2014年3月16日日曜日

コクリコ坂から 絵コンテ全集18

 上映中の映画についてはネタバレさせるのはまずいのであまりレヴューしないので、いい時期になったと思いましてコクリコについて描こうかなって感じです。


1963年が舞台のアニメなんですよね、つまり、駿氏の青春時代に最も近い、嘘のない話しです、企画脚本は駿ですから。自分の青春時代について息子に監督やらせるってのはこりゃあどういう気分なんですかね。
 ただ嘘のない企画を描くしか無いんだとIはちょっと経験上わかりました、まったく自分の中に何も無いコトを映画にしようとしても、どうしてもペラペラになる、吾郎さんは、自分のほぼ片親で育った経験が、メルのあの・・なんだろ、ドライで抑制の効いた感じを作る素材になったってわけです、そういうわけで、やっぱクリエイターは幸せに順風満帆に育ったらダメってことです、金持ちの芸術家がいないのはやっぱそういうわけなんでしょう、金持ちなら科学者とか、デザイナーのほうがいいでしょうね。



 吾郎は才能無い、ダメ。ってのが一般の反応みたいですけど、Iは全然そぉは思わないですね、吾郎氏は普通の映画監督って言われる連中よりは何倍も才能あるし、何より絵コンテを見るとよくわかるんですが、吾郎氏は建築の絵が上手いです、ゲドの時からでしたけどちゃんと建築のパースが精確とかじゃなくて、ちゃんと重力的に正しい絵を書いてます、なるほどこの建物は立つね。って感じ、それができる人ってあんまいない、この家浮いてる・・、ってのが多い、アーキテクチャーだけなら駿氏よりもよっぽど上手いです。どうやら専攻も建築系だったらしいですね、だからか。
 
 ただキャラクターの表現はまだまだって感じですけど、でもそれでもちまたの演出家よりは何倍も才能あります。お前何様やねんと言われそうですけどw それでもやっぱりわかります、決してダメな監督じゃない。むしろ日本の監督では若手?の中では一番かもしんない。
 なんでかわからないけれど、このヒトはヒトの気持ちがわかるタイプのヒトです。出来たニンゲンです、あんな破天荒な親父からこんな出来た息子が育つのですねw



 この映画ってすごい微妙なところをついてる映画なんですよね、つまり1969年に学生闘争などがあって、その学生闘争をするような学生たちの、高校生時代を描いた作品なんです。1969を舞台にした作品はいくらでもあると思うんです、確か村上龍のなんかもあったし、妻夫木さんが出てるのもありました。(同じやん、というけれど同じじゃないよ、マツケンが出てるのもあったし)
 
 それがわからないとこの映画って一体何がテーマなのかちっともわかんないですね、実際この作品が何がテーマなのかってのがわからないって監督自身も言ってましたし。でもなんだろうな、3/11がすげぇプラスに作用してなんかキラキラしたものがこの映画にはあります、それが何?って言われるとさっぱしわかりません。ストーリーの筋としては、ちょっとひねった青春恋愛ものでしかないんですけど、むしろしょうもないとも言えます、親が本当は同じで兄妹なんじゃん!好きなのに!どうすればいいの!なんてストーリーまで60年代風ですw でもそれが本筋ではないんですよね、


 ちなみに1973年のオイルショックから、日本経済っつーかアメリカの時代が終わったのですね、パックス・アメリカーナの終焉、ヴェトナムからアメリカ型資本主義がガラガラと崩れ初めて、いわゆる、なんでアメリカはこんな国になってしまったのだろう?っていう時代なんです。その後にWは生まれてますから、ミライが明るくて、今日よりも明日は良くなる、っていう、経験が無い。今までそういう時代だったことが一度もないから。バブルは落ち目の国家が一気に自爆しただけです。だからどうも経済的に頑張って豊かな社会を作ろうみたいなのを斜めから見てしまいます、ハン。結局金持ちだけがかっさらってくだけだぜ。ってふうに。ある意味体制的な健康な?建設的な作品を作れません、中身がスカスカになるのが目に見えてる。この映画は63年だからその真っ直ぐさがあって、しかもそれが嘘っぽくない、まだ終わりは始まってなかったから、東京オリンピック目指して本当に経済も上向きだったから。このころが懐かしい、良い時代だったというのは、結局のとこただ景気が良かったというだけなんですが、庶民の感覚なんてそんなものです。
 

 この映画はその若者のまっすぐさが、オトナを動かして(現代が舞台なら絶対こうならないですね、想像すら出来ぬ、しかし60年代のオトナは戦争世代ですから、少しは話がわかるってことです、自分勝手、を突き詰めるとどこまで行ってしまうかってことを知ってるから)、和解っていうところで決着がつくのですけど、彼等はその後、決戦、まで行くことになる。

 Iはそのままズタズタ血みどろの内戦になったほうが良かったのかなとも思う、事実は体制側が完全に押しつぶした形で、若者には戦い続ける勇気も能力もなかった。実際一体どういうふうに社会を変えるのかというのは一切何にも無かったわけです。それは今も。






 なんか平和的な武器の輸出は認める、防衛技術に競争力を、なんてニュースがやってました。アハハははは、平和の為に武器を輸出するってか。どこまで堕落すれば気が済むのやら。そしてそれに反対するニンゲンが誰もいないってのはまぁどうしませう。唯々諾々と反抗しないでただマニュアルに従うコドモを作ってしまったことはやっぱり自分の首を締めてるんですよね。


  ニンゲンの進歩は反逆にしかない
                 オスカー・ワイルド



 そう蛇足かもしれませんが、BUMPのアルバムの
 please forgiveって曲は、ものすげぇ曲だなって思いましたね。ヒトの作品で、わっ!すごい、って思うのはほんと久しぶり。それも同時代人のものはほんとに久しぶり、この地点まで来てるのか、すごい。の一言。アルバムのベストソングですかね、firefliesも好きな曲です。この曲が好きな自分でいれてよかったなって感じです。