけど共同幻想くらいは読みました。大学には隆明シンパの教授がいたことを思い出す・・あと残ったのは大江健三郎くらいかなぁ・・・嫌いですけどねw
ほとんど呼んでないけど共同幻想くらいは読みました。大学には隆明シンパの教授がいたことを思い出す・・あと残ったのは大江健三郎くらいかなぁ・・・嫌いですけどねw
2012年3月19日月曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep9
肌の質感が上手く出ません。人間の肌と彫刻の中間くらいにしたいのに。
BOPは最近落ち歌なんですね、スノースマイルがグサグサと精神力を奪う・・
9 rien
海里「30%ほどは実はもう完成してるんだ、まずロケットの設計、これは私の専門だから完全にOK、宇宙船については構造的な設計は終わってるけど、内部はまだ終わってないところがある。ホーマン軌道計算、待機軌道計算、着陸、データ理論的なシミュレーションは99%大丈夫。だってそれはもうNASAで何回も成功してるからね、そのデータをかっぱらって微調整するだけで大丈夫だった。ここまでは理論編ね、実践編、つまり工学的な実際のロケットや宇宙船はほぼ何一つ完成してません・・何か質問など?」
俊「核ロケットって・・・大丈夫なの?」
海里「何一つ大丈夫ではない、けど勘違いしてない?核分裂じゃなくて、核融合だよ、重水素による」
俊「核融合?」
海里「Nuclear fusion」
俊「いつそんな技術が完成してたの?」
海里「水爆は核融合だよ、私(たち)がもっとそれを・・実用化させることに成功した、クリーンな、ね?・・・ちなみに日本は火薬を製造することすら禁じられてる、花火の火薬を集めて手榴弾をつくったら犯罪です、民間の核融合なんて許可が出るわけない。というか・・・日本人ごときが宇宙開発することに世界中が反発するでしょうね、ちぇっ敗戦国のくせにいきがりやがってってさ。国際機関なんて未だにそんな感じだよ、水爆持っていいのは中国、アメリカ、フランス、イギリス、ソ連だけなんだってさ、もちろん核融合技術も」
アキ(海里の目の色の変化が私は立っている彼女の隣に座っていて直接その目を見れないのに何かオーラのようなもので感じられた・・そうか・・海里は人類の滅亡に有効な技術を作っちゃったんだな、海里の内部ってのは私が考えるよりももっともっと深刻なものなのかもしれない。アインシュタインがいなけりゃ原爆も作られなかったって信じてるバカもいることだし・・・とくにこの国に)
とも「うえぇ、宇宙船って自分のおしっこ飲むんだ・・私パスだな」
俊「おれもパス」
海里「どうせ一人乗りで私だけが行くのだから大丈夫、私だってさすがに他の人のも混ざってたらさすがにひるむけど・・うにゃ!どうせ水なんて原子のあつまりなんだから・・」
俊「じゃあうんこもどうせ原子の集まりだからって食べれるの?」
海里「ばか・・・私は宇宙にスカトロプレイに行くんじゃないよ、食べ物は最小限だから大丈夫、水は重いからやっかいなんだよ、火星までは約280日、一日4リットルで1トンだからさ・・・食べ物は凝縮食料でなんとか・・そりゃ燃料率は理想値よりもやや乖離するけど、ホーマン軌道にそって一番省エネで行く、それはこれからの行く貧乏宇宙探検者の参考にもなるだろうしさ。結局時代を動かすのは専門家じゃなくて、部外者なんだよ、ロケット理論の発明者であるツィオルフスキーは貧しくて耳の悪い中学教師だったというし、ライト兄弟はしがない自転車屋、アインシュタインは特許局の事務員・・・」
アキ「そしてユーラーは盲目である・・でも将来的にはやっぱりうんちをリサイクルするハメになるんじゃない?やりなよ、名前が残るかもよ、poo recycle machine Kairi s-1とか・・」
海里「やだよっ!ただでさえろくな形で名前が残りそうにないのに」
とも「私もアキに賛成」
海里「もぉな~にかんがえてんだよ!真面目にやってよ、第一誰がそんな技術研究するのさ、この飽食の時代に」
とも(海里はほんとに尊敬すべき天才ちゃんなのになんでこんなにいじめたくなるんだろぉ・・・開発されたらものすごい淫乱になるんじゃないかな)
俊「でもロケットはいいとして発射台は?」
海里「頭が痛いね・・・まぁなんとかむこうの友達とかも協力してくれるはずだから・・・だから、タテマエ上、自作の火星プローブとかにして、直前で切り替えて、有人飛行として飛ばすみたいな事しないと・・、もしどこも許可が取れなかったら、どっかヤクザな国家に核融合技術を提供するのと引換に・・」
アキ「重水素などどこに売ってるの?」
海里「ロケットのことは任せてくださってOK、なんとかなる、これはクリーンな核融合だからさ、イランや北朝鮮と裏で契約しなくても材料は運び込めるわけ。あっそれと核融合エンジンはブラックボックスにします、私以外は知らないようにする、もう漏れてしまってるけどね」
とも「プロジェクト名は?」
アキ「・・こういうのはぱっと思いつくのを待ったほうがいいんだよ、それまでは・・・終わりなき夜の旅でどうですか?」
俊「セリーヌ?」
とも「いろんな~し」
俊「予算は海里の1000万・・・場所は?」
海里「うちの別荘、といっても千葉だけど、そこに別荘というか、廃工場がある。うちの・・・B級戦犯が戦闘機を作ってた工場」
アキ「空襲されなかったの?」
海里「表面上は自転車工場だもん、地下ではジェットエンジンの研究やってたらしいけど、でも期待しちゃだめだよ。今ではほぼ酸化鉄の塊みたいなものだから」
とも「じゃあおじいちゃんの意思を継いでってことですか?」
海里「鬼畜米兵を殺すのが目的ではないからなぁ・・それに私自身アメリカに住んでた人生のほうが長いし・・言うほど悪い国じゃないよ、というか・・あれを一つの国っていうのは難しいね、ほんとうにアメリカ連邦なんだよ。あれが一つにまとまってるのがまったく不思議、南北戦争でバーラバラになるのが自然だったのに・・・ヤンキー(北軍)に全部染められたのかな?まぁ良い国では絶対無いけどね、良い国なんて無いもん、人間自体が・・まぁいいや」
とも「私もオカネ出すよ」
俊「遺産って・・・どれほどなの?」
とも「たぶん・・色んなものに化けてるから計算しづらいけど、現生にしたら一億五千くらい」
アキ「ミリオネーア i'm tired of being millionaire」
海里「せっかくだけどお断りします・・・、何か民間のバカな冒険野郎が宇宙を目指すっていう・・なんだろう、イメージが欲しいんだよね。NASAのバカみたいな試験なんか受けなくても宇宙を目指せるんだって。誰でも出来るんだって・・・、もぉ誰かに雇われて、予算を削られるのだけにビクビクしながら何かするのなんて絶対にいやだ、もううんざりしたでしょ?国民の血税をわけのわからん実験に使うなっていう・・民衆にもうんざり、そんなの生きてるって言えないもん・・」
アキ「そうだね、戦争が無いと文句を言うことしか出来ないからね、民衆ってやつはさ」
俊「からいね」
アキ「だって戦争になるとどこから出てきたのか、恐ろしい速度で技術進歩が進むじゃん、出せるんじゃねぇかよ予算!って気がしない?こんな国滅びてもいいから人類の為に何かしなよって思う・・」
とも「なんか今日機嫌悪いですか?」
アキ「いや・・、女の子の日じゃないよ」
アキ(本当だ、なんで私はこんなイライラしてるんだろう、海里をここまで追い込んだこの社会に腹が立ってるのかもしんない・・私が腹を立てるなんて、まだまだ作家として修行が足んないな、自分ってのが意識できないほど何かに入りこみたい・・デカルト的存在論を真っ向から否定するくらいに・・)
とも「素朴な疑問なんですけど、海里さん、誰かに狙われてるんじゃないですかそんな、すごい技術を脳みそに納めてたら、よく日本に帰ってこれましたね」
海里「あぁ・・そうだって事を直接は発表してないからね、私が言った事を、本当に理解して、つまりそれって・・あれ?そういう事になるんじゃないか?って考えが及ぶほどの人間は、そぉいないし、暴力で何かを解決しようって思う人間は、大抵ニュートン力学すらわかってないからね。真空でロケットが進む意味がわかってないでしょ?というか真空の意味さえわかってない、政治家はnatureの論文読まないからね、アイテル(ITER)所属だったりしたら、もしかしたら追われているかもしれないけど、私はまったくそれとは異なるところでやっていたから・・・」
とも「なるほど・・実は私もその真空の意味すらわかってない人の一味かもしれません・・事実さっきから海里さんの言ってる事は20%くらいしかわかんないし・・他の人はわかってるんですか?」
俊「70%」
アキ「85%、NFについてはほぼわかんない」
海里「全然大丈夫だって、慣性の法則がわかんなくても自転車には乗れるし、航空力学がわかんなくても飛行機には乗れるもの、量子力学がわかんなくたって核融合ロケットを作ることはできる、厳密に言えば誰一人、相対性理論や量子力学についてわかってはないんだもん・・・・あっそか!発射台問題は解決したかも、待って」
アキ(海里は何か思いついたらしく、バチバチ電脳を打ち始めた、もはや何も聞こえてない感じ、噂では聞いてたけど天才さんってやっぱこういう感じなのか、他の二人も同じ事を考えただろう、変な笑い顔で私たちは見つめ合った、この人アレなんですよね・・)
海里「・・そうだ、よしよし。古い慣習に縛られててはいけないよね、ごめん、これ全部書きなおす、水平発射ロケットにする。NFE(核融合エンジン)は質量が少ないから、大きなロケットにする必要が無いんだ、クラスターでもレイヤーでもなくていいんだね、そしたら普通の滑走路から飛べるじゃん♪」
アキ「あっ、私にもわかったよ、だから普通の音速戦闘機みたいなフォルムにするってわけでしょ」
海里「戦闘機というよりは爆撃機だけどね、そうそう、その通り。飛行機の形が変わったところで、物理シミュレーションのパラメータが変わるだけだから、設計だけやり直すね」
とも「なるべくかっこいいのがいいね」
アキ「ちょっと話は変わるけど俊もともちゃんも、夏休みはいいとして、学生生活もあるだろうし・・・人生ってやつもあるだろうから、あまり無理はしないでいいよ。私と海里は行く所まで行ってしまうからさ・・」
俊「受験もしないんだ?」
アキ「たぶん、別に高校卒業してすぐに大学はいらなきゃいけないなんてルールは無いわけだしさ、高校はほぼ後はテストだけ出れば単位とれてるし。海里はまぁ成功しようが失敗しようがあの世行きですし」
海里「ははは、でもどうせ遅かれ早かれみんな同じじゃないですか。死が永遠の別れであるなら、観測者が永久に存在する必要があるんだよ、実際にはそうではない、観測者も死に向かって違う速度で進んでるだけ」
アキ(これが相対性理論的世界観なのか!)
とも「乗りかかった船ですから私も最後までやります、高校はなるべく卒業しときたいけど・・親族関係が無いからなんとでもなります、そう経済的にもなんとでもなります」
とも(人生持て余してるからなぁ)
俊「おれもアキと同じ、テストだけ出れば卒業可能だから・・・大学はど~すっかなぁ・・」
とも「っていうか何単位で高校卒業できるかなんてちゃんと計算してるんですね、私オリエンテーションの時なんか完全にスイッチオフだったから・・」
アキ「実は三年の一学期までの単位で卒業出来るんだなこれが、特にうちの学校は進学校だから最終学年は選択単位ばっかりになるし」
とも「えぇいいなぁ・・うちはどうだかなぁ・・」
アキ「俊の家ってどんな感じなの?」
俊「中の上くらい・・BMW(ヴェーエムヴェー)だし、それほど厳しくはない、ただ親父がな・・」
アキ「頑固なの?」
俊「いや・・なんていうか・・殺し屋みたいな顔してるから、それにイタいヤツだから・・知らせないほうがいい」
とも「お仕事は?」
俊「船乗りみたいなもの」
海里「殺し屋みたいな顔した船乗りか、確かに私達とは肌が合いそうにないね、マッチョ嫌いだもん、核爆弾の時代にマッチョなんてマシンガンにboxer rebellionじゃん」
とも「ボクサーレベリオンって何?映画?」
アキ「義和団事件のことでしょ」
とも「ボクサーレベリオンって言うんだ!ダサッ!そりゃ勝てんわ・・」
アキ(時に私たちのファーストミーティングは海里の家で開かれた。また学習せずにあのレッドブックは私にアールグレイを出したのだけど俊だけにはかなり濃い目のコーヒーを出した。そういうルールなのか・・、結局また海里がインスタントコーヒーを作ってくれた。ともはアールグレイでもなんでも飲めるらしい、たぶん味音痴なんだ。こういう、顔立ちでくちびるがぽってりしてるタイプはたいがいそうだ、そしてやたら辛いものが好きだったりするの・・そして私みたいなのはたいがい偏食なんだ。そう、身長が高い人ってだいたい偏食なんだ。俊は苦いコーヒーは意が痛くなるから薄くしてもらっていた。ジュゴンはやたら若い男の子には優しい、なるほど私は嫌われていたのか、このトキに。確かに私は服装も雰囲気も内面も、淑女好みでは無かった。それでも私はこの家がすっかり気に入ってしまった、この古材を使った独特の安心感、黒っぽい材木、たぶん・・マツ?が放つ香り、そして海里の家独特の匂い、死の世界のボードレール的腐臭。海里がかけた全然マッチしないGorrilazの音楽。いい。)
海里「あぁ・・あと向こうから私の友達が一人来るかもしれない、でも・・たぶん・・・うん、ちょっと・・対人関係に問題がある子だから、みんなの前には姿を現さないだろうと思う、気にしないで」
俊「幽霊でも呼び寄せるのか?」
海里「ちゃうよ、でもとびっきり優秀だから」
アキ「じゃあどうやって仲良くなったの?」
海里「black box」
俊(昔からこいつは秘密主義者だったな、なんでもないことでもやたらと隠したがる・・ソ連技術者みたいな、特に失敗を)
とも「またつまんない質問していいですか、なんでそんな天才さんなのにメガネなんですか・・?目の手術って向こうではすごく進んでるっていうけど?」
海里「メガネが好きなんだよね、ほら・・これってサイボーグっぽくない?人間を拡張させる道具、だからサイボーグの歴史でメガネは重要な気がするんだよね。もちろん服ってのが一番はしりだけど」
とも「ほぉ~そうなんですか」
とも(やっぱり天才ちゃんは・・・)
アキ「ともかく説明はこれでおしまい、明日からはその戦犯の秘密工場にお泊まり会です」
海里「まず掃除だろうね、あと電気とか配線とか、ネットとか・・」
アキ「露骨に嫌な顔するな、そこの男手、明日はぜひとも必要なんだから」
俊「急に頭が痛くなるような予感が・・」
とも「どうやっていくんですか?電車?」
海里「私の車」
とも「あぁ免許持ってるんですか、さすがモータリゼーションの国」
アキ「っちゅうわけです、着替えなどもね、夜の12時ここ集合」
俊「遅っ・・はやっ?」
海里「深夜は道が空いてるからね」
とも(私は海里さんの目にちらっと赤い閃光を見た、あれは・・・スピードキチガイの目だ!どうせ地球の公転速度は秒速約30キロだとかなんとかごたくを並べるに違いないわ、いやだわ!)
BOPは最近落ち歌なんですね、スノースマイルがグサグサと精神力を奪う・・
9 rien
海里「30%ほどは実はもう完成してるんだ、まずロケットの設計、これは私の専門だから完全にOK、宇宙船については構造的な設計は終わってるけど、内部はまだ終わってないところがある。ホーマン軌道計算、待機軌道計算、着陸、データ理論的なシミュレーションは99%大丈夫。だってそれはもうNASAで何回も成功してるからね、そのデータをかっぱらって微調整するだけで大丈夫だった。ここまでは理論編ね、実践編、つまり工学的な実際のロケットや宇宙船はほぼ何一つ完成してません・・何か質問など?」
俊「核ロケットって・・・大丈夫なの?」
海里「何一つ大丈夫ではない、けど勘違いしてない?核分裂じゃなくて、核融合だよ、重水素による」
俊「核融合?」
海里「Nuclear fusion」
俊「いつそんな技術が完成してたの?」
海里「水爆は核融合だよ、私(たち)がもっとそれを・・実用化させることに成功した、クリーンな、ね?・・・ちなみに日本は火薬を製造することすら禁じられてる、花火の火薬を集めて手榴弾をつくったら犯罪です、民間の核融合なんて許可が出るわけない。というか・・・日本人ごときが宇宙開発することに世界中が反発するでしょうね、ちぇっ敗戦国のくせにいきがりやがってってさ。国際機関なんて未だにそんな感じだよ、水爆持っていいのは中国、アメリカ、フランス、イギリス、ソ連だけなんだってさ、もちろん核融合技術も」
アキ(海里の目の色の変化が私は立っている彼女の隣に座っていて直接その目を見れないのに何かオーラのようなもので感じられた・・そうか・・海里は人類の滅亡に有効な技術を作っちゃったんだな、海里の内部ってのは私が考えるよりももっともっと深刻なものなのかもしれない。アインシュタインがいなけりゃ原爆も作られなかったって信じてるバカもいることだし・・・とくにこの国に)
とも「うえぇ、宇宙船って自分のおしっこ飲むんだ・・私パスだな」
俊「おれもパス」
海里「どうせ一人乗りで私だけが行くのだから大丈夫、私だってさすがに他の人のも混ざってたらさすがにひるむけど・・うにゃ!どうせ水なんて原子のあつまりなんだから・・」
俊「じゃあうんこもどうせ原子の集まりだからって食べれるの?」
海里「ばか・・・私は宇宙にスカトロプレイに行くんじゃないよ、食べ物は最小限だから大丈夫、水は重いからやっかいなんだよ、火星までは約280日、一日4リットルで1トンだからさ・・・食べ物は凝縮食料でなんとか・・そりゃ燃料率は理想値よりもやや乖離するけど、ホーマン軌道にそって一番省エネで行く、それはこれからの行く貧乏宇宙探検者の参考にもなるだろうしさ。結局時代を動かすのは専門家じゃなくて、部外者なんだよ、ロケット理論の発明者であるツィオルフスキーは貧しくて耳の悪い中学教師だったというし、ライト兄弟はしがない自転車屋、アインシュタインは特許局の事務員・・・」
アキ「そしてユーラーは盲目である・・でも将来的にはやっぱりうんちをリサイクルするハメになるんじゃない?やりなよ、名前が残るかもよ、poo recycle machine Kairi s-1とか・・」
海里「やだよっ!ただでさえろくな形で名前が残りそうにないのに」
とも「私もアキに賛成」
海里「もぉな~にかんがえてんだよ!真面目にやってよ、第一誰がそんな技術研究するのさ、この飽食の時代に」
とも(海里はほんとに尊敬すべき天才ちゃんなのになんでこんなにいじめたくなるんだろぉ・・・開発されたらものすごい淫乱になるんじゃないかな)
俊「でもロケットはいいとして発射台は?」
海里「頭が痛いね・・・まぁなんとかむこうの友達とかも協力してくれるはずだから・・・だから、タテマエ上、自作の火星プローブとかにして、直前で切り替えて、有人飛行として飛ばすみたいな事しないと・・、もしどこも許可が取れなかったら、どっかヤクザな国家に核融合技術を提供するのと引換に・・」
アキ「重水素などどこに売ってるの?」
海里「ロケットのことは任せてくださってOK、なんとかなる、これはクリーンな核融合だからさ、イランや北朝鮮と裏で契約しなくても材料は運び込めるわけ。あっそれと核融合エンジンはブラックボックスにします、私以外は知らないようにする、もう漏れてしまってるけどね」
とも「プロジェクト名は?」
アキ「・・こういうのはぱっと思いつくのを待ったほうがいいんだよ、それまでは・・・終わりなき夜の旅でどうですか?」
俊「セリーヌ?」
とも「いろんな~し」
俊「予算は海里の1000万・・・場所は?」
海里「うちの別荘、といっても千葉だけど、そこに別荘というか、廃工場がある。うちの・・・B級戦犯が戦闘機を作ってた工場」
アキ「空襲されなかったの?」
海里「表面上は自転車工場だもん、地下ではジェットエンジンの研究やってたらしいけど、でも期待しちゃだめだよ。今ではほぼ酸化鉄の塊みたいなものだから」
とも「じゃあおじいちゃんの意思を継いでってことですか?」
海里「鬼畜米兵を殺すのが目的ではないからなぁ・・それに私自身アメリカに住んでた人生のほうが長いし・・言うほど悪い国じゃないよ、というか・・あれを一つの国っていうのは難しいね、ほんとうにアメリカ連邦なんだよ。あれが一つにまとまってるのがまったく不思議、南北戦争でバーラバラになるのが自然だったのに・・・ヤンキー(北軍)に全部染められたのかな?まぁ良い国では絶対無いけどね、良い国なんて無いもん、人間自体が・・まぁいいや」
とも「私もオカネ出すよ」
俊「遺産って・・・どれほどなの?」
とも「たぶん・・色んなものに化けてるから計算しづらいけど、現生にしたら一億五千くらい」
アキ「ミリオネーア i'm tired of being millionaire」
海里「せっかくだけどお断りします・・・、何か民間のバカな冒険野郎が宇宙を目指すっていう・・なんだろう、イメージが欲しいんだよね。NASAのバカみたいな試験なんか受けなくても宇宙を目指せるんだって。誰でも出来るんだって・・・、もぉ誰かに雇われて、予算を削られるのだけにビクビクしながら何かするのなんて絶対にいやだ、もううんざりしたでしょ?国民の血税をわけのわからん実験に使うなっていう・・民衆にもうんざり、そんなの生きてるって言えないもん・・」
アキ「そうだね、戦争が無いと文句を言うことしか出来ないからね、民衆ってやつはさ」
俊「からいね」
アキ「だって戦争になるとどこから出てきたのか、恐ろしい速度で技術進歩が進むじゃん、出せるんじゃねぇかよ予算!って気がしない?こんな国滅びてもいいから人類の為に何かしなよって思う・・」
とも「なんか今日機嫌悪いですか?」
アキ「いや・・、女の子の日じゃないよ」
アキ(本当だ、なんで私はこんなイライラしてるんだろう、海里をここまで追い込んだこの社会に腹が立ってるのかもしんない・・私が腹を立てるなんて、まだまだ作家として修行が足んないな、自分ってのが意識できないほど何かに入りこみたい・・デカルト的存在論を真っ向から否定するくらいに・・)
とも「素朴な疑問なんですけど、海里さん、誰かに狙われてるんじゃないですかそんな、すごい技術を脳みそに納めてたら、よく日本に帰ってこれましたね」
海里「あぁ・・そうだって事を直接は発表してないからね、私が言った事を、本当に理解して、つまりそれって・・あれ?そういう事になるんじゃないか?って考えが及ぶほどの人間は、そぉいないし、暴力で何かを解決しようって思う人間は、大抵ニュートン力学すらわかってないからね。真空でロケットが進む意味がわかってないでしょ?というか真空の意味さえわかってない、政治家はnatureの論文読まないからね、アイテル(ITER)所属だったりしたら、もしかしたら追われているかもしれないけど、私はまったくそれとは異なるところでやっていたから・・・」
とも「なるほど・・実は私もその真空の意味すらわかってない人の一味かもしれません・・事実さっきから海里さんの言ってる事は20%くらいしかわかんないし・・他の人はわかってるんですか?」
俊「70%」
アキ「85%、NFについてはほぼわかんない」
海里「全然大丈夫だって、慣性の法則がわかんなくても自転車には乗れるし、航空力学がわかんなくても飛行機には乗れるもの、量子力学がわかんなくたって核融合ロケットを作ることはできる、厳密に言えば誰一人、相対性理論や量子力学についてわかってはないんだもん・・・・あっそか!発射台問題は解決したかも、待って」
アキ(海里は何か思いついたらしく、バチバチ電脳を打ち始めた、もはや何も聞こえてない感じ、噂では聞いてたけど天才さんってやっぱこういう感じなのか、他の二人も同じ事を考えただろう、変な笑い顔で私たちは見つめ合った、この人アレなんですよね・・)
海里「・・そうだ、よしよし。古い慣習に縛られててはいけないよね、ごめん、これ全部書きなおす、水平発射ロケットにする。NFE(核融合エンジン)は質量が少ないから、大きなロケットにする必要が無いんだ、クラスターでもレイヤーでもなくていいんだね、そしたら普通の滑走路から飛べるじゃん♪」
アキ「あっ、私にもわかったよ、だから普通の音速戦闘機みたいなフォルムにするってわけでしょ」
海里「戦闘機というよりは爆撃機だけどね、そうそう、その通り。飛行機の形が変わったところで、物理シミュレーションのパラメータが変わるだけだから、設計だけやり直すね」
とも「なるべくかっこいいのがいいね」
アキ「ちょっと話は変わるけど俊もともちゃんも、夏休みはいいとして、学生生活もあるだろうし・・・人生ってやつもあるだろうから、あまり無理はしないでいいよ。私と海里は行く所まで行ってしまうからさ・・」
俊「受験もしないんだ?」
アキ「たぶん、別に高校卒業してすぐに大学はいらなきゃいけないなんてルールは無いわけだしさ、高校はほぼ後はテストだけ出れば単位とれてるし。海里はまぁ成功しようが失敗しようがあの世行きですし」
海里「ははは、でもどうせ遅かれ早かれみんな同じじゃないですか。死が永遠の別れであるなら、観測者が永久に存在する必要があるんだよ、実際にはそうではない、観測者も死に向かって違う速度で進んでるだけ」
アキ(これが相対性理論的世界観なのか!)
とも「乗りかかった船ですから私も最後までやります、高校はなるべく卒業しときたいけど・・親族関係が無いからなんとでもなります、そう経済的にもなんとでもなります」
とも(人生持て余してるからなぁ)
俊「おれもアキと同じ、テストだけ出れば卒業可能だから・・・大学はど~すっかなぁ・・」
とも「っていうか何単位で高校卒業できるかなんてちゃんと計算してるんですね、私オリエンテーションの時なんか完全にスイッチオフだったから・・」
アキ「実は三年の一学期までの単位で卒業出来るんだなこれが、特にうちの学校は進学校だから最終学年は選択単位ばっかりになるし」
とも「えぇいいなぁ・・うちはどうだかなぁ・・」
アキ「俊の家ってどんな感じなの?」
俊「中の上くらい・・BMW(ヴェーエムヴェー)だし、それほど厳しくはない、ただ親父がな・・」
アキ「頑固なの?」
俊「いや・・なんていうか・・殺し屋みたいな顔してるから、それにイタいヤツだから・・知らせないほうがいい」
とも「お仕事は?」
俊「船乗りみたいなもの」
海里「殺し屋みたいな顔した船乗りか、確かに私達とは肌が合いそうにないね、マッチョ嫌いだもん、核爆弾の時代にマッチョなんてマシンガンにboxer rebellionじゃん」
とも「ボクサーレベリオンって何?映画?」
アキ「義和団事件のことでしょ」
とも「ボクサーレベリオンって言うんだ!ダサッ!そりゃ勝てんわ・・」
アキ(時に私たちのファーストミーティングは海里の家で開かれた。また学習せずにあのレッドブックは私にアールグレイを出したのだけど俊だけにはかなり濃い目のコーヒーを出した。そういうルールなのか・・、結局また海里がインスタントコーヒーを作ってくれた。ともはアールグレイでもなんでも飲めるらしい、たぶん味音痴なんだ。こういう、顔立ちでくちびるがぽってりしてるタイプはたいがいそうだ、そしてやたら辛いものが好きだったりするの・・そして私みたいなのはたいがい偏食なんだ。そう、身長が高い人ってだいたい偏食なんだ。俊は苦いコーヒーは意が痛くなるから薄くしてもらっていた。ジュゴンはやたら若い男の子には優しい、なるほど私は嫌われていたのか、このトキに。確かに私は服装も雰囲気も内面も、淑女好みでは無かった。それでも私はこの家がすっかり気に入ってしまった、この古材を使った独特の安心感、黒っぽい材木、たぶん・・マツ?が放つ香り、そして海里の家独特の匂い、死の世界のボードレール的腐臭。海里がかけた全然マッチしないGorrilazの音楽。いい。)
海里「あぁ・・あと向こうから私の友達が一人来るかもしれない、でも・・たぶん・・・うん、ちょっと・・対人関係に問題がある子だから、みんなの前には姿を現さないだろうと思う、気にしないで」
俊「幽霊でも呼び寄せるのか?」
海里「ちゃうよ、でもとびっきり優秀だから」
アキ「じゃあどうやって仲良くなったの?」
海里「black box」
俊(昔からこいつは秘密主義者だったな、なんでもないことでもやたらと隠したがる・・ソ連技術者みたいな、特に失敗を)
とも「またつまんない質問していいですか、なんでそんな天才さんなのにメガネなんですか・・?目の手術って向こうではすごく進んでるっていうけど?」
海里「メガネが好きなんだよね、ほら・・これってサイボーグっぽくない?人間を拡張させる道具、だからサイボーグの歴史でメガネは重要な気がするんだよね。もちろん服ってのが一番はしりだけど」
とも「ほぉ~そうなんですか」
とも(やっぱり天才ちゃんは・・・)
アキ「ともかく説明はこれでおしまい、明日からはその戦犯の秘密工場にお泊まり会です」
海里「まず掃除だろうね、あと電気とか配線とか、ネットとか・・」
アキ「露骨に嫌な顔するな、そこの男手、明日はぜひとも必要なんだから」
俊「急に頭が痛くなるような予感が・・」
とも「どうやっていくんですか?電車?」
海里「私の車」
とも「あぁ免許持ってるんですか、さすがモータリゼーションの国」
アキ「っちゅうわけです、着替えなどもね、夜の12時ここ集合」
俊「遅っ・・はやっ?」
海里「深夜は道が空いてるからね」
とも(私は海里さんの目にちらっと赤い閃光を見た、あれは・・・スピードキチガイの目だ!どうせ地球の公転速度は秒速約30キロだとかなんとかごたくを並べるに違いないわ、いやだわ!)
2012年3月18日日曜日
すいようどうでしょう pieta nude
予想以上に難航、むしろ戻った、10%くらい・・ともかくどうせ色をつけるんなら輪郭線はなるべくないほうがいいと思う・・・
水曜どうでしょうを現行まで追いつくまで全部見ました、旅疲れ・・・、やっぱ週1放送の最終回が一番良かったかな・・、あと山口のPAの眠れないんだよ!はすごい印象に残った、探せば生放送メディアで旅を生中継をしてる人がいるんだろーか、作業しながら見るには楽しそうなんだけど・・なかったら誰かやってみたらどうでしょうか?
2012年3月17日土曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep8
8 dissolve
アキ(ともかく私達は、火星を目指す事になった。私は俊の過去をちょっと調べてる間に(卒業アルバムなどを貸してもらった)海里について知った。というかたまたま読んだ科学雑誌に彼女が載っていて、俊と同じ学校だったとわかったのだ。電話してみるとすごく気があった、というか・・私は自分よりも一瞬で優れているとわかるような人間にはほとんど会ったことが無かったから新鮮だった、学校でも自分より勉強が出来る人間はほぼいなかったし・・・ルックスにしたって、性格は私はかなりずれてるし、身持ちも悪いけど。ともかく海里は・・オイラーの定理を自分で見つけられるタイプの人間だった。私が逆立ちしたってかなわないヒトだ、しかもなんだろう、顔立ちのデザインとかではなくイノセンスがある。たぶんオナニーすらしないんだろう・・まさしくピエタみたいに・・・。恋をするってこんな感じなのかもしれない、私が男だったらこんな子を好きになるんだろうな。
そして海里はウル志願者だった。それも火星で・・・
海里「・・火星に行くための技術的障害はほとんどなんにもない、ホーマン軌道計算だって、ロケット技術だって、何一つ新しい発明は必要無い。じゃあなんでやらないかっていうと予算が無いから、あと安全が保証できないから、もっと言えば行く意味が無いから。私は火星に最初に立ちたい、色んな理由があるけど・・突き詰めていけばただそれだけなの、火星に直撃してそこで死んでもいい、むしろ死にたい。安全性を無視してもいいし、帰りのペイロードも考えなくていいとすると相当の低予算で行けるはずなんだ、ほとんどの予算をロケットに詰め込むから・・・それに、液体でなく化学ロケットだし。10万ドルで火星に行く。コロンブスがボロ船で大西洋を横断したみたいに・・・ねっウルを主題にした映画ならこんな魅力的な主題は無いんじゃないかな?」
アキ「私もうすうすはそう思ってたんだ・・、ウルをやる方法で何が一番かなって、ただビルから飛び降りるとかじゃなくて、ウルをすることによって何が出来るのかなってさ。やっぱ宇宙に行くか、革命かくらいしか思い浮かばないんだよね。・・・でもそれってただのコトバだよ、人間の・・・人間性はコトバにならないところにあってさ・・何が意味があって、何が無いか・・・」
私たちの最初の話し合いは海里の家で実施された、海里の親も教師の学問一家で、おじいさんかなんかにはかなり名のある戦争犯罪者もいたということで・・つまるところ彼らは帝国日本の一族というわけだ。没落?貴族。郊外に平屋の広い庭を持っている、まるで京都の離れにでもきたような感じ。もしくは三島由紀夫的世界観に迷い込んだ感じ。お手伝いさんなる化石でしか見たことのない生物もいらして、私の嫌いなアールグレイタイプの紅茶を出してくれた。しかし海里はまさにプラグマティックなアメリカの科学者だった。でも悪い方のじゃなくてファインマンタイプだったので安心。
海里「・・人間性?今時の若い子からそんなフレーズが出ると・・ハリウッド映画の吹き替えを見てるみたい」
アキ「そうだね、私は肉体を持った人間よりは、死んだ人間と会話してるから、死んだ人間のほうが魅力的なんだよね、ネクロフィリアなの。ともかく・・私はウルが悪いのいいのどうのこうの言いたくないし、人間の生き方についても主張したくないんだよね、私自身が感じてみたい、それが・・・どういう気分なのかってさ、わかった、行こう、火星に、片道切符で・・・、最近冒険ってコトバを聞かなくなった気がするんだよね、それは漫画だけの話でさ・・・その代わりに年金ってコトバを聞くようになった。ヒトは長く生きねばならないいって言ったのは一体誰なんだろう、古代の王も、long life to the KINGって言われたみたいだし、王が誕生する前にもそんな価値観があったのかどうか・・・」
海里「王・・?王・・・王ねぇ?紅茶嫌い?」
アキ「カフェイン中毒だから」
海里「・・・私のことをマテリアリストのつめた~いココロの持ち主だと思ってない?」
アキ「彼女はマテリアリストだから、海里もまた預言者なのか・・・古代の人間の冗談なんだけど、さっぱり意味がわからないよね」
海里「私は・・・」
海里はくるくるとシルバースプーンで新しく運ばれてきた私のコーヒーを作ってくれた。普通のインスタントコーヒーだ・・よぉく見るとこの家はがらんとしていてなんにもない。鈴木清順の映画のセットみたいになんにもない。私は海里をからかうのがだんだん楽しくなってきている。なんでかわかんないけどいじわるしたくないるタイプみたいだ。とんでもないMなのかもしれん・・・彼女は。
アキ「・・・火星に立ってみたいねぇ、おぉ自由の旗を目指せ・・・火星に旗でもたてようか?科学者ってやつは」
海里「・・・ho ho ho,どうしても私に本当の事を言わせたいみたいだね。・・・なんでなの?日本の女の子ってこんな頭良かったっけ?帰国したばっかしだからわかんないけど、何かあったのこの国?それとも、しょっぱなから私はいきなり特異点にぶちあたったの?」
アキ「たぶん後者かな、わたしはブラックホールじゃないけど」
海里「はぁぁぁぁ・・・、私は人間ってのが死ぬほど嫌い、いやもう嫌いじゃないのかも、ただもう、いや、我慢出来ない。ただ単純に我慢出来ないの、別に火星になんて行きたくもなんともないよ、火星にたどり着いて人類の重要な進歩?科学的進歩?うそばっかりだよ、そんなの、ただ単にもうここにいたくないの、地球にはもはや一立法センチも人間の生きられる場所なんかない。すべて汚されて、すべて偽物でうんざりするようなものばっかし、私は新しいロケットエンジンの開発だとかなんとかぬかしてホントは人類を全滅させたかったのかもしんない・・ここだけの話、核ロケットなんて、どうせ宇宙開発になんか使われるはずないってわかってたよ、たとえ宇宙開発をしたとして、何も変わらないよ、人間は・・・」
アキ「そうかな、たぶん私達を覆っているこの無力感や閉塞感や憂鬱の原因は、たぶんおもいっきり戦争出来ないってことが大きな原因だと思うんだけど。人類は死にたがっている気がする、親が気が狂ってうんちをもらしてるのを見ながら、あぁ死ぬってこんな無様なのかって、生きるってまったく無意味なんだって私たちはいやってほどみせつけられてるもん。もぉバァーンって一気に死にたくなってるんだよ、でもそれには何か理由が欲しい、とっても大きな理由が。核爆弾で自滅なんていやだよ、火星軍との宇宙戦争?ほぉほぉ興味をそそる話じゃないか、さぁ地球、我が星、我が故郷の為に・・・」
海里「趣味悪っ・・・」
アキ「戦争狂だもん、作家なんてみんな、戦争を反対してるヤツが一番戦争の必要性を感じてるもの。第一、戦争以外に楽しい事なんてなんにもないじゃん、戦争を扱わない娯楽なんてあった?生きることは冷静に考えればもぉ我慢がならないくらい退屈でいやらしいものだってすぐにわかる、そうとわかれば楽しむしかない、命を弄ぶしか無いじゃんか、どんなコトバで誤魔化したって海里だってそうでしょ?」
海里「・・・わかんない、私はアキみたいには・・自分をわかってないよ。わかりたくもないし・・でももう理屈じゃなくて本当に、この星にいるのはたまらなく嫌なの、ここではないどこかなんだよ、この星で死にたくない。私は一人になりたい・・・ヒトは孤独を求める、でもそれは偽物の孤独、他人がいることの孤独、他の人間がいるのに繋がらない孤独、そうじゃなくて、本当にたった一人、この広い宇宙にたった一人・・そこにいったらどういう気持ちなんだろう?」
アキ「よそう・・、行けばわかるよ、私だって私をわかってるわけじゃない、やってみなきゃなんにもわかりはしない・・」
アキ(私は立ち上がって縁側のほうに出た、そう・・私はお茶が飲みたかったのに・・この家が恐ろしく涼しいということに外の熱気を感じて初めて気がついた。この家は死んでる、ずっと前に。
私が話を切ったのは実はほかにも理由があった、私のココロの奥底で何か黒いシミがじわっと広がったのがわかった。私は海里が好きになってる、そして確実に彼女を失う事になる・・・この作品を作るように私を動かした本当の理由はどうやらこの黒いシミのせいらしい、海里はソファにカラダを丸くして座り込んでしまった。あんなにやせっぽちであんなに小さい、私は個人的な感傷の為に、ただ大切な人を失うって事を経験したいだけの為に、彼女を終わりなき夜へと送り出す)
海里「この星は・・もうシロアリの塚だよ」
アキ(私が返そうとしようとしたコトバはこうだ・・・よくファンタジーとかで、それでも生きなければならない、とか、そう、人間は生きてるだけで価値があるとか、人は人を求めるとか・・・そういうコトバに感動するのは、私達がそれをまったくの幻想だとわかっているからじゃないかな、この人は幻想を語ってくれる人だ、と思って私たちはすりよっているだけなんじゃないか?私はそう思ってきた、私は天邪鬼だからそんなのいやだった、現実を見据えて、ハッキリと人生はクソ以下だって宣言してやる、・・でもこの星はシロアリの塚だと断罪した海里の声が、どういうわけか私を思春期のおばかちゃんみたいにメソメソさせた)
アキ(ともかく私達は、火星を目指す事になった。私は俊の過去をちょっと調べてる間に(卒業アルバムなどを貸してもらった)海里について知った。というかたまたま読んだ科学雑誌に彼女が載っていて、俊と同じ学校だったとわかったのだ。電話してみるとすごく気があった、というか・・私は自分よりも一瞬で優れているとわかるような人間にはほとんど会ったことが無かったから新鮮だった、学校でも自分より勉強が出来る人間はほぼいなかったし・・・ルックスにしたって、性格は私はかなりずれてるし、身持ちも悪いけど。ともかく海里は・・オイラーの定理を自分で見つけられるタイプの人間だった。私が逆立ちしたってかなわないヒトだ、しかもなんだろう、顔立ちのデザインとかではなくイノセンスがある。たぶんオナニーすらしないんだろう・・まさしくピエタみたいに・・・。恋をするってこんな感じなのかもしれない、私が男だったらこんな子を好きになるんだろうな。
そして海里はウル志願者だった。それも火星で・・・
海里「・・火星に行くための技術的障害はほとんどなんにもない、ホーマン軌道計算だって、ロケット技術だって、何一つ新しい発明は必要無い。じゃあなんでやらないかっていうと予算が無いから、あと安全が保証できないから、もっと言えば行く意味が無いから。私は火星に最初に立ちたい、色んな理由があるけど・・突き詰めていけばただそれだけなの、火星に直撃してそこで死んでもいい、むしろ死にたい。安全性を無視してもいいし、帰りのペイロードも考えなくていいとすると相当の低予算で行けるはずなんだ、ほとんどの予算をロケットに詰め込むから・・・それに、液体でなく化学ロケットだし。10万ドルで火星に行く。コロンブスがボロ船で大西洋を横断したみたいに・・・ねっウルを主題にした映画ならこんな魅力的な主題は無いんじゃないかな?」
アキ「私もうすうすはそう思ってたんだ・・、ウルをやる方法で何が一番かなって、ただビルから飛び降りるとかじゃなくて、ウルをすることによって何が出来るのかなってさ。やっぱ宇宙に行くか、革命かくらいしか思い浮かばないんだよね。・・・でもそれってただのコトバだよ、人間の・・・人間性はコトバにならないところにあってさ・・何が意味があって、何が無いか・・・」
私たちの最初の話し合いは海里の家で実施された、海里の親も教師の学問一家で、おじいさんかなんかにはかなり名のある戦争犯罪者もいたということで・・つまるところ彼らは帝国日本の一族というわけだ。没落?貴族。郊外に平屋の広い庭を持っている、まるで京都の離れにでもきたような感じ。もしくは三島由紀夫的世界観に迷い込んだ感じ。お手伝いさんなる化石でしか見たことのない生物もいらして、私の嫌いなアールグレイタイプの紅茶を出してくれた。しかし海里はまさにプラグマティックなアメリカの科学者だった。でも悪い方のじゃなくてファインマンタイプだったので安心。
海里「・・人間性?今時の若い子からそんなフレーズが出ると・・ハリウッド映画の吹き替えを見てるみたい」
アキ「そうだね、私は肉体を持った人間よりは、死んだ人間と会話してるから、死んだ人間のほうが魅力的なんだよね、ネクロフィリアなの。ともかく・・私はウルが悪いのいいのどうのこうの言いたくないし、人間の生き方についても主張したくないんだよね、私自身が感じてみたい、それが・・・どういう気分なのかってさ、わかった、行こう、火星に、片道切符で・・・、最近冒険ってコトバを聞かなくなった気がするんだよね、それは漫画だけの話でさ・・・その代わりに年金ってコトバを聞くようになった。ヒトは長く生きねばならないいって言ったのは一体誰なんだろう、古代の王も、long life to the KINGって言われたみたいだし、王が誕生する前にもそんな価値観があったのかどうか・・・」
海里「王・・?王・・・王ねぇ?紅茶嫌い?」
アキ「カフェイン中毒だから」
海里「・・・私のことをマテリアリストのつめた~いココロの持ち主だと思ってない?」
アキ「彼女はマテリアリストだから、海里もまた預言者なのか・・・古代の人間の冗談なんだけど、さっぱり意味がわからないよね」
海里「私は・・・」
海里はくるくるとシルバースプーンで新しく運ばれてきた私のコーヒーを作ってくれた。普通のインスタントコーヒーだ・・よぉく見るとこの家はがらんとしていてなんにもない。鈴木清順の映画のセットみたいになんにもない。私は海里をからかうのがだんだん楽しくなってきている。なんでかわかんないけどいじわるしたくないるタイプみたいだ。とんでもないMなのかもしれん・・・彼女は。
アキ「・・・火星に立ってみたいねぇ、おぉ自由の旗を目指せ・・・火星に旗でもたてようか?科学者ってやつは」
海里「・・・ho ho ho,どうしても私に本当の事を言わせたいみたいだね。・・・なんでなの?日本の女の子ってこんな頭良かったっけ?帰国したばっかしだからわかんないけど、何かあったのこの国?それとも、しょっぱなから私はいきなり特異点にぶちあたったの?」
アキ「たぶん後者かな、わたしはブラックホールじゃないけど」
海里「はぁぁぁぁ・・・、私は人間ってのが死ぬほど嫌い、いやもう嫌いじゃないのかも、ただもう、いや、我慢出来ない。ただ単純に我慢出来ないの、別に火星になんて行きたくもなんともないよ、火星にたどり着いて人類の重要な進歩?科学的進歩?うそばっかりだよ、そんなの、ただ単にもうここにいたくないの、地球にはもはや一立法センチも人間の生きられる場所なんかない。すべて汚されて、すべて偽物でうんざりするようなものばっかし、私は新しいロケットエンジンの開発だとかなんとかぬかしてホントは人類を全滅させたかったのかもしんない・・ここだけの話、核ロケットなんて、どうせ宇宙開発になんか使われるはずないってわかってたよ、たとえ宇宙開発をしたとして、何も変わらないよ、人間は・・・」
アキ「そうかな、たぶん私達を覆っているこの無力感や閉塞感や憂鬱の原因は、たぶんおもいっきり戦争出来ないってことが大きな原因だと思うんだけど。人類は死にたがっている気がする、親が気が狂ってうんちをもらしてるのを見ながら、あぁ死ぬってこんな無様なのかって、生きるってまったく無意味なんだって私たちはいやってほどみせつけられてるもん。もぉバァーンって一気に死にたくなってるんだよ、でもそれには何か理由が欲しい、とっても大きな理由が。核爆弾で自滅なんていやだよ、火星軍との宇宙戦争?ほぉほぉ興味をそそる話じゃないか、さぁ地球、我が星、我が故郷の為に・・・」
海里「趣味悪っ・・・」
アキ「戦争狂だもん、作家なんてみんな、戦争を反対してるヤツが一番戦争の必要性を感じてるもの。第一、戦争以外に楽しい事なんてなんにもないじゃん、戦争を扱わない娯楽なんてあった?生きることは冷静に考えればもぉ我慢がならないくらい退屈でいやらしいものだってすぐにわかる、そうとわかれば楽しむしかない、命を弄ぶしか無いじゃんか、どんなコトバで誤魔化したって海里だってそうでしょ?」
海里「・・・わかんない、私はアキみたいには・・自分をわかってないよ。わかりたくもないし・・でももう理屈じゃなくて本当に、この星にいるのはたまらなく嫌なの、ここではないどこかなんだよ、この星で死にたくない。私は一人になりたい・・・ヒトは孤独を求める、でもそれは偽物の孤独、他人がいることの孤独、他の人間がいるのに繋がらない孤独、そうじゃなくて、本当にたった一人、この広い宇宙にたった一人・・そこにいったらどういう気持ちなんだろう?」
アキ「よそう・・、行けばわかるよ、私だって私をわかってるわけじゃない、やってみなきゃなんにもわかりはしない・・」
アキ(私は立ち上がって縁側のほうに出た、そう・・私はお茶が飲みたかったのに・・この家が恐ろしく涼しいということに外の熱気を感じて初めて気がついた。この家は死んでる、ずっと前に。
私が話を切ったのは実はほかにも理由があった、私のココロの奥底で何か黒いシミがじわっと広がったのがわかった。私は海里が好きになってる、そして確実に彼女を失う事になる・・・この作品を作るように私を動かした本当の理由はどうやらこの黒いシミのせいらしい、海里はソファにカラダを丸くして座り込んでしまった。あんなにやせっぽちであんなに小さい、私は個人的な感傷の為に、ただ大切な人を失うって事を経験したいだけの為に、彼女を終わりなき夜へと送り出す)
海里「この星は・・もうシロアリの塚だよ」
アキ(私が返そうとしようとしたコトバはこうだ・・・よくファンタジーとかで、それでも生きなければならない、とか、そう、人間は生きてるだけで価値があるとか、人は人を求めるとか・・・そういうコトバに感動するのは、私達がそれをまったくの幻想だとわかっているからじゃないかな、この人は幻想を語ってくれる人だ、と思って私たちはすりよっているだけなんじゃないか?私はそう思ってきた、私は天邪鬼だからそんなのいやだった、現実を見据えて、ハッキリと人生はクソ以下だって宣言してやる、・・でもこの星はシロアリの塚だと断罪した海里の声が、どういうわけか私を思春期のおばかちゃんみたいにメソメソさせた)
2012年3月16日金曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep7
7 encounter
とも「あっ!」
アキ「?・・同じ学校のヒト?」
俊「・・・さぁ?」
とも「違いますほら、あの・・電車で見たことあったから、ほら、ビデオカメラみたいなのをいじってたでしょ?」
とも(待ち合わせのマックについたら、あの私の理想のお姉ちゃんが、これも私の理想の精子ホルダーと一緒にビッグマックを食べていた、こんな事ってあるだろうか・・でも雰囲気からして、二人はいい感じみたいだ・・残念、2つ一気に願いがかなうなんてないんだな。それとホルダーはなんか手を骨折してるらしい)
とも「持ってたかもだけど、そんな目に付くかっこしてるかな?」
俊「山手線でしょ、山手線だったらあらゆる人間に会えるよ、よくお笑い芸人見るもん、ネタ合わせしてる」
アキ「劇場回ってるんでしょ、それにしても若いなぁ、小学生じゃないよね?」
とも「・・15です」
俊「こんな・・・vulptuousな小学生いないだろ」
とも「デカパイって言っていいですよ、なれてますから」
俊「いや、別に言おうと思ってない・・・」
アキ「カメラ回してるけど大丈夫?」
とも「あっはい・・」
アキ「緊張しないでくださいな、好きなもの頼んでよ、おごってあげるから」
俊「おれのカネ」
とも「いいですよ、私お金持ちですから」
アキ「ですって」
俊「確かに、時計も高いもんね」
アキ「・・・ほんとか?見たことないけど」
俊「ごめ知ったかした、でも高そうだもん」
とも「手作りです、手芸部なんで・・だったんで、でも一万円くらいしかかかってないですよ、まぁ人件費は入れてないけど」
アキ「もしかしてその服も?」
とも「そうです」
俊「なんでわかったの?」
アキ「裁ち切り線と縫い目がメイドインチャイナじゃないもん」
とも「すごい、よくわかりましたね」
アキ「私のお母さんはそれ関係だったから」
俊「今時分でも女は縫い物ができないといけない風潮があるの?」
アキ「無い・・いや、でも流行ってきてるかもね、微妙に。だって既製品とかブランド物とか、ハッキリ言ってださいんだもん、もういい加減うんざりしてるんだよねカジュアルファッションってやつに。もっと・・・ロマンティックなものが着たい」
とも「あぁわかる!もぉグランジファッションはいやですよね、いつまでもカートコバーンじゃいられないもん」
俊「90年代って基本的には60年代リバイバルだった気がするんだけどなぁ、だから脱60年代じゃない、アンチ反体制」
アキ「なんじゃそれ、保守主義ってこと?」
俊「違うよ、ウル、もしくはジンテーゼ的な何かだよね」
とも(なんか話が高度でついていけない・・私はこれでも相当私の世代としては相当学があるはずなのに)
アキ「そうだよ、自己紹介すらしてないよね、私が作家のアキでこっちが・・工藤俊作です、俊ってよんであげてね」
とも「種田朋子です、映画監督じゃなかったんですか?」
アキ「映画はもう死にました、まぁなんていうかな、新しいフォーマットを作りたいんだよね、もぉ映画館で上映して二時間くらいで・・みたいな映画はいやじゃん。だから・・もっと・・まとまってないけど、もっと手軽で、持ち運びできて、自分のペースで読める、ようなフォーマットを作りたいな。パフォーマンスアートとかハプニング系のようなのも嫌だけど。映画って時間が相手に支配されてるのがたまらなくやだよね、もっと早く動いてくれって思う、本を読むスピードってみんな違うのに映画のスピードはみんな同じじゃん・・主体的にページをくっていく小気味よさが欲しいんだよなぁ・・あとビジュアルがあるもの、漫画にしたって、こういう長いダイアローグは不自然だよね。カットが持たないんだよね・・だからアクション主体になる、切って殴って、スポーツして。漫画はいいフォーマットだけどドストエフスキーとかシェイクスピアとか、ベートーヴェンとか、その段階まで完成したものはまだ残せてない・・・気がする。もっと簡単にいえば絵がくっついてくると心理描写が弱いんだ、具体的すぎて低俗なものになる、ベイルマンとかタルコフスキーだってあまり成功してるとはいえないもん・・コトバにならない、感触や感覚を伝えるには映像が一番だけど・・もっとそれぞれの長所が生かせるものが出来るはずなんだよ・・小説が語りうる物語と、映像が語りうる物語は絶対に違うんだ、カンフー映画を小説にはできないし、大審問官を映像にはできないんだよ、それはもう完全に出来ない。あんなにインクィジトールが一方的にしゃべりまくってたら不自然だもん・・・私が今こうやってしゃべりまくってるみたいに」
俊「教科書を全部漫画には出来ないってことでしょ、山川の教科書ってDTP的にすごい優れてると思うんだけどな、一冊の本にあれだけの情報量だもん」
とも「言われてみれば・・」
俊「高校生だよね、中卒って感じのあれじゃないもん」
とも「高校一年です、実は頭いいんですよ、おっぱいが大きい奴はバカという定説を犯して、麻布高校です」
俊「あそこって男子校じゃ?」
とも「去年から共学です」
アキ「ガリ勉?」
とも「そんなことないですけど・・」
アキ「友達いないでしょ?」
とも「ズバッと言われると・・」
アキ「だって可愛いもん、女って自分よりもあらゆる点で上回ってるヒトには冷たいもんね、頭よくて、アイドル顔で巨乳では、なかなか友達は出来ないよね。それでちょっと孤立してるのが男どもにとってはまた魅力的なんだけどさ。大沼先輩みたいに」
俊「誰?」
アキ「大沼キャプテンだよ、アタックno1の」
俊「激烈古いな・・」
とも「ちょっと不安な事があるんですけど、スタッフ募集って・・私がその・・」
アキ「私たちは自殺をウルって呼んでるよ、自殺自殺、マックで口走るわけにはいかないもんね、ウルなのは彼です、まだ決行するかどうかはわかんないけど」
とも「えっ!もったいない、私の・・」
アキ「私の?」
とも「・・ははは、なんでもないです。私・・でもなんの特技もないですよ、音楽も絵も描けないし、映像もよくわかんない、裁縫はできるけど」
アキ「ぜ~んぜん大丈夫だよそんなの。みんな初めてはあったんだし」
とも「・・でもわかんない、わたしもウルな可能性はありますよ。聞きますか?私の話?」
アキ「聞く聞く」
とも(私は私の15年のダイジェスト版を5分で話した。両親の離婚、祖父の死、その遺言による成金、母親と仲違い、一人暮らし)
とも「・・・・以上」
俊「へぇ・・・顔に似合わずけっこう奥深い」
とも「でしょ?自分でもそう思います」
アキ「でもウルをやろうって思ったことはないんでしょう?」
とも「無いです、そういうのもあるんだなって気がついた感じです。そういう物事の解決の仕方もあるんだなぁって・・・私お姉ちゃんが欲しいんです」
アキ「・・・?お兄さんでもいるの?」
とも「いないです、だから無理なんですけど・・、だからお姉ちゃんじゃなくて子供にしようと思って、私って一人じゃダメなんです、誰かが必要なんです、そうじゃないと存在理由を失ってしまう・・」
俊「レゾンデートルか・・」
アキ「退屈って事でしょ、退屈と幸せと絶望ってひょっとしたらイコールなのかと思うよね」
俊「退屈?」
アキ「私?私は退屈とは無縁だな・・やりたいことがありすぎてなんでこんな一日が早く終わっちまうんだって感じだもん。最近歳食ってますます一日はやくなってやばいよね」
とも「だから私のお姉ちゃんになって下さい」
俊「なんかエロゲーみたいな響き」
アキ「え~、お姉ちゃんって・・何をすればいいの?願わくば同年同日に死なん、お酒持って来いって事?」
俊「あはは、関羽ってガラじゃないね」
とも「普通でOKです!ねっ?私のとこに今日泊まりに来ます?ずっと泊まっててもいいですよ?」
アキ「う~ん、私は家にいるってことは殆ど無いんだよね、ずっと外に出てる、家は寝るだけって感じだから」
とも「おふたりとも学生さん?」
俊「受験生だよ、同じ学校なの」
とも「ほぉ・・付き合ってるんですか?」
アキ「そうとも言えるね、一回5000円でやらせてあげる契約だし」
とも「それは・・付き合ってるんですか?」
俊「こっちが聞きたい、付き合ってるって何なの?フリーセックスが付き合ってるってことなんか?」
とも「・・いやぁ・・本人たちが付き合ってるっていったらそうなんじゃないですか?自称です・・まさか私は愛とは何かって事を演説しないといけませんか?」
アキ「じゃあ付き合ってないにしとくよ、そろそろ行こうか」
とも「どこですか?」
三人は荷物をひっつかみずつ立ち上がった、ともはアキがあざやかにみんなのゴミをかたして捨てにいってくれたのを感心すると同時に、なんで自分がそれをやらなかったのだろうと、思った。
アキ「俊の故郷めぐり、といってもすぐ近くだけど」
とも「本当にウルするつもりなんですか?その怪我もなんか飛び降り失敗みたいな事・・?」
俊「違う、これはただのチャリでクラッシュしただけ。ウルは・・さぁどうでもいいんだよね、どっちでもよい」
アキ「私も強制はしてないよ、強制したらまったく違うものになっちゃうからさ。でも私自身はウルが悪いとはぜ~んぜん思ってない、それに価値観を与えたくないんだ、プラスにしろマイナスにしろ。エポケーだね・・あっつ~、さすがにもうすぐ8月ともなると暑いなぁ・・」
俊(マクドナルドも客の回転率を上げるためにクーラーを強めにしてるんだろうか?結局それだと電気代がかさむだけのような気がするけど)
とも「自分の命にあんまり関心がないヒトは、社会にすさまじいインパクトを与える事が多いらしいですよ」
俊「キリストみたいに?」
アキ「そっちか・・・確かにそうかも、真ん中ってことはないだろうね。社会はその構成員は死にたくないって公理で存在しているんだもん、人間は死にたくないという公理。それを否定してるんだから、すんなり社会に収まったりはしないだろうな」
とも「・・全然ちゃう話ですけどあのグラフィティはすごい良かったですね」
アキ「あぁ、でもすぐはがされちゃった、メールですごい注意されたしね。でもあれステンシルじゃなくてポスター貼っただけなんだよ、そんなに怒らなくてもいいじゃんね、それに印刷に2000円もかかったし、そもそもウル募集ってことだったのにグラフィティ自体が楽しくなっちゃったワルノリだったんだよね」
とも「もうやらないんですか?」
アキ「んにゃ、やる、なんか深夜に街を見下ろしながら作業するのって楽しい、えらい寝不足になったけど・・ともちゃんも何か描いてみたら、まず練習あるのみだよ、絵を描くなんて、結局はただの技術なんだからさ」
とも「はい、私もやってみたいです!そっか、でもスプレーじゃないんですね、マナーがありますね」
アキ「印刷代が高すぎるのがネック、ステンシルだったら何枚でもスプレー缶の値段でできるのに、一応私学校で優等生キャラだから補導されるのはまずいんだよね・・・それに輸入文化だからさ」
俊「また見張りをやらせる気か・・」
アキ「いいじゃん、ストーカーの得意技でしょ」
とも「ストーカー?」
アキ「俊は私のストーカーを一年半やってたんだよ」
とも「・・・・えっ?」
俊「アキの言うとおり、孤高の凄腕ストーカー現る」
とも「・・・なんか私を二人でハメようとしてますか?」
アキ「全然ちゃうって、私がウル募集を始めたらすぐに来たんだよ、ストーカーだから情報が早かったというわけ」
とも「・・・わかります、私も電車で会った時に、すぐになんか心奪われましたもん・・その・・透明感っていうか、目の輝きに、やっぱり死ぬのが怖くないヒトの目なんですよね、澄んでて、まるでこの世界に属してないみたい」
アキ「属してないよ、作家なんてのはそういうものだよ、自分ってのが、作品を作る道具になっちゃうんだから、ウルなんだよ。作家ってさ、卑怯なの・・主体的に生きることが出来ないから、自分でキャラクターを作って実験してみたりするんだ、結局のところどうやって生きればいいのだろう、ってね。それでグズグズ長生きするのもどうかだよね、まぁ私も36くらいまでには何か決着をつけたいと思ってる」
とも「・・・」
俊「でもおれの母校なんて回った所で何も面白くないと思うよ、学校なんて結局どこも同じだもん、しかも実家ぐらしだから懐かしいとかもないし」
アキ「その点にかけては大丈夫、演出がされてあるから」
俊「・・・?初恋の人登場とか?」
とも「いるんですか?」
俊「そりゃ15年もすごしてれば、気が合うヒトの一人くらいは見つかりそうなものだ、でもそんな・・ガキの恋愛だし」
アキ「小学校の頃は、私達一生小学校のままなんだって思わなかった?六年生の終わりごろになってやっと、えっ?世界は小学校以外にもあったのか!って気付かされたよね」
俊「すご~いわかる、本当、ドッチボールに精を出して、家に帰ったらすぐにぐっすりでもう永久にそのままだと思ってた」
アキ「私は記憶喪失で幼稚園あたりの記憶は0だから、格別そうなんだと思う」
とも「記憶喪失?」
アキ「そう、幼稚園とか・・もっと子供の時の記憶ってある?」
とも(あっさりと記憶喪失の話は流れていったけど・・それってさらっと言っていいような事なんだろうか)
俊「・・・幼稚園以前は・・ぼんやりとした色彩とか、肌触りがあるかぎりで殆ど無い。幼稚園は結構覚えてる、保母さんのおっぱいを揉んで、弱虫をいじめ倒して、子供向け商品にまんまとのせられて、あとは・・でっかい積み木で遊んだな・・それでなんかのはずみで誰かの脳天を打ち砕いて、かなり怒られた・・・が、まぁうちの親ってのは、一言で言えば善良なオバカさんだから、一人っ子のやることはなんでも大目に見てくれるってわけだな、でも幼稚園のやつの顔は誰一人もう思い出せないな、私立に入ったのはおれくらいだったから、もう二度と会わなかったというわけ」
アキ「子供の頃の夢は?」
俊「・・・・なんだっけ・・・、風」
とも「風邪?」
俊「windのほう」
アキ「詩的ですねぇ」
俊「ぜんぜんそんなんじゃないよ、なんかの漫画のキャラだと思う、どうせ特殊な技が使えるんだろうよ」
とも「ははっ、子供らしくていいじゃないですか」
俊「黒歴史・・」
とも「私は・・・先生だったかな?」
アキ「私は・・・スポーツ選手だったかな」
とも「真似しないでくださいよ」
アキ「ハハハ、妹をからかうのが姉さんの役目じゃなくて?」
とも(私は胸の中からただでさえ暑いのに内側からも温かい気持ちが広がるのを感じた。やばい、シアワセにやられてしまう)
俊「アバウトだな、何のスポーツなの?」
アキ「特にこれっていうのが見つかんなかったんだよね、というか女っていう制限で一番になってもつまんないなと思って、どうせワールドカップは男じゃないと出れないんだよ。ビョーキみたいな負けず嫌いだったから、一番じゃないとまったく意味がないんだよね、スポーツは所詮男の世界だ。だからこっちに来た、芸術ってのも頭のスポーツだからさ、それで一位じゃないと意味がないっていう夢自体がさっぱり無意味なものだと知る・・着いた」
俊「変わらんなぁ」
アキ「入ろう」
とも「いいんですか?」
アキ「良くわない」
俊「いき過ぎた管理社会だね・・・どんどん治安がわるくなって、どんどん自由がなくなる、原因は、自由を得ようとしてカネをもっと欲しがるから」
海里「well i'm tired of that bullshit 」
とも(校門の近くに立っていたメガネの人が私達を待ってた、これが俊の初恋の人なんだろうか。1つだけ言えるのは外見を飾るのに全く興味が無いらしいということだ。メガネも恐ろしいくらいメガネだし、服も何のこだわりもない感じ、髪もなでつけただけ、そしてすっぴんぴんだ、それなのに私達の中で一番少女っぽくてカワイイのは確実に彼女だった。なんか自分が随分すれた人間になってしまったかと久しぶりに実感する)
俊「あっ!メガネかけてるからわかんなかった」
海里「お久しぶりです」
アキ「始めまして」
海里「俊君変わったねぇ、目付きの悪さは変わんないけどさぁ・・」
とも「この人が初恋の人なんですか?」
俊「ぜんぜん違う・・・おさなじみ、ある意味初恋の人登場の何倍も意外・・、いつかえったの?」
アキ「アメリカに飛び級留学だってさ、天才ちゃんなの」
とも(アキが私に耳打ちして言った、そう・・科学者のタイプだ、なんのタイプなのか思い出せずにいたけど)
海里「自殺について映画を撮りたいんでしょ、ウルって呼んでるんだっけ?それって何かあの古代都市と関係あるの?」
アキ「無い、音感だけでなんとなくそう呼んでるだけ、変えたいですか?」
海里「・・・コンプレックスとか?」
とも「葛藤?」
海里「日本語ではなんていうんだっけ・・複素数、やっぱウルのほうがいいや。でも私いっつもcomplex planeって死の世界なんだと思うんだよね、だからこぉ・・multipleで生き返るのかなって思う、そうやって死の世界と生の世界も、数学的には扱えるのかもね・・頭おかしくなったって思ってる?でも私純粋数学者じゃないからさ、考えちゃうよね、gaussian planeが結局何を意味してるのかってさ・・」
俊「いや、前からそんな感じだったよ。もしかしてもうドクター湊なの?」
海里「もうすぐ、論文で賞をもらったのだ、10万ドルももらったし、でももう研究生活はやだよ、マルクスみたいに、私も机上の空論だけで、本当に社会を良くするのには何の貢献もしないのはイヤダもん i'm just fed up, that's my wordってわけ。どこでもそうだけど、まぁすぐオカネになる研究以外やらせてくれないよね、ほんともう学問業界にはほとほとうんざり」
俊「へぇ、それでこれからは?就職でもするの?」
アキ「その話はちょっとそこらへんに座ってやろ、実は私たちは打ち合わせはすんでるんだ、やらせってわけ」
四人はタイヤが半分うまったアトラクションみたいなものに座った。そこは大きなクスノキで日陰になっていて、この世とは思えないほど平和そうに見えた。
アキ「OK、演劇パートスタート」
海里「・・・ねぇ人類で最初に宇宙に行ったのは誰かしっておる?」
俊「えっと、ユーリ・・ノルシュテインじゃなくて・・うわっど忘れした」
とも「マーガリンみたいなのじゃなかったでした?」
俊「ガガーリン!」
海里「じゃあ最初に月に降り立ったのは?」
俊「えっと・・なんとか船長、アポロ13ってのは覚えてるんだけどな」
海里「ぜんぜんちゃうよ~もぉ、私の話の腰折られすぎ、アポロ11、アームストロング船長でしょ!それを知ってるっていう前提でオチがあるのに」
とも「(携帯で調べる)アポロ11号、アームストロング船長、そしてエドウィン・オルドリンだよね、もちろん知ってます」
アキ「thaks to wikipedia はい、編集したから続きどうぞ」
海里「・・・映像好きってそういう感じ?」
アキ「映像ってのは一番現実に近いから一番嘘をつかないといけないメディアです
っていうか私の乗り物の歴史は第二次大戦のメッサーシュミットMeで終わってるんだよね音速機はださいっつーか・・・デザインが・・原爆あるのに戦闘機必要無いからね、必要が無いと美しさを失うんだよね。日本刀だってやっぱ日本刀が一番の武器だった鎌倉時代には嘘みたいなすごいのがザクザク出てくるものだから。初めて大西洋横断とかだったらすぐに出てくるんだけど・・」
とも「リンドバーグ、ライト兄弟」
アキ「厳密にはリンドバーグは単独飛行で初めてだっただけだけど・・・そういう意味では映画もまた、必要ではなくなってる死につつ有る芸術なんだと思うよ。能や歌舞伎みたいな、伝統芸能みたいなものとして残りはするだろうけど黒澤がいたころみたいな映画に対する切実さは無いもの。ゲームのほうが楽しいもん自分で参加できる映画だから。映画は廃れて、もっと直接的に感覚的なゲームが娯楽産業を席捲するでしょうよ、たとえば恐ろしくリアルなセックスゲームみたいなものにねもっというなら私達が価値観のほぼすべてを与えている現実世界そのものがゲームに取って変えられてしまうかもしれない、ようするにどっちに価値を置くかという選択の問題ですから」
海里「・・・ポスターにはこう書いてある、三万人の人々、どうせ自殺するなら、映画として残そう、死は価値である」
アキ「ja」
海里「私もそう思う、平凡な長生きな人生、シロアリの塚を築くよりも人は・・・人はどこかに行かなければいけないものだもの、ここではない。どこかに」
海里は空を指さす
アキ「アフラ・マズダが私を呼んでいるとかいわないでね、そういうオカルト映画だけは避けたい」
海里「初めて火星に降り立った人類はアジアの美少女でした、男でも白人でも、大人ですらない少女・・・」
アキ「これは象徴的な事件である、それは白人主導であった産業革命以来の文明の結節点であるし、フェミニズム運動のある到着点でもある、もちろん人類の宇宙時代の重要な一歩であるエトセトラ、そしてそれは最も重要な事であるが、経済混乱と戦争の危機と環境の悪化にあえぐ人類にとっての希望であった」
海里「少女の名はMinato Kairi which means seaside town、人類の湊を作った子供」
とも「そして少女は二度と帰って来なかった」
海里「そうだね、他の星で死んだ初めての地球人にもなるのか・・」
海里とアキは立ち上がる・・
とも「・・・えっまじの話じゃなかろうーもんさね、そんなの不可能だよ」
海里「だから意味がある」 アキ「だから面白い」
とも「あっ!」
アキ「?・・同じ学校のヒト?」
俊「・・・さぁ?」
とも「違いますほら、あの・・電車で見たことあったから、ほら、ビデオカメラみたいなのをいじってたでしょ?」
とも(待ち合わせのマックについたら、あの私の理想のお姉ちゃんが、これも私の理想の精子ホルダーと一緒にビッグマックを食べていた、こんな事ってあるだろうか・・でも雰囲気からして、二人はいい感じみたいだ・・残念、2つ一気に願いがかなうなんてないんだな。それとホルダーはなんか手を骨折してるらしい)
とも「持ってたかもだけど、そんな目に付くかっこしてるかな?」
俊「山手線でしょ、山手線だったらあらゆる人間に会えるよ、よくお笑い芸人見るもん、ネタ合わせしてる」
アキ「劇場回ってるんでしょ、それにしても若いなぁ、小学生じゃないよね?」
とも「・・15です」
俊「こんな・・・vulptuousな小学生いないだろ」
とも「デカパイって言っていいですよ、なれてますから」
俊「いや、別に言おうと思ってない・・・」
アキ「カメラ回してるけど大丈夫?」
とも「あっはい・・」
アキ「緊張しないでくださいな、好きなもの頼んでよ、おごってあげるから」
俊「おれのカネ」
とも「いいですよ、私お金持ちですから」
アキ「ですって」
俊「確かに、時計も高いもんね」
アキ「・・・ほんとか?見たことないけど」
俊「ごめ知ったかした、でも高そうだもん」
とも「手作りです、手芸部なんで・・だったんで、でも一万円くらいしかかかってないですよ、まぁ人件費は入れてないけど」
アキ「もしかしてその服も?」
とも「そうです」
俊「なんでわかったの?」
アキ「裁ち切り線と縫い目がメイドインチャイナじゃないもん」
とも「すごい、よくわかりましたね」
アキ「私のお母さんはそれ関係だったから」
俊「今時分でも女は縫い物ができないといけない風潮があるの?」
アキ「無い・・いや、でも流行ってきてるかもね、微妙に。だって既製品とかブランド物とか、ハッキリ言ってださいんだもん、もういい加減うんざりしてるんだよねカジュアルファッションってやつに。もっと・・・ロマンティックなものが着たい」
とも「あぁわかる!もぉグランジファッションはいやですよね、いつまでもカートコバーンじゃいられないもん」
俊「90年代って基本的には60年代リバイバルだった気がするんだけどなぁ、だから脱60年代じゃない、アンチ反体制」
アキ「なんじゃそれ、保守主義ってこと?」
俊「違うよ、ウル、もしくはジンテーゼ的な何かだよね」
とも(なんか話が高度でついていけない・・私はこれでも相当私の世代としては相当学があるはずなのに)
アキ「そうだよ、自己紹介すらしてないよね、私が作家のアキでこっちが・・工藤俊作です、俊ってよんであげてね」
とも「種田朋子です、映画監督じゃなかったんですか?」
アキ「映画はもう死にました、まぁなんていうかな、新しいフォーマットを作りたいんだよね、もぉ映画館で上映して二時間くらいで・・みたいな映画はいやじゃん。だから・・もっと・・まとまってないけど、もっと手軽で、持ち運びできて、自分のペースで読める、ようなフォーマットを作りたいな。パフォーマンスアートとかハプニング系のようなのも嫌だけど。映画って時間が相手に支配されてるのがたまらなくやだよね、もっと早く動いてくれって思う、本を読むスピードってみんな違うのに映画のスピードはみんな同じじゃん・・主体的にページをくっていく小気味よさが欲しいんだよなぁ・・あとビジュアルがあるもの、漫画にしたって、こういう長いダイアローグは不自然だよね。カットが持たないんだよね・・だからアクション主体になる、切って殴って、スポーツして。漫画はいいフォーマットだけどドストエフスキーとかシェイクスピアとか、ベートーヴェンとか、その段階まで完成したものはまだ残せてない・・・気がする。もっと簡単にいえば絵がくっついてくると心理描写が弱いんだ、具体的すぎて低俗なものになる、ベイルマンとかタルコフスキーだってあまり成功してるとはいえないもん・・コトバにならない、感触や感覚を伝えるには映像が一番だけど・・もっとそれぞれの長所が生かせるものが出来るはずなんだよ・・小説が語りうる物語と、映像が語りうる物語は絶対に違うんだ、カンフー映画を小説にはできないし、大審問官を映像にはできないんだよ、それはもう完全に出来ない。あんなにインクィジトールが一方的にしゃべりまくってたら不自然だもん・・・私が今こうやってしゃべりまくってるみたいに」
俊「教科書を全部漫画には出来ないってことでしょ、山川の教科書ってDTP的にすごい優れてると思うんだけどな、一冊の本にあれだけの情報量だもん」
とも「言われてみれば・・」
俊「高校生だよね、中卒って感じのあれじゃないもん」
とも「高校一年です、実は頭いいんですよ、おっぱいが大きい奴はバカという定説を犯して、麻布高校です」
俊「あそこって男子校じゃ?」
とも「去年から共学です」
アキ「ガリ勉?」
とも「そんなことないですけど・・」
アキ「友達いないでしょ?」
とも「ズバッと言われると・・」
アキ「だって可愛いもん、女って自分よりもあらゆる点で上回ってるヒトには冷たいもんね、頭よくて、アイドル顔で巨乳では、なかなか友達は出来ないよね。それでちょっと孤立してるのが男どもにとってはまた魅力的なんだけどさ。大沼先輩みたいに」
俊「誰?」
アキ「大沼キャプテンだよ、アタックno1の」
俊「激烈古いな・・」
とも「ちょっと不安な事があるんですけど、スタッフ募集って・・私がその・・」
アキ「私たちは自殺をウルって呼んでるよ、自殺自殺、マックで口走るわけにはいかないもんね、ウルなのは彼です、まだ決行するかどうかはわかんないけど」
とも「えっ!もったいない、私の・・」
アキ「私の?」
とも「・・ははは、なんでもないです。私・・でもなんの特技もないですよ、音楽も絵も描けないし、映像もよくわかんない、裁縫はできるけど」
アキ「ぜ~んぜん大丈夫だよそんなの。みんな初めてはあったんだし」
とも「・・でもわかんない、わたしもウルな可能性はありますよ。聞きますか?私の話?」
アキ「聞く聞く」
とも(私は私の15年のダイジェスト版を5分で話した。両親の離婚、祖父の死、その遺言による成金、母親と仲違い、一人暮らし)
とも「・・・・以上」
俊「へぇ・・・顔に似合わずけっこう奥深い」
とも「でしょ?自分でもそう思います」
アキ「でもウルをやろうって思ったことはないんでしょう?」
とも「無いです、そういうのもあるんだなって気がついた感じです。そういう物事の解決の仕方もあるんだなぁって・・・私お姉ちゃんが欲しいんです」
アキ「・・・?お兄さんでもいるの?」
とも「いないです、だから無理なんですけど・・、だからお姉ちゃんじゃなくて子供にしようと思って、私って一人じゃダメなんです、誰かが必要なんです、そうじゃないと存在理由を失ってしまう・・」
俊「レゾンデートルか・・」
アキ「退屈って事でしょ、退屈と幸せと絶望ってひょっとしたらイコールなのかと思うよね」
俊「退屈?」
アキ「私?私は退屈とは無縁だな・・やりたいことがありすぎてなんでこんな一日が早く終わっちまうんだって感じだもん。最近歳食ってますます一日はやくなってやばいよね」
とも「だから私のお姉ちゃんになって下さい」
俊「なんかエロゲーみたいな響き」
アキ「え~、お姉ちゃんって・・何をすればいいの?願わくば同年同日に死なん、お酒持って来いって事?」
俊「あはは、関羽ってガラじゃないね」
とも「普通でOKです!ねっ?私のとこに今日泊まりに来ます?ずっと泊まっててもいいですよ?」
アキ「う~ん、私は家にいるってことは殆ど無いんだよね、ずっと外に出てる、家は寝るだけって感じだから」
とも「おふたりとも学生さん?」
俊「受験生だよ、同じ学校なの」
とも「ほぉ・・付き合ってるんですか?」
アキ「そうとも言えるね、一回5000円でやらせてあげる契約だし」
とも「それは・・付き合ってるんですか?」
俊「こっちが聞きたい、付き合ってるって何なの?フリーセックスが付き合ってるってことなんか?」
とも「・・いやぁ・・本人たちが付き合ってるっていったらそうなんじゃないですか?自称です・・まさか私は愛とは何かって事を演説しないといけませんか?」
アキ「じゃあ付き合ってないにしとくよ、そろそろ行こうか」
とも「どこですか?」
三人は荷物をひっつかみずつ立ち上がった、ともはアキがあざやかにみんなのゴミをかたして捨てにいってくれたのを感心すると同時に、なんで自分がそれをやらなかったのだろうと、思った。
アキ「俊の故郷めぐり、といってもすぐ近くだけど」
とも「本当にウルするつもりなんですか?その怪我もなんか飛び降り失敗みたいな事・・?」
俊「違う、これはただのチャリでクラッシュしただけ。ウルは・・さぁどうでもいいんだよね、どっちでもよい」
アキ「私も強制はしてないよ、強制したらまったく違うものになっちゃうからさ。でも私自身はウルが悪いとはぜ~んぜん思ってない、それに価値観を与えたくないんだ、プラスにしろマイナスにしろ。エポケーだね・・あっつ~、さすがにもうすぐ8月ともなると暑いなぁ・・」
俊(マクドナルドも客の回転率を上げるためにクーラーを強めにしてるんだろうか?結局それだと電気代がかさむだけのような気がするけど)
とも「自分の命にあんまり関心がないヒトは、社会にすさまじいインパクトを与える事が多いらしいですよ」
俊「キリストみたいに?」
アキ「そっちか・・・確かにそうかも、真ん中ってことはないだろうね。社会はその構成員は死にたくないって公理で存在しているんだもん、人間は死にたくないという公理。それを否定してるんだから、すんなり社会に収まったりはしないだろうな」
とも「・・全然ちゃう話ですけどあのグラフィティはすごい良かったですね」
アキ「あぁ、でもすぐはがされちゃった、メールですごい注意されたしね。でもあれステンシルじゃなくてポスター貼っただけなんだよ、そんなに怒らなくてもいいじゃんね、それに印刷に2000円もかかったし、そもそもウル募集ってことだったのにグラフィティ自体が楽しくなっちゃったワルノリだったんだよね」
とも「もうやらないんですか?」
アキ「んにゃ、やる、なんか深夜に街を見下ろしながら作業するのって楽しい、えらい寝不足になったけど・・ともちゃんも何か描いてみたら、まず練習あるのみだよ、絵を描くなんて、結局はただの技術なんだからさ」
とも「はい、私もやってみたいです!そっか、でもスプレーじゃないんですね、マナーがありますね」
アキ「印刷代が高すぎるのがネック、ステンシルだったら何枚でもスプレー缶の値段でできるのに、一応私学校で優等生キャラだから補導されるのはまずいんだよね・・・それに輸入文化だからさ」
俊「また見張りをやらせる気か・・」
アキ「いいじゃん、ストーカーの得意技でしょ」
とも「ストーカー?」
アキ「俊は私のストーカーを一年半やってたんだよ」
とも「・・・・えっ?」
俊「アキの言うとおり、孤高の凄腕ストーカー現る」
とも「・・・なんか私を二人でハメようとしてますか?」
アキ「全然ちゃうって、私がウル募集を始めたらすぐに来たんだよ、ストーカーだから情報が早かったというわけ」
とも「・・・わかります、私も電車で会った時に、すぐになんか心奪われましたもん・・その・・透明感っていうか、目の輝きに、やっぱり死ぬのが怖くないヒトの目なんですよね、澄んでて、まるでこの世界に属してないみたい」
アキ「属してないよ、作家なんてのはそういうものだよ、自分ってのが、作品を作る道具になっちゃうんだから、ウルなんだよ。作家ってさ、卑怯なの・・主体的に生きることが出来ないから、自分でキャラクターを作って実験してみたりするんだ、結局のところどうやって生きればいいのだろう、ってね。それでグズグズ長生きするのもどうかだよね、まぁ私も36くらいまでには何か決着をつけたいと思ってる」
とも「・・・」
俊「でもおれの母校なんて回った所で何も面白くないと思うよ、学校なんて結局どこも同じだもん、しかも実家ぐらしだから懐かしいとかもないし」
アキ「その点にかけては大丈夫、演出がされてあるから」
俊「・・・?初恋の人登場とか?」
とも「いるんですか?」
俊「そりゃ15年もすごしてれば、気が合うヒトの一人くらいは見つかりそうなものだ、でもそんな・・ガキの恋愛だし」
アキ「小学校の頃は、私達一生小学校のままなんだって思わなかった?六年生の終わりごろになってやっと、えっ?世界は小学校以外にもあったのか!って気付かされたよね」
俊「すご~いわかる、本当、ドッチボールに精を出して、家に帰ったらすぐにぐっすりでもう永久にそのままだと思ってた」
アキ「私は記憶喪失で幼稚園あたりの記憶は0だから、格別そうなんだと思う」
とも「記憶喪失?」
アキ「そう、幼稚園とか・・もっと子供の時の記憶ってある?」
とも(あっさりと記憶喪失の話は流れていったけど・・それってさらっと言っていいような事なんだろうか)
俊「・・・幼稚園以前は・・ぼんやりとした色彩とか、肌触りがあるかぎりで殆ど無い。幼稚園は結構覚えてる、保母さんのおっぱいを揉んで、弱虫をいじめ倒して、子供向け商品にまんまとのせられて、あとは・・でっかい積み木で遊んだな・・それでなんかのはずみで誰かの脳天を打ち砕いて、かなり怒られた・・・が、まぁうちの親ってのは、一言で言えば善良なオバカさんだから、一人っ子のやることはなんでも大目に見てくれるってわけだな、でも幼稚園のやつの顔は誰一人もう思い出せないな、私立に入ったのはおれくらいだったから、もう二度と会わなかったというわけ」
アキ「子供の頃の夢は?」
俊「・・・・なんだっけ・・・、風」
とも「風邪?」
俊「windのほう」
アキ「詩的ですねぇ」
俊「ぜんぜんそんなんじゃないよ、なんかの漫画のキャラだと思う、どうせ特殊な技が使えるんだろうよ」
とも「ははっ、子供らしくていいじゃないですか」
俊「黒歴史・・」
とも「私は・・・先生だったかな?」
アキ「私は・・・スポーツ選手だったかな」
とも「真似しないでくださいよ」
アキ「ハハハ、妹をからかうのが姉さんの役目じゃなくて?」
とも(私は胸の中からただでさえ暑いのに内側からも温かい気持ちが広がるのを感じた。やばい、シアワセにやられてしまう)
俊「アバウトだな、何のスポーツなの?」
アキ「特にこれっていうのが見つかんなかったんだよね、というか女っていう制限で一番になってもつまんないなと思って、どうせワールドカップは男じゃないと出れないんだよ。ビョーキみたいな負けず嫌いだったから、一番じゃないとまったく意味がないんだよね、スポーツは所詮男の世界だ。だからこっちに来た、芸術ってのも頭のスポーツだからさ、それで一位じゃないと意味がないっていう夢自体がさっぱり無意味なものだと知る・・着いた」
俊「変わらんなぁ」
アキ「入ろう」
とも「いいんですか?」
アキ「良くわない」
俊「いき過ぎた管理社会だね・・・どんどん治安がわるくなって、どんどん自由がなくなる、原因は、自由を得ようとしてカネをもっと欲しがるから」
海里「well i'm tired of that bullshit 」
とも(校門の近くに立っていたメガネの人が私達を待ってた、これが俊の初恋の人なんだろうか。1つだけ言えるのは外見を飾るのに全く興味が無いらしいということだ。メガネも恐ろしいくらいメガネだし、服も何のこだわりもない感じ、髪もなでつけただけ、そしてすっぴんぴんだ、それなのに私達の中で一番少女っぽくてカワイイのは確実に彼女だった。なんか自分が随分すれた人間になってしまったかと久しぶりに実感する)
俊「あっ!メガネかけてるからわかんなかった」
海里「お久しぶりです」
アキ「始めまして」
海里「俊君変わったねぇ、目付きの悪さは変わんないけどさぁ・・」
とも「この人が初恋の人なんですか?」
俊「ぜんぜん違う・・・おさなじみ、ある意味初恋の人登場の何倍も意外・・、いつかえったの?」
アキ「アメリカに飛び級留学だってさ、天才ちゃんなの」
とも(アキが私に耳打ちして言った、そう・・科学者のタイプだ、なんのタイプなのか思い出せずにいたけど)
海里「自殺について映画を撮りたいんでしょ、ウルって呼んでるんだっけ?それって何かあの古代都市と関係あるの?」
アキ「無い、音感だけでなんとなくそう呼んでるだけ、変えたいですか?」
海里「・・・コンプレックスとか?」
とも「葛藤?」
海里「日本語ではなんていうんだっけ・・複素数、やっぱウルのほうがいいや。でも私いっつもcomplex planeって死の世界なんだと思うんだよね、だからこぉ・・multipleで生き返るのかなって思う、そうやって死の世界と生の世界も、数学的には扱えるのかもね・・頭おかしくなったって思ってる?でも私純粋数学者じゃないからさ、考えちゃうよね、gaussian planeが結局何を意味してるのかってさ・・」
俊「いや、前からそんな感じだったよ。もしかしてもうドクター湊なの?」
海里「もうすぐ、論文で賞をもらったのだ、10万ドルももらったし、でももう研究生活はやだよ、マルクスみたいに、私も机上の空論だけで、本当に社会を良くするのには何の貢献もしないのはイヤダもん i'm just fed up, that's my wordってわけ。どこでもそうだけど、まぁすぐオカネになる研究以外やらせてくれないよね、ほんともう学問業界にはほとほとうんざり」
俊「へぇ、それでこれからは?就職でもするの?」
アキ「その話はちょっとそこらへんに座ってやろ、実は私たちは打ち合わせはすんでるんだ、やらせってわけ」
四人はタイヤが半分うまったアトラクションみたいなものに座った。そこは大きなクスノキで日陰になっていて、この世とは思えないほど平和そうに見えた。
アキ「OK、演劇パートスタート」
海里「・・・ねぇ人類で最初に宇宙に行ったのは誰かしっておる?」
俊「えっと、ユーリ・・ノルシュテインじゃなくて・・うわっど忘れした」
とも「マーガリンみたいなのじゃなかったでした?」
俊「ガガーリン!」
海里「じゃあ最初に月に降り立ったのは?」
俊「えっと・・なんとか船長、アポロ13ってのは覚えてるんだけどな」
海里「ぜんぜんちゃうよ~もぉ、私の話の腰折られすぎ、アポロ11、アームストロング船長でしょ!それを知ってるっていう前提でオチがあるのに」
とも「(携帯で調べる)アポロ11号、アームストロング船長、そしてエドウィン・オルドリンだよね、もちろん知ってます」
アキ「thaks to wikipedia はい、編集したから続きどうぞ」
海里「・・・映像好きってそういう感じ?」
アキ「映像ってのは一番現実に近いから一番嘘をつかないといけないメディアです
っていうか私の乗り物の歴史は第二次大戦のメッサーシュミットMeで終わってるんだよね音速機はださいっつーか・・・デザインが・・原爆あるのに戦闘機必要無いからね、必要が無いと美しさを失うんだよね。日本刀だってやっぱ日本刀が一番の武器だった鎌倉時代には嘘みたいなすごいのがザクザク出てくるものだから。初めて大西洋横断とかだったらすぐに出てくるんだけど・・」
とも「リンドバーグ、ライト兄弟」
アキ「厳密にはリンドバーグは単独飛行で初めてだっただけだけど・・・そういう意味では映画もまた、必要ではなくなってる死につつ有る芸術なんだと思うよ。能や歌舞伎みたいな、伝統芸能みたいなものとして残りはするだろうけど黒澤がいたころみたいな映画に対する切実さは無いもの。ゲームのほうが楽しいもん自分で参加できる映画だから。映画は廃れて、もっと直接的に感覚的なゲームが娯楽産業を席捲するでしょうよ、たとえば恐ろしくリアルなセックスゲームみたいなものにねもっというなら私達が価値観のほぼすべてを与えている現実世界そのものがゲームに取って変えられてしまうかもしれない、ようするにどっちに価値を置くかという選択の問題ですから」
海里「・・・ポスターにはこう書いてある、三万人の人々、どうせ自殺するなら、映画として残そう、死は価値である」
アキ「ja」
海里「私もそう思う、平凡な長生きな人生、シロアリの塚を築くよりも人は・・・人はどこかに行かなければいけないものだもの、ここではない。どこかに」
海里は空を指さす
アキ「アフラ・マズダが私を呼んでいるとかいわないでね、そういうオカルト映画だけは避けたい」
海里「初めて火星に降り立った人類はアジアの美少女でした、男でも白人でも、大人ですらない少女・・・」
アキ「これは象徴的な事件である、それは白人主導であった産業革命以来の文明の結節点であるし、フェミニズム運動のある到着点でもある、もちろん人類の宇宙時代の重要な一歩であるエトセトラ、そしてそれは最も重要な事であるが、経済混乱と戦争の危機と環境の悪化にあえぐ人類にとっての希望であった」
海里「少女の名はMinato Kairi which means seaside town、人類の湊を作った子供」
とも「そして少女は二度と帰って来なかった」
海里「そうだね、他の星で死んだ初めての地球人にもなるのか・・」
海里とアキは立ち上がる・・
とも「・・・えっまじの話じゃなかろうーもんさね、そんなの不可能だよ」
海里「だから意味がある」 アキ「だから面白い」
2012年3月14日水曜日
A-miz on working
2 version ,12%完成、せんもんよーごではこれをブロッキングとよぶなり、色をとりあえずおいていく・・・下はやはりやりすぎな気がする、酸性雨で解けたBPみたいだもん・・
作中でアキが書いたものはどんなのだろうという実験・・・
・水曜どうでしょうを見ながら作業しています、電波少年スタイルのローカル番組・・説明プーヨン?今ニコ生とかustreamとかで同じような事をやってるような人がいるんでしょうね、それってけっこう楽しそう。24時間生放送は・・・テレビから離れればもっと自由にやれるでしょう、最近のテレビで画面ほとんどモザイクばっかなのはマジでうんざり、頭おかしいんじゃないのって思う、ガキの使いとかでもペットボトルとかいちいちモザイクいれてるのは・・テレに属してたら出来る事なんてほとんどないぜ。著作権関係で訴えてカネを設ける専門職の法律家が増えてるんでしょう、ロースクールだとか法律関係の改革ははっきり言ってお話にならないくらいトップダウンの机上の空論的発想だと思います、むしろ法律関係のビジネス全滅させて決闘制度だけ復活させればいいじゃん。後自殺の合法化と青酸カリの配布をやってほしい。尊厳死キャンペーンというわけで。
・ BGMは最近BUMPになりました、やはりAIMPは音が綺麗というか、録音した時の音に近いと思います、音楽を多少作ってみた事がある人ならわかると思いますが、加工してないWAVEっぽい音です。MP3のサキサキ感が聞きやすいひともいるとおもいますけど・・・英米は質より量、ドイツは量より質だといいますけど(フランスと中国は個性がない、ラテン系はすぐ壊れる)ロシアの特徴はなんでしょうかね、すぐ隠蔽する、かな?
L'Ettranger 文字コンテ ep6 troi
6 troi
トモ(けばけばしい装飾と、センスのないライティングの天井。私が処女を失ったこの部屋は、たぶん明日にはすぐに忘れてしまうだろう。この彼氏だってすぐに、記憶の彼方に消えてってしまうだろう、ヒトが天井を見上げるのは・・・、少なくともそれを意識するようになったのは庵野監督の仕業だ・・21世紀は・・記憶の中に埋もれているような気がする、遠い遠い記憶の中に私は迷い込んだ)
男「シャワー先入るよ」
トモ「あぁ・・うん」
男「・・どうだった?」
トモ「・・わかんない」
男「なれれば良くなっていくって話だよ、なんだかおれもあんまりよくわかんなかったなぁ」
トモ「かもね・・・かもねかもねそ~~かも・・」
男「古っ・・」
トモ「別にゴムつけなくて良かったのに、子供産んでみたかったし」
男「怖っ・・・、こっちにはそんな覚悟ないよ」
トモ「いいよ、私一人でも。遺産があるもん」
男「じいちゃんが金持ちだったんだっけ」
トモ「そう、というかただ土地を持ってただけだよ、じじぃが死んだらよってたかってみんなでそれをカネに変えちまったというわけ。この街で残り少ないいい雰囲気と森を持った家だったのに、高層マンションに変えられちまったというわけですね。別に批判しないよ、私もそれで利子生活者の仲間入りだからさ」
トモ(彼は話の途中でシャワーに行ってしまった、初めてのラブホテルが新鮮だから色々試してみたいらしい、もうお別れだよ。さようなら・・オカネを多めに置いて置き手紙を書いて静かに私は出ていった、なんだこの高校1年生らしくないふるまい・・・中学1年生で、何もしてないのにお金持ちの仲間入りをして、周囲のふるまいが突然やさしくぬるま湯に満ちたものになった。別に嫌いじゃないけど・・・今まではまっていたゲームが突然裏技で超簡単にクリア出来たみたいに拍子抜けだった・・・この社会っていうゲームがつまんなくなった、人生っていうゲームが、このまま投資信託の月報を気にしてインスタント食品を食って、ワールドカップとオリンピックを楽しみにしてただ醜く老いてガンでも患って死ぬのかと思うと気が滅入る・・・それでなるべく痛みのないやり方で安楽死を、なんて・・・ふと目を上げると山手線の、えっ・・・?あれどうやってかいたんだろう・・たぶん裸の聖母みたいな絵が描いてある・・何の広告だろう、えらくセンスいいなぁ・・・山手線の駅のJRのところを隠すようにその絵が描いてある。アドレス以外なんの情報もないけど・・・JRも広告収入稼ごうと必死なんだなぁ・・なんだろう・・何かファッション雑誌とコラボかな・・装苑とか・・写メをとって後で調べてみよう・・まさかバンクシーが日本に来たんか?・・それともバンクシー気取りの何ものかが・・・楽しそうだな・・ストリートアート・・パーカー縫おうかな・・補導されたら誰が引き取りにくるんだろうか、おかんは連絡つかんし・・おばさん?・・顔も思い出せん。っていうか本当に未成年が捕まったら誰かが取りにくるんだろうか、刑事ドラマの都市伝説かなんかなのかな・・
学校の近くはやだという小心者の彼だったから無駄に山手線を半周してしまった、何やってんだ私・・・、しっかりしろ。さっきの写メをよく確認してみるとウェブページじゃなくてメールアドレスが書いてあったのだとわかった、しかも普通の民間捨てアドだ、やっぱ企業コラボじゃなかったんだ。・・・なんか寄付して下さいみたいな事自動返信されるのかしら・・・寄付してやろうかな。ますます私はいやらしいあの年寄りのユダヤ人のクソババァに近づいてる(罪と罰のね、あの人名前あった?)もしくはクリスマスキャロルのスクルージ、ヴェニスの商人の・・・
聖母の絵見ました~♪どうやってあんなところに書いたんですか?私もやってみたいです☆寄付金でも募集してるんですか?
ラスコーリニコフに殺された老婆より(15才♡)
絵文字でもっとブリブリした感じで送信。迷惑メール並みの文章の節操の無さ。すぐにやれそうな女を装う(真実でもある)最後にちょっとスパイスを入れておく。
私は・・もしかしたらレズなのかもしれない。いきなり何を言い出したのか・・でも子供の時からもしかしたらはあった、プールの女子の更衣室で私はいつも恥ずかしくて着替えられなくてトイレで一人で着替えてた・・幼児体型なのに胸だけはやたらと早く成長してしまったってのもあったけど・・レスボス島に旅行にでも行こうか、もうすぐ夏休みだし。レスボス島にはレズビアンがいるというのもたぶん都市伝説なんだろうけど(ただの伝説か・・)、アマゾネスは一体どこに生息していたんだろう・・・それは忘れてしまった。アマゾン川流域じゃないことは確かなんだけど・・・
今乗車してきた高校生らしき人をみてなんとなくそう思った、なんだろう・・あの、透明感。芸能事務所はこういう人をスカウトするんだろうな、私だったらスカウトしてるもん。なんかビデオカメラ?のようなガジェットを手にして映像をチェックしてる。アイドルっていうよりは女優顔だな・・眼がぱっちりってわけじゃないけど・・・澄んだ憂いを持った眼というか・・・アイルトン・セナは憂いを持った眼をしていた・・思い出した。あれは添えものの眼だ・・詳細は覚えてないけど宮本武蔵が、どっかの大名の家に呼ばれて、私の家臣の内でこれはと思うものは誰かと聞かれ、武蔵は一目見て、ただ一人の者を選び出す。なんでこの者が良いのかと大名が聞くと、武蔵は本人に日頃の心がけを聞いてみなさいと言う。本人曰く、これといってないが、私の命はまったく添えものようなもので、まったくそれに執着なく、命を捨てる必要があれば何の迷いもなく捨てることができる、といって命を粗末に扱うという意味ではなく、君主に仕える事に全力を尽くす覚悟が出来ている。大名はその家臣を取り立てて、良い地位につけるとそのとおりの活躍をした云々。武蔵には、死ぬ覚悟ができている人間と、できていない人間が、ちらと見ただけでわかる能力があったらしい、覚悟のできてない人間は切らない・・・うろ覚え。
武蔵でなくても私にもわかった、彼女だけがこの車両で異質、まるでこの世界に属してないみたいな浮遊感と透明感を持っている。他の人間は・・何か恐怖に突き動かされていた、貧困、死、空腹、孤独・・・私がずっと視姦していたのに気づいて眼があった。私が男だったらたぶん他の車両に逃げたのかも・・・、いやそうじゃないな・・、ともかく女に睨まれて意外そうな顔をしていた。あれ・・知り合いかな・・っていう顔。どうしよう・・話しかけたいけど・・・冷たくされたら一週間ほど落ち込みそう・・それに何といって声をかけたらいいかわからない。あなた死ぬ覚悟が出来てますね、なんて言ったら、キチガイだと思われるに違いないし・・・あなたカワイイですね、なんて言ったら・・・なんだこの気色悪い小娘はと思われるだろう・・へい、彼女おちゃしないなんて・・・ムリムリ、絶対無理。今になって処女膜を失った下っ腹が鈍痛だし・・・それにシャワーを浴びないで出てきてしまった私はひょっとしたら臭いかもしれない・・今日の服装だってもう少し気を配っておけば良かった・・油断した・・・。超消極的な手段で私は本を取り出して読むことにした、彼女がもし読書好きなら、あっ、その本いい本ですよね、みたいな感じで話しかけてくれるかもしれない。・・・徹底的にモテないドブス女みたいなアプローチの仕方だ・・・
かばんをあさってみると、運悪く金融関係の本と風と共に去りぬしか入ってなかった、クソッなんでこんな時に限ってこんな俗悪な本を選んじまったのか!まさか金融関係の本に興味がひかれるようなヒトでは絶対に無い、というか私自身金の亡者だなこのビッチ、と思われるのが嫌で人前では読みたくない。ともかく奇跡を信じて風と共に去りぬを読まねば・・もしかしたら映画好きで、映画版を見てるかもだもの、私は映画見たことないけど。二さんページくってふと眼をあげてみると、もう彼女はこつ然と消え失せてる上に、私は二駅も乗り過ごしていた。なにやってるんだ種田朋子・・・しっかりしろ。
仕方ないから行きつけの生地屋にいってパーカーを縫うための生地を切ってもらった・・、手芸部のキャプテンだった私は、自分の服は自分で作る派だから・・・、なんだこの凍えるような寂しさ・・・
誰もいない家に帰って、私は何かペットを買う必要を痛切に感じて、独身の30代女みたいな自分に自己嫌悪した。あのヒトは・・・私はお姉ちゃんが欲しかったんだ・・、いがみあって、ケンカして、でも服とか靴を貸し借りして、ファッションの相談には辛口だけど真剣にのってくれて・・私の彼氏を30点とか赤点で評価してくれるような・・・、それでいて美人で、読書好きで、勉強を教えてくれる、自慢のおねえちゃんが欲しい・・・。親とさっぱり仲がうまくいってないし、親類からも遺産の取り過ぎて妬まれている私には、そんなヒトが必要だ・・・友達や彼氏ではダメなんだ・・・実はこの思考サーキットはもう何周もしてる・・・一人で生きていける人間もいる、けど絶対に一人ではダメな人間もいる、私は後者だ、私はシャフトやギアでエンジンじゃない、誰かエンジンに引っ張ってもらわないとダメになってしまう。けれどもお姉ちゃんが欲しいなんて、100%無理な願いだ、妹ならまだ可能性はあるけど・・そこで私は子供を作ろうと考えた、しかし実際15才の女の子を孕ませるほどの勇気がある男は近頃滅多にいないし、イカレタ変態さんの子供もヤダ。少しはまともな遺伝子が欲しい・・多少教育があって、体つきはほっそりとしてて、顔は卵型で、眼は当然二重で鼻はしゅっとした感じ、色白で、歯並びも良くて、髪質は外ハネのあまり太くない感じ、眼の色はなるべくグリーンがいい、そしてタレ目ではないほうがいい、体毛が薄くて、おしりが上向きのきりっとしたライン、背は高すぎるのもよくないし、168センチ以下は論外、運動神経抜群で・・・どこかでなめてんじゃねぇバカっていう罵声が聞こえた気がする・・・。裁ち切りが終わったくらいのとこでメールが来た、さっきの返信だ。
Hi,we need stuff Mrs ...(i can't remember your name, do you have name? I'm sorry for your sis anyway) making movie or something like that, its about suicide coz its free and really....interesting. if you have lot of free time need no hourly rate, plz send me your free time and where you live , i love to see ya bye.
(ちわ、私たちはスタッフを募集してます・・・えっと名前思い出せない、名前あったっけ?ともかく妹さんのことはお悔やみ申し上げる・・・映画みたいなものを作るために、それは自殺についての作品です、何故ってそれはタダだし・・・興味深いから。たくさんの時給を必要としない余暇があるなら、暇な時間とどこに住んでるかを教えてね、会う日を楽しみにしてます、バイバイ 訳 とも)
一ヶ月半ほど何一つ予定が無い(自分で書いて唖然とした、15才の青春のどまんなかの少女が夏休みに何の予定も無いなんて!)山手線沿線に住んでると返信した。面白そう・・映画か・・・自殺か。確かにそれは、非常に・・・安価であって、興味深い。インディ映画が自殺を題材にせざるを得ないのはそういうわけだ。なんで英語で送って来たんだろう、おばかちゃんはお断りってことなのかな・・。ユーチューブで過激派がチェーンソーでクビをちょんぎっている時代だけど、映画で本当に自殺するのを撮るのは斬新だな・・・それってタブーなんじゃ・・カンフー映画で本当に死んだってのはまぁよく聞く話だけどさ・・メールの文体を見るかぎり、もしかしたら女?トレインスポッティングという映画で、この映画はドラッグを美化してる、と問題にされた事があった、ユアン・マクレガーが、他の映画は戦争と殺人を美化してると反論していた。まったくそのとおりだ、私たちは殺人は何かちょっとワイルドな事くらいにしか考えてないのに、ジャンキーにはあたりが厳しい。当然自殺にも風当たりは厳しい、なんでだろう・・・探偵物や刑事モノは毎回殺人事件が起きるけど、犯人に対して、怒りを覚えるやつなんてあまりいない、興味の中心はトリックと名探偵の鮮やかな手腕だ。
誰が自殺するのだろう・・・、背筋がゾッとした・・つまり、それって私がそれなんじゃないか、スタッフ募集って多分そういうことだ・・・ こわっ・・それが裸の聖母の意味なのか・・でもなんで怖いんだ・・・私をそれから遠ざけているものは一体なんだ・・私はこの世界とつながってない・・・そしてともかくこのヒトと会ってみたい・・、会ってから決めよう。
トモ(けばけばしい装飾と、センスのないライティングの天井。私が処女を失ったこの部屋は、たぶん明日にはすぐに忘れてしまうだろう。この彼氏だってすぐに、記憶の彼方に消えてってしまうだろう、ヒトが天井を見上げるのは・・・、少なくともそれを意識するようになったのは庵野監督の仕業だ・・21世紀は・・記憶の中に埋もれているような気がする、遠い遠い記憶の中に私は迷い込んだ)
男「シャワー先入るよ」
トモ「あぁ・・うん」
男「・・どうだった?」
トモ「・・わかんない」
男「なれれば良くなっていくって話だよ、なんだかおれもあんまりよくわかんなかったなぁ」
トモ「かもね・・・かもねかもねそ~~かも・・」
男「古っ・・」
トモ「別にゴムつけなくて良かったのに、子供産んでみたかったし」
男「怖っ・・・、こっちにはそんな覚悟ないよ」
トモ「いいよ、私一人でも。遺産があるもん」
男「じいちゃんが金持ちだったんだっけ」
トモ「そう、というかただ土地を持ってただけだよ、じじぃが死んだらよってたかってみんなでそれをカネに変えちまったというわけ。この街で残り少ないいい雰囲気と森を持った家だったのに、高層マンションに変えられちまったというわけですね。別に批判しないよ、私もそれで利子生活者の仲間入りだからさ」
トモ(彼は話の途中でシャワーに行ってしまった、初めてのラブホテルが新鮮だから色々試してみたいらしい、もうお別れだよ。さようなら・・オカネを多めに置いて置き手紙を書いて静かに私は出ていった、なんだこの高校1年生らしくないふるまい・・・中学1年生で、何もしてないのにお金持ちの仲間入りをして、周囲のふるまいが突然やさしくぬるま湯に満ちたものになった。別に嫌いじゃないけど・・・今まではまっていたゲームが突然裏技で超簡単にクリア出来たみたいに拍子抜けだった・・・この社会っていうゲームがつまんなくなった、人生っていうゲームが、このまま投資信託の月報を気にしてインスタント食品を食って、ワールドカップとオリンピックを楽しみにしてただ醜く老いてガンでも患って死ぬのかと思うと気が滅入る・・・それでなるべく痛みのないやり方で安楽死を、なんて・・・ふと目を上げると山手線の、えっ・・・?あれどうやってかいたんだろう・・たぶん裸の聖母みたいな絵が描いてある・・何の広告だろう、えらくセンスいいなぁ・・・山手線の駅のJRのところを隠すようにその絵が描いてある。アドレス以外なんの情報もないけど・・・JRも広告収入稼ごうと必死なんだなぁ・・なんだろう・・何かファッション雑誌とコラボかな・・装苑とか・・写メをとって後で調べてみよう・・まさかバンクシーが日本に来たんか?・・それともバンクシー気取りの何ものかが・・・楽しそうだな・・ストリートアート・・パーカー縫おうかな・・補導されたら誰が引き取りにくるんだろうか、おかんは連絡つかんし・・おばさん?・・顔も思い出せん。っていうか本当に未成年が捕まったら誰かが取りにくるんだろうか、刑事ドラマの都市伝説かなんかなのかな・・
学校の近くはやだという小心者の彼だったから無駄に山手線を半周してしまった、何やってんだ私・・・、しっかりしろ。さっきの写メをよく確認してみるとウェブページじゃなくてメールアドレスが書いてあったのだとわかった、しかも普通の民間捨てアドだ、やっぱ企業コラボじゃなかったんだ。・・・なんか寄付して下さいみたいな事自動返信されるのかしら・・・寄付してやろうかな。ますます私はいやらしいあの年寄りのユダヤ人のクソババァに近づいてる(罪と罰のね、あの人名前あった?)もしくはクリスマスキャロルのスクルージ、ヴェニスの商人の・・・
聖母の絵見ました~♪どうやってあんなところに書いたんですか?私もやってみたいです☆寄付金でも募集してるんですか?
ラスコーリニコフに殺された老婆より(15才♡)
絵文字でもっとブリブリした感じで送信。迷惑メール並みの文章の節操の無さ。すぐにやれそうな女を装う(真実でもある)最後にちょっとスパイスを入れておく。
私は・・もしかしたらレズなのかもしれない。いきなり何を言い出したのか・・でも子供の時からもしかしたらはあった、プールの女子の更衣室で私はいつも恥ずかしくて着替えられなくてトイレで一人で着替えてた・・幼児体型なのに胸だけはやたらと早く成長してしまったってのもあったけど・・レスボス島に旅行にでも行こうか、もうすぐ夏休みだし。レスボス島にはレズビアンがいるというのもたぶん都市伝説なんだろうけど(ただの伝説か・・)、アマゾネスは一体どこに生息していたんだろう・・・それは忘れてしまった。アマゾン川流域じゃないことは確かなんだけど・・・
今乗車してきた高校生らしき人をみてなんとなくそう思った、なんだろう・・あの、透明感。芸能事務所はこういう人をスカウトするんだろうな、私だったらスカウトしてるもん。なんかビデオカメラ?のようなガジェットを手にして映像をチェックしてる。アイドルっていうよりは女優顔だな・・眼がぱっちりってわけじゃないけど・・・澄んだ憂いを持った眼というか・・・アイルトン・セナは憂いを持った眼をしていた・・思い出した。あれは添えものの眼だ・・詳細は覚えてないけど宮本武蔵が、どっかの大名の家に呼ばれて、私の家臣の内でこれはと思うものは誰かと聞かれ、武蔵は一目見て、ただ一人の者を選び出す。なんでこの者が良いのかと大名が聞くと、武蔵は本人に日頃の心がけを聞いてみなさいと言う。本人曰く、これといってないが、私の命はまったく添えものようなもので、まったくそれに執着なく、命を捨てる必要があれば何の迷いもなく捨てることができる、といって命を粗末に扱うという意味ではなく、君主に仕える事に全力を尽くす覚悟が出来ている。大名はその家臣を取り立てて、良い地位につけるとそのとおりの活躍をした云々。武蔵には、死ぬ覚悟ができている人間と、できていない人間が、ちらと見ただけでわかる能力があったらしい、覚悟のできてない人間は切らない・・・うろ覚え。
武蔵でなくても私にもわかった、彼女だけがこの車両で異質、まるでこの世界に属してないみたいな浮遊感と透明感を持っている。他の人間は・・何か恐怖に突き動かされていた、貧困、死、空腹、孤独・・・私がずっと視姦していたのに気づいて眼があった。私が男だったらたぶん他の車両に逃げたのかも・・・、いやそうじゃないな・・、ともかく女に睨まれて意外そうな顔をしていた。あれ・・知り合いかな・・っていう顔。どうしよう・・話しかけたいけど・・・冷たくされたら一週間ほど落ち込みそう・・それに何といって声をかけたらいいかわからない。あなた死ぬ覚悟が出来てますね、なんて言ったら、キチガイだと思われるに違いないし・・・あなたカワイイですね、なんて言ったら・・・なんだこの気色悪い小娘はと思われるだろう・・へい、彼女おちゃしないなんて・・・ムリムリ、絶対無理。今になって処女膜を失った下っ腹が鈍痛だし・・・それにシャワーを浴びないで出てきてしまった私はひょっとしたら臭いかもしれない・・今日の服装だってもう少し気を配っておけば良かった・・油断した・・・。超消極的な手段で私は本を取り出して読むことにした、彼女がもし読書好きなら、あっ、その本いい本ですよね、みたいな感じで話しかけてくれるかもしれない。・・・徹底的にモテないドブス女みたいなアプローチの仕方だ・・・
かばんをあさってみると、運悪く金融関係の本と風と共に去りぬしか入ってなかった、クソッなんでこんな時に限ってこんな俗悪な本を選んじまったのか!まさか金融関係の本に興味がひかれるようなヒトでは絶対に無い、というか私自身金の亡者だなこのビッチ、と思われるのが嫌で人前では読みたくない。ともかく奇跡を信じて風と共に去りぬを読まねば・・もしかしたら映画好きで、映画版を見てるかもだもの、私は映画見たことないけど。二さんページくってふと眼をあげてみると、もう彼女はこつ然と消え失せてる上に、私は二駅も乗り過ごしていた。なにやってるんだ種田朋子・・・しっかりしろ。
仕方ないから行きつけの生地屋にいってパーカーを縫うための生地を切ってもらった・・、手芸部のキャプテンだった私は、自分の服は自分で作る派だから・・・、なんだこの凍えるような寂しさ・・・
誰もいない家に帰って、私は何かペットを買う必要を痛切に感じて、独身の30代女みたいな自分に自己嫌悪した。あのヒトは・・・私はお姉ちゃんが欲しかったんだ・・、いがみあって、ケンカして、でも服とか靴を貸し借りして、ファッションの相談には辛口だけど真剣にのってくれて・・私の彼氏を30点とか赤点で評価してくれるような・・・、それでいて美人で、読書好きで、勉強を教えてくれる、自慢のおねえちゃんが欲しい・・・。親とさっぱり仲がうまくいってないし、親類からも遺産の取り過ぎて妬まれている私には、そんなヒトが必要だ・・・友達や彼氏ではダメなんだ・・・実はこの思考サーキットはもう何周もしてる・・・一人で生きていける人間もいる、けど絶対に一人ではダメな人間もいる、私は後者だ、私はシャフトやギアでエンジンじゃない、誰かエンジンに引っ張ってもらわないとダメになってしまう。けれどもお姉ちゃんが欲しいなんて、100%無理な願いだ、妹ならまだ可能性はあるけど・・そこで私は子供を作ろうと考えた、しかし実際15才の女の子を孕ませるほどの勇気がある男は近頃滅多にいないし、イカレタ変態さんの子供もヤダ。少しはまともな遺伝子が欲しい・・多少教育があって、体つきはほっそりとしてて、顔は卵型で、眼は当然二重で鼻はしゅっとした感じ、色白で、歯並びも良くて、髪質は外ハネのあまり太くない感じ、眼の色はなるべくグリーンがいい、そしてタレ目ではないほうがいい、体毛が薄くて、おしりが上向きのきりっとしたライン、背は高すぎるのもよくないし、168センチ以下は論外、運動神経抜群で・・・どこかでなめてんじゃねぇバカっていう罵声が聞こえた気がする・・・。裁ち切りが終わったくらいのとこでメールが来た、さっきの返信だ。
Hi,we need stuff Mrs ...(i can't remember your name, do you have name? I'm sorry for your sis anyway) making movie or something like that, its about suicide coz its free and really....interesting. if you have lot of free time need no hourly rate, plz send me your free time and where you live , i love to see ya bye.
(ちわ、私たちはスタッフを募集してます・・・えっと名前思い出せない、名前あったっけ?ともかく妹さんのことはお悔やみ申し上げる・・・映画みたいなものを作るために、それは自殺についての作品です、何故ってそれはタダだし・・・興味深いから。たくさんの時給を必要としない余暇があるなら、暇な時間とどこに住んでるかを教えてね、会う日を楽しみにしてます、バイバイ 訳 とも)
一ヶ月半ほど何一つ予定が無い(自分で書いて唖然とした、15才の青春のどまんなかの少女が夏休みに何の予定も無いなんて!)山手線沿線に住んでると返信した。面白そう・・映画か・・・自殺か。確かにそれは、非常に・・・安価であって、興味深い。インディ映画が自殺を題材にせざるを得ないのはそういうわけだ。なんで英語で送って来たんだろう、おばかちゃんはお断りってことなのかな・・。ユーチューブで過激派がチェーンソーでクビをちょんぎっている時代だけど、映画で本当に自殺するのを撮るのは斬新だな・・・それってタブーなんじゃ・・カンフー映画で本当に死んだってのはまぁよく聞く話だけどさ・・メールの文体を見るかぎり、もしかしたら女?トレインスポッティングという映画で、この映画はドラッグを美化してる、と問題にされた事があった、ユアン・マクレガーが、他の映画は戦争と殺人を美化してると反論していた。まったくそのとおりだ、私たちは殺人は何かちょっとワイルドな事くらいにしか考えてないのに、ジャンキーにはあたりが厳しい。当然自殺にも風当たりは厳しい、なんでだろう・・・探偵物や刑事モノは毎回殺人事件が起きるけど、犯人に対して、怒りを覚えるやつなんてあまりいない、興味の中心はトリックと名探偵の鮮やかな手腕だ。
誰が自殺するのだろう・・・、背筋がゾッとした・・つまり、それって私がそれなんじゃないか、スタッフ募集って多分そういうことだ・・・ こわっ・・それが裸の聖母の意味なのか・・でもなんで怖いんだ・・・私をそれから遠ざけているものは一体なんだ・・私はこの世界とつながってない・・・そしてともかくこのヒトと会ってみたい・・、会ってから決めよう。
2012年3月13日火曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep5 sentence
5 sentence
俊(アキは雑踏の中に消えていった、今日はアルバイトの日だ、明日は休日で図書館にいるはず。アキに負けるわけにはいかないと猛勉強した結果、というよりもアキが図書館で勉強してるときに他にやることがなかったので(アキは生活のほとんどを本の中で過ごしている)こっちも勉強をやるはめになった。結果数学が好きだったのもあってかなり出来るほうになってしまった・・・世間それほど騒がれるほどには、大学受験など難しいものではない、受験勉強でキレて親をナイフでミンチにするなんてのは、実際にやってみたことのないヒトの勝手の想像である、たとえニュースでそんなものがあったとしても、そりゃニュースで探せば何でも見つかるだろう、例外はどんな統計にもあるものだ。そりゃ運ってものがあるけれど・・・どうするか・・そう・・医者になりたいわけでもなんでもない、それをさっき自分で口にしてやっとわかった。何か道を失ってしまった。結局のところおれは何がしたいんだったっけ、何が楽しかったのだっけ、ヒトはどんな時に幸せなんだろう・・・そんな宮沢賢治風の問題を抱えたって答えなんて出るわけもないんだけど・・
家にも帰りたくない、アキの生活スタイルがうつってしまった、家にいると落ち着かないし、集中もできない。テレビも映画も何をしてても楽しくない。くだらなすぎる気がして、はぁ、勉強やるか・・・他にやることが無くなってしまったし。誰かが言ってた、市場が提供するものは、大衆に迎合するあまりもはや嘲弄の域に達している・・・確かにそうなのかも。しかし誰が誰を嘲笑っている?人形使いすらも、人形を操る意味を失っている、神様ですら人間を作った意味を失っている、もはや誰も神を崇めたりしないもの・・神は自分を崇めて欲しくて人間を作った、いくら神様でもそんなやり方じゃ誰も本当には好きになってくれないということがわかりそうなもんだ、ヒトは自分に役に立つ人間を愛す、アキの受け売りだけど、ヒトは役に立たない神なんてもはや愛しはしない。神はサウルを王にしたことを悔やんだ、神でも悔やむとして・・・人間が何かを悔やまないなんて事があるのか?僕には、僕達には、人生がない。70億人も人口がいて70億の人生があるとは思えない、しかし・・・しかし?
こういう時の人間に現代医学は何をすすめるかというと、教科書的には・・・スポーツと気晴らし、西洋文学的にはイタリアにでも静養に行かれてはいかかがです?ボルコンスキィ伯爵・・・そんなことできりゃ誰も苦労しないぜ、確かに三年くらい南の島に行けば何か違う人間になっているかもしれないけれど、ゴーギャンみたいに・・・それって誰か、別の人格だ。そして自然を大事にしようだの、仏教がどうだの、心の安定がどうだの言ってればいいさ・・・でもここまで来てしまったんだよ、文明は、それを無視して逃げたって仕方ない、アルルからゴッホは帰ってきたんだ。アルルは・・・ヒトをダメにする。楽園は人間をダメにする・・楽園から出てきたんだぜ・・おれたちは、自分の足で楽園から出てきたんだ。いや、たとえ追い出されたにせよ、楽園から出たんだ、もう楽園に帰る気は無い・・・、ウルのセカイには何があるんだろうか、そこは楽園なんだろうか?楽園だったら行きたくない・・
ちょっとした実験精神でアキと直接会ってみて・・・まぁそのちょっとしたきっかけというのも結局それがおれの真実なのかもだけど・・・驚くほど心が揺さぶられた。何か寂しさとか不安とかが無くなるのかと思ったけれど・・むしろそれは強烈になっただけだった。アキがしょうもない人間だとかそうではなくて・・・むしろその反対だったから、ココロが動いてしょうがない・・・アキが死んだら、おれは死にたくなるだろうか・・違うな・・それは違う・・・むしろそれを望んでいる部分もいる・・・
急に考えるのが嫌になった、図書館には河原のずっと真っ直ぐな道を自転車で飛ばす道と、駅前のバス通りを通る道がある、この暑さで排気ガスまみれでは目も当てられない、当然河原の自転車専用道路をぶっ飛ばしているのだけれど、ここはやたらに猫が多くて、何を食べているのかしれないけど、家族連れのニャンニャンがゴロゴロしている、それにしたって猫ってやつは何が嬉しくて都会に住んでいるのだろう、田舎は退屈なんだろうか・・・途中で曲がるのも嫌になった、そう・・海まで行こう。あと30キロ・・気晴らしとスポーツ・・・、考えないこと、考えずに眼の前の事に全力を尽くせ・・・それって逃げか?)
俊「それって逃げか?」
猫「・・・」
俊(猫って瞬きしないのか?)
猫「うにゃん(知らん)」
俊(猫は人間になんてならなくて良かったと思ってるか?楽園の住人か、お前も・・帰ってこい、前線へ・・・帰ってくるんだ、前線へ。生きるか死ぬかの前線へ・・
よし全速力だ、死ぬまで全速力で走ってみる、自分ルール設定・・・)
俊「あぁあああああああ」
俊(およそ60キロ、たぶん、目測、太ももがぱんぱん・・・・・なんだ・・・急にセカイがスローに・・あっチェーンが絡まってる、そしてスポークに絡まり、後輪が急ブレーキ、当然前輪も、慣性の法則により、ニュートンは天才的だ、つまるところ上の人間は吹っ飛ばされて・・、宙返り・・・空・・空・・)
アキ「・・ところでセカイについてどう思う、私達をとりまいてる、これ」
俊(世界か・・空・・、セカイ・・・好きなのかもね、そう、好きなんだろうな・・神様もやっぱり人間に好かれたかったから媚をうってやがる・・ヒトは鳥だったのかもね、空がこんなに恋しいもの・・・、爬虫類だって空を飛んだよ・・昆虫だって・・死ぬのか?走馬灯は来ず・・)
俊(アキは雑踏の中に消えていった、今日はアルバイトの日だ、明日は休日で図書館にいるはず。アキに負けるわけにはいかないと猛勉強した結果、というよりもアキが図書館で勉強してるときに他にやることがなかったので(アキは生活のほとんどを本の中で過ごしている)こっちも勉強をやるはめになった。結果数学が好きだったのもあってかなり出来るほうになってしまった・・・世間それほど騒がれるほどには、大学受験など難しいものではない、受験勉強でキレて親をナイフでミンチにするなんてのは、実際にやってみたことのないヒトの勝手の想像である、たとえニュースでそんなものがあったとしても、そりゃニュースで探せば何でも見つかるだろう、例外はどんな統計にもあるものだ。そりゃ運ってものがあるけれど・・・どうするか・・そう・・医者になりたいわけでもなんでもない、それをさっき自分で口にしてやっとわかった。何か道を失ってしまった。結局のところおれは何がしたいんだったっけ、何が楽しかったのだっけ、ヒトはどんな時に幸せなんだろう・・・そんな宮沢賢治風の問題を抱えたって答えなんて出るわけもないんだけど・・
家にも帰りたくない、アキの生活スタイルがうつってしまった、家にいると落ち着かないし、集中もできない。テレビも映画も何をしてても楽しくない。くだらなすぎる気がして、はぁ、勉強やるか・・・他にやることが無くなってしまったし。誰かが言ってた、市場が提供するものは、大衆に迎合するあまりもはや嘲弄の域に達している・・・確かにそうなのかも。しかし誰が誰を嘲笑っている?人形使いすらも、人形を操る意味を失っている、神様ですら人間を作った意味を失っている、もはや誰も神を崇めたりしないもの・・神は自分を崇めて欲しくて人間を作った、いくら神様でもそんなやり方じゃ誰も本当には好きになってくれないということがわかりそうなもんだ、ヒトは自分に役に立つ人間を愛す、アキの受け売りだけど、ヒトは役に立たない神なんてもはや愛しはしない。神はサウルを王にしたことを悔やんだ、神でも悔やむとして・・・人間が何かを悔やまないなんて事があるのか?僕には、僕達には、人生がない。70億人も人口がいて70億の人生があるとは思えない、しかし・・・しかし?
こういう時の人間に現代医学は何をすすめるかというと、教科書的には・・・スポーツと気晴らし、西洋文学的にはイタリアにでも静養に行かれてはいかかがです?ボルコンスキィ伯爵・・・そんなことできりゃ誰も苦労しないぜ、確かに三年くらい南の島に行けば何か違う人間になっているかもしれないけれど、ゴーギャンみたいに・・・それって誰か、別の人格だ。そして自然を大事にしようだの、仏教がどうだの、心の安定がどうだの言ってればいいさ・・・でもここまで来てしまったんだよ、文明は、それを無視して逃げたって仕方ない、アルルからゴッホは帰ってきたんだ。アルルは・・・ヒトをダメにする。楽園は人間をダメにする・・楽園から出てきたんだぜ・・おれたちは、自分の足で楽園から出てきたんだ。いや、たとえ追い出されたにせよ、楽園から出たんだ、もう楽園に帰る気は無い・・・、ウルのセカイには何があるんだろうか、そこは楽園なんだろうか?楽園だったら行きたくない・・
ちょっとした実験精神でアキと直接会ってみて・・・まぁそのちょっとしたきっかけというのも結局それがおれの真実なのかもだけど・・・驚くほど心が揺さぶられた。何か寂しさとか不安とかが無くなるのかと思ったけれど・・むしろそれは強烈になっただけだった。アキがしょうもない人間だとかそうではなくて・・・むしろその反対だったから、ココロが動いてしょうがない・・・アキが死んだら、おれは死にたくなるだろうか・・違うな・・それは違う・・・むしろそれを望んでいる部分もいる・・・
急に考えるのが嫌になった、図書館には河原のずっと真っ直ぐな道を自転車で飛ばす道と、駅前のバス通りを通る道がある、この暑さで排気ガスまみれでは目も当てられない、当然河原の自転車専用道路をぶっ飛ばしているのだけれど、ここはやたらに猫が多くて、何を食べているのかしれないけど、家族連れのニャンニャンがゴロゴロしている、それにしたって猫ってやつは何が嬉しくて都会に住んでいるのだろう、田舎は退屈なんだろうか・・・途中で曲がるのも嫌になった、そう・・海まで行こう。あと30キロ・・気晴らしとスポーツ・・・、考えないこと、考えずに眼の前の事に全力を尽くせ・・・それって逃げか?)
俊「それって逃げか?」
猫「・・・」
俊(猫って瞬きしないのか?)
猫「うにゃん(知らん)」
俊(猫は人間になんてならなくて良かったと思ってるか?楽園の住人か、お前も・・帰ってこい、前線へ・・・帰ってくるんだ、前線へ。生きるか死ぬかの前線へ・・
よし全速力だ、死ぬまで全速力で走ってみる、自分ルール設定・・・)
俊「あぁあああああああ」
俊(およそ60キロ、たぶん、目測、太ももがぱんぱん・・・・・なんだ・・・急にセカイがスローに・・あっチェーンが絡まってる、そしてスポークに絡まり、後輪が急ブレーキ、当然前輪も、慣性の法則により、ニュートンは天才的だ、つまるところ上の人間は吹っ飛ばされて・・、宙返り・・・空・・空・・)
アキ「・・ところでセカイについてどう思う、私達をとりまいてる、これ」
俊(世界か・・空・・、セカイ・・・好きなのかもね、そう、好きなんだろうな・・神様もやっぱり人間に好かれたかったから媚をうってやがる・・ヒトは鳥だったのかもね、空がこんなに恋しいもの・・・、爬虫類だって空を飛んだよ・・昆虫だって・・死ぬのか?走馬灯は来ず・・)
2012年3月10日土曜日
L'Ettranger 文字コンテ ep4 first
aimp3 というのにオーディオプレーヤーを変えました
http://aimp.ru/index.php?do=download
itunesよりも軽くて、たしかに音がモニターっぽい音です。ロシア製というのも、何か心をくすぐる・・・
4 first one
アキ(翌日もメールチェックをしているとあそこは俺達の島なんだ、勝手に活動は許さねぇみたいな、ヤクザ漫画の読みすぎみたいな野郎からメッセージが入ってると同時に(彼らはまさかまだナイフを持って変なダンスを踊りたがっているのか?)めぼしいのが2通来ていた。一つは自殺志願者ではないけれど、何か面白そうだから自分も参加したいというもの。もう一つはこれはホンモノだった。近くに住んでるので、もししたらこの学校のヤツかもしれん、そうすると・・ちょっと困った事になる・・私の優等生キャラに傷がつくし・・ちゃんと秘密が守れそうなヒトなのか、それとキチガイさんじゃないかどうかを確認するためにちょっとメールをかわしてみる。スタッフ参加希望のほうは、まだ準備段階なので待機してもらうことにした。夏休み前の最後の模試が終わって、あとは天王山を登るのみ、うつむいてばかりで背骨が曲がっていた生徒たちも、夏が近づいているということを本能的に感知しだした。そして校舎は妙な静けさに包まれている・・・午前中授業やらなんやらで授業は殆どなくなってるからと同時に、そろそろ、学校に来ないで家で勉強したほうがいいという事に気づいた者が何人か引きこもりだした。そして誰しも、実はここにいる300人ほどの同級生たちが実は自分たちを奈落の底へ突き落とす悪魔なんだということを感じだしていた・・だんだんオンカロみたいな静けさを手に入れだしたのはそれが理由の一つである・・
私はといえばナナからもらった臨時収入でハンズでスプレーとペンキ、強力なノリ、コンクリート、パネルなどを買って、しっかりしたストリートアートをやる準備を整えた、題材はピエタのヌードである。ミケランジェロはホモだったのに、なんで世界で一番カワイイマリアを彫ったのかまったく謎である、それと西洋の美人の基準はギリシャ時代からあんまり変わらないのに、日本の美人の基準は変わりまくるのは一体何故なんだろう、中国ですら一貫していた、最近はどこの世界もルネサンス基準で美しさのヒエラルキーを作っているけど・・・ピエタのイエスは道みたって12才くらいだし、マリアは3メートルくらいあるゴリアテのような美少女である。ピエタからドレープをはぎ取るとその不思議な感じがわかるに違いない、ダヴィデの頭はでかすぎるのもそうだけど、ミケランジェロのデフォルメ感というかマニエル感が21世紀の美的感覚の源流だと私は思う・・
数日後、あの自殺志願者と会うことになった、プーシキンと私は名付けたけど、プーシキンはやっぱり私の学校でしかも同学年だった。向こうも私がポスターを貼ってるのをたまたまみかけたらしい。今思えば軽率すぎた。文体とかを見ればある程度その人となりくらいはわかるほどに私も本は読んでいるので、プーシキンはちょっと頭がいかれているけど、まとめで危険はなさそうだし結構頭が良いということがわかった。自殺志願者にしては非常にまともだ・・・。駅前の喫茶店で待ち合わせだ、私はカネがかからない公園がいいと言ったのに、おごるからコーヒーを飲もうとむこうの注文である。私は制服で行った、制服シャツ、薄手のパーカー、超ミニスカ、スポーツタイツ(スパッツともいう)、生足、くるぶしソックス、赤のオールスター、もしくはドクターマーチン、やや伸びすぎの毛先をパーマで散らしたショートカットボブ、皮のアディダスのメッセンジャーバッグ、ひきこもりになってからのスタイルはだいたいこれである。ちなみに実は身長170なので近くで見ると背が高い、そして忘れてた、ソニーのカメラ)
プーシキン「こんにちわ」
アキ「やぁやぁ・・もう回してるけど大丈夫?」
プーシキン「大丈夫です、隠し撮りじゃなくていいんですか?お店・・」
アキ「知らない、ダメだったら出ればいいじゃないか、やっぱどこかであった事あるよね」
プーシキン「あります、実は何百回も、別に隠してもしょうがないんだけど、おれストーカーですよ、水澤アキの」
アキ「へぇ・・水澤アキのね・・」
私達が待ち合わせしたのはちょっと高級感のある喫茶店だ、チェーン店じゃない。
ストーカー「ラテのミディアムですよね、砂糖いいです。それとクロワッサン、おれはアイスカフェモカ」
アキ「ここ始めてだっけな?」
ストーカー「一回きたことありますよ、ほらあの中絶事件の前のデートの時に」
アキ「あぁ、詳しいねぇさすがに、勝手に事件化されてるけど」
ストーカー「ストーカーにとってはフォロワーの妊娠、中絶は大事件ですよ」
アキ「フォロワーっていうの?」
ストーカー「ストーキング用語です、本当は受け身でfollowedですけど、ストーキングハイってのがありましてね、だんだん自分が追われてるいるような気がするんですよ、ちくしょう今日も外出しやがった、家にいろよ面倒くさいなぁ、またおれも行かなきゃいけないじゃないかってふうに、それでだんだんフォロワーが嫌いになってくるんですよ、お前がいなければもっと自由時間が増えるのに、と思ってね、ストーキングブルーです、そんな段階はもうとっくに超えましたけど」
アキ「ふぅん・・・盗聴とかもやってるの?」
ストーカー「それは邪道です、ストーキングはアナログじゃないと、カメラも禁止です、パパラッチや芸能人のファンとストーキングは全然違うんです、こっちは何でもない素人を追っているんですから、ある意味純粋芸術です。写真に取るより裸眼で見て記憶する、車もダメ、ストーキングの名前通り、足音ってのがストーキングのキーファクターなんですよ、足音、見られてしまうストーカーは初心者です、ストーカーは音だけの存在、今日みたいに会合をしてしまうのは最悪のタブーです」
アキ「誰が決めてるの?ストーキング業界のルール?」
ストーカー「自分です、自分ルール。それが一番強力な法だから、憲法は破れても自分ルールは破れないですからね」
アキ「ふむふむ、なんでタブーを破ろうと思ったの?」
ストーカー「わからないです、別におれは君のためなら死ねるとか言うような梶原一騎みたいなヤツだったら、ストーキングしてないですからね、そうじゃない・・・もう正直、水澤アキが好きなのかどうかもさっぱりわからないんですよね、スランプですよね。だからこう・・なにか一回会って見て、化学変化を期待してるんです」
アキ「ストーカーっていうとやっぱタルコフスキーって感じが私はするな、ゾーーーーーンに行きたいんでしょ?私のこのカメラの名前もそれからとってストーカーなんだけど」
ストーカー「あれは・・・まぁストーキングのバイブルみたいなものです、確かに。映画ってのもストーキングに近いんじゃないですか、ほらアンタゴニストの人生をカメラでずっと追っていくんでしょ、その恥や私生活や苦悩まで。何も隠さずにさらけ出していく。ずっとついていって、ある場面では近づきすぎて融合してみたくなったり、突き放してみたり。追っていくっていう行為、小説でもなんでも、それは楽しいんですよ、ストーカーがなんでフォロワーとコンタクトしたくないかって理由もそれでわかるでしょ?そこは超えちゃいけない一線なんですよ、幻想と・・現実っていうか?なんというか、それの一線・・・こう、もっとくだけた喋り方でいい?」
アキ「全然いいよ、映画なんだし」
ストーカー「ありがと、慣れてないから敬語、飲んでよ、冷めちゃうよ」
アキ「そうだね、カメラ置こう、このカメラは私の特製で・・・て知ってるのか」
ストーカー「ハンドステディカムでしょ、ボディはソニーだけどレンズもライカに変えたし、フォーカス系の機械を全摘、マイクと配線ジャックを全部取り替えて、サスペンションキットはお手製、メモリはクラウドメモリ・・」
アキ「そう、原子力電池が欲しかったんだけど、民間では使えないんだよね。カメラって侍でいう日本刀だし・・一人っきりになったときに一緒に死んでくれるのはこいつだけだからさ・・・でもやっぱスタッフに頼めば良かったかな。メールで来たんだ手伝ってみたいって。でも知らない奴がいると深刻な話はしにくいかなと思ってね」
ストーカー「全然気にしないよ、そんなの」
アキ「ストーカーさんからみて・・」
ストーカー「工藤俊一」
アキ「俊作じゃなくて?仮名?」
俊一「じゃあ仮名ってことで」
アキ「ストーカーさんからみて私は最近どう?」
俊一「充実してるんじゃないですか、ほらあのピエタだってけっこう上手くいってるし、成績は優秀だし。一日8時間も寝て肌のハリも健康状態もいい。中絶の後の生理不順も無くなったし、経済的には厳しいけど本人はまったく気にしてないし」
アキ「すげぇなぁ、パーソナルトレーナーみたい、ちょっとした方針の発表だけどさ・・カメラがあるからってこぉ、間をつなぐようにしゃべらなくてもOKだよ、後でどうせ編集するから。・・私の方からいつ自殺しますか、とか方法は?とか聞くつもりはないんだ、自殺ってコトバにはすでにノイズがつきすぎてる気がするなぁ、なんか新しい名詞を考えよう・・ウル、でどうですか?」
俊「いいんじゃないですか、っていうか水原アキには常にYESマンですよ」
アキ「そうか。ウルについてはやり方も日時も一切こっちは口を挟まないけど、なるべく決行の時は呼んでほしいな、その瞬間ってのを、みんな見てみたいものじゃない、実際に全部使うかどうかはわかんないけど、でもその決行の瞬間だけを見てもつまんない。甲子園と同じでさ、試合だけみてもそれほど感動しないけど、その学校のチームを三年間追っていってこういうドラマがあって、こういう人間関係があってっていうのを追っていくほうが楽しいよね、それをやっているのがスポーツ漫画っていうジャンルだものね。だから工藤君って人間を少しは撮りたいよね、今までもある程度取れたけどさ。工藤くんがストーキングしてる水澤アキについては、これはいくらでも情報は入れられるわけだから、了解した?」
俊「oui、最近フランス語勉強してるんだよね、なんで?」
アキ「英語はある程度出来るようになったし、もっと自然でくだけた英語をしゃべろうと思ったら海外に行くしかないけど、別にアメリカ人やイギリス人が喋ってる英語が唯一正解だとは思わないから、英語を教えてる立場にいる連中は、正しい英語があると信じてるけど、そんなわけないじゃんね、英語が国際語なら、日本英語やベラルーシ英語やロシア英語が、つまり方言が生まれるに決まってるもの、そういう風に言語は離合集散していくものなんだよね、バベルの塔にかかわらず。見ているサウンドスケープやライフスケープが違うんだもん・・」
俊「・・・フランス語を始めた理由になってないけど」
アキ「あぁ・・・まぁ・・・なんだろ、かっこつけたかったからかな。ほらある種の演劇をやってるじゃん、優等生キャラの水澤アキを、優等生の彼女は中国語じゃなくてドイツ語かフランス語をやってるべきだよね。中国語の本を呼んでたら中国人なのかなって思われてしまうかもでしょ、フランス語の場合はその気遣いはない、インテリのかっこ良さじゃん、フランス文学って女向けだし、まぁ近代文学が暇な貴族の女の子向けなんだけどさ・・・」
俊「な~るほど・・、受験勉強もほぼ高2で終わらしちゃったもんね、主要大学の過去問ほぼ暗記してさ、英語はTOEICもTOEFLも海外留学レベルだし・・・やや数学がニガテってくらい」
アキ「ニガテっていうよりは・・なんだろう私は天才じゃないっがわかってるからやる気が出ないんだよね。私はどう宙返りしてもオイラーの定理を自分で考え出せるとは思えないもの、神の啓示でも降りてこない限り、そりゃ定理を使って大学受験レベルの問題を解くことはできるよ、でもそれって数学でも何でもないじゃんね、工藤くんは勉強出来る方?」
俊「俊って呼んで下さい、工藤君ってよばれると病院に来たみたい・・勉強は・・まぁ文系理系に別れる前はずっと一位だったんだけど、他人には全然興味ないんだよなぁ、最初はほら、優等生はそういうものを気にするものだと思って猛勉強して注目してもらおうとか、普通の恋愛中毒がやるような愚行をやってたんですよ、特にその、前のバージョンの水澤アキに対しては・・・完全に無視されましたけど。ストーカーに返信するのは、今のバーションの水澤アキになってからだから」
アキ「あっそうだったかも、工藤俊作みたいな名前ってのを少しだけ見た気がする、あぁ!そうだったんだ、なんで私みたいなやつに戦いを挑んでくるんだろうって思ってた、だって学校のテストの順位なんて意味ないじゃん、最終的には・・相当の暇人なんだって思ってたら・・なるほどなぁ。その服装とか髪型だって私がこういうのがいいっていつか口に出したのそのままだもんね、さすがに整形はしなかったようだけど」
俊「予算の問題です、奥二重なんて無理ですよ、それと死んでるヤツがいいってのもまぁ今のところ無理、ウルによって可能になるかもですけど。もしウルになったら好きになりますか?」
アキ「う~~ん・・・たぶんならないだろうね。というか誰かを好きになるっていう才能が欠落してるかもね、記憶喪失によるものなのか、生まれつきなのか知らないけど、特にある個人を永久に好きになるっていう、純愛純血主義には向いてないんだよね・・ウルは名詞としても使えるんだな、複数形はウルルだね・・ところで世界についてはどう思います?」
俊「えっ何?」
アキ「世界、world , le monde 私達を取り巻いてるこれ」
俊「世界・・・別に教科書的な答えを期待してないよね?」
アキ「というと?」
俊「環境問題が、貧困問題が云々。ほら論文で慣れてしまってるじゃん、環境問題は国連がリーダーシップをもっと発揮して、迅速な解決策を取るべきである、人類の協力が不可欠である、的な、論文だとこれで9割。国連がリーダーシップ!そんな事小学生でも信じないのに・・、COPに反対する国家は女子供まで全員抹殺すべし、なんて書いたら0点だしさ」
アキ「そう思ってる?」
俊「いや・・正直なところどうでもいい、セカイなど・・・人類も。おれが生きてる間には直接かかわらないからいいとかそういう次元でなく・・結局大人だって偉い人間だって、こういう論文と同じような事を言って結局は何もしないし、何か解決するとも思ってないのにお茶を濁すのを心得てるわけだし・・・60年代が終わってから、コトバにするけどなんにもしないってことに慣れすぎてしまったよね・・人間は・・・死ぬ時は死ぬ、それだけだよ・・・セカイか・・・そうだなぁ・・セカイね。セカイ、別にそういう人類の問題がセカイの意味するところじゃないものね、このセカイについて・・・自然とか空間とか・・・」
アキ「別に答えを探さないでいいよ、時間はいくらでもあるわけじゃないけど俊のコントロールできる幅が少しはあるわけだし、ウルをするかしないかも、強制はしないから、別に私はそれに特別な興味がある、アレなヒトではないわけだし、ウィーンアクショニスト的なスキャンダルを期待してるわけでもなし・・ちょっとした思いつきの企画なんだから、でもあと何回かインタヴューしたいし、どっか外にも行こうね、自分のストーカーと話すのって新鮮だもん。特に俊の過去を少しはカバーしとかないと、クロノロジカルに順撮りしていくつもりはないけどさ」
俊「う~ん、今あらためて思ったけど水澤アキってカワイイんだよな、めがくりくりのアイドル系ではないんだけどさ・・・つまり薬師丸じゃなくて原田知世タイプ。いわゆるあれだよ、すごい便利なコトバ、透明感。透明だったら気持ち悪いだけなのにね、人間の美しさは薄皮一枚だけであったって漱石も言ってるし・・・」
アキ「ミケランジェロがいうには、ピエタのマリアは、マリアっていう女は一度も汚れた事もないし、汚れたことを考えたことすら無いから、神様の恩恵でいつでも少女のような美しさらしいですよ、無茶苦茶いってるだけにも思えるけど・・私はどちらかといえば、pervert and rebelious womanだけど・・・前のバージョンではいわゆるやりまんだったし、中絶もしてるし、マスターベーションするほうだし・・・そうだね老いたマリアって見たことないよね、別にミケが勝手にそうしたんじゃなくて、マリアはそうなんだろうね、すっげぇ・・・やめとこ東方教会に叱られる。マリアはセックスシンボルだったのかなぁ・・修道院の連中はマリアで・・・それにしても古っ、原田知世って・・もう50近いんじゃないの?」
俊「だって最近の映画見ないじゃん、というかここ一年くらい映画なんて見てないじゃん」
アキ「嫌いなんですよ映画」
俊「映画監督のクセに・・」
アキ「映画はもう落ち目の映画だからさ、でもだいたい芸術の落ち目にはなんかそれほど有名でないけどすごくいい作品が生まれたりするんだよね、浮世絵でいうと、あの血まみれ芳年みたいな。団菊左が死んだのでは歌舞伎なんて見てらんないぜ、キューブリック、黒澤、タルコフスキーが死んだのではね」
俊「ジブリは見に行ってたじゃん」
アキ「あれは漫画映画だもん、それも・・何年前?もののけ姫でしょ・・・漫画映画ももぉだめだろうね・・っていうか始めっから漫画映画って無理があるんだよね、人件費がかかりすぎるもん・・・しかもそれほどまでやって結局漫画よりもどれほどよくなったかというとそれほど・・・まぁ音楽の力はあるだろうけどさ、結局漫画ナウシカが一番良かった気がするんだけどな・・・あるいはいくら3Dとか、映像技術が進歩しようが、360度の立体視が出来るようなものが開発されようが、結局語るべきものがなければ何の役にも立たないし、せいぜいやっぱりセックスゲームくらいにしかならないんだと思うな、本当に何かがあれば小説であれ、絵コンテレベルのレンダーでも・・・楽しいもん、売れるかどうかは知らないけどさ」
俊「まぁ・・360度立体視は結局現実と同じだもんな・・じゃあ現実でいいじゃんって感じもする・・まぁ世界遺産巡りとかしょーもないコンシューマー向けの映画が作られるんじゃないですか?・・映画である必要も全然無いけど」
アキ「そうだね・・・一体私たちはどんな時に幸せなんだろう?」
俊「petit princeが今季のNHKフランス語講座の教材ですもんね」
アキ「じゃあ今日はこれくらいにしとこうか、じゃあ・・・メールするね、コーヒーありがとう・・あっそうか、結局ついてくるんでしょ?」
二人は立ち上がって街へと出ていく。もう夏休み前のコントラストの激しい街並みだ・・
俊「・・でも一応今日はお別れです、さようなら。やっぱ実際話してみると色々発見があるよな、喋り方とか、表情のニュアンスとか、匂いとか」
アキ「ははは、魅力を失った?」
俊「いや、香水をつけていなくてもいい匂いがするんだなぁと思って。それにもぉなんか好きとか嫌いとかどうでもいい感じなんだよね、なんなんだろう。演劇化しちゃってるのかも、もうこの役を演じきらないといけないから、ここにいるって気がする・・・ヒトはどんな時に幸せなのだろう・・・か。とりあえずもうストーキングは辞める、もうタブーを犯してしまったしさ。もう新たなステージなんだよね・・第一幕は降りてしまったというわけ。こんな事言ってたでしょ、映画だけじゃなく、芸術も、人間も斜陽にさしかかっているんじゃないかって・・・」
アキ「そりゃそうだね・・ピークがあれば、いつかは落ちるでしょう、空を飛べばいつかは落ちる、人間は土を離れて生きてはいけないものなの、国を失ってまで生きているのが滑稽かどうかは知らないけど・・それ以前に人間は生きていくべきかどうかという問題を私たちはこの長い下り坂の中で抱え込んでるわけなのですが・・・こんな暑い初夏の日差し下で考えるべき問題ではないようですね、ではでは、ついてきてくれるヒトがいないと今後は寂しくなるかもね」
俊「ハハ、そう、ほんとこれから暇になるなぁ、何しようかな・・」
アキ「受験は?」
俊「理三」
アキ「じゃあ大変じゃん、医者になるの?」
俊「知らん、そうしろって言われたんだもん、実は家も金持ちでしてね、私立の医学部もいけるの、全然医者になんてなりたくないけど・・」
アキ「別に医者にならなきゃいけないわけでもないでしょうし、ごめん行かなきゃ」
俊「さよなら」
アキ「メールするね!あと! 5000円でやらせてあげてもいいよ」」
http://aimp.ru/index.php?do=download
itunesよりも軽くて、たしかに音がモニターっぽい音です。ロシア製というのも、何か心をくすぐる・・・
4 first one
アキ(翌日もメールチェックをしているとあそこは俺達の島なんだ、勝手に活動は許さねぇみたいな、ヤクザ漫画の読みすぎみたいな野郎からメッセージが入ってると同時に(彼らはまさかまだナイフを持って変なダンスを踊りたがっているのか?)めぼしいのが2通来ていた。一つは自殺志願者ではないけれど、何か面白そうだから自分も参加したいというもの。もう一つはこれはホンモノだった。近くに住んでるので、もししたらこの学校のヤツかもしれん、そうすると・・ちょっと困った事になる・・私の優等生キャラに傷がつくし・・ちゃんと秘密が守れそうなヒトなのか、それとキチガイさんじゃないかどうかを確認するためにちょっとメールをかわしてみる。スタッフ参加希望のほうは、まだ準備段階なので待機してもらうことにした。夏休み前の最後の模試が終わって、あとは天王山を登るのみ、うつむいてばかりで背骨が曲がっていた生徒たちも、夏が近づいているということを本能的に感知しだした。そして校舎は妙な静けさに包まれている・・・午前中授業やらなんやらで授業は殆どなくなってるからと同時に、そろそろ、学校に来ないで家で勉強したほうがいいという事に気づいた者が何人か引きこもりだした。そして誰しも、実はここにいる300人ほどの同級生たちが実は自分たちを奈落の底へ突き落とす悪魔なんだということを感じだしていた・・だんだんオンカロみたいな静けさを手に入れだしたのはそれが理由の一つである・・
私はといえばナナからもらった臨時収入でハンズでスプレーとペンキ、強力なノリ、コンクリート、パネルなどを買って、しっかりしたストリートアートをやる準備を整えた、題材はピエタのヌードである。ミケランジェロはホモだったのに、なんで世界で一番カワイイマリアを彫ったのかまったく謎である、それと西洋の美人の基準はギリシャ時代からあんまり変わらないのに、日本の美人の基準は変わりまくるのは一体何故なんだろう、中国ですら一貫していた、最近はどこの世界もルネサンス基準で美しさのヒエラルキーを作っているけど・・・ピエタのイエスは道みたって12才くらいだし、マリアは3メートルくらいあるゴリアテのような美少女である。ピエタからドレープをはぎ取るとその不思議な感じがわかるに違いない、ダヴィデの頭はでかすぎるのもそうだけど、ミケランジェロのデフォルメ感というかマニエル感が21世紀の美的感覚の源流だと私は思う・・
数日後、あの自殺志願者と会うことになった、プーシキンと私は名付けたけど、プーシキンはやっぱり私の学校でしかも同学年だった。向こうも私がポスターを貼ってるのをたまたまみかけたらしい。今思えば軽率すぎた。文体とかを見ればある程度その人となりくらいはわかるほどに私も本は読んでいるので、プーシキンはちょっと頭がいかれているけど、まとめで危険はなさそうだし結構頭が良いということがわかった。自殺志願者にしては非常にまともだ・・・。駅前の喫茶店で待ち合わせだ、私はカネがかからない公園がいいと言ったのに、おごるからコーヒーを飲もうとむこうの注文である。私は制服で行った、制服シャツ、薄手のパーカー、超ミニスカ、スポーツタイツ(スパッツともいう)、生足、くるぶしソックス、赤のオールスター、もしくはドクターマーチン、やや伸びすぎの毛先をパーマで散らしたショートカットボブ、皮のアディダスのメッセンジャーバッグ、ひきこもりになってからのスタイルはだいたいこれである。ちなみに実は身長170なので近くで見ると背が高い、そして忘れてた、ソニーのカメラ)
プーシキン「こんにちわ」
アキ「やぁやぁ・・もう回してるけど大丈夫?」
プーシキン「大丈夫です、隠し撮りじゃなくていいんですか?お店・・」
アキ「知らない、ダメだったら出ればいいじゃないか、やっぱどこかであった事あるよね」
プーシキン「あります、実は何百回も、別に隠してもしょうがないんだけど、おれストーカーですよ、水澤アキの」
アキ「へぇ・・水澤アキのね・・」
私達が待ち合わせしたのはちょっと高級感のある喫茶店だ、チェーン店じゃない。
ストーカー「ラテのミディアムですよね、砂糖いいです。それとクロワッサン、おれはアイスカフェモカ」
アキ「ここ始めてだっけな?」
ストーカー「一回きたことありますよ、ほらあの中絶事件の前のデートの時に」
アキ「あぁ、詳しいねぇさすがに、勝手に事件化されてるけど」
ストーカー「ストーカーにとってはフォロワーの妊娠、中絶は大事件ですよ」
アキ「フォロワーっていうの?」
ストーカー「ストーキング用語です、本当は受け身でfollowedですけど、ストーキングハイってのがありましてね、だんだん自分が追われてるいるような気がするんですよ、ちくしょう今日も外出しやがった、家にいろよ面倒くさいなぁ、またおれも行かなきゃいけないじゃないかってふうに、それでだんだんフォロワーが嫌いになってくるんですよ、お前がいなければもっと自由時間が増えるのに、と思ってね、ストーキングブルーです、そんな段階はもうとっくに超えましたけど」
アキ「ふぅん・・・盗聴とかもやってるの?」
ストーカー「それは邪道です、ストーキングはアナログじゃないと、カメラも禁止です、パパラッチや芸能人のファンとストーキングは全然違うんです、こっちは何でもない素人を追っているんですから、ある意味純粋芸術です。写真に取るより裸眼で見て記憶する、車もダメ、ストーキングの名前通り、足音ってのがストーキングのキーファクターなんですよ、足音、見られてしまうストーカーは初心者です、ストーカーは音だけの存在、今日みたいに会合をしてしまうのは最悪のタブーです」
アキ「誰が決めてるの?ストーキング業界のルール?」
ストーカー「自分です、自分ルール。それが一番強力な法だから、憲法は破れても自分ルールは破れないですからね」
アキ「ふむふむ、なんでタブーを破ろうと思ったの?」
ストーカー「わからないです、別におれは君のためなら死ねるとか言うような梶原一騎みたいなヤツだったら、ストーキングしてないですからね、そうじゃない・・・もう正直、水澤アキが好きなのかどうかもさっぱりわからないんですよね、スランプですよね。だからこう・・なにか一回会って見て、化学変化を期待してるんです」
アキ「ストーカーっていうとやっぱタルコフスキーって感じが私はするな、ゾーーーーーンに行きたいんでしょ?私のこのカメラの名前もそれからとってストーカーなんだけど」
ストーカー「あれは・・・まぁストーキングのバイブルみたいなものです、確かに。映画ってのもストーキングに近いんじゃないですか、ほらアンタゴニストの人生をカメラでずっと追っていくんでしょ、その恥や私生活や苦悩まで。何も隠さずにさらけ出していく。ずっとついていって、ある場面では近づきすぎて融合してみたくなったり、突き放してみたり。追っていくっていう行為、小説でもなんでも、それは楽しいんですよ、ストーカーがなんでフォロワーとコンタクトしたくないかって理由もそれでわかるでしょ?そこは超えちゃいけない一線なんですよ、幻想と・・現実っていうか?なんというか、それの一線・・・こう、もっとくだけた喋り方でいい?」
アキ「全然いいよ、映画なんだし」
ストーカー「ありがと、慣れてないから敬語、飲んでよ、冷めちゃうよ」
アキ「そうだね、カメラ置こう、このカメラは私の特製で・・・て知ってるのか」
ストーカー「ハンドステディカムでしょ、ボディはソニーだけどレンズもライカに変えたし、フォーカス系の機械を全摘、マイクと配線ジャックを全部取り替えて、サスペンションキットはお手製、メモリはクラウドメモリ・・」
アキ「そう、原子力電池が欲しかったんだけど、民間では使えないんだよね。カメラって侍でいう日本刀だし・・一人っきりになったときに一緒に死んでくれるのはこいつだけだからさ・・・でもやっぱスタッフに頼めば良かったかな。メールで来たんだ手伝ってみたいって。でも知らない奴がいると深刻な話はしにくいかなと思ってね」
ストーカー「全然気にしないよ、そんなの」
アキ「ストーカーさんからみて・・」
ストーカー「工藤俊一」
アキ「俊作じゃなくて?仮名?」
俊一「じゃあ仮名ってことで」
アキ「ストーカーさんからみて私は最近どう?」
俊一「充実してるんじゃないですか、ほらあのピエタだってけっこう上手くいってるし、成績は優秀だし。一日8時間も寝て肌のハリも健康状態もいい。中絶の後の生理不順も無くなったし、経済的には厳しいけど本人はまったく気にしてないし」
アキ「すげぇなぁ、パーソナルトレーナーみたい、ちょっとした方針の発表だけどさ・・カメラがあるからってこぉ、間をつなぐようにしゃべらなくてもOKだよ、後でどうせ編集するから。・・私の方からいつ自殺しますか、とか方法は?とか聞くつもりはないんだ、自殺ってコトバにはすでにノイズがつきすぎてる気がするなぁ、なんか新しい名詞を考えよう・・ウル、でどうですか?」
俊「いいんじゃないですか、っていうか水原アキには常にYESマンですよ」
アキ「そうか。ウルについてはやり方も日時も一切こっちは口を挟まないけど、なるべく決行の時は呼んでほしいな、その瞬間ってのを、みんな見てみたいものじゃない、実際に全部使うかどうかはわかんないけど、でもその決行の瞬間だけを見てもつまんない。甲子園と同じでさ、試合だけみてもそれほど感動しないけど、その学校のチームを三年間追っていってこういうドラマがあって、こういう人間関係があってっていうのを追っていくほうが楽しいよね、それをやっているのがスポーツ漫画っていうジャンルだものね。だから工藤君って人間を少しは撮りたいよね、今までもある程度取れたけどさ。工藤くんがストーキングしてる水澤アキについては、これはいくらでも情報は入れられるわけだから、了解した?」
俊「oui、最近フランス語勉強してるんだよね、なんで?」
アキ「英語はある程度出来るようになったし、もっと自然でくだけた英語をしゃべろうと思ったら海外に行くしかないけど、別にアメリカ人やイギリス人が喋ってる英語が唯一正解だとは思わないから、英語を教えてる立場にいる連中は、正しい英語があると信じてるけど、そんなわけないじゃんね、英語が国際語なら、日本英語やベラルーシ英語やロシア英語が、つまり方言が生まれるに決まってるもの、そういう風に言語は離合集散していくものなんだよね、バベルの塔にかかわらず。見ているサウンドスケープやライフスケープが違うんだもん・・」
俊「・・・フランス語を始めた理由になってないけど」
アキ「あぁ・・・まぁ・・・なんだろ、かっこつけたかったからかな。ほらある種の演劇をやってるじゃん、優等生キャラの水澤アキを、優等生の彼女は中国語じゃなくてドイツ語かフランス語をやってるべきだよね。中国語の本を呼んでたら中国人なのかなって思われてしまうかもでしょ、フランス語の場合はその気遣いはない、インテリのかっこ良さじゃん、フランス文学って女向けだし、まぁ近代文学が暇な貴族の女の子向けなんだけどさ・・・」
俊「な~るほど・・、受験勉強もほぼ高2で終わらしちゃったもんね、主要大学の過去問ほぼ暗記してさ、英語はTOEICもTOEFLも海外留学レベルだし・・・やや数学がニガテってくらい」
アキ「ニガテっていうよりは・・なんだろう私は天才じゃないっがわかってるからやる気が出ないんだよね。私はどう宙返りしてもオイラーの定理を自分で考え出せるとは思えないもの、神の啓示でも降りてこない限り、そりゃ定理を使って大学受験レベルの問題を解くことはできるよ、でもそれって数学でも何でもないじゃんね、工藤くんは勉強出来る方?」
俊「俊って呼んで下さい、工藤君ってよばれると病院に来たみたい・・勉強は・・まぁ文系理系に別れる前はずっと一位だったんだけど、他人には全然興味ないんだよなぁ、最初はほら、優等生はそういうものを気にするものだと思って猛勉強して注目してもらおうとか、普通の恋愛中毒がやるような愚行をやってたんですよ、特にその、前のバージョンの水澤アキに対しては・・・完全に無視されましたけど。ストーカーに返信するのは、今のバーションの水澤アキになってからだから」
アキ「あっそうだったかも、工藤俊作みたいな名前ってのを少しだけ見た気がする、あぁ!そうだったんだ、なんで私みたいなやつに戦いを挑んでくるんだろうって思ってた、だって学校のテストの順位なんて意味ないじゃん、最終的には・・相当の暇人なんだって思ってたら・・なるほどなぁ。その服装とか髪型だって私がこういうのがいいっていつか口に出したのそのままだもんね、さすがに整形はしなかったようだけど」
俊「予算の問題です、奥二重なんて無理ですよ、それと死んでるヤツがいいってのもまぁ今のところ無理、ウルによって可能になるかもですけど。もしウルになったら好きになりますか?」
アキ「う~~ん・・・たぶんならないだろうね。というか誰かを好きになるっていう才能が欠落してるかもね、記憶喪失によるものなのか、生まれつきなのか知らないけど、特にある個人を永久に好きになるっていう、純愛純血主義には向いてないんだよね・・ウルは名詞としても使えるんだな、複数形はウルルだね・・ところで世界についてはどう思います?」
俊「えっ何?」
アキ「世界、world , le monde 私達を取り巻いてるこれ」
俊「世界・・・別に教科書的な答えを期待してないよね?」
アキ「というと?」
俊「環境問題が、貧困問題が云々。ほら論文で慣れてしまってるじゃん、環境問題は国連がリーダーシップをもっと発揮して、迅速な解決策を取るべきである、人類の協力が不可欠である、的な、論文だとこれで9割。国連がリーダーシップ!そんな事小学生でも信じないのに・・、COPに反対する国家は女子供まで全員抹殺すべし、なんて書いたら0点だしさ」
アキ「そう思ってる?」
俊「いや・・正直なところどうでもいい、セカイなど・・・人類も。おれが生きてる間には直接かかわらないからいいとかそういう次元でなく・・結局大人だって偉い人間だって、こういう論文と同じような事を言って結局は何もしないし、何か解決するとも思ってないのにお茶を濁すのを心得てるわけだし・・・60年代が終わってから、コトバにするけどなんにもしないってことに慣れすぎてしまったよね・・人間は・・・死ぬ時は死ぬ、それだけだよ・・・セカイか・・・そうだなぁ・・セカイね。セカイ、別にそういう人類の問題がセカイの意味するところじゃないものね、このセカイについて・・・自然とか空間とか・・・」
アキ「別に答えを探さないでいいよ、時間はいくらでもあるわけじゃないけど俊のコントロールできる幅が少しはあるわけだし、ウルをするかしないかも、強制はしないから、別に私はそれに特別な興味がある、アレなヒトではないわけだし、ウィーンアクショニスト的なスキャンダルを期待してるわけでもなし・・ちょっとした思いつきの企画なんだから、でもあと何回かインタヴューしたいし、どっか外にも行こうね、自分のストーカーと話すのって新鮮だもん。特に俊の過去を少しはカバーしとかないと、クロノロジカルに順撮りしていくつもりはないけどさ」
俊「う~ん、今あらためて思ったけど水澤アキってカワイイんだよな、めがくりくりのアイドル系ではないんだけどさ・・・つまり薬師丸じゃなくて原田知世タイプ。いわゆるあれだよ、すごい便利なコトバ、透明感。透明だったら気持ち悪いだけなのにね、人間の美しさは薄皮一枚だけであったって漱石も言ってるし・・・」
アキ「ミケランジェロがいうには、ピエタのマリアは、マリアっていう女は一度も汚れた事もないし、汚れたことを考えたことすら無いから、神様の恩恵でいつでも少女のような美しさらしいですよ、無茶苦茶いってるだけにも思えるけど・・私はどちらかといえば、pervert and rebelious womanだけど・・・前のバージョンではいわゆるやりまんだったし、中絶もしてるし、マスターベーションするほうだし・・・そうだね老いたマリアって見たことないよね、別にミケが勝手にそうしたんじゃなくて、マリアはそうなんだろうね、すっげぇ・・・やめとこ東方教会に叱られる。マリアはセックスシンボルだったのかなぁ・・修道院の連中はマリアで・・・それにしても古っ、原田知世って・・もう50近いんじゃないの?」
俊「だって最近の映画見ないじゃん、というかここ一年くらい映画なんて見てないじゃん」
アキ「嫌いなんですよ映画」
俊「映画監督のクセに・・」
アキ「映画はもう落ち目の映画だからさ、でもだいたい芸術の落ち目にはなんかそれほど有名でないけどすごくいい作品が生まれたりするんだよね、浮世絵でいうと、あの血まみれ芳年みたいな。団菊左が死んだのでは歌舞伎なんて見てらんないぜ、キューブリック、黒澤、タルコフスキーが死んだのではね」
俊「ジブリは見に行ってたじゃん」
アキ「あれは漫画映画だもん、それも・・何年前?もののけ姫でしょ・・・漫画映画ももぉだめだろうね・・っていうか始めっから漫画映画って無理があるんだよね、人件費がかかりすぎるもん・・・しかもそれほどまでやって結局漫画よりもどれほどよくなったかというとそれほど・・・まぁ音楽の力はあるだろうけどさ、結局漫画ナウシカが一番良かった気がするんだけどな・・・あるいはいくら3Dとか、映像技術が進歩しようが、360度の立体視が出来るようなものが開発されようが、結局語るべきものがなければ何の役にも立たないし、せいぜいやっぱりセックスゲームくらいにしかならないんだと思うな、本当に何かがあれば小説であれ、絵コンテレベルのレンダーでも・・・楽しいもん、売れるかどうかは知らないけどさ」
俊「まぁ・・360度立体視は結局現実と同じだもんな・・じゃあ現実でいいじゃんって感じもする・・まぁ世界遺産巡りとかしょーもないコンシューマー向けの映画が作られるんじゃないですか?・・映画である必要も全然無いけど」
アキ「そうだね・・・一体私たちはどんな時に幸せなんだろう?」
俊「petit princeが今季のNHKフランス語講座の教材ですもんね」
アキ「じゃあ今日はこれくらいにしとこうか、じゃあ・・・メールするね、コーヒーありがとう・・あっそうか、結局ついてくるんでしょ?」
二人は立ち上がって街へと出ていく。もう夏休み前のコントラストの激しい街並みだ・・
俊「・・でも一応今日はお別れです、さようなら。やっぱ実際話してみると色々発見があるよな、喋り方とか、表情のニュアンスとか、匂いとか」
アキ「ははは、魅力を失った?」
俊「いや、香水をつけていなくてもいい匂いがするんだなぁと思って。それにもぉなんか好きとか嫌いとかどうでもいい感じなんだよね、なんなんだろう。演劇化しちゃってるのかも、もうこの役を演じきらないといけないから、ここにいるって気がする・・・ヒトはどんな時に幸せなのだろう・・・か。とりあえずもうストーキングは辞める、もうタブーを犯してしまったしさ。もう新たなステージなんだよね・・第一幕は降りてしまったというわけ。こんな事言ってたでしょ、映画だけじゃなく、芸術も、人間も斜陽にさしかかっているんじゃないかって・・・」
アキ「そりゃそうだね・・ピークがあれば、いつかは落ちるでしょう、空を飛べばいつかは落ちる、人間は土を離れて生きてはいけないものなの、国を失ってまで生きているのが滑稽かどうかは知らないけど・・それ以前に人間は生きていくべきかどうかという問題を私たちはこの長い下り坂の中で抱え込んでるわけなのですが・・・こんな暑い初夏の日差し下で考えるべき問題ではないようですね、ではでは、ついてきてくれるヒトがいないと今後は寂しくなるかもね」
俊「ハハ、そう、ほんとこれから暇になるなぁ、何しようかな・・」
アキ「受験は?」
俊「理三」
アキ「じゃあ大変じゃん、医者になるの?」
俊「知らん、そうしろって言われたんだもん、実は家も金持ちでしてね、私立の医学部もいけるの、全然医者になんてなりたくないけど・・」
アキ「別に医者にならなきゃいけないわけでもないでしょうし、ごめん行かなきゃ」
俊「さよなら」
アキ「メールするね!あと! 5000円でやらせてあげてもいいよ」」
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