2012年3月10日土曜日

L'Ettranger  文字コンテ ep4 first

       aimp3 というのにオーディオプレーヤーを変えました
 http://aimp.ru/index.php?do=download
   itunesよりも軽くて、たしかに音がモニターっぽい音です。ロシア製というのも、何か心をくすぐる・・・


                           4 first one
 アキ(翌日もメールチェックをしているとあそこは俺達の島なんだ、勝手に活動は許さねぇみたいな、ヤクザ漫画の読みすぎみたいな野郎からメッセージが入ってると同時に(彼らはまさかまだナイフを持って変なダンスを踊りたがっているのか?)めぼしいのが2通来ていた。一つは自殺志願者ではないけれど、何か面白そうだから自分も参加したいというもの。もう一つはこれはホンモノだった。近くに住んでるので、もししたらこの学校のヤツかもしれん、そうすると・・ちょっと困った事になる・・私の優等生キャラに傷がつくし・・ちゃんと秘密が守れそうなヒトなのか、それとキチガイさんじゃないかどうかを確認するためにちょっとメールをかわしてみる。スタッフ参加希望のほうは、まだ準備段階なので待機してもらうことにした。夏休み前の最後の模試が終わって、あとは天王山を登るのみ、うつむいてばかりで背骨が曲がっていた生徒たちも、夏が近づいているということを本能的に感知しだした。そして校舎は妙な静けさに包まれている・・・午前中授業やらなんやらで授業は殆どなくなってるからと同時に、そろそろ、学校に来ないで家で勉強したほうがいいという事に気づいた者が何人か引きこもりだした。そして誰しも、実はここにいる300人ほどの同級生たちが実は自分たちを奈落の底へ突き落とす悪魔なんだということを感じだしていた・・だんだんオンカロみたいな静けさを手に入れだしたのはそれが理由の一つである・・
 
 私はといえばナナからもらった臨時収入でハンズでスプレーとペンキ、強力なノリ、コンクリート、パネルなどを買って、しっかりしたストリートアートをやる準備を整えた、題材はピエタのヌードである。ミケランジェロはホモだったのに、なんで世界で一番カワイイマリアを彫ったのかまったく謎である、それと西洋の美人の基準はギリシャ時代からあんまり変わらないのに、日本の美人の基準は変わりまくるのは一体何故なんだろう、中国ですら一貫していた、最近はどこの世界もルネサンス基準で美しさのヒエラルキーを作っているけど・・・ピエタのイエスは道みたって12才くらいだし、マリアは3メートルくらいあるゴリアテのような美少女である。ピエタからドレープをはぎ取るとその不思議な感じがわかるに違いない、ダヴィデの頭はでかすぎるのもそうだけど、ミケランジェロのデフォルメ感というかマニエル感が21世紀の美的感覚の源流だと私は思う・・

 数日後、あの自殺志願者と会うことになった、プーシキンと私は名付けたけど、プーシキンはやっぱり私の学校でしかも同学年だった。向こうも私がポスターを貼ってるのをたまたまみかけたらしい。今思えば軽率すぎた。文体とかを見ればある程度その人となりくらいはわかるほどに私も本は読んでいるので、プーシキンはちょっと頭がいかれているけど、まとめで危険はなさそうだし結構頭が良いということがわかった。自殺志願者にしては非常にまともだ・・・。駅前の喫茶店で待ち合わせだ、私はカネがかからない公園がいいと言ったのに、おごるからコーヒーを飲もうとむこうの注文である。私は制服で行った、制服シャツ、薄手のパーカー、超ミニスカ、スポーツタイツ(スパッツともいう)、生足、くるぶしソックス、赤のオールスター、もしくはドクターマーチン、やや伸びすぎの毛先をパーマで散らしたショートカットボブ、皮のアディダスのメッセンジャーバッグ、ひきこもりになってからのスタイルはだいたいこれである。ちなみに実は身長170なので近くで見ると背が高い、そして忘れてた、ソニーのカメラ)
プーシキン「こんにちわ」
アキ「やぁやぁ・・もう回してるけど大丈夫?」
プーシキン「大丈夫です、隠し撮りじゃなくていいんですか?お店・・」
アキ「知らない、ダメだったら出ればいいじゃないか、やっぱどこかであった事あるよね」
プーシキン「あります、実は何百回も、別に隠してもしょうがないんだけど、おれストーカーですよ、水澤アキの」
アキ「へぇ・・水澤アキのね・・」
私達が待ち合わせしたのはちょっと高級感のある喫茶店だ、チェーン店じゃない。
ストーカー「ラテのミディアムですよね、砂糖いいです。それとクロワッサン、おれはアイスカフェモカ」
アキ「ここ始めてだっけな?」
ストーカー「一回きたことありますよ、ほらあの中絶事件の前のデートの時に」
アキ「あぁ、詳しいねぇさすがに、勝手に事件化されてるけど」
ストーカー「ストーカーにとってはフォロワーの妊娠、中絶は大事件ですよ」
アキ「フォロワーっていうの?」
ストーカー「ストーキング用語です、本当は受け身でfollowedですけど、ストーキングハイってのがありましてね、だんだん自分が追われてるいるような気がするんですよ、ちくしょう今日も外出しやがった、家にいろよ面倒くさいなぁ、またおれも行かなきゃいけないじゃないかってふうに、それでだんだんフォロワーが嫌いになってくるんですよ、お前がいなければもっと自由時間が増えるのに、と思ってね、ストーキングブルーです、そんな段階はもうとっくに超えましたけど」
アキ「ふぅん・・・盗聴とかもやってるの?」
ストーカー「それは邪道です、ストーキングはアナログじゃないと、カメラも禁止です、パパラッチや芸能人のファンとストーキングは全然違うんです、こっちは何でもない素人を追っているんですから、ある意味純粋芸術です。写真に取るより裸眼で見て記憶する、車もダメ、ストーキングの名前通り、足音ってのがストーキングのキーファクターなんですよ、足音、見られてしまうストーカーは初心者です、ストーカーは音だけの存在、今日みたいに会合をしてしまうのは最悪のタブーです」
アキ「誰が決めてるの?ストーキング業界のルール?」
ストーカー「自分です、自分ルール。それが一番強力な法だから、憲法は破れても自分ルールは破れないですからね」
アキ「ふむふむ、なんでタブーを破ろうと思ったの?」
ストーカー「わからないです、別におれは君のためなら死ねるとか言うような梶原一騎みたいなヤツだったら、ストーキングしてないですからね、そうじゃない・・・もう正直、水澤アキが好きなのかどうかもさっぱりわからないんですよね、スランプですよね。だからこう・・なにか一回会って見て、化学変化を期待してるんです」
アキ「ストーカーっていうとやっぱタルコフスキーって感じが私はするな、ゾーーーーーンに行きたいんでしょ?私のこのカメラの名前もそれからとってストーカーなんだけど」
ストーカー「あれは・・・まぁストーキングのバイブルみたいなものです、確かに。映画ってのもストーキングに近いんじゃないですか、ほらアンタゴニストの人生をカメラでずっと追っていくんでしょ、その恥や私生活や苦悩まで。何も隠さずにさらけ出していく。ずっとついていって、ある場面では近づきすぎて融合してみたくなったり、突き放してみたり。追っていくっていう行為、小説でもなんでも、それは楽しいんですよ、ストーカーがなんでフォロワーとコンタクトしたくないかって理由もそれでわかるでしょ?そこは超えちゃいけない一線なんですよ、幻想と・・現実っていうか?なんというか、それの一線・・・こう、もっとくだけた喋り方でいい?」
アキ「全然いいよ、映画なんだし」
ストーカー「ありがと、慣れてないから敬語、飲んでよ、冷めちゃうよ」
アキ「そうだね、カメラ置こう、このカメラは私の特製で・・・て知ってるのか」
ストーカー「ハンドステディカムでしょ、ボディはソニーだけどレンズもライカに変えたし、フォーカス系の機械を全摘、マイクと配線ジャックを全部取り替えて、サスペンションキットはお手製、メモリはクラウドメモリ・・」
アキ「そう、原子力電池が欲しかったんだけど、民間では使えないんだよね。カメラって侍でいう日本刀だし・・一人っきりになったときに一緒に死んでくれるのはこいつだけだからさ・・・でもやっぱスタッフに頼めば良かったかな。メールで来たんだ手伝ってみたいって。でも知らない奴がいると深刻な話はしにくいかなと思ってね」
ストーカー「全然気にしないよ、そんなの」
アキ「ストーカーさんからみて・・」
ストーカー「工藤俊一」
アキ「俊作じゃなくて?仮名?」
俊一「じゃあ仮名ってことで」
アキ「ストーカーさんからみて私は最近どう?」
俊一「充実してるんじゃないですか、ほらあのピエタだってけっこう上手くいってるし、成績は優秀だし。一日8時間も寝て肌のハリも健康状態もいい。中絶の後の生理不順も無くなったし、経済的には厳しいけど本人はまったく気にしてないし」
アキ「すげぇなぁ、パーソナルトレーナーみたい、ちょっとした方針の発表だけどさ・・カメラがあるからってこぉ、間をつなぐようにしゃべらなくてもOKだよ、後でどうせ編集するから。・・私の方からいつ自殺しますか、とか方法は?とか聞くつもりはないんだ、自殺ってコトバにはすでにノイズがつきすぎてる気がするなぁ、なんか新しい名詞を考えよう・・ウル、でどうですか?」
俊「いいんじゃないですか、っていうか水原アキには常にYESマンですよ」
アキ「そうか。ウルについてはやり方も日時も一切こっちは口を挟まないけど、なるべく決行の時は呼んでほしいな、その瞬間ってのを、みんな見てみたいものじゃない、実際に全部使うかどうかはわかんないけど、でもその決行の瞬間だけを見てもつまんない。甲子園と同じでさ、試合だけみてもそれほど感動しないけど、その学校のチームを三年間追っていってこういうドラマがあって、こういう人間関係があってっていうのを追っていくほうが楽しいよね、それをやっているのがスポーツ漫画っていうジャンルだものね。だから工藤君って人間を少しは撮りたいよね、今までもある程度取れたけどさ。工藤くんがストーキングしてる水澤アキについては、これはいくらでも情報は入れられるわけだから、了解した?」
俊「oui、最近フランス語勉強してるんだよね、なんで?」
アキ「英語はある程度出来るようになったし、もっと自然でくだけた英語をしゃべろうと思ったら海外に行くしかないけど、別にアメリカ人やイギリス人が喋ってる英語が唯一正解だとは思わないから、英語を教えてる立場にいる連中は、正しい英語があると信じてるけど、そんなわけないじゃんね、英語が国際語なら、日本英語やベラルーシ英語やロシア英語が、つまり方言が生まれるに決まってるもの、そういう風に言語は離合集散していくものなんだよね、バベルの塔にかかわらず。見ているサウンドスケープやライフスケープが違うんだもん・・」
俊「・・・フランス語を始めた理由になってないけど」
アキ「あぁ・・・まぁ・・・なんだろ、かっこつけたかったからかな。ほらある種の演劇をやってるじゃん、優等生キャラの水澤アキを、優等生の彼女は中国語じゃなくてドイツ語かフランス語をやってるべきだよね。中国語の本を呼んでたら中国人なのかなって思われてしまうかもでしょ、フランス語の場合はその気遣いはない、インテリのかっこ良さじゃん、フランス文学って女向けだし、まぁ近代文学が暇な貴族の女の子向けなんだけどさ・・・」
俊「な~るほど・・、受験勉強もほぼ高2で終わらしちゃったもんね、主要大学の過去問ほぼ暗記してさ、英語はTOEICもTOEFLも海外留学レベルだし・・・やや数学がニガテってくらい」
アキ「ニガテっていうよりは・・なんだろう私は天才じゃないっがわかってるからやる気が出ないんだよね。私はどう宙返りしてもオイラーの定理を自分で考え出せるとは思えないもの、神の啓示でも降りてこない限り、そりゃ定理を使って大学受験レベルの問題を解くことはできるよ、でもそれって数学でも何でもないじゃんね、工藤くんは勉強出来る方?」
俊「俊って呼んで下さい、工藤君ってよばれると病院に来たみたい・・勉強は・・まぁ文系理系に別れる前はずっと一位だったんだけど、他人には全然興味ないんだよなぁ、最初はほら、優等生はそういうものを気にするものだと思って猛勉強して注目してもらおうとか、普通の恋愛中毒がやるような愚行をやってたんですよ、特にその、前のバージョンの水澤アキに対しては・・・完全に無視されましたけど。ストーカーに返信するのは、今のバーションの水澤アキになってからだから」
アキ「あっそうだったかも、工藤俊作みたいな名前ってのを少しだけ見た気がする、あぁ!そうだったんだ、なんで私みたいなやつに戦いを挑んでくるんだろうって思ってた、だって学校のテストの順位なんて意味ないじゃん、最終的には・・相当の暇人なんだって思ってたら・・なるほどなぁ。その服装とか髪型だって私がこういうのがいいっていつか口に出したのそのままだもんね、さすがに整形はしなかったようだけど」
俊「予算の問題です、奥二重なんて無理ですよ、それと死んでるヤツがいいってのもまぁ今のところ無理、ウルによって可能になるかもですけど。もしウルになったら好きになりますか?」
アキ「う~~ん・・・たぶんならないだろうね。というか誰かを好きになるっていう才能が欠落してるかもね、記憶喪失によるものなのか、生まれつきなのか知らないけど、特にある個人を永久に好きになるっていう、純愛純血主義には向いてないんだよね・・ウルは名詞としても使えるんだな、複数形はウルルだね・・ところで世界についてはどう思います?」
俊「えっ何?」
アキ「世界、world , le monde 私達を取り巻いてるこれ」
俊「世界・・・別に教科書的な答えを期待してないよね?」
アキ「というと?」
俊「環境問題が、貧困問題が云々。ほら論文で慣れてしまってるじゃん、環境問題は国連がリーダーシップをもっと発揮して、迅速な解決策を取るべきである、人類の協力が不可欠である、的な、論文だとこれで9割。国連がリーダーシップ!そんな事小学生でも信じないのに・・、COPに反対する国家は女子供まで全員抹殺すべし、なんて書いたら0点だしさ」
アキ「そう思ってる?」
俊「いや・・正直なところどうでもいい、セカイなど・・・人類も。おれが生きてる間には直接かかわらないからいいとかそういう次元でなく・・結局大人だって偉い人間だって、こういう論文と同じような事を言って結局は何もしないし、何か解決するとも思ってないのにお茶を濁すのを心得てるわけだし・・・60年代が終わってから、コトバにするけどなんにもしないってことに慣れすぎてしまったよね・・人間は・・・死ぬ時は死ぬ、それだけだよ・・・セカイか・・・そうだなぁ・・セカイね。セカイ、別にそういう人類の問題がセカイの意味するところじゃないものね、このセカイについて・・・自然とか空間とか・・・」
アキ「別に答えを探さないでいいよ、時間はいくらでもあるわけじゃないけど俊のコントロールできる幅が少しはあるわけだし、ウルをするかしないかも、強制はしないから、別に私はそれに特別な興味がある、アレなヒトではないわけだし、ウィーンアクショニスト的なスキャンダルを期待してるわけでもなし・・ちょっとした思いつきの企画なんだから、でもあと何回かインタヴューしたいし、どっか外にも行こうね、自分のストーカーと話すのって新鮮だもん。特に俊の過去を少しはカバーしとかないと、クロノロジカルに順撮りしていくつもりはないけどさ」
俊「う~ん、今あらためて思ったけど水澤アキってカワイイんだよな、めがくりくりのアイドル系ではないんだけどさ・・・つまり薬師丸じゃなくて原田知世タイプ。いわゆるあれだよ、すごい便利なコトバ、透明感。透明だったら気持ち悪いだけなのにね、人間の美しさは薄皮一枚だけであったって漱石も言ってるし・・・」
アキ「ミケランジェロがいうには、ピエタのマリアは、マリアっていう女は一度も汚れた事もないし、汚れたことを考えたことすら無いから、神様の恩恵でいつでも少女のような美しさらしいですよ、無茶苦茶いってるだけにも思えるけど・・私はどちらかといえば、pervert and rebelious womanだけど・・・前のバージョンではいわゆるやりまんだったし、中絶もしてるし、マスターベーションするほうだし・・・そうだね老いたマリアって見たことないよね、別にミケが勝手にそうしたんじゃなくて、マリアはそうなんだろうね、すっげぇ・・・やめとこ東方教会に叱られる。マリアはセックスシンボルだったのかなぁ・・修道院の連中はマリアで・・・それにしても古っ、原田知世って・・もう50近いんじゃないの?」
俊「だって最近の映画見ないじゃん、というかここ一年くらい映画なんて見てないじゃん」
アキ「嫌いなんですよ映画」
俊「映画監督のクセに・・」
アキ「映画はもう落ち目の映画だからさ、でもだいたい芸術の落ち目にはなんかそれほど有名でないけどすごくいい作品が生まれたりするんだよね、浮世絵でいうと、あの血まみれ芳年みたいな。団菊左が死んだのでは歌舞伎なんて見てらんないぜ、キューブリック、黒澤、タルコフスキーが死んだのではね」
俊「ジブリは見に行ってたじゃん」
アキ「あれは漫画映画だもん、それも・・何年前?もののけ姫でしょ・・・漫画映画ももぉだめだろうね・・っていうか始めっから漫画映画って無理があるんだよね、人件費がかかりすぎるもん・・・しかもそれほどまでやって結局漫画よりもどれほどよくなったかというとそれほど・・・まぁ音楽の力はあるだろうけどさ、結局漫画ナウシカが一番良かった気がするんだけどな・・・あるいはいくら3Dとか、映像技術が進歩しようが、360度の立体視が出来るようなものが開発されようが、結局語るべきものがなければ何の役にも立たないし、せいぜいやっぱりセックスゲームくらいにしかならないんだと思うな、本当に何かがあれば小説であれ、絵コンテレベルのレンダーでも・・・楽しいもん、売れるかどうかは知らないけどさ」
俊「まぁ・・360度立体視は結局現実と同じだもんな・・じゃあ現実でいいじゃんって感じもする・・まぁ世界遺産巡りとかしょーもないコンシューマー向けの映画が作られるんじゃないですか?・・映画である必要も全然無いけど」
アキ「そうだね・・・一体私たちはどんな時に幸せなんだろう?」
俊「petit princeが今季のNHKフランス語講座の教材ですもんね」
アキ「じゃあ今日はこれくらいにしとこうか、じゃあ・・・メールするね、コーヒーありがとう・・あっそうか、結局ついてくるんでしょ?」
二人は立ち上がって街へと出ていく。もう夏休み前のコントラストの激しい街並みだ・・
俊「・・でも一応今日はお別れです、さようなら。やっぱ実際話してみると色々発見があるよな、喋り方とか、表情のニュアンスとか、匂いとか」
アキ「ははは、魅力を失った?」
俊「いや、香水をつけていなくてもいい匂いがするんだなぁと思って。それにもぉなんか好きとか嫌いとかどうでもいい感じなんだよね、なんなんだろう。演劇化しちゃってるのかも、もうこの役を演じきらないといけないから、ここにいるって気がする・・・ヒトはどんな時に幸せなのだろう・・・か。とりあえずもうストーキングは辞める、もうタブーを犯してしまったしさ。もう新たなステージなんだよね・・第一幕は降りてしまったというわけ。こんな事言ってたでしょ、映画だけじゃなく、芸術も、人間も斜陽にさしかかっているんじゃないかって・・・」
アキ「そりゃそうだね・・ピークがあれば、いつかは落ちるでしょう、空を飛べばいつかは落ちる、人間は土を離れて生きてはいけないものなの、国を失ってまで生きているのが滑稽かどうかは知らないけど・・それ以前に人間は生きていくべきかどうかという問題を私たちはこの長い下り坂の中で抱え込んでるわけなのですが・・・こんな暑い初夏の日差し下で考えるべき問題ではないようですね、ではでは、ついてきてくれるヒトがいないと今後は寂しくなるかもね」
俊「ハハ、そう、ほんとこれから暇になるなぁ、何しようかな・・」
アキ「受験は?」
俊「理三」
アキ「じゃあ大変じゃん、医者になるの?」
俊「知らん、そうしろって言われたんだもん、実は家も金持ちでしてね、私立の医学部もいけるの、全然医者になんてなりたくないけど・・」
アキ「別に医者にならなきゃいけないわけでもないでしょうし、ごめん行かなきゃ」
俊「さよなら」
アキ「メールするね!あと! 5000円でやらせてあげてもいいよ」」