2012年3月19日月曜日

L'Ettranger  文字コンテ ep9

 肌の質感が上手く出ません。人間の肌と彫刻の中間くらいにしたいのに。

BOPは最近落ち歌なんですね、スノースマイルがグサグサと精神力を奪う・・               


                                                  9 rien
 海里「30%ほどは実はもう完成してるんだ、まずロケットの設計、これは私の専門だから完全にOK、宇宙船については構造的な設計は終わってるけど、内部はまだ終わってないところがある。ホーマン軌道計算、待機軌道計算、着陸、データ理論的なシミュレーションは99%大丈夫。だってそれはもうNASAで何回も成功してるからね、そのデータをかっぱらって微調整するだけで大丈夫だった。ここまでは理論編ね、実践編、つまり工学的な実際のロケットや宇宙船はほぼ何一つ完成してません・・何か質問など?」
俊「核ロケットって・・・大丈夫なの?」
海里「何一つ大丈夫ではない、けど勘違いしてない?核分裂じゃなくて、核融合だよ、重水素による」
俊「核融合?」
海里「Nuclear fusion」
俊「いつそんな技術が完成してたの?」
海里「水爆は核融合だよ、私(たち)がもっとそれを・・実用化させることに成功した、クリーンな、ね?・・・ちなみに日本は火薬を製造することすら禁じられてる、花火の火薬を集めて手榴弾をつくったら犯罪です、民間の核融合なんて許可が出るわけない。というか・・・日本人ごときが宇宙開発することに世界中が反発するでしょうね、ちぇっ敗戦国のくせにいきがりやがってってさ。国際機関なんて未だにそんな感じだよ、水爆持っていいのは中国、アメリカ、フランス、イギリス、ソ連だけなんだってさ、もちろん核融合技術も」
アキ(海里の目の色の変化が私は立っている彼女の隣に座っていて直接その目を見れないのに何かオーラのようなもので感じられた・・そうか・・海里は人類の滅亡に有効な技術を作っちゃったんだな、海里の内部ってのは私が考えるよりももっともっと深刻なものなのかもしれない。アインシュタインがいなけりゃ原爆も作られなかったって信じてるバカもいることだし・・・とくにこの国に)
とも「うえぇ、宇宙船って自分のおしっこ飲むんだ・・私パスだな」
俊「おれもパス」
海里「どうせ一人乗りで私だけが行くのだから大丈夫、私だってさすがに他の人のも混ざってたらさすがにひるむけど・・うにゃ!どうせ水なんて原子のあつまりなんだから・・」
俊「じゃあうんこもどうせ原子の集まりだからって食べれるの?」
海里「ばか・・・私は宇宙にスカトロプレイに行くんじゃないよ、食べ物は最小限だから大丈夫、水は重いからやっかいなんだよ、火星までは約280日、一日4リットルで1トンだからさ・・・食べ物は凝縮食料でなんとか・・そりゃ燃料率は理想値よりもやや乖離するけど、ホーマン軌道にそって一番省エネで行く、それはこれからの行く貧乏宇宙探検者の参考にもなるだろうしさ。結局時代を動かすのは専門家じゃなくて、部外者なんだよ、ロケット理論の発明者であるツィオルフスキーは貧しくて耳の悪い中学教師だったというし、ライト兄弟はしがない自転車屋、アインシュタインは特許局の事務員・・・」
アキ「そしてユーラーは盲目である・・でも将来的にはやっぱりうんちをリサイクルするハメになるんじゃない?やりなよ、名前が残るかもよ、poo recycle machine Kairi s-1とか・・」
海里「やだよっ!ただでさえろくな形で名前が残りそうにないのに」
とも「私もアキに賛成」
海里「もぉな~にかんがえてんだよ!真面目にやってよ、第一誰がそんな技術研究するのさ、この飽食の時代に」
とも(海里はほんとに尊敬すべき天才ちゃんなのになんでこんなにいじめたくなるんだろぉ・・・開発されたらものすごい淫乱になるんじゃないかな)
俊「でもロケットはいいとして発射台は?」
海里「頭が痛いね・・・まぁなんとかむこうの友達とかも協力してくれるはずだから・・・だから、タテマエ上、自作の火星プローブとかにして、直前で切り替えて、有人飛行として飛ばすみたいな事しないと・・、もしどこも許可が取れなかったら、どっかヤクザな国家に核融合技術を提供するのと引換に・・」
アキ「重水素などどこに売ってるの?」
海里「ロケットのことは任せてくださってOK、なんとかなる、これはクリーンな核融合だからさ、イランや北朝鮮と裏で契約しなくても材料は運び込めるわけ。あっそれと核融合エンジンはブラックボックスにします、私以外は知らないようにする、もう漏れてしまってるけどね」
とも「プロジェクト名は?」
アキ「・・こういうのはぱっと思いつくのを待ったほうがいいんだよ、それまでは・・・終わりなき夜の旅でどうですか?」
俊「セリーヌ?」
とも「いろんな~し」
俊「予算は海里の1000万・・・場所は?」
海里「うちの別荘、といっても千葉だけど、そこに別荘というか、廃工場がある。うちの・・・B級戦犯が戦闘機を作ってた工場」
アキ「空襲されなかったの?」
海里「表面上は自転車工場だもん、地下ではジェットエンジンの研究やってたらしいけど、でも期待しちゃだめだよ。今ではほぼ酸化鉄の塊みたいなものだから」
とも「じゃあおじいちゃんの意思を継いでってことですか?」
海里「鬼畜米兵を殺すのが目的ではないからなぁ・・それに私自身アメリカに住んでた人生のほうが長いし・・言うほど悪い国じゃないよ、というか・・あれを一つの国っていうのは難しいね、ほんとうにアメリカ連邦なんだよ。あれが一つにまとまってるのがまったく不思議、南北戦争でバーラバラになるのが自然だったのに・・・ヤンキー(北軍)に全部染められたのかな?まぁ良い国では絶対無いけどね、良い国なんて無いもん、人間自体が・・まぁいいや」
とも「私もオカネ出すよ」
俊「遺産って・・・どれほどなの?」
とも「たぶん・・色んなものに化けてるから計算しづらいけど、現生にしたら一億五千くらい」
アキ「ミリオネーア i'm tired of being millionaire」
海里「せっかくだけどお断りします・・・、何か民間のバカな冒険野郎が宇宙を目指すっていう・・なんだろう、イメージが欲しいんだよね。NASAのバカみたいな試験なんか受けなくても宇宙を目指せるんだって。誰でも出来るんだって・・・、もぉ誰かに雇われて、予算を削られるのだけにビクビクしながら何かするのなんて絶対にいやだ、もううんざりしたでしょ?国民の血税をわけのわからん実験に使うなっていう・・民衆にもうんざり、そんなの生きてるって言えないもん・・」
アキ「そうだね、戦争が無いと文句を言うことしか出来ないからね、民衆ってやつはさ」
俊「からいね」
アキ「だって戦争になるとどこから出てきたのか、恐ろしい速度で技術進歩が進むじゃん、出せるんじゃねぇかよ予算!って気がしない?こんな国滅びてもいいから人類の為に何かしなよって思う・・」
とも「なんか今日機嫌悪いですか?」
アキ「いや・・、女の子の日じゃないよ」
アキ(本当だ、なんで私はこんなイライラしてるんだろう、海里をここまで追い込んだこの社会に腹が立ってるのかもしんない・・私が腹を立てるなんて、まだまだ作家として修行が足んないな、自分ってのが意識できないほど何かに入りこみたい・・デカルト的存在論を真っ向から否定するくらいに・・)
とも「素朴な疑問なんですけど、海里さん、誰かに狙われてるんじゃないですかそんな、すごい技術を脳みそに納めてたら、よく日本に帰ってこれましたね」
海里「あぁ・・そうだって事を直接は発表してないからね、私が言った事を、本当に理解して、つまりそれって・・あれ?そういう事になるんじゃないか?って考えが及ぶほどの人間は、そぉいないし、暴力で何かを解決しようって思う人間は、大抵ニュートン力学すらわかってないからね。真空でロケットが進む意味がわかってないでしょ?というか真空の意味さえわかってない、政治家はnatureの論文読まないからね、アイテル(ITER)所属だったりしたら、もしかしたら追われているかもしれないけど、私はまったくそれとは異なるところでやっていたから・・・」
とも「なるほど・・実は私もその真空の意味すらわかってない人の一味かもしれません・・事実さっきから海里さんの言ってる事は20%くらいしかわかんないし・・他の人はわかってるんですか?」
俊「70%」
アキ「85%、NFについてはほぼわかんない」
海里「全然大丈夫だって、慣性の法則がわかんなくても自転車には乗れるし、航空力学がわかんなくても飛行機には乗れるもの、量子力学がわかんなくたって核融合ロケットを作ることはできる、厳密に言えば誰一人、相対性理論や量子力学についてわかってはないんだもん・・・・あっそか!発射台問題は解決したかも、待って」
アキ(海里は何か思いついたらしく、バチバチ電脳を打ち始めた、もはや何も聞こえてない感じ、噂では聞いてたけど天才さんってやっぱこういう感じなのか、他の二人も同じ事を考えただろう、変な笑い顔で私たちは見つめ合った、この人アレなんですよね・・)
海里「・・そうだ、よしよし。古い慣習に縛られててはいけないよね、ごめん、これ全部書きなおす、水平発射ロケットにする。NFE(核融合エンジン)は質量が少ないから、大きなロケットにする必要が無いんだ、クラスターでもレイヤーでもなくていいんだね、そしたら普通の滑走路から飛べるじゃん♪」
アキ「あっ、私にもわかったよ、だから普通の音速戦闘機みたいなフォルムにするってわけでしょ」
海里「戦闘機というよりは爆撃機だけどね、そうそう、その通り。飛行機の形が変わったところで、物理シミュレーションのパラメータが変わるだけだから、設計だけやり直すね」
とも「なるべくかっこいいのがいいね」
アキ「ちょっと話は変わるけど俊もともちゃんも、夏休みはいいとして、学生生活もあるだろうし・・・人生ってやつもあるだろうから、あまり無理はしないでいいよ。私と海里は行く所まで行ってしまうからさ・・」
俊「受験もしないんだ?」
アキ「たぶん、別に高校卒業してすぐに大学はいらなきゃいけないなんてルールは無いわけだしさ、高校はほぼ後はテストだけ出れば単位とれてるし。海里はまぁ成功しようが失敗しようがあの世行きですし」
海里「ははは、でもどうせ遅かれ早かれみんな同じじゃないですか。死が永遠の別れであるなら、観測者が永久に存在する必要があるんだよ、実際にはそうではない、観測者も死に向かって違う速度で進んでるだけ」
アキ(これが相対性理論的世界観なのか!)
とも「乗りかかった船ですから私も最後までやります、高校はなるべく卒業しときたいけど・・親族関係が無いからなんとでもなります、そう経済的にもなんとでもなります」
とも(人生持て余してるからなぁ)
俊「おれもアキと同じ、テストだけ出れば卒業可能だから・・・大学はど~すっかなぁ・・」
とも「っていうか何単位で高校卒業できるかなんてちゃんと計算してるんですね、私オリエンテーションの時なんか完全にスイッチオフだったから・・」
アキ「実は三年の一学期までの単位で卒業出来るんだなこれが、特にうちの学校は進学校だから最終学年は選択単位ばっかりになるし」
とも「えぇいいなぁ・・うちはどうだかなぁ・・」
アキ「俊の家ってどんな感じなの?」
俊「中の上くらい・・BMW(ヴェーエムヴェー)だし、それほど厳しくはない、ただ親父がな・・」
アキ「頑固なの?」
俊「いや・・なんていうか・・殺し屋みたいな顔してるから、それにイタいヤツだから・・知らせないほうがいい」
とも「お仕事は?」
俊「船乗りみたいなもの」
海里「殺し屋みたいな顔した船乗りか、確かに私達とは肌が合いそうにないね、マッチョ嫌いだもん、核爆弾の時代にマッチョなんてマシンガンにboxer rebellionじゃん」
とも「ボクサーレベリオンって何?映画?」
アキ「義和団事件のことでしょ」
とも「ボクサーレベリオンって言うんだ!ダサッ!そりゃ勝てんわ・・」
アキ(時に私たちのファーストミーティングは海里の家で開かれた。また学習せずにあのレッドブックは私にアールグレイを出したのだけど俊だけにはかなり濃い目のコーヒーを出した。そういうルールなのか・・、結局また海里がインスタントコーヒーを作ってくれた。ともはアールグレイでもなんでも飲めるらしい、たぶん味音痴なんだ。こういう、顔立ちでくちびるがぽってりしてるタイプはたいがいそうだ、そしてやたら辛いものが好きだったりするの・・そして私みたいなのはたいがい偏食なんだ。そう、身長が高い人ってだいたい偏食なんだ。俊は苦いコーヒーは意が痛くなるから薄くしてもらっていた。ジュゴンはやたら若い男の子には優しい、なるほど私は嫌われていたのか、このトキに。確かに私は服装も雰囲気も内面も、淑女好みでは無かった。それでも私はこの家がすっかり気に入ってしまった、この古材を使った独特の安心感、黒っぽい材木、たぶん・・マツ?が放つ香り、そして海里の家独特の匂い、死の世界のボードレール的腐臭。海里がかけた全然マッチしないGorrilazの音楽。いい。)
海里「あぁ・・あと向こうから私の友達が一人来るかもしれない、でも・・たぶん・・・うん、ちょっと・・対人関係に問題がある子だから、みんなの前には姿を現さないだろうと思う、気にしないで」
俊「幽霊でも呼び寄せるのか?」
海里「ちゃうよ、でもとびっきり優秀だから」
アキ「じゃあどうやって仲良くなったの?」
海里「black box」
俊(昔からこいつは秘密主義者だったな、なんでもないことでもやたらと隠したがる・・ソ連技術者みたいな、特に失敗を)
とも「またつまんない質問していいですか、なんでそんな天才さんなのにメガネなんですか・・?目の手術って向こうではすごく進んでるっていうけど?」
海里「メガネが好きなんだよね、ほら・・これってサイボーグっぽくない?人間を拡張させる道具、だからサイボーグの歴史でメガネは重要な気がするんだよね。もちろん服ってのが一番はしりだけど」
とも「ほぉ~そうなんですか」
とも(やっぱり天才ちゃんは・・・)
アキ「ともかく説明はこれでおしまい、明日からはその戦犯の秘密工場にお泊まり会です」
海里「まず掃除だろうね、あと電気とか配線とか、ネットとか・・」
アキ「露骨に嫌な顔するな、そこの男手、明日はぜひとも必要なんだから」
俊「急に頭が痛くなるような予感が・・」
とも「どうやっていくんですか?電車?」
海里「私の車」
とも「あぁ免許持ってるんですか、さすがモータリゼーションの国」
アキ「っちゅうわけです、着替えなどもね、夜の12時ここ集合」
俊「遅っ・・はやっ?」
海里「深夜は道が空いてるからね」
とも(私は海里さんの目にちらっと赤い閃光を見た、あれは・・・スピードキチガイの目だ!どうせ地球の公転速度は秒速約30キロだとかなんとかごたくを並べるに違いないわ、いやだわ!)