2012年3月13日火曜日

L'Ettranger  文字コンテ ep5 sentence

                            5  sentence
俊(アキは雑踏の中に消えていった、今日はアルバイトの日だ、明日は休日で図書館にいるはず。アキに負けるわけにはいかないと猛勉強した結果、というよりもアキが図書館で勉強してるときに他にやることがなかったので(アキは生活のほとんどを本の中で過ごしている)こっちも勉強をやるはめになった。結果数学が好きだったのもあってかなり出来るほうになってしまった・・・世間それほど騒がれるほどには、大学受験など難しいものではない、受験勉強でキレて親をナイフでミンチにするなんてのは、実際にやってみたことのないヒトの勝手の想像である、たとえニュースでそんなものがあったとしても、そりゃニュースで探せば何でも見つかるだろう、例外はどんな統計にもあるものだ。そりゃ運ってものがあるけれど・・・どうするか・・そう・・医者になりたいわけでもなんでもない、それをさっき自分で口にしてやっとわかった。何か道を失ってしまった。結局のところおれは何がしたいんだったっけ、何が楽しかったのだっけ、ヒトはどんな時に幸せなんだろう・・・そんな宮沢賢治風の問題を抱えたって答えなんて出るわけもないんだけど・・
 家にも帰りたくない、アキの生活スタイルがうつってしまった、家にいると落ち着かないし、集中もできない。テレビも映画も何をしてても楽しくない。くだらなすぎる気がして、はぁ、勉強やるか・・・他にやることが無くなってしまったし。誰かが言ってた、市場が提供するものは、大衆に迎合するあまりもはや嘲弄の域に達している・・・確かにそうなのかも。しかし誰が誰を嘲笑っている?人形使いすらも、人形を操る意味を失っている、神様ですら人間を作った意味を失っている、もはや誰も神を崇めたりしないもの・・神は自分を崇めて欲しくて人間を作った、いくら神様でもそんなやり方じゃ誰も本当には好きになってくれないということがわかりそうなもんだ、ヒトは自分に役に立つ人間を愛す、アキの受け売りだけど、ヒトは役に立たない神なんてもはや愛しはしない。神はサウルを王にしたことを悔やんだ、神でも悔やむとして・・・人間が何かを悔やまないなんて事があるのか?僕には、僕達には、人生がない。70億人も人口がいて70億の人生があるとは思えない、しかし・・・しかし?
 こういう時の人間に現代医学は何をすすめるかというと、教科書的には・・・スポーツと気晴らし、西洋文学的にはイタリアにでも静養に行かれてはいかかがです?ボルコンスキィ伯爵・・・そんなことできりゃ誰も苦労しないぜ、確かに三年くらい南の島に行けば何か違う人間になっているかもしれないけれど、ゴーギャンみたいに・・・それって誰か、別の人格だ。そして自然を大事にしようだの、仏教がどうだの、心の安定がどうだの言ってればいいさ・・・でもここまで来てしまったんだよ、文明は、それを無視して逃げたって仕方ない、アルルからゴッホは帰ってきたんだ。アルルは・・・ヒトをダメにする。楽園は人間をダメにする・・楽園から出てきたんだぜ・・おれたちは、自分の足で楽園から出てきたんだ。いや、たとえ追い出されたにせよ、楽園から出たんだ、もう楽園に帰る気は無い・・・、ウルのセカイには何があるんだろうか、そこは楽園なんだろうか?楽園だったら行きたくない・・
 ちょっとした実験精神でアキと直接会ってみて・・・まぁそのちょっとしたきっかけというのも結局それがおれの真実なのかもだけど・・・驚くほど心が揺さぶられた。何か寂しさとか不安とかが無くなるのかと思ったけれど・・むしろそれは強烈になっただけだった。アキがしょうもない人間だとかそうではなくて・・・むしろその反対だったから、ココロが動いてしょうがない・・・アキが死んだら、おれは死にたくなるだろうか・・違うな・・それは違う・・・むしろそれを望んでいる部分もいる・・・

 急に考えるのが嫌になった、図書館には河原のずっと真っ直ぐな道を自転車で飛ばす道と、駅前のバス通りを通る道がある、この暑さで排気ガスまみれでは目も当てられない、当然河原の自転車専用道路をぶっ飛ばしているのだけれど、ここはやたらに猫が多くて、何を食べているのかしれないけど、家族連れのニャンニャンがゴロゴロしている、それにしたって猫ってやつは何が嬉しくて都会に住んでいるのだろう、田舎は退屈なんだろうか・・・途中で曲がるのも嫌になった、そう・・海まで行こう。あと30キロ・・気晴らしとスポーツ・・・、考えないこと、考えずに眼の前の事に全力を尽くせ・・・それって逃げか?)
俊「それって逃げか?」
猫「・・・」
俊(猫って瞬きしないのか?)
猫「うにゃん(知らん)」
俊(猫は人間になんてならなくて良かったと思ってるか?楽園の住人か、お前も・・帰ってこい、前線へ・・・帰ってくるんだ、前線へ。生きるか死ぬかの前線へ・・
 よし全速力だ、死ぬまで全速力で走ってみる、自分ルール設定・・・)
俊「あぁあああああああ」
俊(およそ60キロ、たぶん、目測、太ももがぱんぱん・・・・・なんだ・・・急にセカイがスローに・・あっチェーンが絡まってる、そしてスポークに絡まり、後輪が急ブレーキ、当然前輪も、慣性の法則により、ニュートンは天才的だ、つまるところ上の人間は吹っ飛ばされて・・、宙返り・・・空・・空・・)
アキ「・・ところでセカイについてどう思う、私達をとりまいてる、これ」
俊(世界か・・空・・、セカイ・・・好きなのかもね、そう、好きなんだろうな・・神様もやっぱり人間に好かれたかったから媚をうってやがる・・ヒトは鳥だったのかもね、空がこんなに恋しいもの・・・、爬虫類だって空を飛んだよ・・昆虫だって・・死ぬのか?走馬灯は来ず・・)